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GOD GAME
ページ:1




MARIAサーカス任務当日、
ヴァンヘイレン
1E教室――――――


「MARIAサーカス任務…?僕…行かないよ…」
「な、何だって!?」
任務当日。長期となる今任務に備え、各自がリュックやキャリーバッグに詰め込んだ大荷物を持ち、いざ出発。という時にたった1人だけいつもの学生鞄という荷物の少ない椎名の発言に、1E一同、目を見開き驚く。
淡々と鞄に教科書をしまう椎名の肩を前後にトムが大きくガクガク揺さぶる。それでも無表情な椎名。
「おい椎名!今までのようにお前だけの特別任務は終わったんだ!今回は1E全員の任務なんだぞ!寝惚けた事を言うなよ!」
「寝惚けてないよ…。昨日は…"お父さんとお母さんといっしょ"見てから…20時には寝たから…」
「教育番組の話はどうだっていいんだよ!ホラ、行くぞ。校門で8年生のグループを待たせているんだからな!」


ぐっ、

トムが椎名の腕を掴み、強引に教室を出た時。
「はいはい。ストーップ」
「先生!?」
椎名を掴んでいるトムの手を離したのは、1E担任。
「先生!椎名の奴がまた問題発言したんだ!MARIAサーカス任務には行かないって!ほら!見てみろよ!荷物もこんなに少なくて準備もしてないし!」
「あー。そうなんだ。そうらしいんだ。椎名は今任務欠席だそうだ」
「なっ…!?」
一同どよめく。教師ははぁと溜め息を吐き、頭をポリポリ掻きながら話し出す。
「俺も驚いたよ。椎名の奴、昨夜になって急に言い出すんだからな。まあ、急と言っても仕方ないか。こいつの従兄弟が倒れて危ない状態らしいんだ。そうまで言われちゃ、なぁ?」
「絶対嘘だ!嘘吐いてる!騙されるなよ先生!」
「トム君…酷いよ…。僕…嘘吐くような…人間に…見える…?」
ビシッ!
ハイテンションなトムは、椎名を指差して機関銃のように喚き散らす。
「見えるに決まってるだろ!入学式早々わざと俺に別の教室を教えたり!訓練の時わざと8年生の任務集合場所を教えて赤っ恥かかせたり!調理実習で作ったビスケットの中に俺の大大大嫌いなチーズを混ぜたり!!お前は信用ならないんだよ椎名!!」


しん…

いつも常識人で1Eの良心のトムが顔を真っ赤にさせて喚き散らしたから、教師も黙ってしまい沈黙が起きる。


ポン、

そんな沈黙を破ったのは渦中の椎名。椎名はトムの肩に右手を乗せて脇を通り過ぎながら、呟く。
「そこまで覚えてるなんて…トム君…僕の事大好き…なんだね…クスッ…」
「そんなわけあるかよバッカヤローー!!」
爆発したトムの怒りと罵声を背に、椎名は飄々と教室を去っていった。その背中をアイリーンはただ1人、誰にも気付かれぬよう口を手で隠しながらクスッと微笑していた。
――椎名というわたくしに楯突いた生意気なあの人間。今任務には不参加ですの?せっかく造り直しの儀を施そうと思いましたのに。でもまあ…目障りなネズミがいない分、わたくしの計画が捗り易いですわ――
チラッ…、
アイリーンは不気味に微笑んでいた。























校門――――――
「うわー!大きいバスだね!」
「メアちゃん。私お菓子持ってきたからあとでバスの中で食べようね」
「う、うん…」
「おいコラー。お前達。遠足じゃないんだぞ。人間の未来をかけたこれは戦いなんだ。気、引き締めていけよな」
「はーいっ」
MARIAサーカスの元へ向かう足となるバスを前に、遠足気分なメアとカナを叱る教師。
「ボォクのメェアアァアアァア!!」
「ひぃっ!?」


ドドドドドド!!

地鳴りにも似た走る音が校舎の方から聞こえ、メアがビクッと真っ青な顔で恐る恐る振り向くと…


キラン!

「きゃあ!?」
メアの顔の前に一輪の真っ赤なバラを差し出し、膝まづくのは8年生のアーノルド。
「ボクのメア!今日も愛らしいね!メアとたまたま任務が同じ…いや!違う!ボク達は同じ任務になる運命だったんだ!この世に生を受けたその日から!あぁ!この長期任務!まだ見た事の無いメアの笑顔が見れると思うと胸が高鳴るよ!」
「あ、あ〜…は、はい〜…」
「アーノルド。そのくらいにしてあげないと」
「ム!またボクとメアの愛の談笑に水を指す気かい!?ヒビキ!」
少し困った顔をして、荷物を肩にかけて現れたのは8年生でアーノルドと同じ班のヒビキ。キユミの兄だ。
「う、うぉお…8年生…!」
「8年生ってだけでオーラを感じちゃうね…!」
ヴァンヘイレンの中で最高地位に位置する8年生を前に、トムとカナはカタカタ震えてしまう程怖じ気づいている。
「僕は今任務の班長を務める事になった8年生のヒビキです。よろしくね」
「トトト、トム班班長のトム・ハンクスですすす!よよよよろしくお願いしまままます!」
握手を交わす。
「メ、メア班班長メア・ルディですっ!よろしくお願いしますっ!」
ペコリお辞儀するメアにヒビキが手を差し出すが、その手を…
「チョーップ!」


バチン!

