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GOD GAME
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「質問の多い雌豚だな。ヴァンヘイレンの任務だ。イングランドのヴァリレアという神々×神々のキメラを製造し世界征服を目論む組織の討伐でな。俺だけが覚えているのは分からん」
「そっか」
「寧ろ問いたいのはこちらだ」
「えっ?」
アガレスはメアと向き合う。
「お前が何故此所に居る。巨漢と結婚したのではなかったか」
「あ…」
口ごもり、目線を斜め下へ向けるメアを容赦なくジッ…と見てくるアガレスの視線が痛い。
「此処は嫁入りした雌豚に不相応な場所だと思うが」
メアはギュッ…と両手で自分のブレザーに皺が寄る程握る。
「私…私…ね。本当は…」
本当の事を話したいが、話したらマリアによってアガレスやカナ達が殺される…と言われているから口をモゴモゴさせる。
「私っ…、や、やっぱ何でも無いよっ」
「嘘を吐くな」
「ほ、本当…本当に…」
「粗方、真実を他人に吐けばどうにかされると脅かされているのだろう」
「……。アガレス君が居れば…本当の事を話しても怖くない…かな」
しょんぼり俯くメアの頭をポン、と叩く。
「堕天され悪魔化し、キユミと清春に嫌悪された俺に今更恐れるものなど無い」
「えへ…えへへ!やっぱりアガレス君が居てくれると心強いねっ!」
メアは顔を上げ、薄ら頬を伝った涙を手で拭う。
「そうなの。アガレス君が察している通りね。私、本当の事を話したらアガレス君やカナちゃん、御殿さんに椎名君や天人君を殺すって…お姉ちゃんに言われているの」
「やはりか」
アガレスはエレベーターに背を預けて腕組みをしながら、メアの話を聞く。
「私、夏休みお姉ちゃんの聖堂に遊びに行ったよね。その時全てを知っちゃったの…。お姉ちゃんとマルコ神はアドラメレク神の上司にあたる神様なんだけど、アドラメレク神に虐げられているこの現状を打破したくて水面下で今、アドラメレク神討伐を目論んでいるの。でもお姉ちゃん達派閥だけじゃアドラメレク神には敵わないから…。神々のキメラを製造する人間組織ヴァリレアと手を組んで強い神々と神々との掛け合わせのキメラを製造してアドラメレク神を倒そうとしているんだよ。でも本当は、神様が見える霊感体質のバッドマンに姿を見られた口封じの為に、バッドマンに協力してるみたいなんだけど…」
「バッドマン?」
「もう忘れちゃったの?私の結婚相手だよ。それでヴァリレアの創設者幹部」
「……」
「本当はバッドマンの事好きなんかじゃないよ。だって敵だもん。大嫌い。神様のキメラコレクションが趣味なバッドマンのご機嫌とりにお姉ちゃんが勝手に私をバッドマンの結婚相手にしただけ」
「では俺が再三結婚相手について問い質した時お前は嘘を吐いていたのだな」
メアはバッ!と顔を上げる。
「だって!嘘を吐かなきゃ、バッドマンさんはかっこいいよって、結婚できて嬉しいって嘘を言わなきゃアガレス君達がお姉ちゃんに殺されるからだよ!」
「それで」
アガレスはエレベーターの壁から背を離すと、思い腰を上げメアの前に立つからメアはキョトンとしてアガレスを見上げる。
















「えっ?」
「好きでもない敵に手出しされたのか」
「ちっ…違うよ!!バッドマンは私達神様の事を世界征服の良い材料、キメラの良い材料としか思っていないから結婚なんて本当はしてないの!結婚するって事にしてお姉ちゃんが私をヴァンヘイレンから辞めさせたの!だ、だからそんな変な事とか以前に手も触れてないよ!アガレス君と違って世の中のヒト達は変態じゃないから!」
「何だと」
「!」
アガレスの振り上げた右手にメアは叩かれると思い、ビクッ!として強く目を瞑る。


ポン、ポン

「…?」
しかし振り上げた右手はメアの頭をポン、ポンと軽く叩いているだけ。顔を上げたメアの青い瞳には初めて見る優しい顔のアガレスが映っている。
「安心した。ダーシー殿には幸せになってもらいたいからな」
「えっ…!ア、アガレス君今何てっ…!?」

バッ!とメアに背を向けたアガレス。背を向けてはいるものの耳が真っ赤なのが見えるからメアまで顔が真っ赤に染まる。
「ア、アガ、アガ、アガレス君がそんな優しい事言ったら秋なのに大雪が降っちゃうでしょっ!!…あれ?アガレス君左手の指輪…またはめるようになったんだ?」
ふいに気付いたメアに聞かれ、まだ背を向けたままのアガレスが返答する。
「あ?ああ…。キユミの記憶が戻ったんだ。…まだ俺を神だと知る直前の記憶だがな」
「そっかぁ…。……。良かったね!私もアガレス君には幸せになってもらいたいからっ!」
「おい」
「えへへ。真似しちゃった」
















