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終焉のアリア【完結】
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インド―――――

「何処にもMADなんて居ないですね。寧ろ平和…」
インドMAD殲滅任務にやって来た3人。彼らは知らない。この任務が成功できなければ自分達が解雇になる事を。それ以前に此処のMADは上級軍人レベルでしか倒せないという事も。
インドへ来る飛行機の中でもハロルドが気を遣って仲を良くしようと話し掛けても、無視無言だった3人はやはりインドに着いてからも無視無言。アリスはさっさと先頭を歩いて、中央にオロオロしたハロルドが。最後尾にはファン。3人はテントで造られた露店街を歩く。
「た、確か此処に出没するMADは目撃情報によると地球人に化けられるMADらしいですね。じゃあ僕達を囮に誘き寄せてみますか?」
「……」
「……」


しーん…

「う"っ…。あ、あの〜…任務の作戦を一緒にたてませんか?お、おーいアリス・ブラッディ君、ファン・タオ君〜」
「知るかよ。てめぇ1人で立ててろ。作戦なんざ立ててる間に俺様1人でぶっ殺してきてやるからな」
「あ!ちょ、ちょっと待って下さい!駄目ですよ単独行動は!」
人混みの中へ消えていってしまったアリス。ハロルドは嫌な予感がして、後ろを振り向く。
「あぁ!ファン・タオ君も勝手に1人で何処かへ行かないで下さい!」
ファンも人混みの中へ消えていってしまった。ハロルドは肩をがっくり落とす。
「はぁ…。どうして仲良くできないんだろう…。って僕も協力できていないってミリアム少佐に言われていたから他人の事をどうこう言える身分じゃないか。でも2人共返事くらいしてくれたって良いのに…」
諦めて顔を上げる。
「はぁ。仕方ないかな。僕も僕だけでMAD殲滅に向かおう」





























「いらっしゃい!今朝採れたばかりの魚だよ!」
威勢の良い売り子の声が飛び交う露店街。テント造りの露店など、アメリカでは見た事が無いハロルド。貧しいながらも明るく元気に売る売り子達を見ていたら一刻も早くこのインドの地からMADを排除したくなってきた。
「よしっ!頑張るぞ!」
「其処の金髪のお兄さん!」
「え?あ、僕の事ですか」
「そうだよ!ほら!採れたてマンゴーいるかい?」
中年のふくよかな女性に手招きされる。
「あ、ありがとうございます。でも僕今仕事中で…」
「そんな事言わずにさ!もうちょっとこっち寄って見るだけ見ていっておくれよ!色艶素晴らしいマンゴーなんだよ!」
「じゃあ見るだけなら…」
売り子の中年女性に流されるまま、マンゴーを差し出す女性に近付いた時。


ガシッ!

「!?」
「捕マエタァ」
中年女性に右腕を掴まれたハロルドが目を開く。掴んだまま中年女性はぐわっ!とハロルドを片手で持ち上げ、次の瞬間…


ガシャーン!

「うわあ!?何だ何だ!?」
「ひ、人が今テントの上に放り投げられた!?」
ハロルドをそのまま、反対側の露店のテントの上にブンッ!と放り投げたのだ。案の定反対側のテントは崩れ落ち、テントで物売りをしていた老夫がテントや鉄骨の下敷きに。
「きゃあああ!」
「おい!イスダールさんあんた何しているんだい!?」
マンゴー売りの年女性の隣のテントから、売り子達が血相変えて中年女性に詰め寄る。
「今見ていたよ!イスダールさんあんた、あの外国人の兄さんを反対側のテントへ放り投げただろう!?何をやっているんだあんたは!」
「いつも明るくて優しいイスダールさんあんたがそんな狂人とは思わなかったよ!来な!警察に連れて行ってやるよ!」


ガシッ!

イスダールと呼ばれる中年女性の腕を、隣の売り子の男性が掴む。
「警察…?」
「そうだよ!あんたがした事は人殺、」


バクン!

