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GOD GAME
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「おかえり。アガレス君」
「お邪魔しておりますよアガレスさん」
「っ…、」
ミカエル達ヴァンヘイレンの追っ手から逃れてココリ村へ帰宅したアガレスをまっていたのは、当然のように其処に居るヒビキとユタ。顔が引きつり言葉が出てこないアガレスの隣でキユミが首を傾げる。
「…?アガレスさん?」
「っ…、」
「アガレスさん?どうかしましたか?アガレ、」
「…っ、来いキユミ!」
「えっ?」
ぐっ、とキユミの細い腕を引っ張るとバァン!と扉を乱暴に開けて部屋を飛び出していったアガレス。






















「アガレスさんどうかしましたか…?」
3階の寝室へキユミを連れて来たアガレス。頬に冷や汗を一筋伝わせるアガレスはチラッとキユミを見る。
「お前…あの青い髪の男を忘れたのか」
「……。ユタさんの事ですか?」
「しか居ないだろう」
「……。覚えていますよ…忘れるはずないじゃないですか…。アドラメレク神達が私達一家を襲撃に来た時と…私とお兄ちゃんが魔界へ連れられて悪魔になった時に会っていますから…ユタさんとは…」
「なら何故入れた!あいつは悪魔なんだぞ!」
「アガレスさんが言える立場じゃないじゃないですか…!私とお兄ちゃんが悪魔堕ちしたのはユタさんのせいじゃないです…アガレスさんのせいでしょう…!」
「っ…!」
せっかく少しは昔の優しいキユミに戻っていたのに。目が怒っていて声が少し荒くなるキユミに、アガレスは言葉を飲み込み下を向く。
「…そうだな…。そうだ…。すまない…。なら…義兄さんは254年前の事を思い出しているのか」
キユミは首を横に振る。
「いえ…。直接は聞いていません。でもお兄ちゃんの口振りからしてユタさんが悪魔だという事も分かっていないですし、お父さんとお母さんがアドラメレク神に殺されたとは知らず、天寿を全うしたと思っています」
「そうか…」
少し黙ってからアガレスが口を開く。
「なら何故このような時に青髪の悪魔が義兄さんを連れて此処へやって来たかだな」
「はい…」


コンコン、

「キユミ?アガレス君?どうかしたかな」


ビクッ!

扉をノックされただけであからさまにビクッ!としたアガレス。キユミが扉を開ければ、何故アガレスがそこまで苦手意識を持つのかという程穏やかな笑顔を浮かべるヒビキが居る。
「お兄ちゃん」
「アガレス君が慌てていたようだから…。何かあったのかなと思って」
「うんうん。何でもないよ」
キユミが代わりにそう言えばアガレスはキユミに隠れるようにして後ろでコクコク頷く。ヒビキは「ホッ」と優しい笑顔を浮かべる。しかしすぐに眉尻を下げた悲しい表情に変わる。
「…キユミから清春君の事は聞いたよ。辛かったね…。僕も一緒に暮らしていた甥っ子があんな事になってしまって心苦しいよ…。清春君の事で心労がたたっているだろうから2人は早く寝た方が良いんじゃないかな」
「うん。ありがとうお兄ちゃん。そうしましょうアガレスさん」
「あ、ああ…」
ニコッ。ヒビキの笑顔をいや、顔を直視できずにアガレスは逃げるように寝室の扉をバタン、と閉めるのだった。


























深夜――――――

梟の鳴き声だけが聞こえる。先日の襲撃で村人はアガレス達だけとなったココリ村。
「スー、スー…」
隣で眠るキユミの寝息を背に、アガレスはベッドに腰掛けたまま窓の外を眺めている。遠く遠くには、今は城主が居なくなったヴァイテル王国城が僅かに見える。
「城下町や繁華街は先日の襲撃で壊滅か…。国の首都が壊滅したからな。ベルベットローゼ殿の身体も相当傷んでいるだろう」
「スー…、…る…、」
「…?」
寝言だろうか。キユミが何かを喋っているから振り向くアガレス。しかしキユミは眠っている。頬に一筋の涙を伝わせて。
「清春…、ごめんね…、」
「……」
泣きながら寝言を呟くキユミの頭を撫でると寝室を出てそれからアガレスは静かに静かに…キユミは勿論、ヒビキやユタに気付かれぬよう家を出た。























バサッ、
家を出たアガレスはヴァンヘイレンのブレザーを羽織ると、遠く遠くに僅かに見えるヴァイテル王国城を瞳に映す。
「市街地を襲撃したのは清春のせいでもある。あいつに約束したからには清春の責任は俺がとらねばならんからな」

