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GOD GAME
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「へ、変装とか…。あ!そうだ!その嫌いな人達に清春さんだと気付かれないように変装して来るっていうのはどうですか!?」
「何で俺があんたの言う事に従わなきゃなんねーの」
「うぅっ〜そうですよねごめんなさい…」
「……」
しょんぼり落ち込むカナをチラッと見てから清春は「ん」と言って道端の店を指差す。
「え?」
「アレ。食う?」
清春が指差した店は、露店のクレープ屋。
「美味しそうですけど…私さっき食べた夕ご飯でお腹いっぱいで…」
「あっそ」
「いらっしゃいませー」
「バナナクレープ1つ」
清春がクレープを頼んでいる隣でカナが、ショーウインドウに展示されたクレープの食品サンプルを眺めている。すると店員が出来立てのクレープをにこやかに清春に手渡す。
「バナナクレープお待たせ致しました。通常420円ですが、今日はカップルdayとなっておりましてカップルでお買い上げされたお客様には割引きましてお会計350円になります」
「カカカッ…カップル!?」
「?」
飛び上がって真っ赤なカナが驚くから店員が首を傾げる。
「わわ私達ただのお友、」
「はい。350円」
「ありがとうございましたー」
動揺するカナとは対照的に、カップルと間違われても全く動揺せずさっさと支払う清春はクレープを食べながらさっさと行ってしまう。だがカナはまだドキドキしたままクレープ屋の前で立ち尽くしているから、清春が歩きながら振り向く。
「何ボサッと突っ立ってんだよ」
「…ハッ!ご、ごめんなさい!」
パタパタと慌てて清春の後を追い掛けるカナだった。






















ヴァンヘイレンが近くなればなる程閑静な住宅街に入る。人気の無い住宅街にジー、ジーと街灯の灯りの音と2人分の足音だけが響く。
ドキドキ。
まだ先程の件でドキドキと顔の火照りが止まらないカナ。隣で清春はクレープを食べながら平然としている。
「ご、ごめんなさい!」
「何が」
「わわ私みたいなブスとカカカッカカカッカップルだと間違われてしまって本当にごめんなさい!!」
「割引きされたんだからどーでもいーし」
――あ、あれ…?てっきり"マジめーわく。消えろよブス!"って言われると思っていたんだけどな…――
予想外の返事にキョトンとしていたら、もうヴァンヘイレンに着いてしまった。
「あ…。あ、ありがとうございました!送ってくださって」
「だから同じ方角に寄る店があるっつったじゃん」
相変わらずツンツンしている清春がクレープを食べ終え、再びポケットに両手を突っ込んで去って行こうとする。
「あああのっ!これ!おおお手紙書いたんです!よよ良かったらいいい今読んでもらえませんか!?」
ズイッ!と清春の顔の前に真っ赤な顔のカナが手紙を差し出す。清春の顔が見れないカナは、手紙を受け取ってもらえるか不安でいっぱいだ。


カサッ…、

「!」
すると自分の手の中から手紙が離れていった感触に目を見開く。清春は手紙を受け取ってくれて、早速開いている。だからカナは清春と向き合ったままだが下を向く。ドキドキドキドキ。
――し、心臓の音って外に洩れないよね…!?――


















清春が読めるように簡単な文字で書いた手紙。手紙の文章を目で追っていく清春の目が大きく見開く。
カナの方を見たが、緊張をして肩が上がりっぱなしのまま下を向いている。だから今自分がどんな表情をしてもカナに見られないと分かった清春。顔を真っ赤にして左手で自分の口を覆う。カナからの手紙の内容は…
【いつも仲良くしてくださり本当にありがとうございます。清春さんと一緒に居ると過去の悲しい事を思い出さなくなるくらい楽しくて時間があっという間に過ぎちゃいます。突然の事でごめんなさい。もし迷惑でなければ私とお付き合いしてもらえませんか…?清春さんの事が大好きです】
――やべー…やべーやべーマジやべー!!何でいきなり!?今日なんだよ!?俺心の準備してねーし!つ、つーか生まれて初めて告られた…やべー…!――
カナ以上にドキドキしているし動揺しているし、恥ずかしいのに嬉しくて気を抜くと顔がにやけてしまう清春。口を開き、カナに返事をしようとする。だがピタッ…と口の動きが止まる。
――でも今俺が返事をしたらコイツはどうなる?俺はコイツと一生友達でいるって決めた筈だろ。嫌いになるって決めた筈だ。だってそうじゃないと…――
そこで清春の脳裏ではアドラメレクとマルコと御子柴や他の神々が血塗れのカナを抱える嫌な映像が浮かんでしまう。
そして低級神々に散々罵られてきた言葉を思い出す。
――人間ヲ愛セバ、神ノ血ヲ引く半端者ノオ前ハ、父親ト同ジ末路ヲ辿ルコトニナルゾ――


