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終焉のアリア【完結】
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「ギャッ!ギャッ!ガキ1人のつもりが、今ので2人おっ死んじまったみてぇだな。1人は片目が赤色した例のガキ。もう1人はプラネットと地球人の血を引く化け物。気味の悪ぃガキ共だったぜ。俺らと関わりがあろうがどっちにしろ俺らに刃向かうクソ地球人に変わりねぇ。…さてと。ぺしゃんこになっちまったが暴れたら腹が減ったな。今日の朝食はこのガキ2人っつー事で…んなっ?!」
上げた拳の下敷きになってぺしゃんこになっているはずの空と鵺の姿が無い。
MADが驚愕していると、背後から光る赤い光がMADの前に映るから、MADは冷や汗を伝わせて恐る恐る後ろを振り向く。
「ままま待て!!待て!話し合おう!な?!」
其処には、魍魎を手にした鵺が立っており、魍魎からは生々しい血のような赤い光が放たれていて辺り一帯を赤く染めていた。
「チッ…、クソが!!」
MADは鵺に背を向けると、壁を突き破って家の外へとドスドス大きな足音をたてて逃げ出したのだ。

















走りながら後ろを振り向くが、追ってこない鵺を不思議に思いつつもまたゲラゲラ笑う。
「ギャッ!ギャッ!何だぁ?かっこよく刀引き抜いたクセに追ってこねぇだ?!やっぱ腰抜けのバカ野郎なんだなぁ地球人ってのは!」
「バカ野郎って言う奴がバカ野郎だ、って聞いた事ねぇのお前?」
「んなっ…?!グアアアアア!!」
前方から聞こえた声に走りながらMADが振り向けば、瞬間、さっきより太い桜の木の枝がまた目玉に突き刺さり、MADは目玉を両手で覆いその場に蹲る。
「ぐっ…ア"ア"ア"…目が…目が見えねぇ…!」
「やっと見えなくなったかよ、化けもん」
二度目の攻撃により、ついに光を失ったMADの前に立った空はもう1本用意しておいた桜の木の枝を足元へつまらなそうに放り投げる。
「念の為にもう1本用意しておいたっつーのに。大口叩いてるわりに弱ぇなMADってのは。これならゲーセンの雑魚の方がしぶてぇし」
「ぐっ…、ず、に…図に乗るなクソがあああああ!!」
「なっ…!?ぐあっ!!」
目はもう見えなくとも目の前に空が居る事が分かるから、MADは立ち上がると同時に巨大化した右腕を振り上げた。その腕が丁度空に命中してしまい、地面が抉れる程の威力と勢いで吹き飛ばされた空は桜の木の幹に背を思い切り叩きつけられ血を吐く。


パリン!

かけていた眼鏡も吹き飛び、足元でそれの割れる音がした。額や頬から真っ赤な血を流しながらも空は鼻で笑う。
「はっ…、ざけんな…調子ぶっこいてんじゃねぇぞ化けもん…こんな安易な陽動に引っ掛かっておいて…」
「まだ大口叩くか無力な地球人のガキが…。おめぇはおとなしく俺らの朝食になって骨まで噛み砕かれて死んでりゃ良いんだよ!!」
「これだから化けもんは頭弱ぇんだよな、俺は囮だっつーの」
「何…!?」
「お前は目が見えねぇから気付いていないみたいだけど。お前、背後とられてるぜ?」
「なっ…!?」
見えないのにMADが後ろを振り向いたと同時に、飛び上がった赤い光をまとう少年の赤い瞳にMADが映れば、赤い光をまとう刀魍魎をMADの頭部目がけ、振り落とすのは、鵺。
「ままま、待て!おめぇも俺らと同じ血引いてんだろ鵺?!ならっ、なら!!ギャアアアア!!」
桜の花をも染める大量の緑色の血か噴き出せば、頭部から全身にかけて真っ二つに斬り裂かれたMADはドスン!と音をたて、その場に倒れこんだから衝撃で何10本もの桜の木が下敷きになってしまった。






























