[携帯モード] [URL送信]

GOD GAME
ページ:1
「私最近ね。同じ夢を見るの」
「夢?」
文化祭前日の帰り道。
夕陽を背に並んで歩くヴァンヘイレン1A生徒キユミと恋人のレイ。
ピタリ。足を止めて呟いたキユミにつられてレイも足を止め、少し後ろに居る恋人に振り向く。
「知らない田舎の村で私が暮らしている夢。その村の人達はみんなどこか障害を持っているんだけれど明るくて優しくて…きっとアンジェラの街の人達よりとても素敵なんだ」
キユミは下を向き、鞄を前に両手で持ちながら話しを続ける。自分がここ最近よく見る夢の話を。
「そして私にも障害を持ったお父さんとお母さんがいて」
「それは夢の中の話でしょう?だってキユミとヒビキお兄さんは孤児院の生まれだからご両親の顔も名前も知らないんだから」
キユミは頷く。
「うん。でも夢の中ではその人達が私のお父さんとお母さんなんだ。お兄ちゃんはヒビキお兄ちゃんのまま変わらないんだ。けど…」
「けど?」
「夢の中で私には旦那さんがいて、旦那さんと同じ髪色をしたまだ…4歳くらいの男の子の子供がいるの。夢の中でその子はいつも人見知りしちゃって村の人達は優しい人達ばかりなのに隠れちゃうんだよ」
「ははっ。夢の中の子供なのに人見知りなキユミにそっくりだね。まるで現実とリンクしているようだ。で?その旦那さんっていうのは勿論僕だよねキユミ?」
「あ…」
にっこり。優しくて誠実に微笑むレイ。キユミは口を開き、何かを言おうとしたが、にっこり優しい笑顔を浮かべる。
「う、うん。レイ君だったよ」
「良かった。別の人だったらショックで立ち直れそうにもないよ」
「ふふっ。大袈裟だよ」
「ところでキユミ。明日の文化祭の事だけど」
キユミとレイは2人並んで夕陽を背に、楽しげに話しながら下校していった。



























ヴァンヘイレン
文化祭当日―――――

「私明日結婚しますっ!!」
「えぇええ!?」
白雪姫の衣装や台本に小道具が散らかる1E教室で登校してすぐメアが言えば、アガレス以外のクラスメイト全員が目を見開いて驚く。メアはにこにこ。天人はズザザザーッ!とメアの前まで走る。
「ちょちょちょちょっとso cuteメアちゃん!?そんなの天人クン聞いてませんっ!!」
「えへへ。みんなを驚かせたくて前日まで内緒にしていたんだよ!」
「ダーシ、あ、いえ!メメメメアちゃん!!僕も初耳ですよ!!」
「どうして御殿さんが顔真っ赤になるんですか!?」
「メアちゃん!一度その方に会わせて下さい!ご結婚はそれからです!!」
「御殿さんは私のお父さんですか!?」
顔を真っ赤にして力む御殿にメアはびっくり。
「先生〜天人クン超びっくりなんですけど!先生知ってたんですか?」
「あー、昨日の放課後ルディからいきなり言われてな。俺も知ったばっかりだ」
「メアちゃんドッキリ過ぎだよ!!」
頭を抱えながら後ろへ仰け反り喚く天人。
「メアちゃんには素敵な人がいたんだね。私びっくりだよ」
「ごめんねカナちゃん。カナちゃんにも内緒にしちゃってて」
カナはいつもの穏やかな笑顔で首を横に振る。
「うんうん。謝る事は何も無いよ。メアちゃんをずっと守ってくれる人がいて良かった」
「カナちゃん…」
「ただ、明日からメアちゃんがもうずーっとヴァンヘイレンに来なくなるのは寂しいけど…」
「うぅっ…カナちゃぁ〜〜ん!!」


ガバッ!!

