症候群-追放王子ト亡国王女- ページ:2 「きゃああああ!」 「将軍!!」 「この男は君が返答を迷っている間に拳銃を取り出した!君がどちらの返答をしても君を殺す気だ!」 「当然だ。迷いが有る即ちそれは我々ルネを裏切る気持ちが有るという事だ」 「お姫様と共に逃げるんだウィリアム君!」 「そんな事できません!」 「将軍命令が聞けないのか!君が逃げなければお姫様を誰が守るというんだ!」 「…っ!」 「早く逃げろ!」 「り、了解…!」 パァン!パァン! またしてもダイラーがウィリアムへ発砲するが、エドモンドがまた盾になる。 「ぐっ…!」 機体コックピットへ着いたウィリアムは歯を食い縛りながらも、機体を上昇させるとルーベラへ映像付き通信を繋げた。 「今から俺の後をついてくるんだ!…、えぇと…」 「ルーベラよ!」 「ルーベラ!俺の機体の後をついてくるんだ!決して離れないように!」 「了解!」 ウィリアムの指示通り、彼の戦闘機の後をルーベラの戦闘機はついていく形で飛び発っていった。 ドサッ、 一方、更に数発撃たれたエドモンドは今度こそ地に伏し、ピクリとも動かなくなってしまった。 ダイラーは、飛び発っていたウィリアムとルーベラの戦闘機を見上げ、目で追う。 「裏切るという意思の表れと捉えて良いな」 自分が乗ってきたルネ軍戦闘機の元へ駆けていった。 ダイラーは自機に乗り込む。コックピットの座席に着いてすぐ、目が追い付かない程の速さで機内のキーボードを打ち込んでいく。そうすれば低いエンジン音と震動と共に空へと上昇するダイラー機。 ピピピッ、 電子音と共にモニターに映し出されたウィリアム機とルーベラ機の位置。 「最高速度を出せば追い付くな」 キィン! すぐに攻撃体勢に入れるようサーベルを繰り出し、2機目掛けて飛ぶ。 「…!」 しかし咄嗟に背後を振り向いたダイラー機。 キィン!! 背後から現れたのはカイドマルド戦闘機。モニターにはオープンチャンネルで繋げられた映像通信によって映し出されるエドモンドの姿。ヘルメット越しだが血が頭や眉間からドクドク流れ、顔はまるで死人のように真っ白。 「まだ生きていたか。…いや辛うじて生きているだけで死んでいるも同然か。その状態で私に挑むとは。1年前の第四次世界大戦で毒ガスを投下した愚かなカイドマルド人らしいな」 「将軍と将軍の…はぁ、はぁ"…戦いだなんて…ゼェ…はぁ、初めてで…心踊るよ…!はぁ…」 「…開戦すらできなさそうな身体状況で何を言う。理由は分からないが、カイドマルドを貴様らを裏切りルネ軍に在籍し敵対したあいつを何故そこまで守る」 「何故…?はは…そんなもの決まっているよ…はぁ…ゼェ…」 『エドモンド将軍!お時間のある時に俺に特別訓練をしてくれませんか?』 『何故だい?カイドマルド軍でのウィリアム君の成績は同期に比べて群を抜いているよ』 『いつまで経っても終わりが見えないこんな戦乱の時代で犠牲にしたくないんです。守りたいんです、俺だって。ジュリアンヌさんのように。家族を!』 過去、ウィリアムが王室とカイドマルド軍に在籍していた時を思い出す。 キィン! エドモンドはサーベルを繰り出した。モニターの向こうに映るダイラーの姿が二重にも三重にもぼやけて見えるというのに、いつもの陽気な笑顔を浮かべて。 「王子様が…はぁ、はぁ…しがない軍人の盾になる国がある…ゼェ…、だなんて聞いた事無いだろう!?だからさ!」 「…理解不能だな」 「守るべき者も無く、はぁ…はぁ…ただ無慈悲に惨殺を繰り返す…はぁ…ルネの君には分からないだろうね!さあ!将軍同士の戦いを始めようじゃないか!」 [*前へ] [戻る] |