何とイスダールは、自分の腕を掴んでいる売り子男性を大きな口で丸飲みしてしまったのだ。
「…え?」
あり得ない非日常的光景に売り子も客も、この場に居る人間全員が呆然。
「いや…いやあああああ!」
「きゃあああああ!」
「ばば化け物だああああ!」
賑やかな露店街が一瞬にして悲鳴に包まれる地獄と化した。

























「ハァ…ヤッパ年ヲトッタ男ハ不味イネェ」


ゴキッ…ゴキッ!

イスダールの皮をかぶっていたMADがイスダールの姿から本来の自分の姿に変身する。緑色をした人型の化け物の姿に。
「ヒィイ!MADだ!あの姿見た事あるぞ!」
「あれは日本のトウキョウが侵略された時テレビで見た!あの姿が人食いMADだ!」
「きゃああ!逃げろぉお!」
「MADダナンテ失礼ナ呼ビ方シナイデクレル!?」
MADは逃げる女性に手を伸ばす。
「きゃああああ!」


パァン!

「ウグア!?」
女性に伸ばしたMADの手に銃弾があたり、MADは驚き転倒。
「ナナナ、何者、グアアア!?」


ドスッ!

転倒しているMADが起き上がろうとしたところを足でMADの腹を踏みつけ、MADのダイヤのような目玉に銃口を突きつけるのはハロルド。ハロルドは軍服の内ポケットからEMS軍人証を取り出し、周りの人間に見せる。
「EMS軍です!皆さん、此所は今MADとの戦闘域に入ります!危険ですので速やかに避難をして下さい!」
「EMS…?ソウカ、アンタEMSノ地球人カ…」
「…?」
「ナラ手加減シナクテイイミタイダ!出テキナ、オ前達!」


ゴキッ…ゴキゴキッ…

「なっ…!?」
何と、売り子のほとんどが人の皮をかぶっていたMADだったのだ。かぶっていた人の皮を剥ぎ、本来のMADの姿を現す。ハロルドは目を見開き驚愕。
――こ、こんなに居たなんて…!?――
「きゃああああ!」
「騒ガシイネ、イタダキマース!」


バクン!

売り子の皮をかぶっていたMAD達は一斉に逃げ惑う地球人に飛び掛かり、丸飲みしていく。


パァン!パァン!

初めての実戦にして初めての最悪の事態に顔を真っ青にしながらも、ハロルドはとにかく発砲し続ける。
「止まれ!!化け物!!」


カチャ、カチャ…

「え!?」
「ハッ!馬鹿ナ地球人!弾切レカナ?」
「くっ…!」
慌てて弾補充のリロードをする。だが、その僅かな時間が命取り。MADはグワァ!と口を開けてハロルドに飛びかかる。
「ソレジャア、イタダキマース!」
「まずい…!!」


スパァン!

「イタダキマ…アレ?」


ゴロゴロッ!

ハロルドに飛びかかったMADの頭が吹き飛び、ハロルドの足元に転がった。
「え…?」
「クソMAD相手になめられてんじゃねーよ!」


スタッ!

別のテントの屋根から飛び降りたアリス。右手には、黒い光を放つ剣。
「アリス・ブラッディ君!助けてくれてありがとうございます!」
「てめぇを助けたわけじゃねぇ。俺様1人で此処のMAD全滅させて階級を貰いたいだけだ。だからてめぇは其処で指くわえて見てろ。俺様の実力をな!」
「なっ…!?」


スパァン!スパァン!

「キャアアアア!」
「ウギャアアアア!」
「ハッハー!死ね!死ね!死ねよクソMAD!!」
1人で斬って斬って斬り続けるアリス。その無慈悲さは、どちらが敵なのか分からない程。
「ま、待って下さい!僕も戦います!」
「うるせぇ!てめぇみたいな凡人に用は無ぇんだ引っ込んでろ!」
「俺達カラ見タラ地球人全員凡人ダガナ!」
「あ?」
声がした背後をアリスが振り向く。其処には、今までのMADの3倍はある巨大なMADが1体。
「んなっ…!?何だよこいつ…!?」


ドガァン!