泣いてカナに抱き付くメア。
「わわっ?メアちゃん?」
「うっ、ひっく!私もカナちゃんと離れたくなかったよっ!ひっく、でも、でも!」
「イングランドは遠いけどたまに遊びに来てね。みんなが待っているよメアちゃんの事を」
「うぅっ…カナちゃぁん…!」
カナに抱き付いたままひくひく泣くメアの頭を「よしよし」と言いながら撫でるカナ。
















そんな2人を少し離れた位置から見ているアイリーンの眉間には皺が寄っており、尚且つ目を丸めて驚いている様子。
――け、結婚!?天界を追放したダーシー氏を好く神など居ないはずですわ!なら誰がダーシー氏を…!?それにヴァンヘイレンを自主退学するですって!?何か策でもあるというのですか!?…これはマルコや御子柴、清春に調べさせる必要がありますわね――
「怖い顔しちゃって…どうしたの…アイリーン…さん…」
「…!!」
いつの間に。アイリーンの隣に立っていた椎名に声を掛けられるまで気が付かなかったアイリーン。ビクッ!としたがすぐにいつもの天使のようなスマイルを浮かべる。
「怖い顔ですか?そんな顔わたくし一切しておりませんでしてよ椎名様」
「あっそ…」
――キィイーッ!!本当腹が立ちますわ椎名というこの人間!!早く始末しなければ!!――
一方。全く"我関せず"で席に着いて読書中のアガレスの机をバンッ!!と両手で叩く天人。天人がガクンガクン前後に肩を揺さぶっても顔色一つ変えず読書を続けるアガレス。
「おいぃい!お前だろ!so cuteメアちゃんと一番親しいお前がメアちゃんを独り占めしたんだろ!そうなんだろアガレスーー!!」
「え!そうだったのですかアガレス君!でしたら僕このご結婚には大賛成ですよ!」
御殿は顔を真っ赤にしながらアガレスにペコリ、頭を下げる。まるで"娘をよろしく"と言っている父親のように。
「そっかぁ!アガレス君だったんだね。なら私も安心だよ」
「い、いやカナちゃん、御殿さん、天人君あのね…」
勝手に盛り上がる3人に言い辛そうにするメア。
「おいぃいアガレスぅううぅ!!お前は演劇ではアイリーンちゃんのプリーンス!役になって、現実ではメアちゃんのプリーンスですか!あーはいそうですか公私共に充実していますねぇすーーーっごく羨ましいですねぇ良いですねぇ!宣戦布告!天人クン明日からお前に超超超ウルトラマックスハイパー冷たく接するから!OK!?Are you ready?」


パタン…、

アガレスは黙って本を閉じると立ち上がりポケットに両手を突っ込むと、スタスタと教室を出ていこうとする。
「あー!ちょい待て裏切り者ーッ!!」


ガラッ、

教室後ろの扉に手を掛けて半分開けると、アガレスは人をはじめとする1E全員に顔を向けた。
「俺もそいつの婚約者の名前も顔も全く知らん」


ピシャン!


カツン、コツン、カツン…

扉を閉めて教室を出ていったアガレスの足音が遠ざかっていく。しん…と沈黙が起きた1E教室。その数分後…
「えぇええ!?じゃあメアちゃんの婚約者って誰ーー!?」
天人、カナ、御殿の声が綺麗に揃って響く。
椎名は無関心。アイリーンは目を丸めて驚いたまま。
当の本人メアは、にっこり微笑み自分の口の前に右手人差し指を立てる。
「なーいしょ♪」































「1Bお化け屋敷やってまーす!」
「1C喫茶店やってまーす!コーヒーやスイーツもありますよ如何ですかー!」
「どこからまわる?」
「午後に体育館でやる演劇見たいから午前中に店まわっておこう!」
「そうだね!」
ヴァンヘイレン全校生徒と全教師そして外部の人間など、いつも授業中のはずの校内はとても賑やか。皆の表情も、神々との戦いを忘れて意気揚々としている。
一方。出し物の演劇は午後の部からな1E生徒達。
「かなちゃーん!一緒にまわるよーん」
「わ、私?」
「え!?」
1E教室から出てきた天人が椎名の方を見てそう言ったのだが"かな"="カナ"と捉えたカナはびっくりしている。逆に天人もびっくりしてしまったがすぐに頭を掻いて笑い、顔の前で両手を合わせてウインクをして謝る。
「はははっ!ごっめんごめんprettyカナちゃん!俺奏の事を小さい頃からかなちゃんって呼んでいるからつい!カナちゃんの事なのか奏の事なのかごっちゃになるよね〜。紛らわしい呼び方してごめんね!」
「うんうん!私こそ勘違いしちゃってごめんね」
「カナちゃんが謝る必要無い無い〜!お詫びに今度デートしよぐおぉあ?!」
ガツッ!と天人の首を腕に引っかけてズルズル歩く椎名。
「行くよ…天人…」
「ぐえっ…、ちょ…、奏首絞ま…ぐえっ!」
椎名にズルズル引き摺られていった天人を見て苦笑いのメアとカナ。
「カナちゃんカナちゃん!一緒にお店まわろう!」
「ごめんねメアちゃん!私今日他校のお友達とお店をまわる約束…はしていないんだけど来てくれるかどうかは分からないんだけど…。だから今日一緒にまわれないの。本当の本当にごめんね?メアちゃんと明日からは会えなくなっちゃうのに」
「うんうん!大丈夫だよ。カナちゃんのお友達優先にしなくちゃ!でももしそのお友達が用事で来れなくなったら一緒にまわろうよ!」
「うんっ!」
