チョップで払うアーノルドにヒビキは苦笑いを浮かべるのだった。
「ヒビキであろうとボクのメアには触れさせないからな!」
「ははは…」
「ん。じゃあ班長同士の自己紹介も済んだようだし。お前らバスに乗、」
「お前も一緒なのか貧弱ぅーー!?」
アガレスを指差し、わなわなするアーノルド。しかしアガレスはキョトン…として何の事やら状態。
「アーノルド。早くバスに乗りなって」
「ぐぬぬぬぬ…!お前…!お前!!よくものうのうとボクの前に姿を現したな!いや!しかし!ボクの好敵手としてその鈍感さは見合っているかもしれないな!」
「メ、メアちゃん…。アガレス君、アーノルド先輩に何かしたの?」
「さ、さあ…?」
思い当たる節があるが、はぐらかすメア。
ヒビキは慣れた手つきでアーノルドをぐいぐいバスの中へ押し込む。
「アガレス!お前ェエ!許さないぞ!お前は!お前はァア!」
「はいはい。アーノルド。早く乗ってよ。後ろがつかえてまーす」
「ボクのメアを奪ったメアの恋人という事は、墓に入っても許さないぞォオ!」


しん…

アーノルドの一言に沈黙が起きた直後…。
「えぇええ!?そうだったの!?」
トムとカナが驚愕した声が校門に響き渡っていた。

















バスの中―――――

「メアちゃんおめでとう!はい!これ!お祝いだよ」
バスで隣の席に並ぶカナがメアにお菓子を手渡せば、メアは恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、両手を横に振っている。
「ちちちち違っ…!わないけどっっ!!」
「そうならそうと、私に気を使わないで早く教えてくれて良かったのになぁ」
「ちちちち…!うぅっ〜〜!だってカナちゃぁん…」
ブシューッ。
顔から湯気を吹き、前の座席の背凭れに顔を突っ伏すメアだった。
その前の座席には、アガレスとトム。更にその前に座っているヒビキとアーノルド。アーノルドはさっきから後ろを向いてアガレスに一方的に話している。
「貧弱!お前記憶喪失だそうだな!ボクを敵に回した事を恐れたが為に記憶喪失などという姑息な真似をとるようではメアは守れんな!やはりメアにはこの!ボクがふさわしーい!フハハハハ!」
「アーノルド。バスの中は静かに」
「え、えぇと…。トム。俺はアーノルド先輩に何か大変な事をしてしまったのかな?記憶を失っていて全く思い出せないんだ」
「転入生…。お前のその優等生な喋り方どうにかならないか…。居心地悪い」
「えぇ!?す、すまないトム!」
「あ!アガレス君見てみて!あの赤いおーっきいテント!あれじゃない!?」
前の座席に身を乗り出してメアがアガレスの肩を叩きながら指差した先には。バスのフロントガラス越しに見える、真っ赤で派手な大きいテント。テントのてっぺんに立つ旗には…
「MARIAサーカス…ですわね」
サーカス団の団名が書かれていた。バスは、テント真裏に到着する。
























「はじめまして。本日より2週間、こちらのサーカス団に任務でお世話になるヴァンヘイレンの7名です」
総班長を務めるヒビキの後ろにアガレス達が並び挨拶をする。その前には、派手なメイクや奇抜な衣装に髪色をしたサーカス団の団員達がズラリ並び、アガレス達を物珍しそうに眺めている。
そしてヒビキに手を差し出すのは、ピンク色のボブヘアーに赤いチェックのスカートや奇抜な衣装にメイクそして瞳の中の星がチャームポイントの少女。(年はトムやカナ達より少し上くらいだろうか)
「アタシがMARIAサーカス団長のババロアや。よろしくな」
関西訛りの少女団長と握手を交わす。団長ババロアはヒラリ踵を返すと、右手をテントに向けて歩き出す。
「まあ2週間もある内の1日目や。今日はアタシらの場所を紹介していくさかい、ゆーったりした気分でいておくれな」
「お心遣い感謝致します」
ペコリ、ヒビキが頭を下げ、皆がババロアの後をついていく。
初めて見るサーカス団のテントに興奮して、キョロキョロ好奇心旺盛なメアが皆の列から外れていると。
「メア。こっちだよ」
「あ!えへへ〜。ごめんごめんっ!」
アガレスがにこやかにメアの手を引き、列に戻す。
「……」
そんな2人を、はにかみながら遠目から見ているカナをアイリーンはチラッとまた、横目で見ていた。


