「アリス・ブラッディ君!!」
巨大MADの拳に殴られたアリスは、石の壁に思いきりめり込む程叩き付けられた。
「少々遊ビ過ギタヨウダナ地球人。我々ヲ舐メルナ」
アリスに駆け寄るハロルド。頭からは血が。
「アリス・ブラッディ君だ、大丈夫ですか?血が…」


パンッ!

ハロルドの手を乱暴に振り払うアリス。
「ア、アリ…、」
「うるっ…せぇ…!てめぇなんぞに心配されなくても…大丈夫に決まってん…だろ!」


バタン!

「アリス・ブラッディ君!」
立ち上がるが、すぐ倒れてしまったアリス。ハロルドが肩を組んで立たせてやる。すると、前に大きな人型の影ができた。恐る恐る顔を上げると…其処にはあの巨大MADが、指の骨をボキボキ鳴らしてハロルドとアリスを待ち構えていた。
「話ハ済ンダカ?ソレジャアソロソロ食ウトスルカ」
「っ…!!」


ゴオッ!

「ウワ熱ヂィイイ!?」
「え…!?」
すると巨大MADの体が真っ赤な炎に包まれ出した。何が起きたのか分からないハロルドとアリスは目をぱちくり。
「焼ケル焼ケル!ギャアアアア!」


バターン!

大きな音をたてて倒れた巨大MADは、炭になってしまった。





















「案外脆いものだな。侵略者というのも」
「ファン・タオ君!」
手の平から炎をチリッ…と翳して現れたのはファン。だが、2人を見つけるとすぐに背を向け、1人で行ってしまおうとする。それはアリスも同様で。
「退けよ!邪魔だ坊っちゃん!」
「あ!ま、待って…、待って下さい2人共!!」


ガシッ!

「うぐっ!?」
「ぐええ!?首が!首が絞まるだろーが!!」
「あ…!ごごごめんなさい!」
アリスとファンの首を後ろから掴んで引き留めたハロルドは、大慌てで首から手を放す。
「ゲホ!ゴホッ!殺す気かてめぇ!!」
「ごごごめんなさい!!あの、でも!こんなにたくさんのMAD1人ずつじゃ勝ち目が無いですよ!3人で共闘しましょう!」
「うるせぇ!だから何べんも言わせんな!俺様はてめぇらと一緒にされるのが嫌だっつって、」
「オ喋リハ終ワッタカイ?地球人!」
「…!やべぇ!」


ドーン!!

背後からたくさんのMADがテントの屋根の上からハロルド達目掛け飛び降りた。3人は避ける事ができたが。取り敢えず走る3人。
「くっそ!うぜぇんだよクソMADが!」
「あの!僕に提案があるんです!」
「うるせぇ!聞かねぇよ!」
「私も1人で戦える」
「そ、そんなの駄目ですってば!いいですか?!僕が銃で彼らの足を撃って動けないようにします。その次にアリス・ブラッディ君が彼らの頭を凪ぎ払って下さい!最後に念の為、ファン・タオ君が彼らが炭になるまで焼き付くして下さい!」
「お前に指図される覚えはない」
「ああ。そうだぜ!てめぇなんぞに何で俺様が指図されなきゃいけ、」
「僕達仲間なんだから共闘しなきゃ駄目なんですってば!!」
両サイドを走るアリスとファンの頬を思いきり引っ張るハロルド。
「痛ででで!やめろ坊っちゃんが!」
「ややや、やめろ!パティンスキー!」
「仲間割レカナ?見苦シイネ地球人!」
「…!!」


ザッ!

たった今の今まで自分達の後ろを走っていたMAD達が前に現れた為、3人はゴクリ…息を飲むと、すぐさま銃を構えたハロルドが…


パァン!パァン!!