ばいばい、と手を振るカナが人混みに紛れて見えなくなるとメアはすぐバッ!とアガレスの方を向く。それと同時にわざとらしく外方を向くアガレス。
「アガレス君一緒にまわ、」
「断固断る」
「そう言うと思ったよ!!」
「わたくしも1人でまわりたいので失礼致しますわ」
にっこり。天使のようなスマイルを浮かべ、会釈をして人混みに消えていったアイリーンの背をメアだけはやはり眉間に皺を寄せて見ていた。アガレスはアガレスでポケットに両手を突っ込んでさっさと去って行ってしまう。
「はぁ〜…」
がっくり肩を落として落ち込むメアの肩をポン、と叩く者が。振り向けば其処には優しいまさに神様の笑顔を浮かべた御殿。
「メアちゃんが宜しければ僕と一緒にまわりませんか?」
「御殿さぁん〜!」
チワワのように大きな青い目をうるうる潤ませて何度も縦に頷くメアに御殿はにこっ。と微笑んでいた。




























1年生のクラスがある階。人混みに紛れて1人の割りと身長が高く、黒い帽子を目深にかぶり、パーマをあてた白に近い金髪に大きなサングラスをかけて服装は黒基調でまるでヴィジュアル系バンドマンのような少年がキョロキョロ辺りを見回している。のだが、極力目立たないようにして歩いているようにも見える。
「ナタリーさんにはこの本がおすすめだと思うな」
「本当?わぁ。とても面白そうな小説だね」
「!」
サングラスをかけた少年の視界に飛び込んできた光景は、人混みに紛れて眼鏡をかけていかにも真面目そうな少年とカナが仲良さそうに本の貸し借りをしている光景。
「……」
サングラスをかけた少年はくるり、とカナに背を向けると人混みに紛れて去ろうとする。
「あ!清春さん!?」
「!!」


ギクッ!!

カナに呼ばれたサングラスをかけた少年はあからさまにギクッ!!とする。ゆっくり後ろを振り向けば純粋無垢な笑顔とこちらに手を振るカナの姿があった。
カナに本の貸し借りをしていた読書サークルの少年ロイドは、サングラスをかけた少年清春を見ると以前ハッピーバーガーで睨まれた事を思い出してそそくさとまるで逃げるように去っていった。だからカナは首を傾げて「ロイド君どうしたのかな?」と不思議そうに呟いていたが。
すぐに清春の元へ笑顔で駆けるカナ。
「清春さん!来てくれたんですね!来ないって言っていたので私、」
「シーッ!あんたマジ鈍感だよな!俺ヴァンヘイレンに嫌いな奴らが居るっつったじゃん!!そいつらに俺が来てる事バレたくないワケ!だから人前ででかでか名前呼ぶんじゃねーし!」
ハッ!として自分の口を両手で覆うカナ。
「ハッ!ごごごめんなさい私っ…!」
「ったく…。それと。あんたと一緒に居るとこ見られんのもマジやべーから。人目につかない場所。どっかあんの?」
「人目につかない場所ですか?人目につかない…あ!屋上がありますよ」
「ん、じゃ其処。食いもん買ったら其処」
「はいっ!分かりました!」
にこっ!と優しく微笑むとカナはペコリ会釈をして自分のお昼ご飯を買いに、人混みに消えた。清春も同様に。ただ、辺りをキョロキョロ見回して警戒しながら。
――アドラメレクの姉ちゃんとシイナっつー人間と、ダーシーとアホ親父に見つからねぇようにしねーと!!――



