メアは長いツインテールを揺らしてぴょん!と跳びはねてアガレスの隣に立つからアガレスはわざと顔を反らす。
「もう神様の力は無いから昔みたいに人間達を幸せにしてあげる事はできないけど、大切な人と大切な人を結ばせてきた愛欲神ダーシー・ルーダがお祈りするね」
メアは両手を胸の前で組み静かに目を瞑り、祈る。
「アガレス君とキユミちゃんと清春君がずっとずーっと幸せでいられますように」
「……」
パッ!と顔を上げるメア。
「えへへ!叶ったら私のお祈りパワーのお陰だからね!お礼にくまさんのぬいぐるみまたプレゼントしてくれても良いんだよっ!」
「図に乗るな雌豚」
「えへへ〜!ムカつくけどアガレス君に雌豚って言われると私の事覚えていてくれて私独りじゃないんだって感じられるよ!」
「おかしな奴だな。罵られて喜ぶなん、」


ガタン!!

「きゃあ!?」
「な、何だ…!?」
ガタン!!と突如動き出したエレベーター。驚いて思わず膝から崩れ落ちたメアの体を咄嗟に支えるアガレス。ボタンを押していないのに勝手に動いたエレベーターの天井や辺りを見回す2人。
「勝手に動いているよ!?…あ!これ見てアガレス君!私達何も押していないのにボタンが全部付いてる!」
「何」
見ると、エレベーターの階数ボタンが全て点灯している。即ち、押していないのに勝手に全ての階にエレベーターが着く事になっているのだ。
アガレスが顔を上げるとエレベーターの数字は14階を示している。
「ア、アガレス君どうしよう…!私がお姉ちゃんの約束を破ったから怒ったお姉ちゃんがどこかで私達を監察していてきっと…!」
「大丈夫だ」


ギュッ!

ガタガタ震え出すメアの左手を強く握り締める。
「先程話した礼とは違うが」
「え?」


ウィーン…

エレベーターが降下していく機械音だけが不気味に響く。アガレスはエレベーターの扉だけを見て言う。
「今まで独りにさせた詫びにまたあの雑貨屋のくまを買ってやる」
「…!うんっ!」
それは"此処を出よう"という遠回しな言葉でもある。


ポーン、

エレベーターが14階に着き、扉がゆっくり横にスライドして開いてゆく。アガレスの右手を握るメアの左手の力が強くなるから、手を握ったままアガレスはメアの前に立つ。


ガタン…、

開かれた扉の向こうに広がっていたのは。
「…何だ?何も無いぞ」
「えっ?」
メアもアガレスの後ろから顔をひょっこり覗かせる。どんな巨体の敵が待ち構えているかと思いきや、其処には何も無いただの部屋が広がっているだけ。
「拍子抜けだな」
エレベーターを降りるアガレスに繋がれた手を引っ張られて続いて降りるメア。
「ふ〜っ。でも何も無いに越した事は無いよ。エレベーターはただの誤作動かな?」
「コケーッ!コッコッコ!」
「…は?」
「え?に、鶏…?」
突然、何も無い部屋のカーテンの下から鶏の鳴き声で鳴く鶏が2人の方へ飛んできて呆然とする2人。
よく見てみるとただの鶏では無く、頭には冠状の赤いトサカがあるのだが尾は蛇×羽はドラゴン。背丈はアガレスの膝下しか無い。
「何だこいつは」
「コケーッ!コッコッコ!」
「あははっ!くすぐったいよ〜」
鶏はメアに飛び付くからメアは楽しそうに笑う。そんな光景を真隣で眉間に皺を寄せて睨み付けているアガレスは…


ゲシッ!

「コケーッ!!」
「焼鳥にするぞ貴様」
「アガレス君何やってるのー!!」
鶏を踏みつけながらトサカをむしりとろうと引っ張るのだった。





























「う"…、くっそ…、何だ此処は…?まるで力が出ねぇ…」
一方。ヴァリレア幹部に捕らえられたベルベットローゼもこの基地の一室に閉じ込められていた。
赤茶色の壁に鎖でくくりつけられた両手首の手錠と両足首の手錠で身動きが取れない上、基地内に充満するガスの影響で憔悴しきっている。目の下が酷い隈だ。


カツン、コツン…

「う…、誰…だ…?」
暗闇の方からこちらへ近付いてくる足音。憔悴しきっているベルベットローゼはゆっくり目を向けると、やって来た人物に目を見開いた。
「…!お…お前は…!」


カツン…、

やって来た人物は頭や両腕両脚に乾いた青い血痕を付けたまま、ベルベットローゼの前に立ち止まり、ベルベットローゼを冷たい深海のような目で見つめた。
「んなっ…!?何でてめぇが此所に居るんだよ…、まさか…てめぇが捕まっちまったのかよ…?アドラメレク…!!」
「……」
「アドラメレク…!」


ドンッ!!

