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■本編3-08* 六月の艶事

「あっ」
「ん、悠斗……」
 唇が蛇のように肌に絡み、なぞるようにキスをされゾクリと全身を震わした。
「んん兄ちゃん」

***

 急に降ってきた雨の中を自転車で走り抜けていく。
「っまじか。悠斗っ飛ばすぞ!」
 言われて落ちないように手にぎゅうっと力を込める。それを確認して、悟はマンションの自転車置き場まで爆走した。
「ひでぇなぁ……すぐ止みそうだってのに、タイミング悪かったな」
 辺りは霧のように視界が真っ白になっている。夜から雨が降ると予報されていたのに……ここ最近、ゲリラ豪雨が頻発しているから仕方がない、と濡れた様を見ながら溜め息をつく。
「最悪だよ。もうびしょびしょ」
「俺ん家で休むか? 悠斗の寝間着もあるし」
 悠斗の母親は勤務で七時まで帰って来ないだろうから、悟が預かっていた方が安心だと思った。
「うん、母さんの乗ってる駅も遅れてそうだしね」
 そうして、二人はもう少し雨に打たれて、マンションの中へ入って行った。

 扉を閉める音が静かな部屋に響く。靴と靴下を脱いで廊下に上がった。
「風呂場の中で待ってろ、服出すから、タオルはそこのな」
「わかった」
 濡れた服が肌に張り付いて気持ち悪い。早く脱ぎたかったが、小さいタオルを適当に取ると、浴室に移動し鞄を拭く、ロックを外して中を見ると隙間から入って来る部分は少し濡れていたが気にならない程度だった。
「タオルもう一枚借りるねー」
「おう」
 簡単に拭いた後は、バスタオルで頭の水分を軽く拭き取った。制服の一番上のボタンを外した所で悟が来て、悟が寝間着を渡そうとしたときだった。
「お前……」
「え? ……!? ばかっ」
 視線の先を辿ると、悠斗はぎょっとした。中のシャツと体のラインがはっきり浮き出ている。慌てて後ろを向いて持っていたタオルを抱き締めながら隠す。肩に手をかけられ、上から覗いてきた。
「……」
「や……やだ」
 隠されて見えない、それがいっそういやらしさを引き立ててしまっている。
「なぁ」
「な、なに」
「興奮するんだけどよ……」
「しないで!」
「色っぽい」
「う、うわゎ……!」
 後ろから片方の腕で悠斗の両腕をしっかり固定され自由を奪うと、そっと首筋にキスをする。湿ったタオルがタイルに付いた。
「……っだめだよ、汚いから」
「ん、汚い?」
 頬を赤くしながら困った表情で訴えかける悠斗。それをうっとりと見つめた。
「あ、雨って汚いんでしょ?」
「うん?」
 優しい口調で聞き返す。
「舐めたら汚いよ」
「あぁ、そういうこと」
「うわっ」
 シャワーヘッドからお湯を半乾きの頭に悟も一緒に被った。
「つまりは流せば良いんだろ」
 お湯が頻りに降る中、薄い笑みを作って頬にキスをした。さっきより更にずぶ濡れになってしまった。
「これで色々して良いってことだよな?」
 言わなければ良かったのだろうか。どちらにせよ言わなくても結果は同じだった気もするが。

