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GOD GAME
ページ:3
「僕達神は参拝者さんがお願いする時だけ心の声が聞こえます。…由樹ちゃんは学校でお友達から辛い事をされているのですね…。だからといって、せっかくこの世に受けた生を投げ出しては絶対にいけません」
「……」
由樹は下を向く。酷く暗い雰囲気を纏いながら。御殿は真剣に由樹と向かい合い話を続ける。
「だから由樹ちゃん。もうあのような事を考えるのはやめましょう。由樹ちゃんがいなくなったら悲しむ人はたくさんい、」
「いません…」
「由樹ちゃ、」
「いないから…みんな…私に死ねって言うんです…」
「でもご家族が、」
「お父さんもお母さんもお祖母ちゃんも…お仕事の方が大切みたいで…4才の頃から鍵っ子でした…。私はお父さん達みたいに頭が良くないから…成績が悪いとどうしてこんな子が渡邉家の子供なの。と言われて…だから私なんかが死んでも誰も悲しまないんです…」
「由樹ちゃん…」

















再び起きた沈黙。
せっかく由樹がたくさん喋ってくれたのに。その内容がこんなにも辛く悲しい内容だなんて。御殿は切なそうに眉尻を下げ、俯く由樹を見つめるしかできず。
「神様…」
「は、はい…」
「お願いです…私を…私をこの世から消して下さい…」
「できません…」
「どうしてですかっ…!だって生きていたって辛いだけなんです…!だったらいっそ生まれてこなきゃ良かった…!消えたい…消えたいです神様…!」
「由樹ちゃんがいなくなったら僕が悲しみます」
「え…」
涙を流しながらゆっくり顔を上げた由樹。御殿は切なげに眉尻を下げたまま、由樹を見つめる。
「僕は人間ではありません。ですから、由樹ちゃんに酷い事をしたり言うクラスメイトやご家族に直接叱りに行く事はできません。神だからといって、由樹ちゃんだけを贔屓して、由樹ちゃんをいじめるクラスメイトやご家族だけに天罰を与える事もできません。神は全人間に平等でなくてはいけません」
「……」
「ごめんなさい…。神なら何でもお願いを叶えられると下界では言い伝えられているのに…。何もできなくてごめんなさい…。でもこれが天界の決まりなんです…」
「……」
「由樹ちゃんの背中を押してあげる事しかできなくて…ごめんなさい」
「!」
由樹の両手を包みながら、手の中に古びた御守りを持たせる御殿。由樹は目を丸めて顔を上げる。
「神主さんが居なくなってしまい、こんなボロボロの御守りしかなくてごめんなさい。でも、御守りには由樹ちゃんが笑顔になれるおまじないを施しておきました。この御守りを持って、どうか、人生にめげないで下さい。由樹ちゃんの味方がいないのなら、僕だけは神だけは由樹ちゃんの味方ですよ」


じわっ…

涙を再び流す由樹。ボロボロの赤い御守りを胸にぎゅっ、と抱き締めて何度もコクコク頷いていた。
















「気を付けて帰って下さいね」
コクコク、
由樹は御殿に見送られながら頷き手を振りながら石段を降りていった。
長い石段から由樹が見えなくなると御殿は石段に背を向け、社殿へと戻っていく。
「大変ですね下界も…。神も人間も心を持つ生き物はどうしてこうも、互いを傷付け合う事しかできないのでしょうか…」





















翌日―――――

「よっし!また綺麗になりましたよー!」


しーん…

掃き掃除を終えた御殿。しかし昨日同様、人の気配ゼロな御殿神社。御殿はまたがっくり肩を下げ、竹箒を引き摺りながら本殿へ戻る。
「はぁ…。昨日1000年振りに人間がいらしましたから次人間がいらすのは1000年後でしょうか…。はぁ…長いですね…」