『だがあいつがあのような体になると分かっていて産んだのは俺だ。責任は俺がとる』

キユミに言った言葉通り、壊滅した城下町と市街地へ向かうアガレス。


ポン、ポン

肩を叩かれ、首を傾げながら振り向いたアガレスの顔が…
「!!」
真っ青に染まった。
「アガレス君。こんな夜中に外出は危ないよ」
笑顔のヒビキ。そしてヒビキの3歩後ろにはユタ。
ジリッ…、
アガレスはいつもの無表情のまま後退り。なのに逆にヒビキは歩み寄るから、2人の距離は変わらない。
「はは。どうかしたのかな?さっきから脅えてばかりいるようだけれど」
「…っ、貴様!何しに此処へやって来た!」
アガレスは冷や汗をかきながらも、ユタを指差す。
キョトンとするヒビキ。不敵に笑むユタ。
「何をしに…ですか?」
「そう聞いている」
「僕には分かりませんよ。何故ならヒビキ様が此処へ来たいと仰ったのですから」
「何っ…!?」
アガレスが視線をヒビキに移せば、やはり笑顔のままヒビキがアガレスの右肩にポン、と手を置く。
「義兄さん何を、…っ!?」


ビキッ…!!

肩に置かれたヒビキの左手がアガレスの肩の骨が粉砕してしまいそうな程力強く掴むから、アガレスはすぐに振り払い、ヒビキから距離をとる。
「っ…!何を…、」
「キユミや父さんや母さん、村の皆をあんな目に合わせておいてよくまた平然と此処へ顔を出せるねアガレス君」
「…!!記憶が戻っているのか…!?」
目を見開くアガレスの問い掛けにも、ヒビキは表情を崩さないまま穏やかな笑顔を浮かべている。
「ヴァンヘイレンに居た頃はキユミと同じで戻っていなかったさ。けれど最近戻ったんだよ。全部、全部ね」
開いた目が悪魔の真っ赤な目をしていた。笑顔なのに目は笑っていないヒビキにアガレスは危機感を感じたのか、キユミが眠る自宅へ駆け出すが…、


ガシッ、

「っ、離せ!」
ヒビキに肩を掴まれ阻止されてしまう。
「キユミには何もしないよ。するわけないよ僕の唯一生き残った大切な家族だからね。だから安心しよう」
「っ…、なら何故此処へやって来た!」
「可愛い甥っ子が悪神に殺されたとユタから聞いてね。墓参りだよ」
「それだけではないだろう!」
「此処へ来た理由ならそれが理由さ」
「答えろ!!」
裏返ったアガレスの声に、ヒビキの笑顔が崩れる。据わった赤い目がアガレスを静かに睨み付けている。まさに悪魔。アガレスはまた少し後退りしてしまうが。
「逆に聞きたいのは僕の方だよ。キユミを騙してココリ村を壊滅させて、父さんと母さんを殺させる要因をつくって、清春君を悲運にさせておいて」
ヒビキはアガレスを指差す。
「それでも何故君はまだこの村に関わろうとする?オト家に関わろうとする?」
「っ…、」
「今日僕が此処へ来た理由は甥っ子の墓参りも理由の1つさ」
ヒビキはコツ…コツ…とゆっくりゆっくりアガレスに歩み寄る。下を向きながら。
「神にも人間にもなりきれず化物として扱われ、最期には自分の意識とは関係無く母国を襲撃する悪神になり、アドラメレクに殺された…。本当に可哀想な甥っ子だよ。父親が立派な人間なら清春君はこんな悲しい人生を送る事は無かった。哀れみの意味とそして、叔父の僕が記憶喪失だったせいで何も救ってあげれずごめんねの意味を込めて墓参りに来たんだ」


コツ…、コツ…

ヒビキは近付く。
「でもアガレス君はさすが人間じゃないだけあって察しが良いね。僕が此処へ来た理由はもう1つあるんだ」
ピタッ…、
歩みを止めるとヒビキは顔を上げ、アガレスを指差した。とても恐い悪魔の真っ赤な目で睨んで。
「キユミから離れろ」
「っ…、」
薄々感じてはいたが、据わった目と低い声で言われてはアガレスも口ごもってしまう。




