 そして今に至る。

 びしょ濡れの体を浴室の壁に押さえつけられて殆ど身動きがとれない。
「ぁ」
 片方の空いている手で顎を捕らえ、鼻息を荒くさせながら今度は悠斗の唇を貪った。悠斗の抵抗が無くなったのが分かると、顎から手を離し、胸、腹部、そして股関を制服の上からスっと撫でられ、ビクリと反応しては身じろぐ。
「はぁ」
 隙間から可愛い声が漏れた。触られる度にびくついてしまうのが凄く恥ずかしく思えて仕方がない。
「……もう硬い」
 悟はニっと笑い、悠斗の制服のベルトとジッパーを解放すると、スラックスが不規則な動きでタイルへ落ちていった。下着の前をくつろげ、出来上がったものが勢い良く出てしまう。
「あ、ぁ!」
 俯くと手が悠斗のものに触れようとしている。いやいやと首を横に振った。
「ん? 触ったら駄目って?」
 甘さが含まれた声で呟く。
「なぁ」
 欲に負けそうだった。ここまで来るともう触って欲しいが、もごもごと口ごもる。
「駄目って?」
 あのピリっとした瞬間が味わいたい。悠斗は勇気を出して言った。
「……い、いよ」
 悟は肩にキスをしてから、親指でグリグリすり潰すように亀頭を愛撫する。
「は……ぃ」
「気持ち良さそう」
 悟自身のベルトを外すと、ずれかかっていたズボンはベルトと水の重みで落ち、拾い上げて浴槽の蓋に投げるとべしゃっと張り付く音がした。悠斗の腰を高く上に持ち上げ、細い腿に悟のペニスを挟み込ませる。下の毛がチクチクとむず痒かったり、くすぐったかったり。
「すっげぇエロい」
 臀部を突き出している様は誘っているように見えた。腰を前後に動かすと少し反った悟のペニスの先が悠斗のペニスとぶつかり煽られる。
「ぅん……んんっん」
 悟の亀頭が裏筋をたまに擦るのが気持ち良かった。
「もっと足閉じて」
「ん」
 悠斗の薄い肉付いた両股が寄せられるとペニスが程好く締まり、身震いをする。
「悠斗……気持ち良い」
「んっ」
 口調と吐息がいやらしくて、悠斗の心臓が跳ねた。悠斗の上半身に腕を絡ませ、腰を揺らし始める。
「……っ、っ……っは、は……はぁっ」
 悟の先端から出て来た先走りが潤滑剤のように滑りを良くし、動きが速くなる。
「悠斗、あ……はっ……悠斗っ悠斗」
 自身の名を夢中で呼ばれている、人の自慰を覗いているような感覚だった。
「は……は、出る……!」
 放たれた精液は、白い色で壁に塗られた。

 シャワーで流してから悟は上蓋の上に腰掛けると、悠斗はその膝の上に座らされ、悟の萎えかけたペニスが直接当たる……。まだまだ離さないらしい。途中まで外しかけていた悠斗のシャツのボタンを片手で器用に外す。少し抵抗をしてみるが、どうしたって体格も力も違う悟から逃げる事は至難の技というもの。下着以外をあっという間に脱がされてしまう。
「濡れて張り付いて……可愛いく尖ってんな」
 ぷっくりとした乳首が下着の下から主張していた。そんな事を言うから隠す素振りを見せるも、即行で止められてしまう。
「あぁ、もう……やだぁ」
「観念しろ」
 楽しそうに言い、最後の一枚を捲り、微妙な力加減で乳首を揉みしだいた。
「……ぁ……ふ」
 尖りきってしまったそこを弾かれると、悠斗はビクっとなる。
「や……ゃ。あ、兄、ちゃん」
「いやらしくて可愛い」
 クスクスと笑いながら、シャワーヘッドを持つと、お湯を出した。
 悠斗の足を開いてシャワーのノズルを蕾に近づけ刺激させながら、指で抉る。隙間からお湯も一緒に侵入して、ぐちゅぐちゅという音が何倍にも聞こえるようだった。

 シャワーの勢いがなくなり、悠斗はぼやけた目を向ける。
「こんまま挿れたいんだけど」
 返答はない。
「いい?」
「あんまり……激しいのはや」
「ばっか、いつも言ってるだろ。そんな風に言ったら逆効果だって」
「え?」
 ふわっと体が浮いた。耳元で息荒く、囁いた。
「ほら、支えてるから、激しいのは嫌なんだろ」
 つまり、悠斗自身が挿れろと言うことだった。
 了承した手前、躊躇いがちに悟のペニスを片手でやんわりと持つと自身の蕾へと向けた。
「ん……ぃ」
 入り口に当たっただけでびくんと感じてしまう。
「ゃ、あ」
「早くしないと一気に落としちまいそうなんだけど」
 そう言われても、どうしたら良いのか分からず、指で広げながら、つるんとした亀頭を少し押し進める。
「……あ」
「早く」
 悟に煽られ速度を早めるが、悠斗の良い場所を擦ってしまい、びくびくと快感に震えた。
「んん……。は、入った」
「はは、自分で挿れて、締め付けてんの」
「もう、言うな――」

 ジリリリリリリ! ジリリリリリリ!

