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GOD GAME
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一方の清春も、まさかのカウ神巨大化には見開いた黒目が泳いでしまい、怯んでしまう。
「なっ…、ざ…ざけんなよ…?中級神の分際で…こんなの…聞いて…、」
「清春さんに手を出さないで下さい!!」
「!?バッ…、何やってんだよあんたは!!」
ガタガタプルプル震えて今にも腰が抜けてしまいそうなのにカナは清春の前に立ち、両手を広げる。見えない敵を威嚇して。
倒れたまま立てないながらも清春はカナの脚を掴んで何とか逃がそうとするのだが頑固なカナは動こうとせず。
「何やってんだよあんたは馬鹿か!?馬鹿だろ大馬鹿ヤローだ!!救護班の分際で戦える相手じゃねぇんだよ!!」
「そうだとしても!!私が相手をしている間で少しは時間が稼げます!!その間に逃げて下さい!!」
「ざけんな!!あんたが逃げろっつてんだよ!耳ついてんのかボケ!!」
「大切なお友達が死んじゃう事は自分が死ぬより辛いんです!!」
「…!!」
「ギャーギャー煩いんだよ半端者!人間!妖精!!」
グワッ!と巨大化したカウ神が襲い掛かってくる。カナは目を強く瞑る。清春は血が溢れ目眩がする激痛を唇を噛んで堪えて立ち上がり、カナを抱き寄せる。しかしこれではカウ神に対抗できず、2人まとめて死ぬだけ。
「逃げて下さいって言ってるじゃないですか!!」
「俺もあんたが死んだら自分が死ぬより辛れぇんだよ!!」
「ミ"ー!!」


ブシュウ!!

「うぎゃぁああ!妖精の分際がぁあ!おれの目を!おれの目を!!」
何と、メルは小さいながらもカウ神の右目に突進してカウ神の右目を潰したのだ。右目から青い血を噴いてドスン!ドスン!暴れるカウ神。カウ神の青い血が土砂降りの雨のようにバシャバシャ!と天から降る。

















「ナイスだウサギ!!」
その隙を。清春はカナから放れると腹を左手で押さえながら右手で槍を持ち、タンッ!と外壁をバネ代わりに高く飛び上がり、カウ神の目玉目掛けて槍を振り上げる。


ズキッ!

「ぅ"ぐっ…!」
その際開いた腹の傷口から血が滲み、激痛に顔が歪むが唇を噛み千切って痛みを堪える。
清春が飛び上がったのと同時にカウ神は左目を見開き、巨大化した樋爪をブンッ!と振る。しかし巨大化したせいで動きが鈍くなったカウ神。
清春は屈んで回避し、カウ神の体の上を走り、残りの左目に槍を突き刺した。


ドスッ!!

「うぐぐああぁあぁああ!!」
両目の視力を失ったカウ神の頭に槍を突き刺し、ぐぐっ、と下へ槍を射し込みそのまま真っ二つに斬った。
「うぐぐああぁあぁああ!!マルコ様ぁあああ!!」


ドスーンッ!!

辺りの大木や公園の遊具の上に、真っ二つになったカウ神が倒れる。


ドロッ…ドロドロッ…

真っ二つになったカウ神の体内から溶岩のように流れ出る青い血が辺り一帯に波のように押し寄せてくる。
「きゃ…!?神の血?」
カウ神の姿は見えないが血は見えるカナの腰まで血の波が押し寄せ、カナは身動きが取れない。
「ミー!ミー!」
そんなカナの髪を口で引っ張ってカナを助けようとするメルだが、メルの力だけでは無理だ。
「メルちゃん良いよ!私の事は良いから!メルちゃん逃げて!」


ピカッ…!

