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終焉のアリア【完結】
ページ:2
「風希ちゃん」
「…!…そう…そう…だね…。ただ図体が大きいだけ…。鵺が…巨大化した時と同じ…。速さは…こっちが有利…」
「おーい!風希!お鳥!」
「小鳥遊!」
「アリスとファンだよ風希ちゃん!」
駆け付けたアリスとファンが遠くに見えると、2人の顔に安堵が見受けられた。しかし…、


ドスン!!

「…!!」
辺り一帯に黒い影のような光が広がり、アリスとファン、風希と鳥の間にドスン!!と立ちはだかった。辺りに舞う真っ黒い鳥の羽に風希は顔が青ざめる。
「何?この羽?風希ちゃんこれなあに?」
「あ…ああ…」
「風希ちゃん?」
ガタガタ震えて、彼女らしかぬ呆然とした様子に鳥が肩を揺さぶる。
「風希ちゃん?風希ちゃんどうしたの?」
「あの黒い羽…」
「羽?」
「…ハッ!お鳥ちゃん…!」
「え?」


ドスーン!!

背後から巨大MAD化した緑色の姿のアイアンが、2人目掛け右腕剣を降り下ろしてきた。だが風希が鳥を抱き寄せてギリギリ回避。アイアンは、2人がアリスとファンの元へ行こうとするのを壁となって立ち塞がる。
「ガハハハハ!ごっつえらいでぇこの体ぁ!さすが将軍はんや!俺にええ力をくれはる!」
「馬鹿みたい…。MADにされて…最後は…使い捨てされるだけなのに…良い力をくれるだなんて言って…本当…馬鹿…」
「ああ"?」


ギロン!

ダイヤのような目玉が風希を睨む。
「ほんま生意気なやっちゃなぁ鎌豚女。まずはお前はんから将軍はんの朝食にしてやるさかい」
風希は顔から下に浮かぶ血管のようにボコボコ動く赤い模様のまま、金色の目をして鎌を構える。
「風希ちゃんその体どうしたの!花月と同じだよ!」
「花月が産まれる前…。跡継ぎの男が産まれなかった時の為に…私だけ…お父さんから…魑魅が使えるように…教えてもらっていた…」
「でも花月が産まれたから風希ちゃんは桜花昇天を使わないでいたの?」
風希は頷く。
「でももうやめて風希ちゃん!そんな姿になってまで頑張る必要無いよ!風希ちゃんは何でもかんでも自分1人で背負い過ぎ、」
「ベラベラ煩わしいでぇ!せやからお前はんは緊張感の無いガキ言われるんや淫乱豚女ぁ!!」
アイアンが剣を振り上げる。
「!」
「お鳥ちゃん…!」
「わ、分かった!小鳥遊流奥義、」
「小鳥遊流…奥義…」
2人揃えて唱える。
カッ!と見開いた2人の目は金色をしていた。
「呉蝶乱舞!!」
「驟雨…!!」
紅い光と青い光がアイアンに向かって放たれた。
「ガキ共の攻撃なんざあ!!」


ドンッ!!
































一方、
アリス&ファン―――

「んなっ…、」
「何故だ…一体…!?」
「あっははー。びっくりしてるね。どうしちゃったのかな?らしくないよアリス君、ファン君。あはは!」
両腕が烏の翼をして、辺りに影のような黒い光を纏わせたハロルド…否、ハロルドの姿をしたグレンベレンバが2人の前に立ちはだかっていた。風希と鳥の元へは行かせまいと。姿も声もまるで同じ。だが、その笑顔は彼の笑顔には似つかない程邪悪な笑顔。
白目と黒目が反転した烏化時のハロルドの姿をしたグレンベレンバは自分の体を見回す。
「うーん。やっぱり男の体だとちょっと感覚掴めないわぁ。でも、まあ…」


キィン!!


ゴオッ…!!

「あらあーら♪」
寸の所で飛んで回避したグレンベレンバ。アリスが剣で、ファンが炎で攻撃を仕掛けてきた。グレンベレンバは翼の右手で自分の口を隠す。
「んふっ。アリスちんもファンちゃんもどうしちゃったのよーん。そんな、親の仇見るような怖ーい顔しちゃってぇ」
「ふざけんじゃねぇぞクソMADがあ!!」
周りの物が振動しそうな程の怒鳴り声を上げたアリスは、ファンは於いて1人でグレンベレンバに立ち向かって行く。
「アリス!!」


キィン!キィン!

