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■本編3-18*

 悟がこたつを買った、と聞いた悠斗は自分の家にはないのでどんなものなのかと温かさを体感したいと早速家に行った。
「ぽかぽか〜」
 足元が温かいとこんなにも違うのかと、悠斗は幸せそうに机にうずくまる。
「おいおい、ちっとは手伝えよ」
 と、悟は掃除機を片手にむすっとする。
「え〜出たくない。それ以前に僕はお客だよ?」
 布団を捲り上げ、更に奥へと入っていく。
「あったか〜い」

 大晦日までバイトで大掃除が出来なかった為、正月連休の五日目に片付けをすることにした。そんな中、悠斗がこたつを見たいと言うので、手伝うという条件付きだったのだが……。
「話が違う」
 悟の部屋は物が少ないお陰で十分もあれば済む予定だが、父親の部屋が少々散らかっているので、リビングや浴室など合わせると一部屋一時間と考えて合計四時間はかかるというのに、目の前の悠斗が幸せそうにくつろぐのを見ていると、無性に悪戯をしたくなった。
「ひゃっ!?」
 背後から悠斗に襲いかかっては、悠斗の温もりを堪能する。
「ん〜……確かにあったかいな」
 冷たい手を首に当てる。
「っもう、冷たい!」
「もうじゃねぇ、手伝う気ないんだろ?」
 頬を人差し指でつつく。
「だってぇあったかいこたつが悪いんだもん」
「約束を守れない悠斗には罰だな」
「罰……?」
 悠斗は顔を見上げると、悟は薄ら笑みを浮かべていた……。

***

「あ、あ……は、あ、あ」
 ぴちゃぴちゃっと音を立てながら首筋を舐られる度に悠斗の体は反応してしまう。
「ん〜〜」
 抵抗したいのだが体に力が入らず、そしてくすぐったいのを通り越して、変な気分になってくる。
「はぁ、兄ちゃん」
 もう駄目だと蕩けた顔をくてんと悟の肩に預けた。
「ゆうと……可愛い」
 そんな表情を見せられ、悟の欲望が動かない訳がなく、心の中でいただきますをしてから顎を捕らえ、悠斗の唇を貪ろうとしたのだが。
「何、年始からいちゃついてんだ。掃除しろ」
「ひゃあっ! お、おじさんっ」
「……忘れてた」
 公認とはいえ、醜態を見られてしまった気恥ずかしさで悠斗はこたつに潜りたい気分であった。

 気を取り直して、普段は掃除をしない場所を悟と一緒に作業する。
「うわ……すごい埃〜」
 棚の上や床の隅っこ、家具と壁の間を掃き出すとボールくらいのサイズの塊になった埃に少し引いてしまった。
 自分の家もこんなのがあるのだろうか……と普段は母親が掃除をしてくれているから考えたこともなかったが、帰ったら自分の部屋の家具の間も見てみようと思った。
「え? あ、わ、わ、ちょっ」
 床と家具の下で何かが引っ掛かり、それを取り出すと一冊の雑誌が出て来て表紙を見た瞬間、思わず投げてしまった。女性が豊満な胸や毛のない股を恥ずかし気もなく晒し、艶かしい表情でこちらを見ており、悠斗が聞いたことのない言葉ばかりがその女性の周囲に書かれている。いわゆるエロ本というやつだ……。見たことがないし、免疫もない悠斗はもちろん顔を真っ赤にさせた。
「ん? どした」
 悠斗の声に反応して近付いて見ると、
「あー見付かったか……」
 と、信じられない言葉に悠斗はショックを受ける。
「え……兄ちゃん……の?」
「違うっての」
 ということは、おじさんのということなのだろうと悠斗はホッとした。
「俺は悠斗一筋って何度言えば分かるんだよ」
「でもさっきのは誤解を招く言い方だったよ!」
 悟も昔に見付けたことがあるらしく、そっと元に戻して見なかったことにしていたが、まだあったとは思っていなかったと言う。
「まー悠斗のエロ本だったら喜んで買うけどな」
「ばか! すけべ! 変態!!」
「悠斗ちゃんはいつになってもカッカして……そんなことしなくても目の前に見放題だしよ」
 そう言って、どさくさ紛れに悠斗の服をぺろっと捲る。
「ひゃ……っも〜〜!!!!」
「だっから何、年始からいちゃついてんだ」
「……いや、親父のせいだし」
 悟がヒラヒラと父親の大事な本をチラつかせる。
「あー……見付かったか」
 親子揃って同じ反応だったので、悠斗は思わず笑ってしまった。再び気を取り直して掃除を始めると、今度は冷蔵庫の上から二冊目のエロ本が出て来て、更には過激な表紙に悠斗は悲鳴を上げることになり、掃除は中断せざるをえなかった。
「この家なんなの!? 猥褻物ばっかり出て来るんだけど!」
「ははははは」
 悠斗の反応に対して悟はお腹を抱えて笑う。
「何を騒いでんだよ、またサボって……それは!」
 悠斗が手にしている本を見て、そんな所にあったのかと感謝されてしまった。
「悠斗はエロ本探しの天才か」
 父親の突っ込みにまた悟が笑った。
「違うもん! てか、おじさん不潔!」
「おいおいおい、悠斗そりゃないだろうがよ。おめぇら乳繰り合ってんだろ〜」
「ちち……?」
 悟からの補足説明を聞いて、顔を真っ赤にする。
「ししし、してないもん!!!!」
 動揺し過ぎだろ……と思ったが、悠斗が余計に怒りかねないので親子揃って悠斗の言う通り乳繰り合っていないことにした。
「つーか、親父の部屋に何で置かないんだよ」
「それもそうだな」
 そう言って、二冊のエロ本を自室に持って行った。

「……何でなの!?」
 三冊目が出て来てげんなりしていた所に、
「エロ本ハンターだな」
 と悟に名付けられて今後は大掃除に家に行くのを止めようと決めた悠斗だった。

2018.03.24 完成
2024.04.11 加筆

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