「ここがアタシらのステージや」
「おぉっ!」
テントの中はまるで幻想世界。見上げ、感嘆の声を上げるアガレス達を横目にババロアは腕を組みながら「ふふん♪」と得意気だ。
「そいでなぁ。アンタらが今日から2週間過ごす小屋はテントの裏の此処や」
派手なテントの裏にズラリ並んだプレハブ小屋にババロアが手を向ける。
「まあ。小汚ならしい小屋ですこと」
頬に手を添えてズバッと悪気無し率直に言うアイリーンの口をメアとカナが慌てて塞ぐ。ババロアは苦笑いを浮かべ、口角をヒクヒクさせているからヒビキとトムがアイリーンの代わりに謝罪する。
「ま、まあええわ!見たところボンボンの娘さんみたいやし。小汚い思おてもしゃあないわな。ほんなら。娘さん。そーんなに小汚い小屋が嫌ならアンタだけ外で2週間過ごせば良いんとちゃう?」
意地悪な笑みを浮かべ発言するババロアに、アイリーンは「まあ」と洩らした後にっこり天使のスマイル。
「住んでいらっしゃるお家が小汚ならしい場所だとお口まで小汚ならしくなられるのですね団長さん」
「何やと!?小娘の分際で!!」


ガシッ!!

「!?」
カッ!となり、アイリーンに食って掛かろうとしたババロアを背後からガシッ!と押さえる者が1人。
「わあ!ピエロだー!」
アイリーンを押さえる、緑色の服に右目は赤い星のペイントを施したピエロを見ると、メアとカナは子供のように目を輝かせ、一斉にピエロに駆け寄る。
「ボクのメア!?そんな道化師よりボクに駆け寄りたまえ!」
ピエロにまで嫉妬するアーノルドを、トムは呆れて苦笑い。
一方。ピエロに押さえられたババロアは、押さえられたまま顔だけピエロの方を向いて見ている。
「何や!邪魔すんな!アタシらをバカにしはった小娘の根性今から叩き直すところなんやで!」
「ピエロさんこんにちは!」
「こんにちはっ!」
お怒りのババロアを無視してピエロに挨拶をし、きゃっきゃはしゃぐメアとカナにババロアは目をギョッ。ピエロは喋らず律儀にペコリ…お辞儀すると、スッ…と小屋の扉を開き、メア達に中へ入るよう手を小屋の中へ向ける。
「入って良いの?」
「入って良いも何も今日から2週間アンタらの家は此処やからな」
ババロアは顎に手を添える。
「ひぃふぅみぃ…7人やったな。小屋は定員が2人までやから、3組が2人部屋。残りは1人部屋っちゅー事で小屋を用意しといたで。部屋割りはアンタらで勝手に決めとき」
「はーいっ!」
メアとカナはまるで遠足にやって来た小学生のように声を揃えて、手を挙げる。
「じゃあ部屋割りはくじ引き、」
「ボクは勿っっ論!メアと相部屋さ!」
「部屋割りはくじ引きにするからねアーノルド」
「NO〜〜〜〜!!」
ヘナヘナと力を無くして座り込んでしまうアーノルドをクスクス皆が笑う。その様子をババロアは腕を組み、隣に立っているピエロを横目で見ながら「ふぅ」と溜め息を洩らす。
「そういやヴァンヘイレンのアンタら。どないして今更ウチのサーカスへ任務に来ぃはったんや?世界の機関ヴァンヘイレンなら、とっくの昔にウチに任務に来てはるやろ?」
「はい。今任務は"人間が多く集まる場所に神々が現れ、造り直しの儀を行う可能性が高い"との理由で、世界での人気トップクラスを誇るこのMARIAサーカス団なら人間がたくさん集まる。だから神々が現れる可能性が高い。即ち、ヴァンヘイレンにとってMARIAサーカス団は神々を殺す最も最短距離なのです。言い方は悪いですが…」
「でも今更やろ?ウチらは何十年も前からサーカス団を経営してきたんやで?それが今更?」
「うーん…。それは僕達生徒には分からないです…。任務を決めるのはヴァンヘイレンの中で最高地位の教師陣なので」
「ふぅん。アンタらは任務の詳しい詳細も聞かされず、ただ神々殺してこいしか言われてへんっちゅーわけか。ヴァンヘイレンって神々と戦う機関やから、大層厳しいんやと思っとったんやけど。案外テキトーな機関なんやな」
ヒビキの説明にババロアは肩を竦めて踵を返すと、スタスタとテントへ歩いていく。その後ろに続くピエロは、アガレス達にペコリお辞儀をしてからババロアについて行く。
「ま、アンタらがお客さんとアタシらサーカス団員を神々から守ってくれはるんならこっちにとってこれ以上ええ話は無いしなぁ。せいぜいお客さんと団員を守ってくれなぁヴァンヘイレンの勇者さん達〜」
背を向けて歩いたまま、ヒラヒラ手を振るババロアだった。
ババロアとピエロがテントへ入った姿を見届けてすぐ、トムがヒビキを真剣な顔で見た。
「オト先輩。本来の目的はそれだけじゃないですよね?」
「トム君は班長だから先生から聞いているようだね。…勿論そうさ。今更MARIAサーカス団の任務にあたった事には訳がある」
「??」
ヒビキとトムの会話が全く理解できていない2人以外は首を傾げ、頭上にハテナを浮かべる。
メアが、手を挙げた。
「はいっ!オト先輩。トム君。私達は先生から聞かされていないんですけど、MARIAサーカス団任務の本来の目的って何ですか?たくさん集まる人間をターゲットにして現れる神々の排除じゃないんですか?」
「ルディ。それは勿論必要な任務だ。神々も、1人1人人間に造り直しの儀を施すより一気に大量の人間に施した方が手っ取り早いからな。それ以外に。この任務の目的があるんだ」
「目的?」
顔を見合わせ首を傾げるメアとカナ。ヒビキは真剣な顔をして、口を開く。
「このMARIAサーカス団は先程団長が話した通り、何十年も前からあるサーカス団だ。でも、ずっと売れないサーカス団だった。けど突然昨年から世界でトップクラスを誇る人気のサーカス団になったんだ」
「すごーい!人気になれるように頑張ったんですねっ!」
「違うぞルディ」
「え?」
「MARIAサーカス団が突然世界一の人気になった理由…先生達が考えるに、それは…」

