「うえ"っ。キモい!」
べっとりした緑色の血が雨の如く降り掛かり、髪や身体に付着するそれを酷く気持ち悪そうに拭う空。
「くっそ!人の眼鏡ぶっ壊しやがって!今度別のMADに会ったら新しい眼鏡代払わせるからな!」
血を流しているにも関わらず気丈に振る舞って、手探りで眼鏡を探していたら、右手に眼鏡が乗った。空はそれをかける。左レンズは壊れて見えないし、右レンズはヒビが入っていて見えにくいが右レンズだけが、眼鏡を拾ってくれた鵺の姿を映す。
「あ…ありがと…ございます?」
微妙な礼の言い方をする空に無反応の鵺は外方向くと、刀を鞘の中へ片付け、何事も無かったかのようにいつも通りそれを背に担いで全壊の平屋へと歩いていってしまうから、空は口をへの字にする。
「助けてやったのに何だよあの超無愛想な態度。超、感じ悪ぃー」
とか何とか言いつつも、緑色の血の跡を残して歩いていった鵺の後をついていく。
「う"っ…超痛ぇ…」
MADに吹き飛ばされた時の痛みに顔を歪めながら。





























「こりゃあ、MADに家代払ってもらうしかねーな」
「……」
全壊した、家とはもう呼べない平屋の中で立ち尽くしていた鵺の背後から空が声をかけてもやっぱり鵺は無視するから、空はわざと聞こえるように溜息を吐いて頭を掻く。
「つーか、鬼のお面そこに落ちてっけど、トンネルに出た鬼ってお前の事?さっきのMADとあんたの話途中からしか聞いてなかったんだけど、あんたトンネルに現れるMADを退治してたんだな…あ、じゃなくて!ですねっ!でも、なら何で昨日俺の事襲ったんだよ…ですかっ!?」
歳は近そうだが、一応お隣さんだし…という事で敬語で話す…が、やはり鵺は背を向けたままで無視。
――シカトかよ!!――
「あのさぁ、あんたって口利けねぇ、」
【鵺ちゃん…】
「…!!」
「え?なっ、またMADかよ?!」
どこからともなく聞こえた老婆の声。空の問い掛けに今まで無反応だった鵺が初めて反応し、辺りを見回す。
一方の空はまたMADが出現したのかと顔を強ばらせ辺りを見回すが、姿はおろか、気配もしない。
「どっから声が聞こえて…」
「お祖母さん!」
「え?オバアサン??」
鵺が子供のように愛しげにそう呼ぶから、空は目をぱちくり。
【鵺ちゃん…】
また聞こえたその声に、鵺はどこにもいない相手を見上げるかのように天を見上げ、何度も呼ぶ。
「お祖母さん!お祖母さんですか!?」
【鵺ちゃん…】
「お祖母さん!申し訳ありませんでした…私がお祖母さんの元を離れたばかりに…私がお祖母さんをMADから守る為にMADを殺めていたばかりに、それがMADの勘に触ってしまい、何も罪の無いお祖母さんが犠牲になってしまい…!やっぱり私が鵺だから…人とMADの子だから!一緒に居てくれたお祖母さんまで不幸に…!」
【鵺ちゃん…鵺ちゃんが言っていた優しいお友達は、そこに居る子の事かい…?】
「え…」
その問い掛けに鵺は目を見開き、咄嗟に後ろを振り向いて空を見る。一方の空はきょとんとしているけど。
ポーカーフェイスな鵺が困った表情を浮かべ、祖母からの問い掛けに答えられず口をモゴモゴさせる。
「私には…友人など…」
「そ。雨岬空。あんたの大事な孫の友達だぜ」
「…!」
空は鵺の肩に手を置き、天を見上げて珍しく笑って、鵺の代わりに返事をした。鵺は目を見開いていて言葉が出てこないが…。
【そうかい…空ちゃんって言うのかい…良かった…これで鵺ちゃんが独りにならなくて済むね…。鵺ちゃん、嘘を吐いているなんて言ってごめんね…。鵺ちゃんは人を不幸になんかしないよ、それはお祖母ちゃんが胸を張って言ってあげるよ。鵺ちゃん、お祖母ちゃんの為に今までありがとう。お祖母ちゃんの分、いっぱいいっぱい幸せになるんだよ…】
辺り一帯に優しい白い光が降り注いだのは一瞬の事で、次に目を開いた時には、全壊の平屋の中から見える桜の木の美しい景色が広がっていた。