「ギャッ!?」
「グアッ!?」
MADの足を撃つ。ハロルドはアリスを見る。
「アリス・ブラッディ君お願いします!」
「……」
「アリス・ブラッディ君!」
「チッ!うるせぇな!指図すんじゃねぇクソが!」


スパァン!スパァン!!

「グアアアア!?」
と言いつつも、先程の作戦通りMAD達の頭を剣で凪ぎ払っていくアリス。
「おい!堅物!最後はてめぇの番だろーが!」
「……。指図される覚えはないと言っているだろう」


ゴオッ!

アリス同様、口ではそう言いつつも炎でMADを焼き払うファン。
「ギィヤアアアアア!」
「イギャアアアア!」
燃えるMAD達から悲鳴がだんだん聞こえなくなり、やがて何も聞こえなくなると同時に炎も沈下し、其処には焼けた灰色の煙を上げている黒い炭と化したMADの残骸が山に積み重なっているだけだった。






























「すごいすごい!ありがとうございます!!2人共!」
「ケッ!たまたま俺がぶっ殺してぇMADの所にてめぇら2人が居合わせただけだ」
「共闘したわけではない」
「わー!ありがとうEMS軍人さん!」
避難していた地球人達が一斉に3人に駆け寄ってきた。
ギョッとする3人はもみくちゃにされるが、神のように崇められている。
「化け物からあたし達を守ってくれてありがとう!EMS軍人さん!」
「命の恩人じゃ!」
「さっすがEMS軍人様だ!」
やんややんや。崇められる声にハロルドは勿論、いつも無愛想なアリスとファンも嫌がる顔はしているものの嬉しいのだろう、頬が赤く照れている様子。
「ね!共闘して良かったですよね!」
「う、うるせぇ!別に嬉しくも何ともねぇんだよ!」
「私1人でも勝てたがな!」
























そんな3人の様子をEMS軍本部のモニターで見ているのは、グレンベレンバと他全部隊の隊長達。勿論アイアンやアリアの姿もある。
「んふっ。3人の制服にこっそり付けておいた小型カメラ。付けておいて良かったわぁ。あの子達なかなかやるじゃなぁい。共闘もできたしその上、初めての実戦なのに隊長クラスでしか倒せないはずのMADを殲滅する事がデ・キ・タ」
くるっ。
グレンベレンバは椅子を回してアリアを見る。
目を潤ませて嬉しそうなアリア。他の隊長達は面白くなさそうにしているが。
「アリアちゃん。貴女の見る目を疑って悪かったわぁ。貴女に言った通り。あの子達3人の解雇は取り消しよ」
アリアはガタッ!と立ち上がる。満面の笑みを浮かべているが、目には薄ら涙が。
「ありがとうございます!!」
「アリアちゃんの見る目を疑ってごめんなさいねぇ。貴女の見る目は確かだったわ!」
「いえ、違います!私ではなく、あいつらが出した結果です」
「んふっ。本っ当部下思いねぇ〜」
























「チッ!何や何やアリアの奴!面白ないわ。将軍はん!他にあいつらを解雇にしてアリアを笑い者にできる方法探しましょ!」
廊下を2人並んで歩くアイアンとグレンベレンバ。
「んふっ。良いじゃない。アリアちゃんもあのお馬鹿3人も居させれば」
「んなっ…!?何やて!?」
「あたしは力のある地球人が居ればそれで良いわ。例え、多少生意気でもね」
「…はっ。将軍はんはそういう人…いや、MADやったな」
「んふっ。だからアイアン大佐貴方もうかうかしていられないわよ〜ん?」
「おー、おっかねぇおっかねぇ」













































EMS軍本部に帰還したハロルド、アリス、ファンの3人。だが、また部屋では3人外方向いたまま。
「あ、あの〜…せっかく共闘できたんですから戦闘以外でもチームワークを深めませんか?えっと…あ、そうだ!食堂に夕食食べに行きませんか?ねっ!」


