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症候群-追放王子ト亡国王女-
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日本――――

先日、静かに始まったカイドマルド王国との戦争。カイドマルドが日本に攻め込んできのだが、軍隊の数が異常に少ない。不思議に思いながらも日本軍はこれを幸運に思い、戦う。
国民に被害が加わらないよう努めるが、カイドマルドは既に日本の港を一つ破壊した。それに伴い、港近くに住んでいた罪の無い日本国民を全員射殺。
怒りが込み上げた日本軍は、人出を今の倍以上に増やした。敵の数に合わせ、甘く見ていた失敗。馬鹿にしていると痛い目にあう事は分かっていたはずなのに、早速過ちを犯してしまった。
「皆殺しだ!1人としてカイドマルドへ帰らせるな。此処を墓場にしてやれ!」
前線で軍人達を率いる男性は日本軍将軍の『武藤 厚成(むとう こうせい)』52歳。
年の割に身長が高くて、白髪が1本も無い真っ黒な髪をしていて体格も良く、若々しい。彼はいつも何事にも全力で取り組む人間だ。逆に若い軍人の方が若さを発揮していない上、経験が浅いせいあるのか、戦場でも覚束ない姿が多々見られる。


パァン!パァン!

銃声が鳴り響く港。
辛うじて生き残っていた国民は避難させているのでその面では安心して、且つ存分に力を発揮する事ができる。
しかし、焼かれて足場が脆くなったり、既に崩れている場を戦場とするのはホームの日本人にも辛いものがある。
「しょうぐ、あああ!」
「荒井!」
足場が崩れて海に転落した若い軍人の叫び声に振り向いた時には、カイドマルドの軍人が3人で転落した軍人に銃口を向けていた。
慌てて目を見開いた武藤は、相手をしていたカイドマルドの軍人を手早く片付ける。






























「やめろ、銃を下ろせ!撃つぞ!」
遠くから聞こえてきた武藤の叫び声に、カイドマルドの軍人達は3人揃って武藤の方に顔を向けてきた。武藤が手に持つ拳銃の銃口が自分達3人の方を向いている事に気が付いたようで、また3人揃って目を大きく開く。
――はっ、まだ若い軍人だな。これくらいで驚いている――
気持ちに余裕ができた武藤は、口元を微笑ませた。
「そうだ。そのままおとなしく、」
言い欠けた時、3人の軍人は口が裂けてしまうのではないかと思う程大きく口を開いて不気味に微笑んだ。気味悪いくらいまた、3人揃って。
その姿が悪魔のように不気味で恐ろしくて、将軍の武藤でさえ一瞬ではあるが悪寒がして体を震わせた。しかしその一瞬だけ、も戦場には許されないのだ。


パァン!パァン!

武藤の怯えた表情を合図にするかのように3人の軍人は、海から這い上がろうとしている日本軍人を射殺した。また3人揃って発砲。拳銃を持つ武藤の右手は、大きく震える。
「ふざけるな、ふざけるな!敗戦国の分際でええぇ!!」


パァン!パァン!パァン!

狂ったように両目を見開いて叫び、軍人3人に何発も発砲する。軍人達まで距離があるが、銃弾は軍人達が立っている木製の台に命中している。武藤の事を見ながら、軍人達は3人揃って不気味に微笑む。


パァン!

そのすぐ後に3人の軍人は武藤に撃たれて、綺麗に順にバタバタと倒れていった。その光景が本当に気味悪い。彼らは最期悪魔のように笑い、抵抗一つせず静かにこの世を去ったのだ。
























下に広がる海に目を向ける武藤。瑠璃色の海はじわじわと人間の赤い血で染められてゆく。
血を流しながら浮かぶ同胞の姿が視界に入ると、口を強く結んで拳を強く握り締めた。役目を果たし、母国の地で命を落とした若い軍人に向けて力強く敬礼をする。
「第二班荒井洋軍人、ご苦労だっ、」
「気を抜くな!」
「え…?」
少年のような高い声に怒鳴られて、声がした方を振り向いた時。
いつの間に居たのか、其処には日本軍の軍服を着た者が1人居て、他にはカイドマルドの軍人も居て。日本軍らしき人物は武藤を庇った為まさに今、撃たれた。


パァン!

