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GOD GAME
ページ:3



ガシャァン!!

ベルベットローゼの低い声がして直後。大きな爆発音と共にステージが真っ二つに割れた。辺りに立ち込める灰色の煙。
煙が晴れるとそこには、ベルベットローゼと対峙するヒビキ。御子柴と対峙するアーノルドの姿がある。
「かかってこいよ人間!」
「ふぅ。どうやら神々という生き物は血の気が多いようだよ。…アーノルド」
「何だいヒビキ?」


キュッ…、

ヒビキははめている黒い手袋を奥まではめ直す。
「5分で終わらせようか」
「ハッ!3分の間違いだなヒビキ!」
「図に乗ってんじゃねぇぞ人間風情がぁああ!!」


ドガン!!

怒りの沸点に達したベルベットローゼは大テントの軸となっている巨大な鉄パイプをヒビキ目掛けて軽々振り回す。しかし身軽なヒビキはそれをひょい、と回避して寧ろ鉄パイプに飛び乗ると、鉄パイプの上を走ってベルベットローゼの目の前まで近付く。
「何ッ…!?」
「スピードは僕の方が上のようだね。神」
はめた黒い手袋の右手をベルベットローゼの額にくっつけると…


ドガァン!!

まるでヒビキの右手が爆弾と化したかのように爆発し、ベルベットローゼは吹き飛ばされ、2人の姿が見えない程灰色の煙が噴き上がる。
「何やっているのよォ!ベルベットローゼ!」
「おっと。余所見はいけないんじゃないかな神よ」
「!」


キィン!!

アーノルドがはめた指輪から銀色の光がまるで光線銃のように飛び出せば、大テントはズババババ!と斬られていく。だが空中を前転して回避した御子柴を、額に手を添えて感心して見上げるアーノルド。
「ほうほう。小柄な体型に合った軽い身のこなしのようだ!」
「チィッ…!余裕じゃない人間…!その面の皮、引き剥がしてやりたくなるわ!!」
体の周りに紫色の邪悪な光を纏う無数の御札を繰り出した御子柴。
スッ…と右手を挙げて人差し指でアーノルドを指差して笑う。
「フッ…呪い殺されるが良いわ…人間…!」


バシュッ!バシュッ!

無数の御札がアーノルドの体にへばりつけば、アーノルドの体は拘束され動けなくなる。
「フフフ!アハハハハ!無様ねぇ人間!そんなもの序ノ口!悔しかったらワタシ達を本来の姿にさせる程本気を出させてみせなさぁい!?アハハハハ!」


ズババババ!!

「ギィヤァア!!」
不意をつかれた御子柴はアーノルドの指輪から放たれた銀色の光線銃をモロに食らい、腹から上半身と下半身をスッパリ切断された。


ボトボトッ!

無惨にも二つに切断された御子柴の体がステージに転がる。御子柴は白目を向いて、もうピクリとも動かない。
「なぁんだ。案外つまらないな神という生き物も」
「アーノルド。終わったかい?」
「やあ!ヒビキ!」
すると向こうから、白目を向いて焼け焦げて真っ黒炭になったベルベットローゼをズルズル引きずってきたヒビキがやって来る。
炭と化したベルベットローゼを、顎に手を充てて眺めるアーノルド。
「うわぁ。派手にやったようだなヒビキ!」
「そうでもないかな。アーノルドだって真っ二つに切断したじゃないか」
「ノンノン!こんなの小手調べだったさ!それなのにあっさり死んでしまったよこの神々達は!」
ヒビキも顎に手を充てる。
「ふむ。もしかしたら下級神々だったのかなこいつらは」
「そうさ!そうでなければこんなに弱い筈がない!さぁ!神は片付けた!次はMARIAサーカス団から感じる悪魔の気配を打ち破ろう!そして早くボクのメアァア!に会わせてくれよヒビキ!」
「はいはい。本当にアーノルドは緊張感が無いね」
談笑しながら大テントを去ろうとする2人。