18:30―――――

「ようこそ!本日は世界トップを誇るMARIAサーカス団サーカスにお越しくださりほんまおおきに!楽しんでいってなぁ!」
団長のババロアがテントの中心でステッキを掲げ、客を迎えれば客からは
「わあああ!」
とたちまち歓声が上がり辺りの照明が落ち、すぐに空中ブランコ、火の輪潜り、巨大一輪車…などなどサーカスならではの演目が繰り広げられていく。テントの中は客の歓声に満ち溢れる。
そんな中、テントにある全3ヶ所の出入り口でまるで警備員のように立ち、客を眺め警戒している少年少女らが居る。アガレス達ヴァンヘイレンの7人だ。
「わあああ!」
「きゃー!すごい!」
「さすが世界トップクラスを誇るMARIAサーカスだ!」
大歓声の中でもトムは真剣な顔付きで、耳につけた無線型マイクで通信をとる。
「こちらA入場口トム・ハンクス、アイリーン・セントノアール、カナ・ナタリー。周囲に神らしき人物は確認できない」
「こちらB入場口メア!とっ!アガレス君ですっ!こちらも不審人物の気配ナシッ!先輩達応答願いますっ!」
「こちらC入場口ヒビキ、アーノルド。見たところ観客席に不審な動きをとる人はいないよ」
各自が通信をとり合う事数回。テントの照明が再び落ちると、今までにない大歓声が上がる。
「ワアア!」
「フィナーレだ!」
その大歓声に、アガレス達も思わず目を向ける。ステージ中央にはマントをつけたババロアと、あの緑色の服を着たピエロが立っていた。
















ババロアはニィッと白い歯を覗かせて笑むとステッキでタン、タン、タンと3回床を叩いてからステッキを天高らかに挙げる。すると…
「ギィッ!ギィ!」
「ギェッ!ギェ!」
「あ、あれは…!?」
ステッキからは鷲や馬、ライオンやオウムなど様々な動物が組合わさった2体の珍獣キメラが現れる。テント内を暴れ飛ぶキメラに観客は目を輝かせ感動。しているが、ヴァンヘイレンメンバーは驚き、目を丸めている。
メアはというと…。
「あ、あれって…!?何だろう…変な感覚がするよ…!何だろう…例え辛いんだけどあれは普通の動物じゃないよ!」
そしてアイリーンは…。
「っ…、」
――あれはただの動物ではありませんわ。あれは神々を掛け合わせた…そう、キメラ…!!――
歯をギリッと鳴らし、ババロアとピエロを睨み付けていた。























終演後―――――

「神々は来なかったみたいだね」
「それならそれ以上に良い事は無いだろ、ナタリー」
「そうだよねトム君」
観客の最後の1人が帰るまで見送ってからヴァンヘイレンメンバーは集合し、今こうして各自の小屋へ向かい、満天の星空の下を歩いている。最後尾を歩くアイリーンだけは下を向いて黙ったままだから、トムとカナが時折チラチラ心配して見ているが。
「いやぁ!しかし最後の珍獣2体の迫力は凄まじかったな!ヒビキ!」
「うーん…。アレからはどうも嫌なニオイがしたよ」
「何だってェ!?」
「あ…わ、私もしました」
「ルディさんも?」
そこで一同はピタリ…足を止める。