「ぐあ"ぁ"!!」
現れた途端アドラメレクはベルベットローゼの首を右手で締め付けるから、壁に背を打ち付けるベルベットローゼ。か細い右手だけで締め付けているとは思えない程の強大な力でギチギチ締め付ける。苦しむベルベットローゼの瞳には、静かに怒りが込められた青い瞳でこちらを睨み付けている傷だらけのアドラメレクの姿が。
「ぅ"…、が、ぁっ…!アドラッ…、メレ、クッ…」
「裏切りましたわね」
「っ、なッ…、」
「貴女。このわたくしを裏切りましたわね」
「ち、がッ…、」


ドォンッ!!

「ぐあ"ぁ"!!」
壁にくくりつけられていた両手首と両足首の鎖も破壊してしまう程の力でアドラメレクはやはり片腕のみでベルベットローゼを床に叩き付ける。床に大きな穴が空き、其処にめり込んでいてピクピク…としか動かないベルベットローゼの後頭部を見下しながらアドラメレクは自分の口に右手を添えて嘲笑う。
「まあ何て不様な姿でしょう。まるで人間に踏みつけられ息絶え絶えの蟻のようですわ」
「アッ…、ド…ラ"…、メレッ…、ぐぁああ!!」
前髪を掴んで顔を上げさせたアドラメレクはいつもヴァンヘイレンで人間達に見せる天使のスマイルで何とベルベットローゼの両目を指で突き刺した。


グチャッ!

「う"あ"あ"ぁ"!!」
ドサッ!と倒れたベルベットローゼは、青い血が噴く両目を押さえながら床の上を転げ回る。その様をクスクス楽しそうに天使のスマイルを浮かべたまま嘲笑うアドラメレク。















「クスクス。目玉を潰された程度そんなに転げ回る程の事では無いでしょう?わたくし達神々なら5分と経てば目玉は再生するのですから」


グチャッ!!

「うあ"あ"ぁ"あ"!!」
何度も何度もグチャッ!グチャッ!と柔らかい感触の目玉を指で突き刺してはケタケタ高笑いのアドラメレク。


グチャッ!グチャッ!

「ア"ァ"ア"ア"!!」
「アハハハ!汚い喚き声ですこと!アハハハ!」


ドサッ!

「ハァ…ハァ…ゼェ…、ハァ…」
仰向けに倒れ、両目からドクドク青い血を流すベルベットローゼを見下ろしながらアドラメレクは右足を浮かせる。


バッ!

「…?」
すると、瀕死の筈のベルベットローゼが慌てて身を丸めた。腹部を守るようなその体勢にアドラメレクは首を傾げる。だがすぐに察すると、ベルベットローゼの手を払いのけた。


バシッ!

「あッ…!」
「…まあ。貴女随分と人間の女のようになりましたのね」
「…!!」
アドラメレクが察した事を知り、ベルベットローゼは顔を真っ青にしてカタカタ震え出す。アドラメレクは屈むと、ベルベットローゼの腹部を撫でる。気味が悪いくらいの優しい笑顔で。
「陽の目を見るにはもうしばらく時間が掛かりそうですわね。何ヵ月ですの?」
ガタガタガタガタ…。
不気味なくらい優しい声のアドラメレクの問いに、ベルベットローゼはガタガタ震えるだけで、声が出てこない。
「本来神は土地神や付喪神として産まれますから、神と神で子を体内に宿す事は不可能。けれど神の貴女と、悪魔堕ちしたあの方とならば貴女が子を宿す事は可能ですわ」


ガタガタ…ガタガタ…

「神と人間の子に…次は悪魔と神の子ですの…。清春に次いでまたこの世で初めての子が産まれるのですわね」


ガタガタ…ガタガタ…

「ふぅ…清春の時のようにわたくしはまた悪魔や天使達から笑い者にされるのでしょうね」


ガタガタ…ガタガタ…

「わたくしがあの時どれだけ悪魔や天使達からコケにされて辛かったか…。いつもわたくしの隣に居た貴女ならば、よぉくお分かりでしょうベルベットローゼ?」
「ぁ…ッ、」
ギロッ。アドラメレクの目付きが悪神に変わる。
「どうせロクでもない子が産まれるだけですわ。汚物は汚物らしくわたくしの目に触れる前に排除しなくてはいけませんわね」
アドラメレクは真っ赤な口を大きく開けて笑いながら、ベルベットローゼの僅かに膨らんだ腹目掛けて右足を振り上げる。ベルベットローゼは身を丸めながら両手で腹部を守り、きつく目を瞑る。
「アハハハハ!」
「くれっ…、やめてくれアドラメレク!!」


スパン!スパン!



