「262年前。君がオト家やココリ村の経済を豊かにしてくれた事には感謝をしているよ。それに、国中から疎外されているココリ村に生きるキユミを気に入ってくれた事にも感謝をしているよ。…けれど僕は薄々君が怪しいと思っていたんだ。キユミと結婚してから君は事あるごとに何か理由をつけては食事を避けていた。君がオト家へやって来てから僕達の前で君が食事を摂った事は一度も無かった。それに、君がやって来てからココリ村の農作物や畜産物が売れ出した事もある意味不思議で仕方がなかった」
「っ…、」
「けれど君は、ヴァイテル王国中から笑い者にされるココリ村の障害者達を笑いもせず農業を進んで手伝ってくれるから、君の怪しいところには目を瞑っていたんだ。キユミの大切な人だから僕がとやかく口出ししちゃいけない事だからね。けれど…君に対する僕への不信感は消えなかったよ。そんな時に254年前のあの悲劇が起きたんだ」
「……」
「僕は悔やんだよ。今まで君を怪しいと思っていたのだから早くに君の素性を見抜くべきだったと。そうすれば父さんと母さん、キユミ、村のみんなは助かったかもしれないのに、と」
「だから!」
アガレスが口を開く。
「だからせめてもの罪滅ぼしをさせてもらいたいと思って来たんだ。ヴァイテル王国の城下町や市街地の壊滅も俺のせいだ。だから、」
「君が吐いた嘘であれだけの事件が起きたんだ。そんな君みたいな大嘘吐きの言葉を僕が信じると思っているのかな堕天神?」
「っ…、」
すると今までずっと黙っていたユタが口を開く。
「僕は元神であるアガレスさん貴方のような力のある方を魔界へ是非お誘いしたいとずっと考えておりました。けれど、御覧の通りヒビキ様は貴方の事を大層嫌っていらっしゃいます。それに、こんな化物をまた産んでいる事も黙っていたようですし」
「なっ…!?何故貴様がそいつを…!?」
ユタが前に出したのは黒いタオルにくるまれてヤギやクロコダイル、コウモリ、オオタカが合わさった化物風貌の赤ん坊サニー。
アガレスは更に目を見開く。一方のサニーは脅えながらも恐る恐るアガレスをチラッ…と見る。
「お…お父さん…」
呆然と硬直しているアガレスを、「ふっ…」と鼻で笑うユタ。
「本当は神と人間の血を引くデミゴッドの清春さんを欲していたのですが、彼は神の血を引く割りにあまりお強くは無かったようです。なら、悪魔と神の血を引く新たなデミゴッドサニーさんが我が魔界の一員となってくださればアガレスさん貴方にはもう用はありません」
「くっ…!」
アガレスは真っ黒い槍を繰り出し、2人に向ける。























「何を企んでいるかは知らんが、悪魔の貴様や今の義兄さんにキユミは渡せん!どうせキユミも魔界で神殺しの道具に使う事しか考えとらんのだろう!」
そんなアガレスに、ヒビキとユタは顔を見合わせてから首を横に振り、ヤレヤレといった様子。
「ここまで言われてもアガレス君君はキユミの傍に居座ろうとするんだね。神様という生き物は人間より煩悩があるようだよ。僕が何を言っても聞かないようだね。なら最後はキユミに決めてもらうとしようか。ね。キユミ」


ザッ…、

「!」
ヒビキとユタが右に動けば。家から、目を泳がせて小刻みに体を震わせたキユミが出てきた。アガレスは目を見開くと同時にすぐ、ユタが抱えているサニーを見て焦る。
「キ、キユミ…」
「アガレスさん…。お兄ちゃん…記憶戻っていたみたいです…ね…」
「キユ、」
「お兄ちゃんから…き…聞きました…。ユタさんが抱えている子は…アガレスさんと…、ココリ村を襲撃した時に居た神様との子なんです…ね…」
全身から力が抜け、口を動かすだけでショックで言葉が出てこない顔面蒼白のアガレス。一方のキユミも顔面蒼白のままカタカタ震えたまま、自分の左胸を両手でギュッ…、と押さえる。ポタポタ涙を流して。
「ひ…酷いですよ…、お父さんとお母さんと…村のみんなを殺して…村を焼き払って…、清春を連れ去った神様と仲良くしていたなんて…酷過ぎますよ…?」
「っ…、キユ、」
「こんな事…天国の清春が知ったら…泣いちゃうじゃないですか…」
「…、キユミ!俺はお前にも清春にも嫌われた事が怖くてそれで、」
「アガレスさん…私の事が嫌いなら素直にそう言ってくれれば良いのに…!」
「違う!嫌いなはずあるものか!俺はお前を、」
「私は…私は…!254年前の記憶を全て思い出しても…アガレスさんが神様だった事を思い出しても…それでもまたアガレスさんと一緒に居たかった…、これからもずっとずっと一緒に居たいと思ったんです…!アガレスさんはお父さんもお母さんも村のみんなも殺める原因を作った神様なのに私アガレスさんの事嫌いになんてなれなかった…!けど…、けど…アガレスさん酷いですよ…!どうして会ってから今日までずっとずっと…貴方は嘘ばかり吐くんですか…!」
「っ…、」
崩れ落ちて顔を覆い、わんわん泣くキユミの肩を擦るユタ。
「アガレス君。残念だけど君はもうキユミの傍には居れないようだよ」
ザッ…、
ヒビキがアガレスの前に立てば、チラッ…とユタを見てヒビキは頷く。その意図が分かっているユタも頷き返す。
「神は人間とは違い、寿命が無い。それに戦いや攻撃ではなかなか絶命しない。ならどうすれば絶命するか。それは…」


パチン!