「え?」
すると辺り一帯に白い光が広がり、眩しくてカナが一瞬目を瞑ってすぐ開いたら…
「あ、あれ!?血の海が消えてるよメルちゃん!?」
カウ神の体内から流れる血の海が綺麗に消えていた。しかし、カナの腰に青い液体が付着しているから先程の出来事が夢では無かった事を意味する。

















「ミー♪ミー♪」
嬉しそうにカナに頬擦りをするメル。
「あははっ!くすぐったいよメルちゃん!あはは!」


ザッ…、

「あ…!清春さん!」
カナの前に戻ってきた清春は腹部にシャツを巻いて止血し、額の血は止まったよう。だが痛そうに足を引き摺りながら歩いてくる。カナは駆け寄りながらバッグの中から包帯や消毒を取り出す。
「ま!待って下さい今手当てしますから!…あ、れ…?青い…血…?」
「…!!」
バッ!と慌てて腹を隠し、背を向ける清春。しかしカナは見てしまった。赤と青の混ざった血が滲む清春の腹部を。
「き、清春さんあの…!」


ドクンドクンドクン!

背を向けている清春の鼓動が速く高く、まるで口から飛び出しそうな程鳴る。
――ヤバいヤバいバレるバレる!!――
「清春さんあ、あのっ!」


ドクンドクンドクン!

清春は強く目を瞑る。
――ざけんなざけんなマルコのクソジジィ!あんたが刺客なんて送りやがるからこんな事になったんだそマジざけんなざけんな!――
「清春さんっ!!」
「おわぁあ?!」


バシッ!!

腹部に巻いていたシャツを取り、背後からカナが腹部の上から包帯をきつく何重にも巻き付け出した。
「痛でぇえええ!おま、ちょ、痛でぇええ!!ヤメロヤメロ雌豚がぁあ!!死ぬ!死ぬ死ぬ!!」
「止血しない方が死んじゃいます!!我慢して下さい!!」
「死ぬ死ぬ死ぬ!!ぐぁああああ!!」



















パタン…、

「はー、はー…」
包帯を巻き終えると清春はげっそりして地面にうつ伏せで倒れる。
「鬼畜雌豚が…、はー、はー…」
「でも今のは応急処置です!お腹の傷が酷いのでこのままだとばい菌が入って化膿しちゃいますから、ヴァンヘイレンに来て下さい!治療します!」
「ヤだ」
「やだじゃダメなんですよっ!?死んじゃうんですよ!?」
「このくらい…はー、はー…あんたらと違って死なねーんだよ…俺は…」
「でも!神から受けた攻撃で神の青い返り血も付着していますからその血がばい菌だらけかもしれないですよ!」
「…!」
――コイツ、青い血は俺の血じゃなくて神の返り血だと思ってんの…?…はっ、コイツがとんだ馬鹿で良かったし…――
そうと分かれば不安が無くなった清春はムクリ、と上半身を起こしてその場に胡座を組む。
「あわわ!ダメですよ!横になっていなきゃ!」
「大丈夫だっつってんだろこのくらい。それに俺ヴァンヘイレンにはチョーチョーー嫌いな奴らが居るから死んでも行かねーし」
「でも傷が!」
「うっぜぇな!何べんも同じ事言わせんじゃねーよ雌ぶ、」
「ミ"ー!」


ガツン!

「痛ってぇー!!何だよウサギ!!」
カナをいじめたと思い込んだメルは何回も何回も清春の頭に頭突きを繰り返すから張り合う清春。カナはあわあわしてメルを抱き締めて何とか止めさせたものの、清春とメルは未だ睨み合っていて2人の間にはバチバチと火花が散っていた。
「本当に大丈夫なんですか…?」
「大丈夫だっつってんだろバーカ」
「ミ"ー!」
痛みが落ち着いてきた清春は息を吐く。その隣に人1人分のスペースを空けてちょこん…と体育座りをするカナ。
「でも驚きました。清春さん神様が見えて武器も出せるんですね」
「……」
「また助けて頂いて本当にありがとうございました」
ペコリ。頭を深く下げるカナを見ず、外方を向く清春。
「清春さんならヴァンヘイレンに入れるんじゃないですか?」
「嫌いな奴らが居るっつったじゃん」
「でも…」
「それに姉ちゃんがヴァンヘイレン大嫌いだからぜってー入れさせてもらえねーし」
「お姉さんがいるんですか?」
「は?あー…血は繋がってねーけど」
「清春さん一人っ子な感じがしてたのでちょっとびっくりです」
「それどういう意味だよ」
「ふふっ!」
「マジうぜー」
口を押さえてクスクス笑うカナ。
「血が繋がっていなくても清春さんのお姉さんなら綺麗な人そうですね。お洒落さんで」
「綺麗っちゃー綺麗だけど性格チョー悪いし。優しそうに見えてぶっちゃけ気に入らない奴ぶっ倒すしてんけーてき高飛車お嬢だし」
「そうなんですか?」
「まーな」

















