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GOD GAME
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バタバタ走るのは6年生達と教師達。騒がしくなった深夜のヴァンヘイレン宿舎。宿舎の屋根の上に上がる生徒と教師達。
「いたぞ化け物神が!」
そこには、聖堂を派手に壊して聖堂の屋根から、聖堂内の人間を取り出しては地面に叩きつけている神々の姿が。
「オオオオオオ!」


バシン!バシン!!

雄叫びを上げながら、神から人間への制裁とばかりに聖堂に居た人間達を叩きつける。人間の原型を止めなくなるまで何度も何度も。聖堂周辺には真っ赤な血が飛び散る。
「ひぃっ…!」
「う"え"ぇぇ!」
その惨たらしい光景に、屋根に上がった生徒達のほとんどが顔を覆ってしまったり、嘔吐する。
「あのくらいの光景慣れておかないとヴァンヘイレンの人間として神殺しはできんぞ!総員!武器を標的へ構えろ!」
教師の声を合図に、自分の体内から取り出した武器や、体内から取り出せない者は持参した武器を取り出し神々に標準を合わせる。教師が上げた手を、神々へ向けて下ろす。
「撃てー!」


ドンドンッ!

それぞれの形、性能をした武器で屋根の上から神々を攻撃する。
「オオオオオオ!」
神々は雄叫びと地鳴りを鳴らして悲鳴を上げる。













「やったぞ!」
「はは!神なんてちょろいもんだぜ!」
「止めをさせば終わり、」
「オオオオオオ!!」
「何っ…!?」


ドガンッ!!ドガンッ!!

「ぐああああ!」
「うああああああ!!」
神々が屋根に上がった人間達目掛け手を振り落とせば宿舎ごと真っ二つに破壊される。屋根に上がった人間は勿論、その棟に居た人間達も木っ端微塵。
「ひ、酷い…!」
「何て光景だ!」
「これが神の力…?」
別の棟の屋根に上がって攻撃をしようとしていた生徒と教師達が、破壊された宿舎と一瞬で凪ぎ払われた仲間を前に唖然。
「あいつらは神をなめすぎていただけだ!俺達も攻撃するぞ!」
「了解!」
彼らも武器を構え、神々に標準を合わせるが…
「オオオオオオ!!」
「ひぃ!!」
怒り狂う神々が彼らにも手を振り上げた。彼らは強く目を瞑る。
「終わりだっ…!」


スパン!スパンッ!

「オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!」
「え…?」
振り落とされるはずの手が降ってこず、逆に神々から雄叫びが聞こえた。彼らが目を開けるとそこには、手を斬られた神々3体が体をくねらせて痛みに悲鳴を上げている姿が。
「なっ…?一体誰が…」
「下がってて!」
「!?君は確か1年生の…!?」
彼らの背後に現れ、屋根に上がったのはメア。メアの両手には白い羽の付いた白い剣の武器が。
「き、君がそれで奴らを攻撃したのか!?」
「何て危険なまねをするんだ!まだ1年生の身分で!」
「これは実習じゃない!実戦だ!戦争だ!1年生はおとなしく自室に帰りなさい!」
「攻撃食らう直前なのに何もできないで目を瞑っているような君達に言われたくないもん!」
「なっ…!?」


シュタッ!

メアはアガレス同様人間では不可能なジャンプ力で飛び上がり、屋根をタン!タン!と伝って聖堂まで走っていった。
「待ちなさい君!!」

























聖堂―――――

「オ"オ"オ"オ"オ"!!」
聖堂外でまだ悲鳴を上げている神々の雄叫びが、ぽっかり天井のあいた頭上から聞こえる。聖堂内に足を踏み入れたメアは、惨たらしい光景と血生臭さに顔を歪め、鼻を摘まむ。
「何これ…!」
壁には人間の形の血の痕が付着していたり、ダーツの的のまま壁に張り付けられて死んでいる生徒。そして足の踏み場もないくらい床に散らかっているのが、裸で入り交じったクラスメイトの男女。
「不浄…!」
メアは顔を酷く歪める。


ガシッ!

「きゃっ!?」
その時。何者かに細い足首を掴まれたメアは、びっくりして下を見る。と、そこには、黄緑色の髪が真っ赤だっただろうか?と錯覚する程血まみれの瀕死の来伝が。
「ら、来伝君!?」
「ゼェ…ゼェ…ハァ"…かみ…がっ…、ハァ"…来だっ…」
「当っ然だよ!こんな不浄な事をしてたら!造り直しの儀をしてくださいって言ってるようなものでしょ!」
「神…に"…怯えて"…欲を…抑えるのがっ…嫌だっだ…んだ…負けを"…認める…よう…で…」
「バーカ!バッカじゃないの!」
「ぐっ…、ぐはあぁ!」


ドバドバッ!