ホー、ホー…

すぐ傍の木にとまっている梟の鳴き声が聞こえる静かな夜。
「嫌なニオイって何だいボクのメア!ヒビキ!?」
「えっと。例え辛いんですけどその…何か良くないモノのような」
「そうだね。僕も例え辛い。初めて感じた邪悪さだ」
「邪悪さならボクはいつもアガレスから感じているさ!!」
「……。アーノルド。少し黙っていようか」
「NO〜〜〜〜!!ヒビキ最近ボクに厳しくないか!?」
相変わらずなアーノルドにアイリーン以外の一同は苦笑い。
「とにかく。先生が言っていた事はあながち間違っちゃいないって事ですね」
「そうだね、トム君。MARIAサーカスからは何か嫌な…神のような、けれど違うような人間では無い嫌な気配がするから調べてこい。これは間違っちゃいないようだ」
しん…。
沈黙の後、各自が神妙な面持ちで小屋へ戻った。
部屋割りはヒビキ&アーノルド。トム&アガレス。メア&カナ。アイリーン。
























同時刻、大テント奥団員しか入れないプライベートルーム―――――

プライベートルームと言ってもテントの片隅にある謂わば化粧室だ。小さな2台の鏡台の周りにはメイク道具、床にはカラフルなウィッグや衣装が散乱していて足の踏み場も無い。
鏡台の前で椅子に腰掛け、口紅を拭き取りながら脚を前後にぶらつかせるババロア。
「団長お疲れ様でしたー!」
「団長また明日ー!」
「ほなまた明日の公演も気合い入れてくでー!」
「ショコラもまた明日ね〜!」
ババロアや、その隣に立っている緑色の服を着たピエロ『ショコラ』にメイクを落とした団員達が挨拶をしてテントを出て、各自が寝泊まりする小屋へ戻っていく。


しん…

ババロアとショコラだけとなったテント。先程まであんなに観客の歓声や、今日の公演の出来を語り合っていた団員達の声で騒がしかったのにあっという間に静まり返ってしまった。
そんなのお構い無しに、ババロアは濃いアイシャドウとつけ睫毛を落とし、星の入ったカラーコンタクトを外し、ピンク色のウィッグを外す。露になったババロア本来の髪は黒髪のボブヘアーで、メイクを落としたその姿は先程まできらびやかなステージに立っていたとは思えない地味な少女になっていた。これが、ババロア本来の姿なのだ。
ババロアは腕を天へ伸ばす。
「う〜っし!買い出しに行くで〜!」
椅子からピョンと降りてテントを出るババロアの後をピエロのショコラがついてくる。
「アンタも買い出し。ついて来んの?」


コク…、

頷くショコラ。
「ま、ええか。アンタにはヴァンヘイレンの事も他の事も。聞きたい事が仰山あるし。ええよ。ついてきな。椎名」
カチッ、

ババロアはテント全ての照明を消し、ショコラ否、椎名と共にテントを出た。

























アンジェラの街――――

「うぅ〜さぶっ!夏なのに夜は随分冷えるんやなぁ。日本でいう秋みたいな夜やヴォルテスっちゅー国は!なぁ?椎名」
「…うん…。そうだね…。僕はもう…慣れたよ…」
ステージ衣装にメイクを落とし素の姿となったババロアと並んで歩くのは、ピエロメイクを落とし右目に眼帯をつけた椎名だ。
アンジェラの夜は昼間の賑やかさとはうって代わり人通りが極端に少なく、遠くで野犬の遠吠えが聞こえる程静か。寂しくもあり、怖くもある。
「でもええんか?」
「……?」
「ヴァンヘイレンの任務蹴ってまでわざわざサーカスに参加せんでも良かったんやで?」
「……」
「あぁ!分かったで!」
ババロアは立ち止まり椎名の方を向き、手をポン!と叩く。椎名は相変わらず無表情。
「アタシと公演できるのもこのアンジェラ公演が最後やから、サーカス団を優先したんやろ!どや?違うか?」
「……。違うよ…」
「何や〜。椎名は何だかんだ言ってアタシになついてた思たんやけどなぁ〜」
ぶーっ、と口を尖らせて拗ねるババロア。椎名はただ前を向いて歩く。2人は、街で唯一まだ開いている明かりの付いたスーパーへ入った。




















「ふぅ〜!今日も仰山買うたなぁ!」
両手にずっしり荷物を持ってスーパーから出てきた2人。椎名は荷物の重さに早くもぐったりしている。
「あぎゃ!もう23時や!買い出ししとるとあっという間やなぁ」
「……」