「!?」


ゴオッ…!!

ヒビキが指を鳴らせば途端に辺り一面に炎の花が咲く。アガレスは勿論、キユミも目を見開いて驚く。
「なっ…!?」
「お…お兄ちゃん何しているの…!?」
しかしヒビキはキユミに返事をせず、アガレスの事を笑う。とても嬉しそうな悪魔の笑顔で。
「土地神が祀られているその地を焼き払えばその土地神は絶命する!このココリ村は君の身体そのものだからね!」
「くっ…!貴様…!」
一方のキユミはヒビキが何をしようとして、何を言っているのかを理解したから目を見開き、声を裏返らせてまで叫ぶ。
「やめて!お兄ちゃんやめて!!」
ヒビキは優しくそしてどこか悲しい目をしてキユミを見る。
「キユミ…。彼は父さんや母さん、村のみんなそして清春君を悲劇にさらした張本人なんだよ。そんな悪神を庇うキユミを見た天国の父さんや母さん、清春君はどう思うだろう」
「違うの!お父さんはこの前幽霊になっても来てくれたの!清春はアガレスさんの事大好きなんだよ!」
「でも今キユミは泣いているよ。彼に酷い事をされっぱなしじゃないか」
「そうだけど…、そうだけど私アガレスさんに嫌われてもアガレスさんが大切なの…!清春もそうだったんだよ!」
「…どうやらキユミは随分とアガレス君に洗脳されているようだ」
「聞いて!お兄ちゃん!!」
キユミの悲痛な叫びは聞かず。炎の勢いは増していく。






















「くっ…!」


ガシャン!

アガレスは繰り出した槍をヒビキに向ける。しかしヒビキはいたって余裕の表情。
「君が僕に刃を向ける理由は無いんじゃないかな」
「ああ…そうだろうな。全て俺のせいだ。だが…妹の懇願に耳も傾けぬような自己中心的な木偶の坊にキユミを渡すわけにはいかんのでな」
「ふっ…。そっか。君は随分と僕の事が嫌いなようだね。まあ…会ったばかりの頃から薄々感じてはいたけれど。僕もね、君みたいな大嘘吐きは大嫌いだよ」
「ならば調度良いな」
「そうだね」


タンッ!

アガレスは踏み込み高く跳び上がる。ヒビキの頭上から槍を振りかざし。ヒビキはヒビキで、悪魔の真っ黒い羽をバサァ!と現して立ち向かうからキユミは目を見開き、涙を溢れさせて叫ぶ。
「やめてアガレスさん!!お兄ちゃん!!」


ドスッ!

「が…、はっ…!」
「え…」
「ヒビキ様は大切な大切な魔界の王。指一本触れさせませんよ」
ヒビキに槍が触れる直前。ユタの右腕がアガレスの体を貫通。アガレスは口や体から真っ黒な血を噴き、倒れる。


ドサッ…、

「アガレスさん!!」
駆け寄ろうとするキユミをがっしり押さえたヒビキ。
「アガレスさん!アガレスさん!!」
「行こうキユミ。もうじきココリ村は炎の海と化する」
「アガレスさん!アガレスさん!!」
「キユミ」
「アガレスさん!アガレスさん!!」
「ふぅ…」
何を言っても今のキユミには無駄。そう判断したヒビキはユタと顔を見合わせ溜め息を吐き、肩を竦める。
「行こうか。ユタ」
「ええ。そうですねヒビキ様」
ヒビキはキユミを抱え。ユタはサニーを抱え。
「アガレスさん!!」
アガレスに右手を伸ばすキユミ。真っ赤な炎に包まれていく村の中心部に、揺らめく炎の中僅かに見えたアガレスがこちらを見てキユミに右手を伸ばしている。
「アガレスさん!!」


ゴオッ!!

炎はアガレスを飲み込み、姿が見えなくなってしまった。キユミは見開いた目から大粒の涙を溢れさせて叫んだ。
「アガレスさん!!」


ヒュンッ!

ヒビキに抱えられたキユミ、ユタに抱えられたサニーは魔界へと姿を消した。


ゴオォッ…!!