屋上――――

「わあ!清春さんいつもたくさん食べますね」
文化祭の各学年各クラスの出し物の出店で焼きそば、アメリカンドック、アイス、コーラ、たこ焼きなどなど計12種類各4つずつ購入してきた清春。人1人分のスペースを空けた隣に座るカナは出店で買ったシュークリーム風パンとタピオカジュースのみ。
「あんたが食わな過ぎなだけじゃね?」
「そうですか?」
もくもくガツガツ食べる清春を横で幸せそうに見ながらパンを頬張るカナ。
屋上には清春とカナ以外誰も居らず、校舎の方からは文化祭を楽しむ人々の賑やかな声や音楽が少し遠くに聞こえてくる。綺麗な秋晴れの空が広がっている。
「暢気だよな」
「え?」
「学園っつっても要は軍隊だろ?神を殺す為の。それなのに暢気だよなっつってんの。祭りなんてやってさ」
「でもこのお祭りはわざと人をたくさん集めて、集まった所を狙ってくる神々を攻撃しやすくする為の陽動作戦でもあるんですよ」
「アホだろ。そんなもん神々にとっちゃ見え見えの陽動だし。敢えて今日を狙わねーで意表をついたフツーの日に狙ってくるんじゃねーの?」
ポン!と手を叩くカナ。
「そうですね!そっちの方が可能性ありますよね!すごいですね清春さん!」
「別っつに」
――アドラメレクの姉ちゃんがそう言ってただけだし!つーか…何でまた呼び方が初めの時に戻ってんの!?――
昨日"清春君"と呼んでも良いか?とカナから聞いたというのに翌日の今日"清春さん"に戻っていたので敢えてそこには突っ込まない清春。だが、内心酷くショックを受けている。
――そうなると俺から"カナ"って呼び辛くなるじゃん!!――
昨晩自室で何度もカナという呼び方を練習したというのに…と悔しがり、ガツガツ自棄食いをする清春。
「…?清春さんダメですよ!一気に掻き込んだら消化不良になって体に悪いんですよ」
「うぜぇんだよあんた!!」
「ガーン…!ご、ごめんなさいっ…!」
会話は無いがお互い好きな食べ物を食べて空を見上げ、文化祭の賑わう声を遠くに聞きながらのんびりまったり過ごす。
「清春さんハンバーガー売っていなかったんですか?」
「うん」
「じゃあ今度またハッピーバーガー。行かなきゃですね」
「…うん」
沈黙。だが、気まずい沈黙では無くてお互い落ち着けて安らげる沈黙。
「でも清春さんをさっき見た時びっくりしちゃいました。清春さん髪の色を変えていましたから。金髪すごいですね」
「コレ一日染めだから明日には落ちる系」
「そうなんですか?あとパーマも素敵ですね」
「俺がファンのバンドのボーカルの髪型真似したんだし」
「すごいですね。そのバンドの歌気になります!」
「イーよ。今度CD持ってくるし」
「楽しみです!あと変装してきていたのでびっくりしちゃい、」
「別に!あんたが変装してきたら?って言ったからそれに従ったってワケじゃねーし!勘違いすんなよブス!!」
「ふふふっ」
「な…、何笑ってんだよ!」
「清春さんが来てくれて本当に良かったです!来てくれなかったらどうしようって昨日夜寝れなくて…」
「バッ…バッカじゃねーの!たかがそれくらいの事で!つーか!今日来たのだって超超チョー暇だったから暇潰しだし!!」
「それでもすごく嬉しいです!」
「〜〜〜!あんたやっぱりマジうぜーわ!」
「そ、そんな〜…!」
ガーン!まるで頭の上にタライを落とされた状態でシクシク凹むカナの隣で清春が耳まで真っ赤にしていた事を、カナは知らない。



