「まだ夕飯食べてへんやろ?ほい。椎名も好きなフレンチトースト」
ババロアはビニール袋の中からガサガサと音をたてて市販のフレンチトーストを椎名に手渡す。椎名はジッ…と見てから静かに受け取る。
「……。ありがとう…」
「ええでええで〜。気にせんでも〜もぐもぐ」
隣で早速フレンチトーストを食べるババロアを横目に椎名は袋の中にしまった。
「そういや椎名、ヴァンヘイレンの奴らに気付かれへんかったな!ま、誰も、椎名がピエロの格好したMARIAサーカス団員なんて思いもせぇへんわなぁ!そういや、ヴァンヘイレンの任務は従兄弟が危ない状態やからっちゅー嘘の理由で蹴ったんやろ?」
「団長よく喋る…ね…」
「今に始まった事や無いやろ!アハハ!」
バシン!バシン!
ババロアが椎名の背中を叩いても、全く無反応な椎名。
「しっかしまあ。従兄弟っちゅーと天人(あまと)の事やろ?アハハ!天人は風邪も引いた事無い奴やっちゅーのに、アンタに勝手に危篤状態にされて可哀想やな!」
「……」
「せや。椎名」
「何…」
ババロアは少し頬を赤らめ、下を向いて口を開く。
「天人…元気なんか?」
「……。分かんない…」
「何や。従兄弟なら連絡くらい取ってるやろ。そうやそうや!アタシももうちょっとやさかい、最期に天人と喋らせてぇな。ケータイ。天人の番号分かるんやろ?アタシに教えてくれへん?」
「分かんない…」
「嘘吐くな!」
プイッと外方向く椎名が外方向いた方に移動するババロア。だからまた反対側を椎名が外方向けば、ババロアはまたそちらへ移動するから、それの繰り返しをしながら帰路を歩く2人。
「何や何や〜!!椎名のアホー!最期くらい恩人のアタシのワガママ聞いてくれたってええやろー!」
ウガー!とジタバタ暴れ癇癪起こすババロアを横目で見てすぐ、正面を向く。いつもの何を考えているか分からない無表情で。
「団長…」
「ぶぅ。何やアホ椎名!」
「はっきり言って…良い…?」
「ええで。ま、何の事かは分からへんけどなぁ」
「天人…彼女…いるよ…」
その一言にババロアの表情が一瞬固まる…が、すぐにいつもの様子に戻る。
「…そっか!」
「……」
「どんな子や?」
「団長より…可愛い…って…」
「天人が言うとったんか?あいつ〜!昔っから相変わらず生意気やな〜!」
アハハ!と明るく笑いながらも歩く速さが速まるババロアを、椎名は早歩きで追い掛ける。
「あと…」
「もうええ!」
「……」
「もうええで!天人の彼女の話は!!」
「団長、」
「椎名のアホ!!本当の事知ってても普通、本人の前で言う事やないやろ!しかも…しかもアタシがもう時期死ぬゆう時に!!椎名なんて大嫌いや!」


ダッ!

椎名には背を向けたまま、だが涙を辺りに散らしながらババロアは走って行った。


バチ…バチバチ…

点滅して音をたてる街灯の下。椎名はポツン…と1人立ち尽くす。闇夜に紛れてババロアの姿が見えなくなるまで。
「……」


ガサッ…、

先程ババロアから貰ったフレンチトーストを取り出し、見つめると甦る幼い日の記憶。

『え〜…またフレンチトースト…?』
『何や椎名。フレンチトースト嫌いになったんか?』
『…違うもん。でもお姉ちゃんフレンチトーストしか作れないんだもん…』
『何や?やっぱ嫌いになったんとちゃうか?』
『ち、違うもん!僕…、お姉ちゃんが作るフレンチトーストが一番す、すきっ…!』
『椎名はホンマええ子やなぁ〜』

「…フレンチトースト…本当は大嫌い…」
だが、椎名はババロアから貰ったそれを、目を強く瞑り我慢しながら頬張るのだった。



























MARIAサーカス団
団員小屋――――――

ヴァンヘイレンメンバーに用意された小屋からは離れた、サーカス団員が寝泊まりする小屋。此処は椎名の小屋だ。ヴァンヘイレンメンバーとは違い、各自1人部屋を用意されている。


ホー、ホー…

静かな夜。小屋の外からはやはり、梟の鳴き声以外聞こえてこない。
椎名は自室である小屋の簡易ベッドの上に腰掛け、携帯電話で誰かに電話を繋げている。


トゥルルル…トゥルルル…

「は〜い…」
電話の相手は甲高い少年の声をしており、眠たそう。
「天人…」
「奏お前なァ!夜中に電話してくんなバカちん!」
「ごめん…」
「で?何」
椎名は脚を前後にブラブラさせながらただ無表情に淡々と話す。
「悪魔って…天人の家で払える…?」
「はぁ?俺ん家、寺!そういう西洋の生き物は教会でしょーが普通」
「そっか…」
「つーかそういう人外の事なら神殺し機関ヴァンヘイレンの方が詳しいんじゃないの?」
「ヴァンヘイレン…は…神の事しか…分からない…から…無理…だよ…」
「ふぅん」
「じゃあ…」
「そういやさ。明(あきら)元気?」
「……」