剣で斬りかかるのだが、グレンベレンバは翼でヒラヒラかわす。
「あはは!どうしたのどうしたのアリスちーん?全っ然あたらないわぁ。指1本触れる事すらできないってまさにこの事ねぇ!」
「うるせぇんだよ!!」
――…!まずい…!――
血走った目で本気のアリスが剣を振り上げた。さすがのグレンベレンバも回避できないと悟ったのだろう。しかしニィッと笑むと何と自らアリスの肩を掴み、顔を覗き込んだ。悲しい顔をして。
「アリス君、僕を殺すの…?」
「!!ハロッ…、ル、」
「なぁんてね!!」
真っ赤な舌をペロッと出すとグレンベレンバは両手の翼でアリスを凪ぎ払う。


ドンッ!!

「ぐああ!!」
「アリス!!」
鉄橋の柱に吹き飛ばされそのままバシャーン!!と勢い良く海に落下したアリス。
























「あはっ、アハハハハ!アリスちんったらぁ!彼女の姿に化けたMADを殺せたから耐久性ついたと思ったのに全っ然ダメダメじゃなあい!ハロルドちゃんの姿と声されちゃあ、いくら中身がアタシでも攻撃できないようねぇ!」


ゴオッ!!

「あらぁ?」
翼で空中をバサバサ浮かんでいるグレンベレンバの周りが真っ赤な炎で囲まれた。メラメラ燃え盛る熱い炎に囲まれても、グレンベレンバは余裕の笑み。
「この炎は…」
炎の中グレンベレンバ目掛け右手を伸ばし、鬼の形相で飛び込んできたファン。


バサッ!

翼で軽々払う。まるで人間が蚊を払うかのように。しかし、


ガシッ!

「っあ"!?」
右手でグレンベレンバの頭を掴むとファンは左脚を振り上げ、グレンベレンバの顔面を蹴り上げた。
「う"あ"あ"!!」
さすがのグレンベレンバも後ろへよろめく。その隙にファンが再び、グレンベレンバ目掛け炎を噴く。
「これで終わりだ!!」
「…んふっ。それはどっちの話かしらね」


ドンッ!!

黒い光でファンに攻撃すれば、
「うぐあああ!」
声を上げつつも、右半身を掠めただけだったからファンはビリビリ痛む右半身に鞭打ってグレンベレンバに再度炎を噴く。
「!!そんなっ…!」


ゴオォッ!!

「キャアアア!!」
炎に包まれたグレンベレンバから悲鳴と、バサバサもがく羽音が聞こえる。ファンは白い手袋をきゅっ、とはめ直す。
「私には仲間の姿に化けるなどという姑息な真似は通用しない!!」


パアッ…!!

「なっ…!?」
すると炎の中から白い神秘的な光が放たれた。
「この光…。…まさか!」
「ピンポーン。正解ですファンさん♪」
「!?」
炎の中からファンの顔面20cmたらずの至近距離に姿を現して顔を近付けてきた黄色の光を放つ女性に、ファンは目を見開く。グレンベレンバが次に変身したのは…
「つ…月、見…?!」
「お久しぶりです〜ファンさん♪あはっ!」


ドゴオォッ!!

月見の姿をしてはいるものの、身体能力だけはグレンベレンバのもの。グレンベレンバは月見の姿をした自分に油断して隙だらけのファンを拳で殴り飛ばした。殴り飛ばしただけなのに、ファンもアリスの隣の柱に吹き飛ばされ、海に落下した。




















「アハハハハ!なぁにが"私には仲間に化けるなどという姑息な真似は通用しない"なのかしらんファンちゃ〜ん?アハ!アハハハハ!!」


ピチャ、ピチャ…

水中を歩き、其処でぷかーっと浮いている傷だらけでボロボロの2人に歩み寄る。2人共下を向いて浮いているから表情は見えないが。
「んふっ。大好きな月見ちゃんの姿で攻撃されるのはどんな気分かしらん。ファンちゃーん」


ゲシッ!

ファンの後頭部を踏みつければ、ブクブク…と沈むファン。
月見の姿をしたグレンベレンバは月見なら絶対にあり得ない手を口に添えて魔女のような高笑いをする。
「アハハハハ!快・感!ファンちゃん達もあたしに従っていれば、あたしが治めた世界で生かしてあげたのに。残念ねぇ」


ガシッ!

「あらぁ?」
傷だらけで片腕しかないファンの右手が、自分の頭を踏みつけているグレンベレンバの足首を掴んだ。
「ファンちゃんまだ生き、」


バシャ!!