ピクッ…

その背後。ステージで白目を向いて転がるベルベットローゼと御子柴の手がピクリ…と動いた。






















「まずはトム君とカナさんの元へ向かうよ」
「え"ーー!?あんな奴ら後回しで良いだろう!?早くボクのメアに会わせてくれよぉう!」
「駄目ダメ。トム君達は観客を逃がしている最中だから、僕達も手伝って観客を全員街へ避難させてから。MARIAサーカス団から感じる悪魔の気配を対処しよう」
「ぶーっ!ヒビキ、君はボクに厳しすぎやしないか!?」
「ア"ー。よく寝たなぁ?御子柴ァ」
「本っ当。久しぶりに…ってワタシ達神は寝れないわよベルベットローゼ…?」
「…!!」
ドスのきいた低い声が背後から聞こえて、2人はゆっくり振り向く。そこには炭と化したまま…。真っ二つに切断された体のまま…立って、ヒビキとアーノルドを白目で見て口はケラケラ笑っている不気味なベルベットローゼと御子柴が居た。
「ッ…!」
「ヒビキこれは…!?」


バキッ!バキッ!

真っ黒く焦げたベルベットローゼは指の骨をバキバキ鳴らす。
「久しくやってねぇけど。いっちょやったるかぁ御子柴ァ」
「フフフ…アナタと手を組んだらワタシだけの手柄じゃなくなる事は不本意だけれど…。勝ってお嬢の超絶キュートな笑顔が見れるのなら良いわ…フフフ…」


ゴキゴキッ…

ベルベットローゼと御子柴の背後に伸びる影がどんどん巨大化し、大テントの天井までの大きさになる。それを見上げるヒビキとアーノルドの顔から、先程までの余裕が消えていた。
「は…ははは…。ヒビキ…これはどうしようか…?」
「っ…、」
ベルベットローゼと御子柴の巨大化した影がくっつき、一つに合わさった。


ドンッ!!





























「何や!?今のでかい爆発音!?ハッ…!!大テントが燃えとる!!」
天人におぶられながらババロアが後ろを見れば、自分達の大テントが燃えているではないか。真っ赤な炎が燃え上がり、夜だというのに炎の赤で皮肉にも辺りが明るくなる。バチバチと燃える音が聞こえる。
目を見開き、再び暴れだして大テントの方へ腕を伸ばすババロア。
「嫌や!嫌や!みんなぁ!!」
「ちょ、暴れんな明!」
「嫌や!みんなを於いて自分だけ助かるなんてそんなん団長やない!戻れ!天人今すぐ大テントへ戻るんや!なぁ天人!」
「明ァ!!」
「っ…!」
いつも明るく飄々としている天人の初めて聞く怒鳴り声。ババロアはビクッ!と顔を青くし、ピタッ…と止まる。
「あ、天人…?」
「…悪い。言い過ぎた」
「あ…ちゃ…ちゃうで…!天人はアタシの事を思って叱ってくれたんやろ?アタシこそ…ごめんな」
「明は責任感の強い奴だから。自分のサーカス団の団員が助かるなら自分は死んでも良い。そういう奴だってのは充分分かってる。けどな。見ただろ?大テントを襲撃した神共が観客も…お前の大切な団員達も殺していた姿。お前には酷過ぎるけど…今更大テントに戻ったって手遅れなんだよ」
「っ…、」
「…だからお前だけでも生き残れ。団員は全員死んだわけじゃない。奏がいるだろ。奏は今、自分のテントに居るんだろ?」
「椎名…?…ハッ!ちゃう!ちゃうんや天人!椎名はショーの小道具を取りに自分のテントに行ったら大テントに戻る言うとったんや!」
「…!?マジかよ!それを早く言えよアホ!」
方向転換。今まで大テントから一刻も早く離れようとしていた天人だったが、奏が大テントに向かった可能性があると知った途端、すぐに大テントへ駆け出す。ババロアを降ろして。
「天人!」
「明は街へ逃げろ!俺は奏連れたらすぐ追い付く!」
「嫌や!嫌やそんなの絶対嫌や!椎名はアタシの大切な団員である以前に、椎名はアタシの家族や!弟同然なんや!それに…アタシが椎名と居れる時間はもう残り少ないんやし…」
「…?最後何て言った?」
「な、何にも言っとらんで!せやから!アタシも連れて行かへんと天人の事ど突くで!!」
「はぁ…。っとにお前は昔っから男勝りだな」


パチン!

「痛ぁ!何するんや天人のドアホ!」
ババロアの額にデコピンをしてから、天人は白い歯を覗かせてニカッと笑う。
「分かったよ!じゃあ俺の後ろ隠れてついて来いよ!」
ぐっ、とババロアの細い右手を引っ張り、大テント目指して駆け出していった。



























その頃、大テント―――

「なぁにが5分で終わらせるだの3分で終わらせるだよ。腐れ人間の分際でよ!」
炎渦巻く大テント内。ベルベットローゼと御子柴の足元には、流血して傷だらけでうつ伏せでピクリとも動かないヒビキとアーノルドの姿があった。既にベルベットローゼと御子柴も先程の怪我が回復済み。


ゲシッ!ゲシッ!