ガサッ…、

「ん?」
物音がして石段の方を振り向くと。
「はぁ、はぁ…神様っ…!」
「ゆ、由樹ちゃん!?」
長い石段を息を切らして登ってきた由樹が居た。御殿はびっくり。まさか連日続けて由樹が来るとは思わず。寧ろ、昨日のあれっきりで終わりだと思っていたから。
「由樹ちゃんですか!?」
コクコク、
「ああ、こんなに汗をかいて…。夏の暑い中あの長い石段を登るのはさぞ大変だったでしょう。縁側は日陰になっていて風通しも良いですから…!」
汗だくで頬も上気している由樹を、昨日と同じ本殿の縁側に案内する御殿。御殿も由樹もとても優しい笑みを浮かべていた。























それから月日は流れ、3年後。アガレスとメアが任務で御殿神社を訪れる2週間前―――――

「御殿さん!」
「おやおや。由樹ちゃん。石段を一段飛ばししては怪我してしまいますよ」
3年前の暗い雰囲気を纏った由樹は何処へ。高校生のブレザーを着て元気に石段を一段飛ばしで駆け上がってきた由樹。御殿は本殿周りを竹箒で掃除しながら、にこにこ微笑む。
「見てください!」
「おや?」
ジャン!とばかりに笑顔で御殿に見せた物それは絵画で金賞をとった賞状。御殿は箒を持ちながら満面の笑みで拍手する。
「わあ!由樹ちゃんすごいですね!絵で金賞をとったのですね!おめでとうございます!」
顔を真っ赤にして照れながらいつものようにコクコク頷く由樹。
「あと…あと…!御殿さんが御守りをくれてから私、友達もたくさんできました…!お父さんとお母さんもお祖母ちゃんも優しくなりました…!私、今毎日がすごく楽しいです!だから…ありがとうございます!」
ペコリ。頭を深々下げる由樹に、御殿はにこにこ。
「良かったぁ。それで最近の樹ちゃんは元気なのですね。由樹ちゃん。これから先また辛い事が訪れたとしても、もう3年前のような事を考えてはいけませんよ」
「はいっ…!」
「ふふ。では僕の出番も終わりのようですね」
「!?」
由樹は目を見開く。御殿は笑顔だが少し寂しそうに目線を下げながら箒で枯葉を掃く。
「由樹ちゃんが毎日御詣りに来て下さる事はとても嬉しいです。でも、由樹ちゃんにはもう優しい人間のお友達がたくさんできましたから、もう此処にばかり通わず人間のお友達との時間を増やして下さいね。由樹ちゃんは人間なのですから」
「っ…!嫌です…!私…私これからも毎日此処に通います!だって…だって私は…」
「由樹ちゃん?」
首を傾げて由樹を見る。由樹は顔を真っ赤にして、声を振り絞る。
「私、御殿さんの事が好きなんです!!」
「僕も由樹ちゃんの事好きですよ」
「ち、違う…違うんです御殿さん…!私…私、御殿さんの彼女になりたいんです…!」
「彼女ですかぁ。僕の……………えぇえ!?かかか彼女ですか!?」
コクコク、コクコク、耳まで真っ赤にして頷く由樹に御殿も顔を真っ赤にしてカランカラン!思わず竹箒を落としてしまう。

















「やややや!ゆゆ由樹ちゃん!僕と由樹ちゃんでは住む世界が違うのですよ!そそそれに、神と人間が恋仲になってしまうと造り直しの儀の対象にもなり得ますし、僕のお知り合いで神と人間が恋仲になり大変な目になった方がいまして!」
「わ、分かります…!御殿さんにご迷惑をお掛けしている事も…!で、でも私…!この金賞をとれた絵画のテーマが大切な人だったのですけど…、わ、私には御殿さんしか浮かばないくらい御殿さんの事ばかり考えてしまうんです…!…御殿さんは私の事ききき…嫌い…ですか…?」
御殿は顔を真っ赤にして汗をダラダラかき、心臓はドクン!ドクン!鳴らしながら口をパクパクさせる。
「御殿さ…、」
「ぼ、僕も!!由樹ちゃんの事が世界一好きですっ!!」
「!!」
由樹は自分の口を両手で覆い、顔を真っ赤にして涙をボロボロ流す。涙を流す由樹にギョッとして御殿は手拭いですぐさま涙を拭ってやる。
「ゆ、由樹ちゃん!?どうしましたか!?僕何か変な事言いましたか!?」
「ひっく、ひっく」
「由樹ちゃん!?」
「ありがとうございます、ありがとうございます御殿さん…!ひっく、ひっく」
それが嬉し泣きだと気付くと御殿は穏やかな笑顔を浮かべる。
「…おや。そろそろお散歩の時間です」
「ご、ご一緒させて下さい…!」
「はいっ!勿論!」
御殿は由樹と並んで、石段をゆっくり降りていく。チラチラ御殿を見ながら由樹がポツリと一言…。
「ご、御殿さん…!」
「はい!」
「手…そのっ…あの…」
「は、はい…!!」
どちらからともなく手を遠慮がちに繋ぎ、石段をゆっくり降りていった。
「先程お話しした造り直しの儀の事ですが…」
「?」
「由樹ちゃんの事は僕が守りますから安心して下さい!」
「は、はいっ!!」





