「がはっ!!」
そのまま足首を水中へ引っ張れば、油断していたグレンベレンバは水中へと引きずり込まれる。
「ゴボッ!ゴボッ!」
水中では服が錘となって身動きがとり辛くなる。もがきながらも、明るい水面へ腕を伸ばした。だが、
「!!」
水面にはユラリと浮かぶアリスの影。そのアリスの影が黒い剣を、水中でもがいているグレンベレンバ目掛け降り下ろした。


バシャーン!!

「ぷはっ!」
水中から顔を出したファン。
「堅物ヤロー!俺が水中に居たクソMADを叩き斬ったが、まだ油断ならねぇ!」
「ああ。水中から上がってこないからな。まだ、」
「小鳥遊流奥義、桜花昇天…だったかしらん」
「!!」
もうこの世に居るはずの無い花月の声が背後からして、バッ!と振り向く2人。瞬間、金色の強烈な光が放たれた。


ドン!ドン!ドンッ!!

「チィッ!」
「あはっ!鉄橋の柱に登って避けるなんて。さっすがあたしが入軍を認めただけあるわね。アリスちん、ファンちゃん。…いえ。今はこう呼ぶべきかしら。アリス先輩、少尉!!」
花月の姿をしたグレンベレンバが右手の平を2人に翳す。歯茎が見える程ニィッと笑って。
「小鳥遊流奥義!桜花昇天!!」


ドン!ドン!ドンッ!!

「っ…!!」
また避ける事ができた2人。だが、グレンベレンバが花月の能力を使った攻撃で海の水が吹き飛び、地面に亀裂が走る程の強大な力。



























「んなっ!?カズの時はここまでの力じゃなかったはずだろが!!」
「くっ…!グレンベレンバに摂られた能力はグレンベレンバが使用すれば、本人よりも強大な力になるのかもしれん」
「ンな漫画みてぇな話がある、」
「先ぱぁい。余所見いけませんよ?」
「!!くっそがあ!!」


キィン!

背後に現れた花月の姿をしたグレンベレンバに躊躇しつつも、剣を振った。しかしやはり愛弟子の姿を斬るのには抵抗があるのだろう。いつものアリスらしかぬ空振りばかり。
グレンベレンバは楽しそうに笑いながらタン!タン!と鉄橋の柱を伝ってこちらへ近付いてくる。
ファンが炎で遠距離攻撃し、接近されたらアリスが剣で近距離攻撃をする。だがグレンベレンバは次々と自分の姿を、彼らの一番大切な仲間に変えて攻撃を仕掛けてくるからアリスとファンも本領を発揮できずにいる。
「くっそが!!卑劣なんだよてめぇらクソMADはあ!!」


ガシッ!

「!!」
「アリス!」
花月の姿をしたグレンベレンバに腕を掴まれたアリスが振りほどこうとした瞬間。グレンベレンバの姿が花月からミルフィの姿に変形。
「なっ…!?ピンクも死んだのか!?」
「ちゅっ!」
「!!?」
ミルフィの姿になったグレンベレンバはアリスの頬にキス。ギョッと目を開いたアリスが腕を振りほどこうとブンブン振るが、振りほどけない。ただ振りほどけないだけではない。強力な接着剤でくっ付けられているかのよう。
「何だよ!?離れろっ…!くそが!!」
「アリス!ポプキンの能力は確か…!」
「ふふっ!そうでーす!ミルの能力は、ちゅーした相手をミルの思い通りに操れちゃうんですよぉ!…ミルフィはこんな喋り方だったかしらん?えーいっ!」
「!!」


ブンッ!

「アリス!!」


ドゴオォッ!!

掴まれた腕を思いきり振られ、勢い良く鉄橋の柱に叩き付けられたアリス。
「くっ…!おとなしく息絶えろ!侵略者め!!」
ファンはミルフィの姿をしたグレンベレンバに特攻。
「あははっ。堅物さんもミルの操り人形にしてあげる★」


タンッ!

「何!?」
跳び上がり、ファンの頭上を飛び越えファンの背後にまわったグレンベレンバ。
「ちゅっ!」
「っ!?」
ファンの首筋にキスをすると、悪魔のように笑みながらファンの首をおもむろに掴み…
「えーいっ★」


ドン!ドン!ドンッ!!

アリスの二の舞。ファンもアリスが叩き付けられた柱に叩き付けられ、倒れたアリスの上にファンが重なる。
「んふっ。ミルフィは大嫌いだけど、こういう可愛い服一度で良いから着てみたかったのよねん。…どう?似合うかしら。アリスちんファンちゃん」
笑みながらグレンベレンバが頭上を見上げると。血眼になって跳び上がり襲い掛かってきたアリスとファン。
「んふっ。」


ドンッ!!