チチチ…

頭上を飛んでいく小鳥のさえずり。呆然と立ち尽くす鵺の後ろで、空は頭を掻く。
「あー…すみませんでした。まともに話した事も無いのにいきなり友達とか言って。あのー…」
顔を覗き込もうと後ろからひょっこり顔を出した時。空は目を見開いた。が、すぐに顔を引っ込めて後ろへ下がり、鵺には背を向けた。辺りに舞う桜の花弁と、咲き誇る桜の木々を赤と黄の瞳に映し、空は1人呟く。
「綺麗だなー…」
空に背を向けたままの鵺は肩を一度だけひくつかせ、両手で目を何度も何度も擦っていた。何かを拭い去るように。




































9時23分――――

「あーあ。完璧遅刻だ。ま、怪我もしてるし今日は潔く学校休むしかないな」
登校する学生が登校を終え出勤する大人も出勤を終えた、人気の無い朝の閑静な住宅街を歩く空と鵺。
わざとらしく鵺は、空の3歩先を歩いている。
家は全壊したものの、タンスの中だから無事だった包帯で頭部を止血した空と鵺。あちこち包帯だらけだ。
「そういえばお隣さん。あんた、MADと地球人の子なの…なんですか?」
「……」
「……。お隣さん。あんた、MADと地球人の子なんですか?」
「……」
「お隣さん。あんた、MADと地球人の子なんですか?」


キィン!

「しつこいぞ貴様!!」
「おわっ?!住宅街で抜刀すんなよ!バッカじゃねぇのあんた?!」
何度質問しても答えてくれなかった鵺。ついに堪忍袋の緒でも切れたのか空の方を振り向きざま、背に担いでいる刀を抜刀して刃を向けたものだから、空は顔を青くして一歩後退りする。
その後周囲を見回せば、誰も見ていない事に安堵の息を吐く。鵺は魍魎を背に担いでいる鞘の中へしまう。だが空の溜め息が気に食わなかったのだろう。鵺は眉間に皺を寄せ、しかめっ面をするから空は頭を掻いて、こちらが折れる事にした。
「はいはい、悪ぅございましたっ。全部俺が悪かったですよっ!つーかお隣さんっていくつ?俺と年、近いっしょ?あ。でも働いているって言ってたっけ?じゃー、もっと上?てか、その刀いっつも持ち歩いてんの?」


ドン!!

「〜〜!!」
鵺は下を向いたまま傍の電柱を右手拳で殴るから空は、さっきから続けていた嫌がらせなのか?という程の質問を止めた。





















顔を上げた鵺の元からつり上がった赤色の目と目が合ったその直後、ビシッ!と指まで差された。
「大体おめさん何なんだてその言葉遣い!歳が近ぐても赤の他人に接する態度じゃねぇろっが!その上民間人のクセにMADに挑発した挙げ句立ち向かうなんて、おめさんはそんげ死にてぇんか!命粗末にすんな!更には俺に矢継ぎ早にくだんね質問してきて人の事馬鹿呼ばわりするなんて、どんげ躾受けてきたか知りてぇわ!おめさんの方がうっすら馬鹿ら!こんげんばっかだすけ、最近の若もんは駄目駄目言われるんだて!」
「え!?何それ?!キャラ違くない?!お隣さん?」
「何らてっ!」
「失礼ですがどこのお国の出身で?!」
「日本に決まってるねっかや!」
――方言強過ぎて何言ってるか分かんねぇ!!てかさっき、自分の祖母ちゃんと話してる時標準語じゃなかった?!――
「あー…そう。分かった分かった!じゃ、もう1つ」
「何なんらてさっきから!!」
「そんなに真っ赤に腫れた目で怒鳴られても説得力、超無いんですけど」
「!!」
バッ!咄嗟に顔を両手の平で覆い、空には背を向けて小走りで去っていく鵺の背を見て空は白い歯を覗かせて笑い、小走りで追い掛ける。隣を小走りでついていきながら。
「あ〜!やっぱさっき泣いてたんじゃん。一応言わないでおいたんだけどさ」
「だっ、黙れて!泣いてなんていねぇてば!」
「へぇ〜あ。てか俺17なんだけどお隣さんいくつ?同じくらい?」
「うるっせ!!」
「あー良いのっかなー、答えないとその泣きっ面をマンションの掲示板に貼っちゃうけど」
「〜〜っ!17らっ!」
「あ。やっぱり?あともう1つなんだけど」
「何なんらてさっきから!!」
「助けてあげたお礼、言ってもらっていないよーな気がするな〜?」
「〜〜!!」
そうこうしている内に空と鵺が暮らすマンションに着いてしまい、隣同士互いの部屋の扉の前に辿り着いた時。鵺はドアノブを握り、空の方を振り向く。やはり、しかめっ面で。