場面は戻り、現在――――

獣のように唸り、由樹の頭から血が滴る程強く掴む変わり果てた御殿。由樹は涙を伝わせる。
「御、殿…さ…ん…。私の事…分かる…?」
「ヴヴヴヴヴ!!」
「私の事…忘れ…ちゃった…?」
「ヴヴヴヴヴ!!」
「御、殿…さ…ん…」


きゅっ…!

由樹は御殿を抱き締める。
「?」
御子柴は眉間に皺を寄せながらその光景を睨み付ける。
「御殿さん…御殿さん…ごめんなさい…私のせい…私が我儘言ったせいです…ごめんなさい…私が守ります…今度は私が御殿さんを守ります…。だから…私の事は忘れても…私の事は祟っても…他の人間を祟らないで下さい…優しい御殿さんに戻って下さ、」
「ヴヴヴヴヴ!!」


ガッ!

我を失った御殿には由樹の言葉は届かず。由樹の頭を掴んだまま地面に強く叩き付けた。由樹の頭から真っ赤な血が噴き飛ぶ。
「ヒャア!!」
それを見て目を輝かせ悦びの声を上げる御子柴。
「ヴヴヴヴ…!」
尚も由樹に歩み寄り、腕を振り上げ、とどめをさそうとする御殿。由樹は意識朦朧とした中、御殿がくれた御守りを…いや違う。よく見ると手書きで『御守り』と書かれた由樹の手作り御守りを御殿に差し出して微笑んだ。
「御…殿…さ…、あ…げる…、こ…れ…、作っ…た…の…、恥ず…か…し…て…渡、せな…かっ…た…、御、殿さ…が…、幸…せになれ…ます…よう…に…。もっと…早…く…渡せ、…ば…こん…な…事…ならなか…った…ね…、」
「ヴヴヴヴヴ!!」
頭から血を流し、笑顔を浮かべ、涙をボロボロ流す。
「御、殿…さ…の…お嫁…さ…ん…なりた…かっ…た…な…」


グチュッ!!

祟り神と化した御殿の腕が由樹にとどめをさした。噴き飛んだ真っ赤な血が、社殿の色褪せた赤を新鮮な赤に塗り替えた。

















「ヒャア!!ヒャアァ!!最っっ高よ御殿氏ィイイ!アハ!アハハハ!憎き御殿氏が無様な姿になって最高よォオ!アハハハ!」
「殺シタ!殺シタ!」
「悪魔化シタ人間ヲ!恋人ヲ!」
「御殿ガ殺シタ!殺シタ!ヒャハハハ!」
下級神々も御子柴の真似をしてやんややんや喜び、踊る。
「ヴヴヴヴヴ!!」


ドガン!!

「あらあら…」
我を失った御殿は御子柴や下級神々にも襲い掛かってくる。


ドガン!!