しかし回避されてしまうから、双方から挟み撃ちに出る2人。
「チッ!あんのクソバ、」
「アリス君」
「!!」
目にも止まらぬ速さでアリスと並走(正式には飛んでいる)してくるグレンベレンバ。ハロルドの姿をしたグレンベレンバは、アリスが再び苦痛に歪む顔を楽しむ。
「てんめぇ…!!何度も何度もクソ坊っちゃんの面してんじゃねぇ!!」


キィン!

「んなっ…!?嘘だろ!?」
剣をあっさり翼で受け止められてしまった。ニィッと白い歯を見せて笑むグレンベレンバ。
「僕と敵になると痛い目みちゃうね、アリス君」
「なっ…!?」


ドガッ!

「ぐああ!」
翼で力強く地面に叩き付けられたアリスは口から血を吐く。
「やめろおおお!!」
ファンが反対側から炎で攻撃してくる。
「少尉も稚拙だなぁ。何度も何度も同じ技で。あ。そっか。一つの能力しか無いからか。可哀想に。…桜花昇天」
花月の姿に変形したグレンベレンバ。


ドンッ!!

「っぐ…!」
ファンも地面に叩き付けられた。だがすぐ起き上がり血をボタボタ口角から滴ながらも、休む事無く攻撃してくる2人。しかしもう限界なのだろう。まるで攻撃があたらないし、よろめいていて速度が遅すぎる。そんな相手にも全力で潰しにかかるグレンベレンバ。
「アリスさんとファンさんが怖いです〜掠り傷がついてしまいましたっ!治さないといけませんねっ」
ある時は月見の姿になり、自分の傷を癒す。
「先輩も少尉も、後輩の俺に負けちゃ駄目じゃないですかあ!小鳥遊流奥義、桜花昇天!!」
ある時は花月の姿になり、金色の光で攻撃。
「ふふっ!ミルの思い通りになって下さいねヤクザさん★堅物さん★」
ある時はミルフィの姿になり、玩具のように2人を操り攻撃。
「アリス君とファン君には悪いけど、僕の圧勝かな!」
ある時はハロルドの姿になり、2人の刻を止めてから烏化した強大な力で攻撃をした。































「ふぅ。また掠り傷。治さないといけませんね」
月見の姿で掠り傷を癒すグレンベレンバの足元には、枯れた海の地面に横たわるアリスとファンが。
「フー、フー、」
微かだが2人共、息をしている。
「お。終わったみたいやな。こっちも終わったで」
「あらっ」
ドスン、ドスン。地鳴りのような足音でやって来たアイアン。
アイアンの肩には、アリスとファン同様ボロボロの風希と鳥。アリスは霞む視界でそれを捉えた。
「ふ…、うき…、」


ドサッ!

2人の前に風希と鳥を落とすアイアン。
アリスは僅かにしか動かない体に鞭打って俯せのまま地面を這い、風希の元へ行く。
「ふ…、き…、」
しかし風希から返事は無く。ツウッ…と彼女の口角から緑色の血が伝う。
「ふ…き…、風…希…!」
立てない体。這った体勢で風希を抱き締めるアリス。目を強く瞑り。
「俺…がっ…、も…と…、強けりゃ…、……風、希…お前…まで…死ぬな…死ぬんじゃ…ねぇ…よ…!!」
一方。ファンも体が立たない為、地面を這って鳥の元へ。
「小鳥、遊…」
返事の無い鳥。ファンの脳裏では、花月とハロルドそして月見の顔が浮かぶ。

『お鳥ちゃんは死なせない!俺が絶対守る!俺が絶対幸せにする!!』
『女の子に誘われたの初めてだから僕、ちょっと浮かれてたかもね』
『ファンさん。まだ学生の妹なのですがどうぞよろしくお願いしますね』

「お前…が…死んだら…あいつら…に…あわせる…顔が…無いんだ…ぞ…。だか…ら…返事をして…くれ…小鳥遊…!」
「ファンさん。負けを認めた方が宜しいですよ〜」
月見の姿で、しかし月見には絶対にあり得ない魔女の笑みを浮かべて言うグレンベレンバを、キッ!と睨み付けるファン。
「あいつの…!あいつの姿で…これ以上…下劣な事を…するな…!!」
「んふっ」
グレンベレンバは自分の元の姿に戻る。


