ベルベットローゼはヒビキの頭をヒールで何度も踏みつける。
「ヒャハハハ!オラァ?どしたァ?5分でオレらを片付けるんじゃなかったのか人間共?ヒャハハハ!」
ベルベットローゼの隣で屈み、アーノルドの頭をツンツン指す御子柴。
「フフフ…準備運動にもならない相手だったわね…」
「さ、てとー。このテントが燃えて崩れ落ちるのも時間の問題だな。そいつら造り直しするのかったるいから於いていこーぜ」
「フフフ…そうね…。じゃあ…サーカス団に所属しているとの情報がある…シイナという人間を探しに行きましょう…」
くるり。2人が、倒れているヒビキとアーノルドを背に、大テントを出て行こうとする。


ヒュンッ!

すると背後からベルベットローゼの後頭部を目掛けて飛んできた黒い槍を、後ろも見ずに右手人差し指と中指だけでキャッチしたベルベットローゼ。
「どうやら。今日は客が多いようだぜ御子柴?」
ベルベットローゼと御子柴が後ろを向く。
次期に崩れ落ちるであろう炎渦巻く大テント入口からテント内へ入ってくる1人の少年の姿が。俯いており、表情は確認できない。
「これ。お返しする…ぜ!」


ブンッ!!

大きく振りかぶってベルベットローゼが飛ばされた槍を少年へ返し投げれば、少年は右手だけで軽々キャッチ。
「ん…?ンンン!?ちょっとベルベットローゼ…!あの人間もしかして…」
「ああ。オレもたった今気付いたところだ。黒髪にヴァンヘイレンの制服を着た右目を眼帯で覆っている人間…」
そこまでベルベットローゼが言うと、少年は俯いていた顔を上げながら右目を覆っている眼帯の紐を指でほどく。
「椎名奏…だよ…」
「シイナ…?…ハッ!やっぱりコイツよ!ベルベットローゼ!」


パサッ…、

少年椎名自ら紐をほどき、眼帯が地面に落ちればあっという間に炎に焼かれて炭となる眼帯。口裂け女のように笑い、顔を上げた椎名のいつも眼帯に覆れていた右目は本来白目であるべき箇所が真っ黒く。本来黒目であるべき箇所が真っ赤。
「…!?このガキ…!片目が悪魔の目をしてやがるぞ!!」
「ちょっとベルベットローゼ!どういう事よソレェエ!?だってこいつからは人間のニオイしかしないじゃないの!?」
「赤と青…黒も欲しいよ…ね…。でも…まずは…君達は…うん…そうだね…」


ガシャン…、

自分より大きく真っ黒い槍を背負い、ベルベットローゼと御子柴に向ける椎名は笑った。
「僕の造る…キメラの…良い材料に…なりそう…だね…」


























その頃。
大テント付近の木の上から燃え盛る大テントを見下ろしているアドラメレク。その隣には、ヤンキー座りをしてつまらなそうな清春。
「ふふ。今頃ベルベットローゼと御子柴は椎名を八つ裂きにしている頃ですわね」
「アドラメレクの姉ちゃん。俺の出番まだ?」
「焦ってはいけませんわよ清春。わたくしが来て良いとの合図を送るまで此処で。良い子に。待っておいでなさい」


ヒュン!

そう言い残してアドラメレクは姿を消してしまった。だから、清春は「はーあ」と更につまらなそうにして木の上で頭の後ろに腕を組んで横になる。
「アドラメレクの姉ちゃんは優しそうに見えて、実は何考えてるかワカンネーいっちゃん恐い存在だしなぁ。此処でおとなしく待つ…かぁー。超つまんねーの」


くんっ…、

「!!」


ガバッ!

何かのニオイを感じとった清春は目を見開き、ガバッ!と起き上がり、辺りを忙しなく見回す。
「このニオイ…!…ああ。そうだ。間違いっこねーし。親父のニオイだ」
すくっ、と立ち上がり辺りを見回す清春。
「何処に居やがるアホ親父。俺が今、ぶち殺してやる!!」



























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