突然何処からともなく現れた見た事の無い少年は体をよろめかせたが、両足で力強く踏張り、高く跳び上がって、壊れかけのコンテナの上に乗ってすぐに態勢を整えた。


タンッ!

白い月明かりに照らされてやっと姿が見えた日本軍らしきその人物は、綺麗な長い黒髪を後ろで一つに束ねている。額には赤い額充てをつけている。
顔は女性のように綺麗で、目が大きい。着ている軍服は男性用だ。見た事の無い若い少年軍人の登場に釘付けになる武藤。
























「何をボサッとしている!お前は将軍であろう。先程撃たれた仲間の分までカイドマルドを撃て!殺せ!」
少年の力強い叫び声に、目が覚めたように武藤が目を見開いた時、視界に入ってきたのは白い肌のカイドマルドの軍人達。
頭で考えるより先に武藤の体は勝手に動いていて、両手は引き金を引いていた。


パァン!

勢い良く飛び出した銃弾は、あっという間にカイドマルドの軍人を射殺。
顔や軍服に付着した返り血。目蓋にも付着して、目を瞑って乱暴に拭き取って目を開くと、いつの間にか目の前にはあの少年の姿があった。
少年は敵軍人に何発も発砲し、間髪入れずに乱暴に蹴り飛ばして海へ落としてゆく。素早くて隙が無い戦い方に、武藤は将軍でありながらも感動した。
負けてはいられない。闘志が燃え上がり、興奮で鼓動は速さを増して鳴っている。口元を微笑ませると、向かってくる敵軍人達に向かって発砲を続けた。
「やるじゃないか、さすが将軍だ!」
「何という名前の人間で何処の班所属かは分からないが、お前の身体能力と的確さには感動させてもらった!」
背を向けて互いに叫んで会話をしながら発砲をしていく。他の軍人達も2人を見て興奮で体がぞくぞくして震え出し、戦った。勝つ為に。









































夜が明け、月に代わって太陽がゆっくりと昇り始めた。日射しに照らされた港は荒れ果てていて、いつもならキラキラ輝く瑠璃色の海はもう無かった。けれど、港に停めたカイドマルド軍の船艦全てを破壊し、辺りにはカイドマルド軍人の死体がゴロゴロ転がっている。
武藤が太陽の日射しに照らされながら部下達を背に、静かに右腕を天に向かって突き出す。勝利のポーズだ。
生き残った日本軍の軍人達は傷の痛みも忘れて、喜んで飛び跳ねた。辺りは一気に騒がしくなる。
一方の武藤は、軍人達の方を向きながらも、程の少年を探して目を忙しそうに動かしている。
「私をお探しか?」
「!」
隊員達の騒がしい声に掻き消されそうな高い声は微かではあったが、確実に武藤の耳に届いた。
咄嗟に声がした方を振り向くと少年はまた、コンテナの上に立っていた。
高い所が好きなのかヒーロー気取りなのかは分からないが、結果を出した少年の姿は本当にかっこ良く見えた。武藤は目を丸めて口を大きく開く。
「お前、名前だけでも教えろ!軍人では無いはずだろう?それなのに何故戦った?何故軍服を着ている?」
「…名前だけは答えておこうか。後は説明するのに無駄に時間が必要だからな」
「それで良い!名を!」
「宮野純 慶吾」
王家宮野純家の先代で最も歴史に残る戦いや貿易を行った男の名を名乗ると、少年は鳥の様にコンテナを伝って何処かへ行ってしまった。



















