「そのアイス何味ですか?」
カナは興味津々に、清春が食べようとしたカップのアイスを見ている。
「メロン。食う?」
「良いんですか?」
「イーよ」
スプーンに一口分のアイスをすくい、清春がカナの口元までスプーンを運べばカナはギョッ!として顔を真っ赤にし、目をぐるぐる回して恥ずかしさ全開。
「いえいえいえ!!そそそそんなっ!!」
「は?何キョドってる系?」
「だだだだってそそそんな!!」
「は?何だよ!はっきり言えよ!うじうじマジうぜーんだけど!」
「だだだだってそそそんな!あーんしてもらうなんて恥ずかし過ぎてできませんよ〜〜!!」
「!!」
そこで鈍い清春もようやく気付き、顔を真っ赤にして目をぐるぐる回して恥ずかしさ全開。カナと同じ表情になると、差し出したスプーンをバッ!と引っ込めようとする。
「は、はあ!?だだだ誰があんたみてーなブスにそそそそんな事するかよ!!自惚れるのもいい加減に、」


ボトッ、

「あ"」
引っ込めようとしたスプーンに乗ったアイスが屋上のアスファルトの上に無惨にも落ちてしまった。2人揃ってアイスを見てからゆっくり顔を上げて顔を見合わせる。
「ぷっ!あははは!チョーウケる!!」
「あはは!コントみたいでしたね!」
お互い顔を赤らめながら楽しそうな笑い声が屋上に響いた。
「そういえばあんたのクラス何やる系?」
「私のクラスは1Eなんですけど午後から体育館で白雪姫の劇をやるんです!」
「ふぅん。あんた何役?」
「秘密です!見てからのお楽しみですよ」
「ぷっ!うぜー」
口ではそう言いつつも楽しみそうにして笑う清春。

















「じゃあ私、今から劇の最終打ち合わせに行かなきゃいけないので…」
そう言いながら立ち上がろうとしたカナの右手がたまたま清春の左手に触れてしまった。


バッ!!

目を見開き顔を真っ赤にして咄嗟に素早く手を引っ込める2人。
「ひゃあ!?ごごごごめんなさいっ!!」
「バッ!バッカじゃねーの!?さ、ささ触んじゃねーよ!気を付けろよブス!!」
「本当にごめんなさい!ごめんなさい!!」
ペコペコ平謝りなカナと、外方を向く清春。
「ま、また放課後此所に来ますから!」
そう言い残してパタパタと去っていったカナ。
屋上に1人残った清春は、たった今カナとたまたま触れ合ってしまった自分の左手をぎゅっ!と握る。耳まで真っ赤にして目をぐるぐる回して。
「マジやっべー…!今日左手洗わないでおこうっと…!!」



















一方、屋上を出て階段を降りているカナも清春と全く同じで耳まで真っ赤にして目をぐるぐる回して自分の右手をぎゅっ!と握っていた。
「どどどどうしよう!たまたま触れちゃっただけなのにすごくドキドキしちゃったよ〜!…今日は右手洗わないでおこうっと…」
「あ!居た〜カナちゃん!」
「メアちゃん!」
階段を降りていいたら廊下からカナを呼ぶメアが居た。急いで階段を降りるカナ。
「カナちゃん何処行ってたの!ぷんぷん!」
「ごめんねメアちゃん。朝話してたお友達が文化祭に来てくれたから一緒にお話してたんだよ」
「そっかぁ!お友達来てくれて良かったね」
他の生徒は午後の部に体育館で行われるバンドライブに向かっていて、辺りにはメアとカナしか居ない。
「メアちゃん一緒に回れなくてごめんね。今日でメアちゃんヴァンヘイレン最後なのに」
「うんうん!気にしないで!御殿さんと一緒に回ってたの。御殿さん今演劇の最後の打ち合わせで体育館先に行っちゃったけど」
「そっかぁ」
「なぁ。そういえば体育館って何処?つーか何?」
屋上の方から階段を降りてきた清春の声がして、カナは振り向く。メアは聞き覚えあるその声にギョッ!と目を見開くと…
「清春さん!」
「き、き、清春サン!?」
「うげっ…!?」
カナを間に挟んでだがばったり鉢合わせてしまったメアと清春。ギョッ!と目を見開く2人の間に立っているカナは首を傾げている。
「あ!メアちゃん紹介するね。この人は前お話しした夏休みにできたお友達…え、えっと…こ、こここ恋人の清春君ですっ!!」
「こっ、恋人!?」
顔を真っ赤にして照れるカナ。メアは更に驚く。
「清春さん。この人は私が前お話しした私に元気をいつもくれる親友のメアちゃんです!」
「し、親友!?」
清春もギョッ!として更に驚く。
向かい合い、お互い口角をヒクヒクひきつらせて苦笑いを浮かべながら、カナには顔見知りな事がバレないよう目と目で会話をするメアと清春。
――何であんたがコイツの親友なんだよ愛人ダーシー!!うぜぇんだよ失せろ雌豚!!――
――き、清春君そういう口の利き方良くないと思うよ〜…?――
――上から目線とかマジうぜぇ!!さっさとコイツと縁切れハゲ!!――
「…?2人共怖い顔してどうかしたの…?」
「ななな何でもない!!」
ニコッ!とカナに作り笑いを浮かべて同じ言葉を言ってしまったからまたお互いの間にバチバチ火花が散っていた。




