ホー、ホー…
梟の鳴き声でハッ!としたカナが携帯電話を見れば、時刻はすっかり22時をまわっていた。立ち上がるカナ。
「もうこんな時間!宿舎の門が閉まっちゃう!」
ペコペコ頭を下げるカナに顔は向けず、地面に胡座を組んだままの清春。
「今日も助けてくださり本当の本当にありがとうございました!!傷、本当に無茶しないで下さいね!?お家帰ったらすぐ病院に行って下さいね!?」
「だから大丈夫っつってんだろ…」
「じ、じゃあ!私はこれで!おやすみなさい!」
背を向けてパタパタ走っていくカナ。
「明日」
「え?」
また。これで何度目か。カナが帰ろうとすると声を掛けて引き留めようとする子供のような清春のやり方。カナもカナで立ち止まって振り向くから悪いのかもしれないが。
「明日はでぱーとって所教えてよ」
「ごめんなさい!明日から遊べないです!」
「は?」
パンッ!と顔の前で両手を合わせて謝るカナからのまさかの"遊べない"発言に清春は振り向き、目を丸める。
「何でだよ!?」
「今日で夏休みが終わりで明日から学校が始まるんです!だから任務がいつ入るか分からないので遊べないんですごめんなさい!」
「任務無い日いつ」
「分からないです…いつ神様が人間を襲うか分からないですし、外国への任務もよくあって、お休みが突然潰れちゃう日もよくあって…」
「……」
「だから本当にごめんなさい!でもこの一週間清春さんとお友達になれて遊べて本当に楽しかったです!また何処かで会えたら遊んで下さいね」
「……」
「おやすみなさい」
ペコリ。頭を下げるカナ。
「待ってるし」
「え?」
「いつもの場所で待ってるし。だから暇な日来りゃイーじゃん」
「え!?でもそれが一年後になっちゃうかもしれないんですよ…?清春さんに申し訳無いですよ!」
「俺がイーっつってんだからイーんだよ。うぜぇな」
下を向いて地面に指で落書きをし出す清春をポカーンと見ているカナ。


















「いつもの場所何処か分かる?」
「え…は、はいっ!駅前ハッピーバーガーの」
「窓際」
「隅の」
「2人掛け席」
"2人掛け席"の部分だけ2人声を揃えて言ったから、沈黙の後…
「ぷっ!」
「ふふふっ!」
2人は笑い出してしまった。
「アハハ!うぜー!何声揃えてんだよあんた!マジうぜーんだけど!アハハ!」
「ふふふっ!清春さんと息ぴったりで面白くて笑っちゃいました!ふふふっ!」
楽しそうに笑い合ってからカナは改めて頭を下げ、清春はまた外方を向く。
「本当にありがとうございました。今度は清春さんが神様に攻撃をされたら私が助けますね!」
「そーいうの無駄な足掻きっつーんだし」
「そんな事無いですよっ!…じゃあ、おやすみなさい。傷、お大事にして下さいね」
頭を下げて今度こそ帰っていくカナ。
「あんたさ」
「?」
振り向くカナ。珍しく清春がこちらを向いていた。
「暇な日あったらぜってー来いよ。無視すんなよ」
「しませんよ〜!私も…わ、私も清春さんとまた遊びたいですからっ!!」
「っ…!さっさと帰れよブス!!」
「お、おやすみなさい!」
パタパタ!急いでヴァンヘイレンへ帰っていったカナ。カナの足音が聞こえなくなると清春は立ち上がる。
「痛ってー…」
腹を押さえ、頭を掻きながら暗闇へ帰っていく清春の口元は嬉しそうに微笑んでいた。

































天界―――――

「ただいま〜」
「あら…おかえり清春…ンンン!?アナタ人間クサイわよ!?」


ギクッ!!