翌朝、
京都都城――――

「姉上!聞きましたか?曽祖父様の名を名乗ったスーパー−ヒーローが現れたのですよ!」
日本国第一王女咲唖の部屋の引き戸が壊れてしまいそうな程勢い良く開けて、廊下を滑るように走ってやって来たのは日本国第二王子慶司。興奮をして目はキラキラ輝いていて、声がいつもより大きい。
一方。いつもの様に小鳥と遊びながら咲唖は目を擦り、寝惚け眼で振り向いて微笑む。
「知っていますよ。武藤さんからお聞きしました」
「あーあ。また姉上の方が先に知ってた」
「ふふ、だって慶司は…」
「お寝坊さんです!!」
口を大きく開き、咲唖が言うより早く不貞腐れて言う。そんな慶司に目を丸めて何度も瞬きして、着物の袖で口を隠して笑った。つられて慶司も笑ってしまう。
2人の笑い声と外からの雀の囀り。慶司は突然咲唖の細い腕を掴んで、自分の方に引き寄せる。
「姉上!武藤さんにもっと聞いてきましょう!晩に現れた慶吾さんの事!」






























慶司に連れられ、部屋から出て足早に階段を降り、広間を通り抜けて軍へと続く広い中庭を小走りで通る。辺りには可愛い花や夏らしく向日葵が咲いていて、とても和む。
「姉上の好みの男性かもしれませんよ!そうしたらやっと姉上も御結婚です」
「やっとは余計ですよ。ふふ」
「あらあら。国王様の本妻の御子様ともあろう方々が戦乱が終えたとはいえ、随分のんびりと楽しそうです事」
前を塞ぐ様に現れた赤い着物を着た3人の少女。この少女達は国王の妾の子供。
3人の中で喧嘩腰のこの少女は長女の『宮野純 梅(みやのずみ うめ)』咲唖と同い年の18歳。
目は恐いくらいつり上がろっていて、性格が悪いとの評判がある。慶司は咲唖の前に出て、梅達を睨み付ける。
「あら、慶司さん。今回の戦いに御呼ばれされなかった様で。私の弟は慶司さんと同い年ですけれど、ちゃーんと武藤さんから御呼びが掛かりましたのよ」
「姉様…!」
妹2人が抑えるように言っても梅は気にも留めず、嫌味ったらしい笑みを向けてくる。慶司は何も言わず、ただ黙って睨み付ける。



























「退け」
「あら、これはこれは。御散歩の途中を失礼致しました」
わざとらしい笑みを向けて道を開ける梅。
「姉上!」
「あ、はいっ」
咲唖は腕を慶司に強く引っ張られて連れられ、開けられた道を歩いて行く。2人が前を通ると同時に、梅は不気味に微笑む。
「もう次期私達のお母様が本妻になる頃かしら。本妻の病が悪化したが最後ですわね」
「ふざけた事を言うな!!」
わざと聞こえるように言ってきた梅に、慶司は鬼の様な形相をして拳を振り上げる。
「慶司!!」
咲唖に力強く押さえつけられると拳を下ろして梅をもう一睨みし、咲唖の手を引いて行く慶司だった。
「梅姉様!あちらの方々は本妻のお子様方です!」
「心配するでない。もうすぐ私達の番がくるのですよ」





































































一方のヴィヴィアン達。
日本とカイドマルドの戦争が終わり、コールとルネの戦争も終わり…。世界では戦争が無くなったというのはたった今の段階の話であって、戦乱の世だ。いつ何処で何処が戦争を起こすかなど分からない。
ライドル王国の兵士2人が運転席と助手席に着き、ヴィヴィアン達は指示に従いトラックの中に乗る。外が見えない薄暗い中、今居る場所も分からず座ったままトラックの暗い天井を見上げるヴィヴィアン。隣ではジャンヌとアンネが小さな寝息をたてて眠っている。