真っ赤な炎はココリ村を全て飲み込んだ。









































翌朝―――――――

「聞いたか?ココリ村」
「ああ。何者かに全焼させられたらしいな」
「まるで254年前の悪夢再びだぜ」
「まあ元から廃村同然のあんな村が無くなったところで俺達ヴァイテル国民に何の支障も無いよな。あんな村より、先日神々の襲撃をくらった城下町や市街地を何とか復興させないと」
焼け焦げた臭いで鼻が曲がってしまいそうなココリ村の前をそんな会話をしながら通り過ぎていくヴァイテル国民達。
灰色の煙に包まれ、道端にはまだ僅かに火が燻り…。家屋だったであろう真っ黒く焦げた塊や真っ黒く焼け焦げた木々が、辛うじて此処が村だった事を記している。


ドサッ…、

そんな焼け落ちた村を前に膝から崩れ落ちたのは顔面蒼白のメア。
「そん…な…、そん…な…」
その隣には、人間達には姿が見えない天使バジリスクが眉尻を下げ、悲しそうに村を見ている。
「…何者かに焼き払われたようじゃな」
「な…そん…な…、それじゃあ…」
バジリスクは辛そうに言う。
「我がもっと早くあやつの居場所を突き止めていれば全焼を何とか阻止できたかもしれんのう…。すまんダーシー」
昨日。小屋に帰宅したメアが驚いたのは、メアの留守中にサニーが忽然と姿を消していたから。大慌てしたメアが小屋を飛び出すと、たまたまメアを探していた天使バジリスクと遭遇。
メアに一目惚れなバジリスクはメアに頼まれ、サニーとそしてアガレスの居場所を見つけた。そしてバジリスクの天使の羽を使い、2人がココリ村へやって来たらこの有り様というわけだ。


ガタガタガタ…

顔面蒼白のメアはバジリスクの声など聞こえていない様子。
「そん…な…アガレス君…は…」
「土地神という生き物は寿命が無い代わりに、自分が祀られておるその土地が無くなれば絶命するのじゃろう」


ドクン…!

その一言でメアの心臓が奥深くで鳴り、同時に今までの短かったアガレスとの思い出が鮮明に脳裏を駆け巡る。

『だが俺はその煩わしさと明るすぎる性格に救われたんだっ!!』
『御殿殿もカナも全員が忘れても俺はお前の事を覚えているだろう!だから、キメラにされても悔いは無いや生きている方が辛いだなんて言うな!』

「ダーシー。可哀想じゃが今は立ち止まってられんのじゃろう?そなたの学友という日本人の男子2人と御殿神を一刻も早く助けに行かねば、」
「うわああああん!!」
「!?ダーシー!?」
突然声を上げて泣きわめくメア。バジリスクは驚き、メアの細い肩を揺さぶるがメアは泣きやまず。
「ダーシー!?どうしたのじゃダーシー?」
メアがアガレスをどう思っていたかなど知らないバジリスクは、メアが泣きわめく理由が分からず。
「アガレス君の嘘吐きっ…!ひっく…カナちゃんにも御殿さんにも忘れられた私にはアガレス君だけが味方だったのにこれからどうすれば良いの…!帰ってきてよアガレス君…!!」










































天界―――――――


満面のぱあっ!とした笑顔のアドラメレクの周りには花が咲いている。アドラメレクは笑顔を振り撒きながら神々の間を軽快に歩いていく。
「ご機嫌ようミラノ神!」
「は、はいおはようございますアドラメレク様…」
「あら。今日も素敵でしてよマホメット神!」
「こ、光栄でございますアドラメレク様…」
「な、なぁ…今日アドラメレク様どうしてあんなにご機嫌なんだよ…?」
「さぁ…?」
神々はアドラメレクに聞こえないようひそひそ話す。



バァン!

幹部が暮らす館の扉を開くアドラメレク。ソファにはベルベットローゼ。
「ご機嫌ようベルベットローゼ!」
「あ、ああ…アドラメ、」
「聞きまして?聞きまして?!」
「な、何をだよ…」
「裏切り者が昨夜から今朝にかけて死んだそうですわ!」
裏切り者とは、ココリ村の神を意味する。
満面の笑みのアドラメレクとは対照的にどこかひきつりながらも笑顔を無理に浮かべるベルベットローゼ。
「あ、ああ…き、聞くもなにもオレの国の中の村の話だからな…。オレが一番最初に知ったぜ…ココリ村が何者かに焼き払われて廃村した、って…な…」
「廃村!まあ!なーんて素敵な言葉なのでしょう!」
アドラメレクは右頬に、重ねた両手をくっつけて満面の笑み。
「貴女もさぞ嬉しいでしょうベルベットローゼ?」
「あ、あ、ああ!あ、あったり前だろ!あの…あの裏切り者な弟子がや、やっとくたばったんだからよ…!」
「ふふふ!これで貴女はわたくしを裏切るに裏切れなくなりましたわね?」
「な…!?な、何だよ!まだオレを信用していなかったのかよアドラメレク!」
ベルベットローゼの問いなど無視をして、るんるん気分上機嫌のアドラメレクは顔を両手に乗せ、足を前後に揺らしている。
「やぁーっと裏切り者とあの子が居なくなりましたわ。これでわたくしの心を揺らがせる邪魔物は全て居なくなる。ふふふ。ベルベットローゼ!」
ガタッ!立ち上がるアドラメレク。
「な、何だよ…」
「貴方は御子柴奪還をしてきなさい。マリアとマルコの居場所は先日わたくしが突き止めた通りでしてよ」
「お…お前が行かなくて良いのかよ?」
「わたくしは貴女が御子柴奪還をしている間に全ての人間に造り直しの儀を施してきますわ」
「…!?」
今までやろうと思えばできた事をずっとやらなかったアドラメレクが、ついに全ての人間を手中におさめようとしている。しかも、無邪気な満面の笑みでそう言うものだから、恐ろしさもひとしお。仲間のベルベットローゼですらゾッ…!と背筋が凍り付く。
「な…、何でまた突然なんだよ…?お、お前の力なら今までいつだってできたはずだろ?それを何でまた突然今日…」
「貴女には関係ありません」