バタン!!

結局振り向いただけで礼の一言も言わず、すぐ扉を閉めて部屋へ入っていった鵺の態度に空は、目をぱちくりしてからすぐ笑った。
「ははっ、何だあいつ。面白い奴」
空も自室の扉を開けようと、ドアノブを握りながら鍵を鍵穴に差し込んだ時。


バタン!!

「ん?」
再び扉の開く音がして鵺の部屋の方に顔を向ける。するとそこには、再び出てきた鵺が居る。あきらかに空からは目を反らして。
「どうしんだよ。忘れも…何?」
目を反らしながら突き出された小鉢に入ってラップされた食べ物。荷物だろうか。里芋や銀杏、蒲鉾や蒟蒻が入っている。それと鵺を交互に見てぽかん、としながら首を傾げる空。
「何?これ」
「なっ、何って言ったな?!人が作った物を闇兵器みてぇに言うなてば!この、うっすら馬鹿!!どうせこんげがん不味そうだすけ、いらねぇって言いてぇんろ!」
「いや、そういう意味じゃねーし。どんだけネガティブなんだよお前。そうじゃなくて。これ、何て料理?って事」
「のっぺ、ら!!見て分かんねんか!」
「ごめんごめん、分かんなかったからさ。つーかこれ、どうしたのかも聞きたいんだけど」
「そっ、それはらな…!」
「?」
「き、昨日の余り物なんだろも、捨てっとゴミになるろ!?そうすっとゴミ袋の費用がかかるすけおめさんにくれてやる!!」
「え?!おい、ちょっ、」


バタン!!

半ば無理矢理小鉢を押し付けられ受け取らざるを得なくて受け取った空が苦笑いを浮かべている間にも、うるさいくらい力強く扉を閉めた鵺は部屋へ戻っていってしまった。
此処が本当に異星人の侵略を受けているのかと思う程穏やかな陽気の中。空は、手渡された小鉢に入っている冷えてしまった煮物を見る。
「のっ…ぺ?よく分かんねぇけど…煮物って事か?」
ぷっ!と笑った。
「はっきり余り物っつってたけど、一応これが礼…って事?あはは、素直じゃないよな。それにあの喋り方も不思議だし、やっぱ、面白い奴」
そうは口で言いながらも、嬉しそうな笑みを浮かべて空は鵺から貰った小鉢片手に、自室の扉を開いて部屋の中へ入った。


バタン…
























「なっ…!?」
「やっと帰ってきたぁ!そらぁ〜!久々だね!一緒に遊ぼっ♪」
「お初にお目にかかります空さん。この度はシルヴェルトリフェミア様のご友人になって下さった記念に…と、シルヴェルトリフェミア様のメイドの私ドロテアが、腕にヨリを掛けた料理をご用意させて頂きました。さぁどうぞお召し上がり下さい」
確かに鍵をかけて出掛けた自分の部屋の中には、シトリーと、白いエプロンにメイドの格好をした緑色の人型生物MADが一人居て…
テーブルの上には、人間の足や腕、目玉が入った豪華な料理が並んでいた。





















to be continued...








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