「!?」
 急に電話のような音が、風呂場の外で聞こえて悠斗は盛大に驚いた。
「……あぁ、なんだ俺の携帯か」
 悟も少し驚いたようだ。
 しかし、脱衣場に携帯を持ってきていたのが仇となる。やけにしつこい着信音が鳴り響く中、情けない格好で携帯を取り、ディスプレイを見ると『みっちゃん』と表示されていた。悠斗にしーっと合図を送った後、電話に出る。
「……何だよ」
「何だよ、じゃねーよぉ! 明日の約束は!」
「メールでしてくりゃ良いだろうが…!」
「めんどい、電話の方が早いっしょ」
「何度も電話かけてくるのとどっこいだと思うがな。ったく、折角のお楽しみの最中に……」
「ん? 何、なに? そう言えば声響いてない??」
 ぼやいたのが聞こえたらしく、面倒な事に悟の息が荒いことまでも指摘してきた。
「まさか……さとちゃん……?」
「悠斗の可愛い声でも聞くか」
「うっそ! まじで」
 電話の向こうは、女子のように黄色い声を上げていた。隣にいる悠斗には嫌でも聞こえていて、振り向いて首を横に振りながら嫌だと懇願した。苦笑して頭を優しく撫でると携帯に向かって、
「んなわけあるか、一人寂しくオナってんだ……そう言うことだから後でな」
 強制的に切ってしまうと携帯を完全にオフにし、外に放り投げてしまった。
「悠斗の色っぽい声なんて聞かせるかよ」
「……っ」
「余計、悪い虫が寄ってくる」
 頭に顔をうずめ、大事そうに頬ずりをする。茶化して言ってるのではない事が分かると、怒る気も失せた。
「もう。あっ……うっん、んあ」
 急に動かし出すから、悠斗は悟の腕に掴まる。突き刺さって抜くことが出来ないペニスは、動く度にゴリゴリとお腹まで押して来るような勢いだった。
「あぁ、あ、あ、あ、ぁはっ」
 先から頻りにボタボタと溢れてしまう。
「っ……すっげぇな」
「兄ちゃん、やあ、あぁっ」
「我慢出来なかったか?」
 かぁっと顔が一瞬で真っ赤になった。
「でも悠斗……っ今度は我慢しろよ」
「ん! あぁん、あ、あ!!」
 前立腺に当たるように揺すられ我慢しろと無茶なこと言う。
「出すなって」
 再び溢れてきたのを見て、ぎゅっと口の先を握る。声はやけに楽しそうだった。
「ああっやっ!」
「……ちゃんと俺と一緒にだろ、な?」
 息荒く、恥ずかしがりながらも頷いた。
「……あ、あっあっあっあ、あ、あ、あ、あ!」
「ん、んっ……は、はぁっ……あ、あ……!」
 悟は咄嗟にペニスを引き抜いたと同時に、縛っていた手を放し、一緒に浴室の床へと飛ばした。

***

「わっ」
 よろめく悠斗を頭からバスタオルにくるんでがしがしと拭いてやる。
「ちょっと……止め、痛い!」
 端を辿って顔を出すと上機嫌な悟と目が合った。
「……何」
「もう三回目だなって」
「何が?」
「セックス」
 ぼん! と悠斗の顔色が魔法のように一瞬で赤くなった。
「か、数えてんの!?」
「告る前に言わなかったか? 抑えきれねぇときは頭ん中で悠斗としてたって、だから出来て俺は嬉しいんだよ」
 セックスが嬉しいだなんて、悠斗にはまだまだ理解が出来ない。
「ふぅん?」
 では、悠斗にとってセックスとはなんだろう。快楽に身を委ねることが、恥ずかしかったり、怖いときや、悪いことをしている気がするときもあるが、それだけではないから了承しているのだろうが……。
「何でそこで難しい顔なんだよ」
 いつもなら、恥ずかしがるか気持ち悪がるだろ、と額を小突かれる。悟にドライヤーで頭を乾かされながら、浮上した疑問を考えていた。

2009.08.01 完成
2016.03.28 加筆

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