カツン、コツン、

アドラメレクは足音をたてて歩き去っていく。
「お、おい!アドラメレク!」
「御子柴を奪還したら貴女もすぐわたくしに合流なさい。宜しいですわね?」
そう遠くでアドラメレクの声が聞こえると、彼女の姿は廊下の暗闇に飲み込まれてやがて見えなくなってしまった。




















ガクン…、

1人になったベルベットローゼは真っ青な顔をしてソファに崩れ落ちる。
「焼き払われた…?廃村…?て事は…アイツ…死んじまったのか…?あんなにあっさり…?堕天されても悪魔にされても死ななかったアイツが…こんなあっさり…?」


カタカタ…、

小刻みに震え出す右手をギュッ!と左手で押さえつける。青い血が滲む程強く。
「はっ…、ははっ…天罰だぜ…。オレを散々コケにして…腹の中のガキを要らねぇっつった天罰だろ…?はっ…ザマアミロってんだアホ弟子…」

『感謝する。ありがとう』
『〜〜っ、んな笑顔向けんなよ調子狂うだろうが!」』

「っ…!!」
鮮明に声が記憶が蘇れば、ベルベットローゼはソファにバフッ!と背中から倒れ込み、右腕で目を隠す。
「ぐっ…、何…やってんだよ…アホ弟子…。師匠より…先に逝ってんじゃねぇよ…悲しいじゃねぇか…!本当のアホだなてめぇは…なぁ…?アガレス…!」

































カツン、コツン…

『お嬢様の力量ならアガレス君などすぐに葬りされるはずですが』
『お嬢ォオオ!どうしてまだアガレス氏を生かしておくのよォオオ!?』

真っ暗闇の廊下を1人歩きながら、マルコや御子柴に以前言われた言葉を思い出すアドラメレク。
「わたくしだって大嫌いなアガレス氏の事を早くに葬りさりたかったのでしてよ。けれど…」

『俺は…俺は!本当は父さんと母さんと一緒に居たいんだよ!!』

清春の言葉を思い出すと、アドラメレクは静かに目を瞑る。
「そうしたらあの子が悲しむでしょう」


カツン…、

真っ暗な廊下を抜けると。目の前に広がるのは天界の白い陽射し。そして、様々な生き物の姿をした集まった神々達ざっと数十億人。アドラメレクは「フッ…」と笑むと。


バッ!

右腕を右水平に向ける。
「ついにこの日が訪れましてよ。皆の衆。低俗で穢らわしく欲の権化で愚かな全ての人間達に造り直しの儀を施しましょう」
「ワアアアア!」
「アドラメレク様万歳!」
「アドラメレク様万歳!」
「神々万歳!」
「神々万歳!」
神々から地鳴りのような盛大な称賛を受け、アドラメレクはまた不敵に笑む。
「ふう。少し下界で人間達と戯れ過ぎたようでしたわ。もう飽き飽きしましたの。アイリーンという名も。人間のこの姿も。清春とアガレス氏の死後…この辺りが調度潮時ですわね」

『誰があんたみてぇな悪神の元に帰るかよクソババァ!!』

「…ようやく踏ん切りがつきましたわ。わたくしはもう迷いません」

『アドラメレク様はずっとずっとアイリーンだけの優しい神様だよ』

アドラメレクは顔を上げる。据わった真っ青な瞳に下界を映して。
「愚かで穢らわしい醜悪な人間達にわたくしが今、制裁を下します。見ておいでなさいアイリーン」


バサッ!

アドラメレクの姿が一瞬にして本来のラバ×クジャクの姿になり、下界へ飛び立つと。


カッ!!