ピタッ…、

前後に動いていた椎名の脚が止まる。



















「……。おやすみ…」
「おい無視すんな奏!お前昔っから自分の言いたい事言ったら他人の話聞かないよな〜天人クンそんな子に育てた覚えありませんッ!でさ。明、元気に団長やってんの?」
明(あきら)とはババロアの本名だ。『早矢仕 明』(はやし あきら)。
ババロアやショコラはサーカス団内での謂わばコードネームのようなものなのだ。
「うん…まあ…うん…」
「何そのビッミョーな返事」
「じゃあ…おやす、」
「俺さぁ近々、明に告るわ」
「……」
「造り直しの儀とか神とか最近は悪魔まで下界にのさばらってるみたいじゃん。俺は大丈夫だけど、明は何の能力も無い普通の人間だろ。だから俺が居りゃ、安心じゃん」
「……」
「今、サーカスってヴォルテスの首都アンジェラでやってんだろ?近々行くかな!明のサーカス団員姿まだ見た事無いし」
「…団長…彼氏いる…よ…」
「そんなのぶっ飛ばして俺のもんにするよ〜ん」
「……」
「ま。俺と明の応援頼むよ!奏は明の弟みたいなもんだろ?明の好きそうなモンとか今度教えろよ。それ片手に〜な!俺は奏がヴァンヘイレンの歴史に名を残す奴になるよう応援するからさ!じゃあな。もう夜中に電話してくんなよ、次は天人クン怒っちゃうよ〜!」


ツー、ツー…

「……」
一方的に切られた電話の画面を黙って見つめてから、仰向けのままベッドに大の字で横たわる椎名。
「……」
プレハブの打ちっぱなしコンクリートの冷たい灰色の天井をボーッ…と見つめ、右腕を額にかざす。

『最期に天人と喋らせてぇな。ケータイ。天人の番号分かるんやろ?アタシに教えてくれへん?』
『俺さぁ近々、明に告るわ』

ババロア(明)と天人の言葉を思い出しながら強く、目を瞑る。
「ごめん…団長…ごめん…」






























天界―――――――

「本っ当!何なんですの!?あの椎名という人間!」
「あ。お嬢よ…おかえり…フフフ…」
「おー!アドラメレクおかえり!」
「お嬢様。おかえりなさいませ」
頭から湯気を出し、ぷんすかぷんすか怒りながら長い髪をなびかせ帰ってきたアイリーン…ではなくアドラメレク。ソファに腰掛け、談笑中の神幹部がアドラメレクを笑顔で迎え入れる。


ボフッ!

アドラメレクはベルベットローゼの隣のソファに腰掛け、脚を組む。やはり相当お怒りの様子。そんなのお構い無しにベルベットローゼは目を輝かせて1枚の写真をアドラメレクに見せる。
「見てくれよアドラメレク!昨日造り直しの儀をやってやった人間の最期の面!最っっ高に笑える面だろ!?助けてくれ〜!って命乞いの面がよ!」
「あらそう。素敵ですわね」
「おい?何だよ。何をそんなにイライラしてんだよ。あ!あれか?この前話してた人間のコトか?」
「そうですの!!椎名!椎名という人間ですの!」
くわっ!と目を見開くアドラメレクに、さすがのベルベットローゼも一歩引いてしまう。
「あの人間、わたくしを神と疑い何度も何度も下劣な視線を送ったり、フレンチトーストを食べに行こうと誘ってわたくしを試したり!思い出しただけで怒りが込み上げてきますわ!!」
「ほう。お嬢様をここまで怒らせる人間は初めてではありませんか?」
「そうねぇ…可愛い可愛いお嬢を怒らせたのだから…原型を留めなくなるまで八つ裂きにしてやりたいわね…フフフ…でもまあ…怒ったお嬢の顔が見れて良かったけれど…フフフ…」
「んで?どんな人間なんだよ。そのシイナっつー人間は」
アドラメレクは右目を右手で隠し、無表情をして椎名の顔を身ぶり手振りで真似る。
「真っ黒い短髪で、右目は白い眼帯をしていて、いつもボーッとした無表情で、背中に大きくて黒い槍を背負っておりますの!」
「アドラメレクだったらそんな奴、瞬殺だろ?」
「それでは楽しくありませんわ!椎名が死よりも恐ろしい屈辱を味わわせてから造り直しの儀を施してやりたいですの!!例えば、椎名の大切な人間を片っ端から殺していき、最後は椎名を!など!ですから!ベルベットローゼ!マルコ!御子柴!椎名という人間の素性や人物関係を調べてまいりなさい!宜しいですね!?」
「あーいよっ」
「お嬢様のご命令とあれば」
「お嬢から命令されちゃった…フフフ…嬉しいわぁ…」
ベルベットローゼ、マルコ、御子柴が部屋から去る。