「ぁ…っ?」
蹴られる!そう覚悟し、腹の中の子だけでも守ろうとしたベルベットローゼ。しかし、アドラメレクからの蹴りがこなくて何かが切れる音が聞こえたから、ソーッ…と目を開ける。
「…!!」
アドラメレクの背後には、いつの間にやって来ていたのか、ヴァリレア幹部の劉華とミシェルが居た…いや、2人の体だけが其処に立っていた。頭は床に転がっていたから。


バタンッ…!

指令を下す脳が入った頭を切られた劉華とミシェルの体は呆気なく倒れる。
「っ…!?」
「ベルベットローゼに夢中になっているわたくしの背後から忍び寄ろうなんて稚拙な考えはおやめなさい…。このわたくしが人間の稚拙な策略にハマる筈がありませんでしょう…。ねぇ…マリア…?」
真っ赤な口が裂けそうな程ニィッ…と笑いながらアドラメレクは何も無い空間に話し掛ける。
「マ、マリアだと…!?」
「あ〜あ。やーっぱりアドラメレクちゃんだけは騙せないものねぇ」
何も無い空間からスゥッ…と姿を現したマリアにベルベットローゼは息も絶え絶えながら驚く。そんな彼女を見てマリアは喜作に笑みながら手をヒラヒラ振る。















「はぁ〜い♪ベルベットローゼ♪男女な貴女もよ〜うやく女性らしくなったようね♪お子ちゃまの名前はもう決めたのかしら?」
「っ、るせェ…!!マリアてめぇ…!ギャッ!」


ドスッ!

ベルベットローゼの頭を踏みつけるアドラメレク。
「貴女もマリアと同罪の裏切り者でしょう。裏切り者はお黙りなさいベルベットローゼ」
「あら!アドラメレクちゃんったら親友にも容赦無いの、」


ドスッ!

マリアが話しているのも構わないアドラメレク。マリア目掛けて右足を振り落とすが、マリアはニコニコ笑みながら軽く避ける。
「女性が足を振り上げるだなんてみっともないわ♪アドラメレクちゃんの可愛いショーツが見えちゃったわよ♪」
「お黙りなさいマリア…。ダーシー氏の記憶を消させたのは貴女でしょう…」
「いかにも♪」
「わたくしが統率する世界の人間に手を出したらどうなるか分かっていないようですわね…」
「アドラメレクちゃんが統率する世界?元は私マリア・ルーダ様が統率していた世界よ?」
「わたくしに大神の座を奪われた分際で大神面するのはやめてくださる?はんっ!醜い爬虫類雌の分際で」


ピキッ…

マリアは笑顔。なのだが眉間に青筋がピキッ…と痙攣した。
「…そうだったわね。私の本来の姿を知っているのは貴女だけだったわねアドラメレクちゃん…。うふ…うふふふ…そう。醜い爬虫類ねぇ…。言わせておいてあげる♪コレを見たら貴女でも動揺が隠せないでしょうから♪」


パチン!

マリアが指を鳴らすと…


ゴゴゴゴゴ…

地鳴りが聞こえ、地面が揺れる。辺りを見回すアドラメレクとベルベットローゼ。


ドガンッ!!

「!!」
すると、赤茶の石の壁を突き破って現れた化け物。地鳴りの正体はコレだ。


















「フーッ、フーッ!」
天井にまで背の届く化け物は獣のように息を荒くして唸っている。
「何だ…?この化け物は…?」
正体が分からないベルベットローゼ。しかしアドラメレクはこの化け物の事を、真っ青な顔をして尚且つ体をカタカタ震わせて見上げている。そんなアドラメレクの焦りようを、待ってましたとばかりにマリアはニヤリ嘲笑う。
「…?アドラメレク…?何動揺してんだよ…?」
「っ…!」
口を強く噛み締める。


カタカタ…

小刻みに震えるアドラメレクの見開かれた青い瞳には鷹の翼を持ち、蛇の尾と長い舌を持つ、鷹×蛇のキメラ。
「おい?アドラメレ、」
「御子柴ッ…!!」
「!?」
「うふふ♪大正解〜」
「御子柴!!」


ダッ!

アドラメレクは鷹×蛇のキメラに駆け寄るとキメラに抱き付きながら、キメラを見上げる。彼女らしからぬ真っ青な顔をして。声を裏返らせて。











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