下界のあちこちで、天からの刺すような雷(いかずち)が降り注いだ。その雷はまるで、天から降り注ぐ巨大な爆弾のようだった。






































魔界――――

「ひっく…ひっく…」
ヒビキとユタに魔界へ連れられてきたキユミは、此処へやって来てからずっと膝を抱えて泣きっぱなしだ。ヒビキは困って眉尻を下げている。
「キユミ。仕方の無い事なんだよ。キユミが一番彼に酷い目に合わせられたんじゃないか。それでもまだキユミは彼の事を大切に思えるのかな?彼を裁いた僕を恨むのかな?」
「ひっく…ひっく…」
キユミは泣くばかり。ヒビキに背を向けて返事もしないから、ヒビキは「ふぅ…」溜め息を吐き、ヤレヤレといった様子。
「ヒビキ様」
いつも表情を崩さないユタが少し焦った様子で駆けてきた。
「どうしたんだいユタ」
「アドラメレクさんが神々を率いて各国を襲撃しています」
「ヨーロッパかい?それともアジアかな?」
「全世界です」
「何…?」
ヒビキの顔つきが険しくなれば、ヒビキはすぐさま黒いコートを羽織り、歩き出す。しかしピタッ…と止まると、振り向いてキユミを見る。
「キユミ。1人じゃ危ないから僕達と一緒に来るんだ」
キユミはふるふると首を横に振る。
「悪神アドラメレクの事だ。下界の人間のみならず天使や魔界をも屈伏させ我が物にしようと企んでいるはずだよ。だからキユミ。此処に1人で居たら危険だから僕達と一緒に。ね」
「お兄ちゃんなんて嫌い…!」
膝に顔を埋め、泣き声だが怒りのこもったキユミの一言にヒビキは悲しそうにするが、すぐに背を向けユタと共に魔界を経つ。


バサッ、バサッ

ヒビキとユタが飛び去っていく羽音が遠ざかれば、キユミは真っ赤に腫れた目の顔を上げる。

『断るな!俺が絶対幸せにしてやる!』
『俺はッ…、あんたも…母さんもムカつく…、恨んで恨んで…あんたらなんて…死ねってマジで思ってた…。でも…どんなにムカついても…どんなに恨んでも…っ…、か…家族だから…本気で嫌いになんてなれないし…!』

甦るのは今は亡きアガレスと清春の姿、声。
「ごめんなさいアガレスさん…ごめんね清春…。…あの時はそんな事言わないでって言ったけど…やっぱりアガレスさんの言ってた通りだね…。私がアガレスさんの妻じゃなければ…私が清春のお母さんじゃなければ…アガレスさんも清春も幸せな人生を歩めたのかな…長生きできたのかな…。ごめんなさい…ごめんね…アガレスさん…清春…うぅっ…、ひっく…」
真っ暗闇の魔界にはキユミのすすり泣く声がずっと響いていた。




























イングランド某所――――

「ねぇねぇ〜これ結構まずい状況なんじゃない?」
「ええ。ですが何億年も生きている私からしたら、ようやくという感じですけれどね」
マリアとマルコは、全世界の内イングランドにも降り注ぐ雷と天から下界を襲撃する沢山の神々のその惨状を見物していた。
「ま、そうね〜あの短気なアドラメレクちゃんが今までずっとちまちま人間を殺していた事の方が不思議だったわよね〜♪」
「ではそろそろ私達も此処を離れますか。アドラメレクに居場所を知られてしまうのも時間の問題でしょうし」
「そうね♪可愛い可愛いキメラちゃん達も連れて、」


ガシャン!!

背後からガラス特有の割れる音がしてマリアは笑顔で振り向く。
「あらっ。さすがはヴァンヘイレンのエース君といったところかしら。キメラになりながらも自我を取り戻すなんてさっすが〜♪」
其処には、ガラスの巨大ケースの中に飼われていた天人×椎名×複数動物のキメラが立っている。容姿はキメラそのものの化物だが、目は左目は藤色、右目は悪魔の目をした…つまり椎名の目をして睨み付けている。
「おや。キメラにされてもなお自我を取り戻せたとは。低知能な人間にしては上出来ですよ椎名さん」
「グルルルル…」
天人×椎名×複数動物のキメラは獣のように唸りながら、マリアとマルコ目掛けて飛び上がる。
「ガアッ!!」
しかし2人はスウッ…と姿を消し、椎名達キメラの背後から…
「おいたはやーよエース君♪」


ズブッ!!

「ガァアアッ!!」
腹をマリアの本来の姿である爬虫類の腕が貫通し、キメラは赤い血を吐き出し倒れこむ。
「飼い主の命令を聞けないペットには身をもった躾が必要ですね。このように!出でよ、ホルラノン神」
マルコが広げた聖書から虎と鷲の姿をした神が現れ、キメラの頭部に噛み付く。



ガブッ!

「ガァアアッ!!」
ホルラノン神に頭を噛み付かれたまま右へ左へ振られるから、頭から飛び散る鮮血。その様子をマリアとマルコはにこにこ御満悦の笑みを浮かべて観賞。



















ドサッ、

「ホルラノン神ご苦労。お戻りなさい」
マルコに言われれば、ホルラノン神は聖書の中へ戻る。
「ハァ"…ハァ"…」
キメラはその場に倒れたまま。真っ赤な血が血溜まりとなっていくキメラの頭を笑顔で踏みつけるマリア。
「御殿と御子柴のキメラが逆らうと思っていたけれど。意外に人間コンビのキメラの方が刃向かったわね♪と言ってもその目を見るからに刃向かっているのはエース君だけのようね♪ふふっ♪飼い主の命令を聞けないペットには用無しよ♪」


ドガッ!