「ギャアアア!」
簡単に避けると御子柴に対し下級神々は避けれず、見事潰される。が、御子柴はニンマリ笑みながらスウッ…と消えていった。
「お嬢に報告しなくちゃ…また会いましょうね…祟り神御殿氏…フフフ…」
「ヴヴヴヴ!!」
獲物がいなくなると、祟り神となった御殿もスウッと姿を消して、何処かへ行ってしまった。

























「はぁ、はぁ!御殿さん!由樹ちゃん!」
天狗に吹き飛ばされてから何とか石段を駆け上がり、御殿神社へ到着したアガレスとメア。しかしそこで見た光景は…
「由樹ちゃん…!!」
社殿の屋根まで飛び散る真っ赤な血。地面に散らばる真っ黒く変色した無数の御札。そして、頭から血を流し、上半身と下半身から大量出血して倒れている由樹。
「由樹ちゃん!!」
メアは涙をぶわっ!と溢れさせ、由樹に駆け寄る。
「由樹ちゃん!由樹ちゃん!」
由樹の上半身を起こし、揺さぶる。
「揺さぶるな。その分ではもう、」
「アガレス君は黙ってて!!」
「……」
悪魔化した目の下のペイントや生えた黒い羽を見てアガレスはただただいつもの無表情を通すが、心の奥では思う事があったそうな。
「由樹…ちゃん…、ひっく…、アガレス君…」
「何だ」
「御殿さんと由樹ちゃんは…ひっく…、アガレス君と黄色いリボンの子みたいに…なっちゃったの…?」
「…ああ」
「御殿さん!御殿さーん!何処に居ますか御殿さーん!」
冷たくなった由樹を抱き締め、涙を流しながら御殿を呼ぶ。しかし、しん…。とした静寂に包まれた夏の夜があるだけだった。
「御殿さんも…悪魔になって…?でも…由樹ちゃんだけ於いて…?あり得ないよ…あんなに仲良しだった2人に何があったの…?」
アガレスは辺りを眉間に皺を寄せながら見回す。
「嫌なニオイがするな」
「え…?」
「祟り神に似たニオイがする。もう此処には居らんが」
「祟り神…?御子柴神は違うよね?」
「ああ。祟り神も造り直しの儀を施しにやって来ていたのか?しかし神と祟り神とは相容れないはずだが」
「そんなのどうでもいいよ…。由樹ちゃんが…こんなに…、ひっく…、私達があの時…きさらぎ駅で由樹ちゃんを引き留めていたら…こんな事にならなかったのにっ…ごめんね…ごめんね由樹ちゃん…」
「……。ダーシー殿。帰るぞ」
「……」
「ダーシーど、」
「キィエエェエエ!!御殿神めェエエェエ!!」
「!?」
「な、何!?」
発狂した声がし、石段の方を2人が驚いて振り向く。そこには、白装束に身を包んだ白髪の老婆が頭に蝋燭を立て、両手には人形の紙を持ちその紙を杭で打ち付けながらやって来た姿が。
「こ、これが祟り神!?」
「いや。人間だ」
メアの前に立つアガレス。アガレスを見て老婆は開ききった目をしながらも、ピタリ。動きを止める。















「坊主。御殿神は何処だ」
「此処にはもう居らんらしい」
「キィエエェエエ!あいつ逃げおった!あいつ逃げおった!…!由樹!由樹!!」
後ろで倒れている由樹を見付けると、老婆はアガレスとメアを老人とは思えぬ力で振り払い、由樹に駆け寄る。
「由樹!由樹や!由樹や!返事をしておくれ由樹!」
しかし絶命している由樹が老婆に返答できるはずも無く…。
「キィエエェエエ!!御殿神かぁああ!あいつが由樹をォオオ!!」
「ち、違います!御殿さんは由樹ちゃんを守ろうとしました!御子柴神達が由樹ちゃんに造り直しの儀を施しに来てそれで、」
「小娘お前に何が分かる!!」
「ひぃっ…!」
メアが言っても聞かず、目玉をひんむいてメアに喚き散らす老婆。びっくりするメアの前に立つアガレス。すると…
「ギャアアア!!ち、近寄るな坊主!!お前は嫌なニオイがする!!悪魔じゃ!悪魔のニオイがしよる!ギャアアア!」
ガタガタ震え、踞った老婆。しかしアガレスは平然としたまま。
「雌豚。貴様、由樹の祖母だな」
「そうじゃ…!そうじゃ…!!」
「御殿氏の事を知っているようだが」


ガバッ!