バタン、

「ふうっ!」
バサッ!
まだ怒りが収まらないのだろう、怒っている時は髪をなびかせる癖のあるアドラメレクはソファに脚を組み腰掛けたまま、鉄格子で頑丈に閉ざされた扉にふと目を向ける。ピンク色の艶やかな唇に細く白く長い指を添え、微笑。
「あら…。そういえば清春は元気でしょうか」


ガチャン…、

硬く閉ざされた重たい鉄の扉を開く。






















ギィ…、

「清春」
「う"…う"ぅっ…」
窓1つ無い真っ暗なまるで監獄のような清春の部屋。辺りには、真っ二つに割れた無惨なベッドや割れて散乱した花瓶のガラス破片。これは先日、清春が勝手に下界へ下りてマルコと揉めた時のままだ。
清春は部屋の片隅で膝を抱え、俯いている。アドラメレクはその隣に屈み、清春の髪を撫でる。神の青と人間の赤が混ざった血が付着した白い髪を。
「まあまあ。どうしましたの。血が付いておりますわよ清春」
「う"っ…、くそっ!くそくそくそ!!あいつ!俺の事気持ち悪い化け物だって言いやがった!マジムカツク!超うぜェ!!ぶっ殺す!ぶっ殺す!」
「また何かを言われましたの?下級神の戯れ言など気にしてはいけませんことよ」
「違う…人間だよ!あの眼帯野郎!」
「人間…眼帯…?」


ピクッ…、

アドラメレクは目を見開く。
「清春。貴方、人間に会いましたの?まさか…下界へ降りましたの?」
「!」


ビクッ!

あからさまに体を震わせる清春。しかし、アドラメレクは清春の髪を優しく撫でたまま。
「怒ったりしませんわ。貴方もやんちゃ盛り。下界に降りて、下劣な人間共を殺したくなる気持ちはよく分かりますもの。それより…眼帯をした人間の話、わたくしに聞かせてくださる?」
「……。ヴァンヘイレンの制服着た黒い髪で、槍を持ってた奴。しかもそいつさ!神と神を合わせたキメラを武器にしてやがったんだよ!それで、俺もキメラの材料にしたいとかほざきやがったんだし!」
アドラメレクは静かに頷く。















「それに、そいつと会う前にダーシーって奴。下界ではメアって名乗ってる、親父の愛人にも会ったし」
「まあ。そうでしたの」
「とにかくさ!アドラメレクの姉ちゃん!眼帯野郎が超ムカツクんだよ!俺の事神と人間の気持ち悪い生き物とかバカにしやがって!」
「ふふ。奇遇ですわ清春。わたくしもその、眼帯をした人間に心底腹がたっておりますの」
「え…?マジかよ?」
アドラメレクは微笑みながら頷く。
「清春。わたくしと共に下界へ来なさい」
「!?」
「眼帯をした人間の素性は今、ベルベットローゼ達に調べさせていますわ。それに、貴方もそろそろ本格的に下界デビューさせたかった時期ですし」
清春は目を輝かせる。子供のように。
「マジで!?ありがとうアドラメレクの姉ちゃん!」
「ふふふ」
アドラメレクは立ち上がり、清春の前を歩く。
「ああ。そうそう。一つ忠告しておきますわ清春」
ピタッ。
足を止め、アドラメレクは満面のあの天使のような笑顔で清春に顔を向ける。
「貴方がわたくしに秘密で下界へ降りた理由。そして今、下界へ降りる事になった時とても喜んだ理由。それらがどちらも、両親に会いたいという理由でしたらわたくしは清春。貴方を、原型を留めなくなるまで八つ裂きにしますわよ」
「…!!」


ゾクッ…!

青ざめた清春。しかしアドラメレクはにっこり微笑んだまま。
「そ…そ、そんなわけねーじゃん!俺をこんな体に産んだ親父とおふくろなんて今すぐぶっ殺したいくらいだし!!」
「ふふ。そうですわよね。ごめんあそばせ。わたくしのとんだ早とちりだったようですね」
「あ、当たり前じゃん…!」
「では。下界へ参りますわよ、清春」
「う…、うん…」
くるっ。
踵を返し、再び清春に背を向けて歩き出したアドラメレクの笑顔が一変。悪魔のように恐ろしい顔付きになった。
「この世に生を受けた時から貴方はわたくしのモノでしてよ…」
清春には聞こえない声で呟いていた。



























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