ガタ、ガタガタッ、

ガタガタと音をたてて大きく揺れるトラックの中、そしてこんな真夜中に見知らぬ者達に何処へ行くのかも知らされないで連れられて行くというのに暢気な2人だ。どうやらこの2人にとって、眠る方が最優先らしい。
トラックに乗る前は見知らぬラヴェンナ達に驚いていたジャンヌだったが、案の定ラヴェンナが一国の王女である事は分かっていなかった。
『貴女ヴィヴィアンの友達?』
ラヴェンナを前にしてのジャンヌの第一声にはヴィヴィアンやラヴェンナ、兵士の2人は笑う事もできず、ジャンヌのあまりの世間知らずっぷりに体が硬直してしまった。本当に世間知らずもいいところだ。ヴィヴィアンは呆れて溜め息を吐いたそうな。
暗い中に一筋の明かりが差し込み、明かりの方に顔を向ける。ラヴェンナが立っていた。運転席と助手席との仕切りの扉を閉めると、中は再び薄暗くなる。先程急に明かりが差し込んできてまた急に暗くなったので、残像が邪魔してしっかり見えない。
ラヴェンナはヴィヴィアンの隣に腰を下ろして胡坐を組む。気持ち良さそうに眠っているジャンヌ達に顔を向けると、優しく微笑み、壁に寄り掛かる。


しん…

互いに目を合わせないままトラックに揺られ、沈黙だけが続く。時折大きく揺れたり揺れが全く無かったりと、本当に今どの辺りに居るのかが不思議だ。

























ライドル王国はモナ王国を占領して新たな国新生ライドル王国を建てた…とラヴェンナから聞いていたので、ルネから占領される前のモナ王国までの道を頭の中で地図を広げて考えていたのだが、左の耳からラヴェンナの声が入ってきたので考えるのをやめる。
一度に二つの事はできなかった。
「この2人は何なんだ。何故お前と一緒にベルディネの王女が居る?あれか?あたし達ライドル王国にしてきた事と同じ方法でベルディネを占領したのか」
「違うよ。ベルディネは占領どころか、滅ぼした。それに小国なんて占領したって何の利益も無い」
「では何故だ?こっちの幼い少女は、どう見てもとても身分の低い人間だ。お前が大嫌いな」
ヴィヴィアンは天井を見上げて、両足を前に伸ばして微笑する。そんな彼の顔をラヴェンナは不思議そうに覗き込む。
「さっき言ったみたいにベルディネ王国が親しかった日本と手を組む事ができるかもしれないだろ。だから…」
「…利用の為か」
「言い方が悪いなぁ」
裏のある笑みを浮かべるヴィヴィアンを、冷めた目で見て溜め息を吐く。
「変わっていないな、嫌いなものにはとことん冷たいところとか…」
「そうかな」
大きな欠伸をして腕を組むと、ヴィヴィアンは静かに目を瞑る。
ラヴェンナは何かを思い出したように目と口を大きく開いて、眠りに就こうとするヴィヴィアンの肩を大きく揺らす。妨害されて機嫌を悪そうにしながらも目を開けるヴィヴィアン。
「何」
「マリー。ユスティーヌのマリーはどうなったんだ」
"マリー"
その名を聞いた途端、寝惚け眼のヴィヴィアンの目は見開いた。嫌でも開いてしまう。
そんなヴィヴィアンの様子にラヴェンナは、この事は言ってはまずかった事を察して目を反らす。