血を吐いた来伝にびっくりしつつも、メアは来伝をきゅっ、と優しく抱き締める。女神の頃のように。
「バカ。本当バカ。造り直しの儀の標的にされても仕方ないバーカ。でも神が下界に手を加えて下界の均衡を壊すのもダメ。大丈夫。私が守ってあげるよ」
キッ!と鋭い眼差しで天井を見上げるメア。そこにはぽっかり穴があいて空が見える天井からメアを睨み付けている神々3体。
来伝を隅に寝かせると、メアは白い2本の剣を自分の顔前でクロスさせ、構える。
「オオオオオオ!!」


ドンドンッ!

教会を突き破って入ってきた神3体に、飛び上がり剣で斬りつけていくメア。
「ウェウェテオトル卿!」


スパン!

「オオオオオオ!!」
「エエカトル卿!」


スパン!スパンッ!

「オオオオオオ!」
次々に彼らの背中を斬りつけていけばドスン!ドスン!と音をたてて倒れていく神々。3体全員が倒れればいつもの静寂の夜が戻ってきた。






















「ふぅ」
キィン!
剣を下ろし、息を吐くメア。そこでほとんどが死んでいるクラスメイト達を悲しげな瞳で見つめる。
「どうして…。遊び半分で神を呼び寄せるような事をしちゃいけないんだよ…」


ポツ…、ポツ…


ゴオッ…

「雨?風?」
天井のあいた頭上から突然雨が降りだし、無かった風も吹き始めた。メアが頭上を見上げると…


ザアァァッ!!


ゴオオッ!!

「きゃあ!?何これ!?」
突然土砂降りと強風が聖堂内にだけ降り、吹き出した。ツゥッ…!とメアの体から青い血が伝う程痛い雨と風にメアが自分の頭を覆ってキャーキャー騒いでいると。


ピカッ!

光った稲妻。メアが頭上を見上げると、先程倒したはずの神々3体がメアを邪悪な笑みで微笑んで見下ろしていた。
「嘘!?さっき倒したはずだよ!?」


ピカッ!

エエカトル神から放たれた激しい稲妻が、なんとメア目掛け走ってきたではないか。メアは目を見開き呆然。
――嘘!?避けなきゃいけないのに体が動かないよ!!――
そんなメアをニィッ…と微笑んで見下ろす神々。
「嫌…!嫌…!悪神に殺されるなんて絶対嫌だよ!助けて御殿さん…!」
稲妻がメアの目の前に迫る。
「嫌ーー!!」


パンッ!

「オ"オ"オ"オ"オ"!!」
「!?」
直前で稲妻が真っ二つに割れ、何かに跳ね返された稲妻は神々に跳ね返り、神々は電気ショックを受けたようにバチバチと全身に稲妻を受けていた。
「力をほぼ失ったというのに慢心しているからだ」
「…!アガレス君!!」
メアの前には真っ黒い槍で稲妻を斬り、神々へ跳ね返したアガレスが立っていた。
















アガレスは焦げた槍を見る。
「修復に2日と5時間かかってしまうな」
「アガレス君!!」
「む。ダーシー殿、痛づづづづ!?」
歩み寄りすぐアガレスの耳を引っ張るからアガレスは痛みに目を見開き、いつものポーカーフェイスを崩す。
「なっ、何だ!」
「私の晴れ舞台を邪魔した!」
「晴れ舞台だと」
「そうだよ!!私がトラロック卿達を倒して8年生まで飛び級する予定だったのに!!」
「その割りには俺が駆け付けた時死の間際だったな」
「あれは違うもん!攻撃方法を考えてただけだもん!」
「ほう。稲妻が眼前に迫っていたのにか。随分と余裕なのだなさすがダーシー殿」
「信じてないでしょ!本当だもん!!」
メアに背を向けたままトン、と彼女の肩に手を置くアガレス。
「信じていないわけではない。女神でここまでやれるとは大したものだ。それも神の力をほぼ喪失している身で。後は任せるんだな」
「私まだ戦えるよ!」
アガレスは振り向き、メアをビシッと指差す。
「任せろと言っている。この場合女神なら、男神に素直に従う方が愛らしいというものだ」
「!」
メアは目を見開き頬をピンクに染める。アガレスが背を向けると。


きゅん!

「!?」
メアから聞こえた音にバッ!と後ろを振り返り、顔が真っ青なアガレス。
「な…何だ今の音は…」
「別にきゅん!なんてしてないもん!アガレス君なんかにするわけないでしょ!私には2000年前から好きな人がいて、」
「分かった分かった」
「オオオオオオ!!」


ピカッ!