ギュッ…!

カナからの手紙を強く握り締め冷や汗を伝わせ、苦笑いを浮かべた。



















「ごめん」
清春の一言にカナは目を開く。下を向いたままだが、たった今まで真っ赤に火照っていた全身の熱が一瞬にして消え去る。秋の冷たい夜風がいつもよりうんと冷たく感じられた。
カナがゆっくり顔を上げると今度は清春が下を向いていた。表情が見えない。だが逆にカナにとっては良かった。今は清春の顔を見れないから。カナはいつもの穏やかな優しい笑顔を浮かべる。
「そ…そうですよね!私馬鹿でした!清春さんみたいに街を歩けばみんなが振り向いちゃうくらいのかっこいい人に私みたいなブスが…。気分を悪くさせてしまってごめんなさい…。私清春さんに言われたように自惚れていました。清春さんが一緒に遊んでくださるから…って勝手に1人で期待しちゃっていました。本当にごめんなさい」
「……」
「それに、私が清春さんを好きになって告白をしたら"不浄な感情"として私と…清春さんまで神々に狙われちゃう事…分かっていたのに…。清春さんの事が大好きなら清春さんを好きになっちゃいけないって事分かっていたんですけど…。嫌いにならなくちゃ嫌いにならなくちゃって思っていたんですけど…嫌いになんてなれ…なくって…。寧ろ…清春さんの事考えれば考える程っ…怖くなっちゃってっ…ぐすっ…、」
下を向いて目を強く瞑り、鞄を前に持ってポロポロ涙を流し出すカナ。清春は相変わらず下を向いたまま。
「もし…もし万が一清春さんとお付き合いできたとしても私が告白してお付き合いをしたせいで…ぐすっ…、神に…不浄な恋愛関係としてっ…ぐすっ、清春さんも殺されちゃうかもしれないって…わ、分かっていたのにっ…私っ…気持ちを止められなくてっ…ご…ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!」
深く頭を下げて謝るカナはずっと頭を下げたまま上げない。ポロポロ涙が頬を伝い、アスファルトに染みを作る。
「わ、我儘なんですけどっ…わ、私と…こんな私とこれから…も…ぐすっ、お…お友達でいてく…くれませんか…?」
「……」
「も、もう、好きだなんて一生言いませんっ…。だからっ…。私っ…これから清春さんと会えなくなっちゃうと思うと…怖くてっ…、良かったら…お友達のままで…絶交しないでほしいんです…。でも…我儘です…よね…?ぐすっ…」
下を向いたままのカナ。
清春は口を開き何かを言おうとしたがギュッ…と唇を噛み締めて、言おうとした言葉を飲み込む。
一方のカナは下を向いたまままたペコリ頭を下げると
「今まで…仲良くしてくださり…ありがとうございました…」
そう弱々しく泣き声で言うとヴァンヘイレンの方を向き、清春に背を向ける。ヴァンヘイレンの門を潜り、門を閉めようとする。
「俺もあんたとおんなじなんだよ!!」
「えっ…!?」
涙で濡れて真っ赤な目のカナが驚いて顔を上げ、振り向く。清春は真っ赤な顔をして口をへの字にする。やはりカナの事は見ずに。

