しん…

再び2人の間に沈黙が起こり、トラックが揺れる音だけが聞こえる。




























話題を変えようと様々な話を考えるラヴェンナだが、浮かんできた話題はどれも今の状況には合わないものばかり。変に明るい話をしたところで逆効果な気がした。
「悪い。何でもない、寝て良いぞ。どうせ長旅に、」
「兄上は馬鹿だ」
「え?」
ヴィヴィアンは下を向き、小さな声で呟いた。
ヴィヴィアンの顔色を伺おうとするが、髪で顔が隠れてしまっていて見る事ができない。
「…ルネが他国の王女と結婚するのは結婚した相手の国を占領する為だというのに、兄上はそれを相手国が母国を繁栄したいが為に大国のルネに近付いてきたなんて馬鹿な事を言っているんだ。それは、ルネの貴族が王族に入った場合に言える事であって…。馬鹿だ。本当に馬鹿な兄だ」
話す声がだんだん小さくなり、終いには力強く握り締められた右手で床を強く叩いた。兄への怒りがとても感じられる。
ヴィヴィアンへの掛ける言葉を探すラヴェンナだか、なかなか見つからない。"そうだね、私もそう思うよ"などの誰でも考えずにすぐに言える言葉を掛けるのは、こんなにも苦しんでいる人に対して失礼だ。かといって、元気を出させる言葉を考えるわけでもなく。本当にどうすれば良いのか分からない状態。
ラヴェンナ自身過去にマリーと同じ目にあっているし、ルネのせいで母国は一度滅んだのだから。
体育座りをして顔を伏し、蹲るヴィヴィアン。
「憎いか、兄が」
ラヴェンナの問いに、静かに頷く。
「では戦えば良い。あたしもルヴィシアンの事を憎んでいる。ルネの事を憎んでいる国は小国ばかりだが、数えきれない程あるんだぞ。ただ…戦う力が無いだけで」
「僕にも力なんて無いよ。言っただろ、無謀な戦いなんてしたくない。勝てない戦いなんてしたって意味が無いんだよ。仮に、今まで全勝をしていたとしても勝てないと分かっている戦いをして命を落としたら一瞬で全てが消える。今まで勝ち取った名誉も誇りも命も。だから僕は嫌いなんだ、勝てないと分かっている戦なんて」
蚊の鳴くような声で投げ遣りに言うと、体を横に倒して背を向けた。
ラヴェンナは大きな溜め息を吐き、天井を見上げる。
「ただの格好付けだな、勝てる戦だけを戦うなんて」



























横になりながら顔だけをこちらに向けてきたヴィヴィアンの冷めた目とラヴェンナの目が合う。
「まだ分からないの?」
「何がだ」
「今僕が言った事は君達ライドル王国の事を例えにして言って、ライドル王国のとった行動は愚かな行動だった事を君に教えてあげたんだよ」
冷たく言い捨てるとまた背を向けた。
ラヴェンナは拳を強く握り締め、目を見開いて立ち上がる。母国の事をこんなにまで言われて腹が立たない者など滅多にいないだろう。
握り締めた拳を振り上げたが、視界に入ってきたのは気持ち良さそうに寝ているジャンヌとアンネの姿。怒りでつり上がった目のラヴェンナの表情は、2人を見ると一瞬にして和らいだ。
溜め息を吐きながら腰を下ろして胡坐を組む。ヴィヴィアンに聞こえるように顔を彼の方に向けた。
「ライドルは臆病なお前とは正反対なんだ。悪かったな!」
力を込めて言うと、背を向けて横たわった。
ラヴェンナが言った今の言葉をヴィヴィアンは勿論聞いていた。ヴィヴィアンは背を向けたまま震える程右手を強く握り締めている。トラックは小さな音をたてて揺れ、白い月明かりに照らされながら静かに走って行く。











































5日後――――――

ヴィヴィアン達を乗せたトラックは、砂漠の中に造られた大きな城のある国に着いた。
エンジンを切った大きな音。車内の小型テレビからの音に目を覚ましたヴィヴィアンは、テレビの音がする方に目を向ける。彼の行動に気付いたラヴェンナは、何かを隠すように咄嗟にテレビの電源を切ってしまった。
「おはよう、ヴィヴィアン」
「……」
寝惚け眼のまま、電源の切れたテレビを見つめている。
ラヴェンナは立ち上がると、トラックの後ろの扉を勢い良く開く。眩しい太陽の日差しが、薄暗いトラックの中に射し込んできた。
「んっ…」
眩しさにジャンヌとアンネも目を覚ました様で、ゆっくりと目を開けていく。明るさに目が慣れてきて外の景色に目を向けると、賑やかな町があり、アラビアの様な格好をしたたくさんの人々が歩いている。
町を真っ直ぐに行った奥に聳え立っているのは、横に長いベージュの城。ラヴェンナはトラックから飛び降りて城を背に、両手を大きく広げて笑顔を見せる。
「此処が新生ライドル王国だ!」



















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