しーん…

「えっと…あ、あの〜」
「ったく!あーうるせぇうるせぇ!そういや今日食堂の日替わり定食は俺様の好きな焼き肉定食だったな。仕方ねぇ、行ってやるか!」
「え!」
「仕方ない。たまには食堂で食べてやるか」
立ち上がり、部屋の扉を開けるアリスとファンを見てハロルドは感激。
「わ、わ…!アリス・ブラッディ君!ファン・タオ君!ありがとうございます!!」
ビシッ。
アリスは振り向き、ハロルドに指差す。
「てめぇのそのフルネーム呼びうぜぇんだよ。いい加減どうにかしやがれ」
「確かに。フルネームで呼ぶのは長くないか?」
「僕、相手から友達と認定してもらえないとなかなか名前だけで呼べなくて。友達だと思っているのは僕だけだったらどうしようって」
「何だそりゃ。面倒くせぇからフルネーム呼びやめろよな」
「え!それって友達と思ってくれていると思って良いんですか?!」
「違げぇよ!堅苦しいから嫌なんだよ!てめぇもそう思うだろ堅物ヤロー!」
「堅物ヤローとは何だ」
「あ。そうそう僕も坊っちゃんって呼ばれて不思議だったんです。あれ、何でですか?」
「うるせぇな!呼び方なんざどうでもいーんだよ!オラ!行くなら行くでさっさと食堂行かねぇと定食が売り切れるだろ!行くぞ!クソ坊っちゃん!堅物ヤロー!」
部屋を出て廊下を走る。先頭から順にアリス、ファン、ハロルド。
「全く…。アリスお前という奴は本当に子供だな。そう思わないかハロルド」
「僕はみんなと仲良くなれてただただ嬉しいよ。改めてこれからよろしくねアリス君!ファン君!」
「早速馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇ!!」













































半年後、
EMS軍本部―――

「あ"〜今日の任務もくっそ疲れたぜ」
頭の後ろで腕を組むアリスを先頭にハロルド、ファンが廊下を歩く。何やら向こうが騒がしい。
「あ。そういえば今日は四期生の入軍式だったね。だから向こうが騒がしいのかな」
「もう四期生か。早いものだな」
「オッサンくせぇ事言ってんじゃねぇよ堅物ヤロー」
「僕達もいつの間にか先輩だね〜。あ。そうそう。駅前に新しくできたバーがあるんだけど今晩行ってみない?」
「ふむ。気になる所だな行ってみるか」
「オッシャー!飲みまくるぜ!」


ひょこっ。

「あ?」
廊下を歩いていたら、前方の柱の陰からまるで4つ刺さった串団子のように重ねた顔を柱からひょっこり出してこちらを見ている4人が居る。
一番下が黒髪少年、その上が藤色の髪の少女、更にその上が黒髪少女、一番上は金髪少女。
3人はポカーン。固まる。
「何だ…あいつら?」
「さあ…?」
「見ない顔だな」
「あ、あ、あ、あのっ!EMS軍人さんですか?」
金髪少女がオドオドして喋る。
「あ?見りゃ分かんだろ」
「ひぃい!怖いです〜」
「私達…今日からEMS軍人…なった…」
「あ!もしかして四期生の人達かな?」
「そう。あたし達EMS軍の四期生」
ぴょこっと柱の陰から姿を現した4人。
「小鳥遊風希…」
「あたしは小鳥遊鳥。よろしく」
「えええっと!俺あ、僕は小鳥遊花月といいます」
「わわわわたくしはっ、3人の姉の小鳥遊月見と申しますっ!日本支部で主に活動致しますが、今日からよよよろしくお願い致しますっ!」
「ほう。日本人か。よろしくな」
「よろしくね〜!大変だけど一緒に頑張ろうね」
「ま、よろしくなー」
挨拶を済ませると3人は小鳥遊四姉弟の脇を通り過ぎ、先程の会話に戻る。
「でね!さっき言ってたバーなんだけど何と!3時間飲み放題!」
「すごいな。店は赤字覚悟か」
「本っ当てめぇは酒好きのアル中だなァ」