御子柴が顔を近付けて犬のようにくんくん清春を嗅ぐからギクッ!!としつつも頭を掻いて誤魔化す。
「つ、造り直しの儀を施してきたんだよ!人間に!」
「あらそう…なら良いのよ…。疑って悪かったわ…フフフ…アナタの父親が父親だからね…人間と遊んできたのかと思っちゃったのよ…」
「親父と一緒にすんなよ!!」
「はぁあ〜…」


バタン!

ソファーに倒れる御子柴。
「?どったの?」
「先日ワタシが遂に…遂に祟り神にしてやった御殿氏が何者かによって…目覚めてしまったのよォオオ!!キィーーッ!!誰なのよォオオ!御殿氏を祟り神から解放した奴はァアア!呪い殺してやる!呪い殺してやるわぁあああ!!」
バタバタ暴れる御子柴にとても引きながらも、清春は尋ねる。
「そういや御殿って何で祟り神にしたワケ?」
「人間の女と…恋仲になった不浄な神だからよ…」
「ふ、ふーん…」
「ァアァアア!!御殿氏のあの弱そうで穏やかな笑顔を思い出しただけでグチャグチャにしてやりたくなるわァアァアア!キィエエエーッ!!呪い殺してやる呪い殺してやるゥウウ!!」
バッタンバッタン暴れる御子柴をおいて、清春は自室へ戻った。


バタン、






















清春自室――――

「マジかよ…ガキ作ったらだけじゃねーのかよ」
ベッドに仰向けに倒れる清春。寝転がり、右側に寝返りを打つ。
「親父は人間とのガキ作ったからだと思ってたけど、御殿なんてそうじゃなくて恋仲になっただけで祟られて相手の人間も造り直しの儀に合わせられんのかよ…」


パンッ!!

清春は自分の頬を叩く。何度も。何度も。


パンッ!!パンッ!!

「よっし」
上半身を起こして拳を握る。
「あんなブスでショボい雌豚なんてただのダチだし!あんなの好き好むわけねーじゃん!あんなブスなんてどうでもいーし!そうだし!そうだろ清春!!」

『私も貴方のお力になりたいんです!』
『わ、私も清春さんとまた遊びたいですからっ!!』

カーーッ!
カナの顔と言葉を思い出した途端耳までみるみる真っ赤に染まった清春はバフーン!!とベッドにうつ伏せでダイブ。
「違げーし!違げーし!違げーし!!あんなブス興味ねーし!!あんなブス!あんなっ…!」
枕に顔を埋めて、少し悲しそうな目をして呟く。
「俺のせいであいつが母さんみたいになったらヤだしな…。親父みたいになりたくねーし…。今日から嫌いになるようにしよっと…カナのコト…」

























その頃、ヴァンヘイレン宿舎のカナ自室――――

「ふんふふーん♪」
宿題の見直しをしながらシャーペンで空欄を埋めていると。
「あぁっ!わわ私ったら何やってんだろう!?」
全ての空欄に何故か"きよはる"と無意識に書いてしまっていた自分に真っ赤になったカナは慌てて消ゴムで消す。
少し間をおいてから、バッグの中からヘアピンを取り出す。白い花の付いたヘアピンを。そして、付けてみる。鏡に映る自分の前髪には両親から貰ったヘアピンと、今日清春から買ってもらったヘアピンが並んで付いている。
「すごく可愛い。メアちゃんに自慢しちゃってもばちあたらないよね?」
ふふん♪と両手で頬杖を着き、買ってもらったヘアピンを嬉しそうに眺める。
「清春さんと早く会いたいなぁ…。さっき会ったばっかりなのに我儘かな。清春さんと…、」

『俺もあんたが死んだら自分が死ぬより辛れぇんだよ!!』

「!!」
プシュ〜!
顔を真っ赤にしたカナの頭から湯気が出て、カナは机に顔を埋める。
ベッドではメルが「すー、すー」と眠っている。
「うぅ〜。どうしよう。最初は恐くて苦手な人だったのに。今はもう、早く会いたくて会いたくて仕方ないよぉ…。メアちゃん私病気かも…」
此処には居ない友人に語りかけていたカナ。
「でも…」
だが、途端に悲しそうな目をして呟く。
「私が抱いた感情のせいで清春さんまで神様に狙われちゃったらやだな…。…今日から嫌いになるようにしよっと…清春さんのコト…」


















夏休〜RED編 【完】








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