再び目玉をひんむいて立ち上がると老婆は人形の紙を杭でカンカン!鳴らして打ち付け出す。
「あいつじゃ!あいつが由樹を殺したんじゃ!!あいつに魅入られたせいで由樹は死んだのじゃ!!」
「なるほど。神に魅入られた人間…由樹はまさしくその通りだな」
「ちょ、ちょっと!アガレス君まで何を言って…!」
「由樹が御殿神社へ行っている事にもっと早く気付いておればこんな事にはァアアア!!」
「由樹の死を何故分かった」
「御札じゃ!家中の御札と盛り塩が真っ黒く染まったのじゃ!仏様の像がぱっくり割れたのじゃ!!」
「そうか」
「あいつめェエエェエ!由樹を魅入りおって御殿神めェエエェエ!殺してやる!殺してやるぞ御殿神ンンンン!」
「で、でも!由樹ちゃんも御殿さんの事が好きで、御殿さんに救われたって…!」
「黙れ小娘がァアアア!人間と神が相容れてはいかんのじゃ!!そんな事も気付かん御殿神など祟り神じゃァアアア!!」
老婆の迫力に負けて物怖じするメア。その間にも老婆は由樹を抱き抱えながら「キィエエェエエ!」と発狂しながら石段を降りていった。


しん…

老婆が去り、残された2人。
ポン、
アガレスがメアの右肩に手を置く。
「帰るぞ」
























翌日7:20、
きさらぎ駅――――


ジリリリリリ!

「間もなく電車が発車致しまーす」


ピシャン!

人気の無いホームに響いたベルと駅長のアナウンス。電車のドアが閉じるとガタンゴトン…ガタンゴトン…揺れながら電車は田舎町を発車した。
「……」
周りには早起きの老人達がぽつりぽつり居るだけでガランとした朝の車内。行き同様4人掛けボックス席に向かい合って座るアガレスとメア。頬杖着いて車窓を眺めるアガレス。メアは下を向いて酷く落ち込んでいる様子。
「任務…先生にどう言おう…」
「失敗。それ以外ない」
「そう…だけど…。造り直しの儀対象者が御殿さんと恋仲でそれで…とか説明、」
「する必要は無い」
「でも!」
アガレスはメアに目だけを向ける。
「対象者は造り直しの儀に合う直前悪魔に悪魔化され死亡。任務失敗。それだけだ」
「そんな言い方!」
「では御殿氏の事を事細かにヴァンヘイレンの人間に説明するのか。怪しまれるに決まっている。神である事を気付かれない為に偽名まで使っているのではなかったのか」
「……」
論破されてしまい下を向き口ごもるメア。
「でも…」
「ダーシー殿。貴様のその正義感はいつか裏目に出る。気を付けろ」
「うん…。ごめんなさい」
「別に俺に謝る事ではない」
「だって…、ひっく…、だって悲しいよやっぱり…!御殿さんも由樹ちゃんもあんなにお互い大切に想い合っていたのに!どうしてこんな結末にならなくちゃいけなかったんだろう!」
ひくひく肩をひくつかせて下を向いたままポロポロ涙を流すメア。














「神と人間では住む世界が違う。人間を魅入った神が悪い」
「でも由樹ちゃんだって御殿さんの事を好きだったんだよ!」
「だが端から由樹は呼ばれていたのだろうな」
「呼ばれ…る?」
アガレスはまた頬杖着いて車窓の外を眺める。どこか悲しい遠い目をして。
「人目につかん人里離れた御殿神社に由樹が訪れた事は偶然と言えばそれまでだが。呼ばれたと言っても過言ではないだろう」
「……」
「俺が言えた事ではないがな」
「…アガレス君も御殿さんと同じなんだもんね。人間の黄色いリボンの子との事」
「……」
「似てないようで似ているね。神も人間も。心が無ければ誰かを好きになったりする事は無かったのかな。でも…心があるから誰かを好きになれるのに。難しいね」

『終点ー、ヴァンヘイレンー、ヴァンヘイレンー。お降りの際はお忘れ物のございませんようお気をつけ下さい』

「降りるぞ」
アガレスは膝に両手を着いて立ち上がると、ポケットに手を入れてさっさと電車を降りていく。メアは一度車内から、京都の方角を寂しそうに振り向いてから電車を降りた。


















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