マリアは、真っ暗で血生臭い深い深い地下に椎名達のキメラを蹴落とす。その地下には椎名達のキメラ同様マリアとマルコに刃向かったキメラ達の死骸が捨てられてある謂わばごみ捨て場。白骨化しているキメラや、最近処分されたまだ腐りかけのキメラの死骸の山の上に、瀕死の椎名達キメラが捨てられる。
「あ〜臭い臭い。臭いものには蓋をしないとね♪」


ギギギギ…、

地下のごみ捨て場の重たい鉄の扉を、鼻をつまんで覗きながら閉めるマリア。


ガコン!

扉が閉まれば、ごみ捨て場は真っ暗闇となる。何もかも見えない。己の手足すら見えない。まさに闇。
「アハハハ〜♪」
マリアの高笑いがだんだんと遠ざかっていく地下のごみ捨て場。闇、死骸の血生臭さ、腐敗臭の中。自我を取り戻せた椎名の意識だけがカタカタ体を小刻みに震わせている。殺したいのにこんな瀕死の状況では動くこともままならない。悔しい悔しい悔しい。その意識だけが椎名の中を支配する。
――あんな外道神々に殺されるなんて…絶対に…嫌だ…――

『奏が無事で良かった…。何てったって俺は奏のヒーローだから、な…!』
『友達くらい作れよーこの根暗っ。俺もずっと奏と一緒に居てやりたいけどそうもいかないだろうしさー』

――天人…!!――


ツゥッ…

怒りに震える椎名の頬に一筋の涙が伝う。
――悪魔になってもいい…もう一生人間に…戻れなくてもいい…天人だけ救えれば…。だって僕はもう…――




















その頃のマリアとマルコ。
「あ〜あ。悪魔の力を借りたエース君。人ならざる力を持つ天人君。強力なキメラが造れたと思ったのに残念だわ〜」
「あの程度のキメラなどすぐに生成できます」
「ま♪そうよね♪あの子達の代わりなんていくらでもいるし♪さーてっと!じゃあ飼い主に忠実な御殿×御子柴のキメラの方を此処から移動させましょ〜ね〜♪アドラメレクちゃんに奪われないように〜、」


ドガァン!!

「!?」
爆風が吹き、鉄の扉が木っ端微塵に破壊された。マリアとマルコが振り向く。
灰色の煙が晴れると其処には…
「…あら。どうしちゃったのそのお目々。どっちも悪魔の目になっちゃっているわよエース君♪」
掛け合わされていた動物達の死骸の上に、意識が未だ戻らない天人を抱えている椎名が立っていた。キメラの姿ではなく、本来の人間の姿に戻って。しかしマリアが言った通り、椎名の左目までもが悪魔の目になっていた。それに、椎名の目の下にはヒビキやユタと同じ赤い模様が浮かんでいる。悪魔の証の模様が。
「なーるほど♪悪魔の力を使ってキメラ化を解けたわけね♪でもエース君?天人君意識が戻らないようだからそんな使い物にならないゴミ捨ててから私達と戦ったら?♪」


ピクッ…

椎名の目がマリアを睨み付ける。
「今…何て言ったの…」
「あら♪聞こえなかった?ごめんなさい♪戦闘要員にもならない意識が無いお荷物なゴミ天人君なんて捨てちゃった方が身軽に私達と戦えるわよ〜って言ったの♪ゴミはゴミ箱に捨てないとね♪」


ガァンッ!!

椎名が右手で殴っただけで壁が粉砕。しかし、マリアもマルコも笑顔のまま。
「悪魔の力を使い過ぎた為にキメラ化を解除できた。しかし悪魔の力を使い過ぎたが故に悪魔の力に飲まれて悪魔化してしまったようですね椎名さん。残念ながら君はもう人間には戻れません」
「いいよ…初めから…そのつもりで…悪魔と契約した…から…」
マルコはヤレヤレと肩を竦める。
「ま♪でもそうこなくっちゃ♪殺すなら弱い蛆虫相手より殺し甲斐ある方が楽しめるからね♪」


バキ、バキ…

マリアは爬虫類、マルコはドラゴンの本来の姿になる。化物の姿を現した巨大な2人を前にしても物怖じしないどころか逆に睨み付ける椎名。


きゅっ…、

天人を横たわらせ、天人の右手を強く握ってから、マリアとマルコを悪魔の両目で睨み付ける。
「天人を馬鹿にしたその口…一生開けないようにしてあげるよ…神…!!」





















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