エエカトル卿が雄叫びを上げると同時に光った稲妻がアガレスとメア目掛け走ってくる。


ドンッ!

「オ"オ"オ"オ"オ"!」
再び槍で稲妻を跳ね返せば神々に稲妻の電撃が走る。彼らが怯んでいる隙にアガレスは聖堂の壁を真横に走り、タンッ!と踏み込む。神々の頭上まで飛び上がり…


ズドン!!

「オ"オ"オ"オ"!!」
槍と矢と剣が合体した不気味な武器で神々の脳天を貫いた。
ブシュウウウ!噴水のように真っ青な血を上げてトラロック、エエカトル、ウェウェテオトルの3体はドスーン!と倒れ、息絶えるのだった。
















「ふぅ」
ズズズズ…!
武器を体内へ戻すアガレスに駆け寄るメア。
「アガレス君!」
「おとなしく待てたようだな」
「アガレス君その武器何!?真っ黒だったよ!まるで悪、」
「転入生!!」
「む」
すると、来伝班のトム、アイリーンが寝巻き姿のまま聖堂へ駆け込んできた。慌てて、神だけが流れる青い血を服の裏で拭き取るアガレスとメア。
「トム君とアイリーンちゃん?!」
「はぁ、はぁっ…!転入生!あの神々はお前が倒したのか!?」
アガレスは左手をポケットに入れ、出している右手をスッ、とメアに向ける。
「ダー…じゃなくて。メア殿の手柄だ」
「え!?私!?」
「そうなのかよ!?ルディお前見掛けによらずチョー強いんだな!」
「まあ!メア様お強いのですね!」
「ち、違うよ!私なんてダメダメで全部アガレス君が…、」
「ところでお前ら!来伝見なかったか!?」
スッ。アガレスが指差した先に目を向ける来伝班の2人。そこには既に息絶えている来伝の姿が。
トムは呆然。アイリーンは屈み、血塗れの来伝を抱き締め、頬に涙を伝わせる。
「来伝…」
「嗚呼…白…!白どうしてこんな事になっているんですの…!」
「馬鹿野郎っ…!自分から神の目につく事をするからだ…!お前は確かに総合成績トップだけど神の足元にも及ばない人間なんだ…!自信過剰過ぎたんだよ来伝お前は…!」
強い口調ながらも、トムの両手拳は震えていた。

















「さて。帰るか」
「帰るって、そう言えばアガレス君どこに暮らしているの?宿舎にいないよね」
「お前達!無事か!」


バンッ!!

聖堂の扉が壊れる勢いで駆け付けた教師達8人。
「先生ですわ」
「先生!」
「驚いたぞ。1年のルディがあのような巨大な神に立ち向かって行ったのだからな。よくやったルディ!」
「先生、私は途中負けそうになったんです。アガレス君が止めをさしてくれたんですっ!」
メアがアガレスに手を向ける。しかし教師達の表情が一瞬にして歪み、まるで汚物を見るような軽蔑の眼差しをアガレスに向ける。メアはきょとんとするが、アガレスはやはり無表情。
「はっ。君かぁ」
「堕天神の名の君がやったのか」
「同胞殺しだな。ははっ」
「君がやったのなら我々教師の手柄として上に報告しよう」
「おお。それは良いですな」
「ハッハッハッ」

「ちょ、ちょっと!死傷者は出ちゃったけど、アガレス君のお陰って言ってるじゃないですか!聞いてますか先生!」
「ルディ君」
教師の低い声。教師陣は悪魔にも負けず劣らずの笑みを向け、嘲笑う。
「大人には大人の事情があるんだよ。分かるかなぁ?」
「ルディ君、君も嫌われ者の彼にあまり関わるとヴァンヘイレンの爪弾き者にされるから気を付けたまえ」
「安心しろ。この功績は我々教師陣のものとする。仮に君が彼の功績だと言い回ったところでルディ君。君が爪弾きにあうだけだからね。気を付けたまえよ」
「はははは!」
教師達の黒い笑みに肩をカタカタ震わせ、頬を真っ赤にして怒り絶頂のメア。
「ちょっと先生!!」
「いい」
ガシッ!
アガレスに肩を掴まれ、制止されたメア。
「でもこんなのおかしいよ!アガレス君!」
「何もそんなに目くじらたてる事ではない」
「たてる事だよ!」
「ダー…じゃない。メア殿。正義感が長所であり短所だ。過去のようになりたくないだろう」
過去のように…とは、メアがアドラメレク達神に人間造り直しの儀を反発した時の事。メアは「でも!」とまだ呟きつつも、しゅん…と下を向く。その間に教師陣は生徒達の遺体を回収して、行ってしまった。















「転入生…。お前、来伝達は毛嫌いしていたがお前のそういう何にも物怖じしない度胸のあるところ、俺は嫌いじゃないぜ」
「それは感謝する」


カツン、カツン…

ブーツの踵を鳴らし、3人に背を向けるアガレス。
「お待ち下さいな!」
「まだ何か用、」


ガバッ!