それから清春と別れてメアと体育館へ歩くカナ。
「で、でも驚いちゃったなぁ〜。カナちゃんいつの間に彼氏ができたの?」
「き、昨日だよっ!」
「そ、そっかぁ〜」
――しかもその相手がよりによって清春君だなんて…まいったなぁ…――
苦笑いのメア。カナは恥ずかしさ全開。
「私戦えないからって逃げてばかりで医療班にばかりなっていたけどね。清春君を守りたい。だからこれからは戦闘訓練も受ける事にするんだよ」
「戦闘!?ダメだよ!カナちゃんに危ない目合わせられないよ!!」
「でも私もう目の前で失いたくないよ」
「…!そっか…。カナちゃんのお父さんとお母さんと弟君は神々に…。カナちゃんの気持ちも知らずにごめんね」
カナは首を横に振る。
「うんうん。メアちゃんは何も謝らなくて良いよ。私これから頑張るね。ヴァンヘイレンを抜けたメアちゃんの住むイングランドにまで神々の刃が向かないように強くなって戦うね」
「カナちゃん…」
ぎゅっ!とメアの右手を握れば、メアも強く握り返してくる。
「メアちゃん。離れても私の事忘れちゃ嫌だよ」
「忘れるわけ無いよ!!だっていつもいつも明る過ぎてうるさい奴って言われてお友達がいなくて仲間外れだった私にできた初めてのお友達だもんカナちゃんは!私の事も忘れちゃダメだよカナちゃん!?」
「忘れるわけ無いよ」
「絶対ぜーったいだよ!?」
「うん!」
「じゃあ指切りげんまんしようっ」
「指切りげんまんってなぁに?」
「日本に伝わる約束を守る為のおまじないだよ。御殿さんから教わったの。指切りげんまんー嘘ついたら針千本飲ーます。指切ったっ!」
楽しそうに笑い合うとメアとカナは繋いだ両手を前後に振りながら仲良く体育館へ歩いていった。




















その頃。
人も疎らになった校舎内をジーンズのポケットに両手を突っ込んで1人歩く清春。
「はぁ…。何で親父の愛人ダーシーがカナの親友なんだよ…。あいつどこまで俺に関わりゃ気が済むんだよ。マジうぜー…」
「午後からは体育館で1Eの白雪姫をやるそうだよ」
「じゃあ見に行こうか」
清春の脇をヴァンヘイレンの制服を着たカップルが一組楽しそうに話しながら歩いていく。何気無くそのカップルを目で追っていた清春の目が見開く。
――母さん…!?――
そのカップルが1Aのレイとキユミだったからだ。
しかしキユミもレイも清春の事には気付かず、体育館へと歩いて行ってしまった。
1人ポツン…と廊下の真ん中で立ち尽くし、呆然とする清春の青い瞳には仲睦まじく幸せそうに手を繋いで笑い合うレイとキユミの姿が映っていた。


ギュッ…!!

清春は右手を強く握り締める。ポタ…ポタ…と青と赤の混ざった血が滴る程強く…。




















更にその頃。
人の来ない視聴覚室で、窓の外をパタパタ飛ぶ1羽のコウモリと話しているのはアガレス。このコウモリはベルベットローゼの本来の姿。
短いキスを終えると、アガレスはベルベットローゼの口に人差し指を添える。
「続きは帰宅後だ」
「うるせーんだよ!アホ弟子てめぇいつからそんなキザ野郎になりやがった!」
そう口では切り返しつつも真っ赤になるベルベットローゼはパタパタ飛ぶ。




[次へ#]

1/2ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!