「あんたの事がマジで大事ならあんたと付き合いたいとか思っちゃいけねーし、あんたに告っちゃいけねーって俺も思ってた。もしも万が一付き合えた時、俺が告ったせいであんたまで恋愛感情を不浄と見なす神にぶっ殺される。だからあんたの事嫌いになろうって毎晩毎晩努力したよ。今日みたいにこうやって友達として隣歩けたらそれで良いんだって自分に言い聞かせてた。けど!!あんたは俺の事…す、好きって言ったよな?!て事はだぞ?!あんたは万が一神に狙われても俺と死ねる覚悟があるんだろ!?」
カナは胸を両手できゅっ、と締め付けて涙をポロポロ流しながら大きく頷く。
「はいっ…!そ、それくらい清春さんの事が好きなんです!!」
「はっ。相手が死ぬ可能性がある事分かっててかよ。とんだ自己中だぜ。あんたと…、」
清春はスウッ…と息を大きく吸い込み、カナの目をしっかり見てビシッ!とカナを指差した。
「俺と付き合って下さいっ!!」


ポロッ、ポロポロッ…

カナは自分の口を両手で覆い、今までで一番大量の涙を溢れさせ、頷いた。
「は、はひっ…!勿論でふっ…!!うっ…、ひっく、ひっく!」
泣き過ぎてうまく喋れず、ポロポロポロポロひっきりなしに涙を流して口を両手で覆ったまま泣くカナ。あまりにもカナが泣くから清春は心配そうに顔を覗き込もうとする。



















「お、おいあんた泣き過ぎじゃね?」
「だって…だって私ブスで地味でノロマだからっ…!清春さんみたいにかっこいい人の恋人になりたいだなんて…ひっく!烏滸がましい事だって…ひっく!」
「ブスで地味でノロマなのは変わんねーし」


ガーン!

頭にたらいを落とされた気分なカナはショックを受ける。
「そ、そうですけどっ…!」
「あんたはブスだし地味だしノロマだけどす、好きになっちまったんだし!!」
ぶわっ!
更にまた泣き出すカナに清春はギョッとする。
「き、きよはるさぁ〜ん!ひっく、ひっく!」
「な、何だよ!!泣いてばっかりいんなよ!やっぱりマジうぜぇなあんた!」
「わたし、私っ!頑張ります!医療だけじゃなくてヴァンヘイレンでしっかり戦闘力をつけて頑張りますっ!清春さんを神々から守れるように頑張りますからっ!!」
「フツーに無理っしょ」
「そんな事やってみなきゃ分かんないですよっ!ぐすっ、ひっく…!き、清春さん!」
「な、何だよ!だから泣き止めって何度も…、」
「明日も明後日も1ヶ月後も来年も再来年もずっとずっと守りますから!!もう毎日がつまらなくていつ死んでも良いなんて言わせないくらい私が清春さんを幸せにしますからっ!!」
「…!」


ポロッ…、

咄嗟に口を右手で覆う清春。彼の右頬を一筋の涙が伝えば、バッ!と慌てて背を向ける。
「なっ…?な、何だよコレっ…!マジで意味分かんねーしっ…!何で俺泣いてっ…、あ"ーもう!俺帰る!!」
「えっ!?き、清春さん?」
カナの脇をダッシュで走り去ってしまう清春を目で追う。
「あの、清春さん!」
「あんたの事!」
「えっ?」
ピタッ。立ち止まった清春は相変わらず口を右手で覆い隠しながらカナの方を振り向く。目が真っ赤で右目からは一筋の涙が伝った跡があるが。
「…今からカナって呼んでもイーい?」
「…!は、はいっ!わ、私も…!清春君って呼ばせてもらっても良いですか!?」
くるっ。
「あ、あれっ!?」
返事はせずにカナに背を向けて走って行ってしまう清春。
「あ、あの!清春さ、」
「イーよ!カナ!!」
「!」
清春は背を向けて走り去りながらも、背を向けたままカナに右腕を振ってそう返事を叫んだ。だからカナも目を真っ赤にして涙をまだ流しながらも満面の笑みで清春に右腕を振った。清春は背を向けているから見えていないがそんな事は気にせず。
「ありがとう清春くん!」
ばいばい、とは言わないが大きく腕を振りながら走り去って行った清春の姿が闇夜に溶け込むように見えなくなる。


きゅっ…、

カナは自分の胸に両手を添えた。
「清春君を守る為にも私も戦えるように頑張らなくちゃ。天国のお父さん。お母さん。ケイタ。私、頑張るから。見守っていてね」

















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