「つーか…、てめぇ…何で…こいつらに…なれ…るんだ…よ…?」
「んふっ。今更ねぇアリスちん。そうよねそうよね。彼らの死に居合わせていないあたしがどうして彼らになれるのか?んふっ。言ったじゃない。あたしとアイアンは貴方達をずぅっと観察していた。シルヴェルトリフェミアを殺す機会を伺ってね。だから、アイアンの瞬間移動であたしは貴方達とほぼ共に行動していたわぁ。だから月見ちゃんの遺体の肉片も、ミルフィの遺体の肉片も、花月ちゃんの遺体の肉片も、ハロルドちゃんはお葬式後に摂取したから、変身できるってわけ」
「葬式後…?」
アリスとファンは眉間に皺を寄せる。グレンベレンバは、赤紫色の口紅を塗った口で笑う。
「埋めちゃう前に棺をこっそーり開けて、お肉だけ頂いたのよん」


ブチッ、

アリスとファンの中で何かがキレる音がした。
「こんのっ…!」
瞬間、2人は最期の力と呼ぶにはまだ早いが、まさにそのような力で何と立ち上がり、剣と炎でグレンベレンバに襲い掛かった。
「ゲス野郎があああああ!!」
「貴様あああああ!!」
「んふ。本ト、男の子って血の気が多くて困るわぁ」
グレンベレンバは余裕の笑みを浮かべて口を開くと、両手を顔の前で合わせた。
「いただきまぁす」


ガブッ、




































































「もしもし」
「おう。メガネか。そっちはどうだ」
アリスはEMS軍本部前で片手をポケットに突っ込み片手で携帯電話を握り、空に電話中。
「あー…まあ何とかシトリー…あ。じゃなくてシルヴェルトリフェミアは俺に気を許してまっす」
「そうか。なら後はシルヴェルトリフェミアをぶっ殺すだけだな。で?今すぐにでもそっち向かっても良さそうか?」
「え?あー、そうっすね。ちょっとビミョーかも。俺がまた折り返し連絡したらお願いします」
「おう。じゃあまたな」


ツー、ツー…

「さて。と…」
携帯電話をポケットにしまったアリスが、背後に聳え立つEMS軍本部を見る…。そこには、倒壊した見るも無惨な本部が。辺りにはEMS軍の白い制服を着た軍人達の食べられてしまい頭や腕、脚が無い死体の山。
ニィッ。八重歯を覗かせて笑むアリスの足元には、傷だらけでボロボロ且つ意識の無いアリス、ファン、風希、鳥が。
「んふっ」
この倒れていないアリスはアリスではなく、アリスの姿をしたグレンベレンバだ。


ドクン!

「っあ…!!」
「どないした将軍はん!?」
突然心臓を押さえて苦しむグレンベレンバ。


ドクン!ドクン!ドクン!

「っはぁ…はぁ…」
――何…?また!?以前もあった…。アタシの中にもう一つの心臓があるかのような感覚…。これは何!?――

『バロック帝国に幸あれ!バロック帝国に幸あれ!』
『私ね。皇帝様と結婚する事になったの』
『結婚式にはお姉様も来て。絶対よ?』
『私、すごく幸せ!優しい皇帝様と優しいお姉様に囲まれて!』
『地球人は皆愚かだ!我々が一体何をしたというんだ!』
『この地球人を実験台に不老不死の研究を進めようじゃないか!!』

「!?」
その時グレンベレンバの脳裏で、誰かのたくさんの記憶が早送りのように次々浮かび上がる。
グレンベレンバは脂汗をかき、割れそうな頭を押さえる。
――何!?何!?何!?これは何!?こんな奴ら知らないわ!あたしの記憶じゃない!?――
その時。最後に浮かんだのは、白い長い髪をした美しい女性が白い髪の赤ん坊を抱き抱えたまま、こちらに差し出している映像。

『抱いてみて。え?名前?もう決めたわ。この子の名前はソラ。ソラ・ライムンド・ハロッズ。可愛がってあげてね』



ガクン!

「将軍はん!大丈夫か!?」
映像がそこで途切れるとグレンベレンバはよろめく。アイアンが心配するが、
「大丈夫よ…」
息を荒くしつつ言う。

















「将軍はんどないしたんや?」
グレンベレンバはバサッ!と赤紫色をした髪をなびかせる。もう苦しんだ様子は無く、気丈に振る舞っていた。
「もう大丈夫。平気よ。さぁてと。ようやくあたしの世界が造られるわぁ。あとは空ちゃんと鵺ちんを捕食すれば。アイアン。最後まであたしについて来てちょうだい」
「そのつもりやで!」
――心臓が二つある感覚…それにあの記憶…。もしや…。…いえ。考え過ぎね。だってあの子はとっくの昔にアタシが捕食したじゃない――
























to be continued...










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