「☆◎×△■!?」
「!!?」
アガレスが振り向く寸前のところを抱き付いたアイリーンは何と、顔に似合わずアガレスの左頬に口付け。無表情なアガレスも目が開ける最高限度まで開きびっくり。メアとトムは目を見開き顔を真っ赤にして怒りと驚きが入り混じった何とも複雑な表情を浮かべる。
「ちょちょちょ、アイリーンちゃん何やってるの!?」
「アアアアイリーン!!不浄だぞっ!お前まで自ら造り直しの儀を望むような行動をとるなぁ!!」
「ふふ。お2人共そんなに目くじらをたてなくても宜しくってですわ。彼は、誰も太刀打ちできなかった神を殺めてくださった。ヴァンヘイレンの救世主ですの。心奪われないわけないですわ。ね。アガレス様」


ガッシャーン!

「あらあら?」
「転入生ー!?」
全身真っ赤にして後ろの教壇へ見事派手に転けたアガレス。トムが駆け寄る。
「あちゃー…。駄目だこりゃ。アイリーンのキスで完全ノックアウトだぞ」
「アイリーンちゃん!!」
ヴァンヘイレン1の美少女アイリーンにかかれば、普段無表情なアガレスもそうはいられなかったのだろう。メアが顔を真っ赤にしてお怒りなのもクスクス微笑みながら綺麗な髪をなびかせ、踵を返す。
「ふふ。もう陽が昇ってしまいますわ。わたくしはお部屋に戻りますね」
「アイリーンちゃん!ちょっと!!」
さっさと聖堂を後にしたアイリーン。見た目のおしとやかと違い、案外周りを振り回す性分な彼女にメアとトムは溜め息。
「はぁ〜アイリーンちゃんまで何なのもうっ」
「まあヴァンヘイレン壊滅は免れた事だし…ルディ。転入生を運ぶのを手伝ってくれよ」
「りょ〜かい〜…」
































天界―――――


ダンッ!

短髪で男のような風貌で黒と白のストライプのドレスを着た女神がテーブルを叩く。
「何っだよトラロック達の野郎!使えねぇ!」
「人間の1人すら造り直しの儀を行えなかったと?」
「殺しただけじゃ意味が無いと何度言えば分かるのよ…」
「知能指数の低い神々でしたからねぇ」
メア(ダーシー)を追放した時同様の広い室内で円になって集い、会合を開く神々。追放時より皆やけに苛立っている。
「しかしこれでよく分かりましたね。ヴァンヘイレンの人間共は我々神に立ち向かうと豪語するだけで、トラロック卿達すら殺せないと」
「そうね…。アガレス氏が居なければ無理だったと証明されたわ…」
「そんなのどうでも良いんだよ!オレはオレの言いなりにさせる人間が欲しかったってのに!トラロックの野郎共しくじりやがって!」
「まあまあ…。落ち着きなさいよ…」
「しかしまあ…ダーシー神は勿論、アガレス君が邪魔ですな」
「お任せ…アレ…」
「ん?」
ギギギギ…、満足に動かない体をゆっくりゆっくり動かしてそう言うのは、猿轡をはめ、体は土色をして上半身裸の、190cm程の背丈をした筋肉質な男神。そのたっぷりついた筋肉の腕に肩を叩かれただけで常人の肩は折れてしまいそうだ。
「おお。テペヨロトル氏!」
「僕ノ…ダーシー…、連れて帰ルルル…」
「はぁ?ダーシーなんてぶち殺しておきゃ良いんだよ。テペヨロトル。てめぇアガレスとダーシーぶっ殺してこい。それだけじゃ許されねぇぞ。人間に造り直しの儀最低500人はしてこい。分かったかデブ!」
「分かっタタタ…」


ズシーン、ズシーン…

巨大な砲丸をズリズリ引き摺り、地面を揺らしながら部屋を出て行くテペヨロトル。
「大丈夫かぁあいつ?」
「まあまあ。彼は我々の中で一番の怪力ですし。期待致しましょう。それでは。乾杯」


カチンッ!

真っ赤な人間の血が入ったグラスで貴族のように優雅に乾杯をする神々だった。




















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