ぐいっ、

「あ?」
アリスは制服の裾を後ろから引っ張られ、後ろを振り向く。引っ張ってきたのは無表情な少女小鳥遊風希。
「ンだよ」
「出口…」
「あ?」
「出口分からなくなった…教えて…」
「はあ!?てめぇら迷子かよ!?」
「え、えへへ〜わたくし達出入口を探してかれこれ2時間なのです」
「大体広すぎだよね此処」
「姉さん達が方向オンチだから」
「ったく!どうしようもねぇな四期生!オラよ!教えてやっからついて来やがれ!」
苦笑いの3人を先頭について行く4人。あっという間に出入口に到着すれば月見だけペコペコ頭を下げているのに対し、他3人は相変わらず喋っているからアリスはイライラ。ファンは呆れ、ハロルドは笑顔で対応。
「お忙しいところありがとうございましたっ」
「いえいえ〜大丈夫だよ」
「月見ちゃん帰ろーあたしケーキ食べたい」
「姉さん達早く帰りましょう!見たいアニメが始まるんで!」
「月見姉様早く帰ろう…ゴーグルの人きっと…ヤクザ…殺されちゃう…」
「あたしもそれ思ってた」
「おいぃいい!てめぇら聞こえてるぞ!!」
4人が見えなくなると扉を閉め、再び軍内廊下を歩く3人。
「まだ若い連中だったな」
「あんなので大丈夫かよ四期生」
「大丈夫大丈夫!僕達も最初心配されてたけど何とかなってるし!」
「そ、それより日本人女性は初めて見たがなかなか綺麗なのだな…あ、あの金髪の姉が」
「お〜?堅物ヤロー一目惚れかぁ?」
「えー!ファン君まさかの!?良かったね〜!」
「いや!?べべ別にそんな意味で言ったのでは…!」
「まああの金髪姉ちゃん爆乳だったしな。堅物ヤローが惚れるのも仕方ねぇか」
「馬鹿者!そんな目で見てなどいない!!」
「でも日本支部の人達って事は本部の僕達とは滅多に会わないよね。もしかしたらこれっきりかも」
「ガーン…!」
「ギャハハハ!残念だったな堅物ヤロー!ま、あいつらが日本支部なら仕方ねぇよ!次の女を探せば良いだけだろ」
「だ、黙れアリス!で、では着替えたらバーへ行くか」
「っしゃー!久々に飲むぜ!」
「毎月1回は行く事にしようよ!」
「だな!」
最初の不仲が嘘のように3人は和気藹々とした雰囲気で廊下を歩いて行った。














































場面は戻り、
現在――――――

「…クッソ!」


グシャッ!

外駐車場で煙草を吹かしていたアリス。煙草をぐしゃぐしゃに踏みつけるのは、何処にも行き場の無い気持ちを煙草にあてる為か。2箱目突入。煙草を取り出す。
「アリスさん…」
「あ?風希か」
風希は相変わらずの無表情でアリスの向かい側に立つ。火を点けようとしたアリスの手が止まる。
「そういやお前、煙草嫌いだったな。殺されそうだからやめてやっかァ」
煙草をポケットにしまう。
「どうして式に出なかった…?」
「あ?面倒くせぇからだ」
「……。そう…」
アリスはポケットに右手を突っ込み、左手をヒラヒラ振りながら去って行く。
「クソ坊っちゃんとカズの穴埋めで仕事が山積みでよ。お前の相手してる暇無ぇんだよ。じゃーな」
「ご飯…」
「あ?」
アリスは顔だけ振り向く。
「行っても良い…?話…ある…」
「ご飯行く?何だそりゃ」
「ご飯の時…部屋…行っても…良い…?話…ある…。大事な…」
「……。おう」
「そう…」
アリスはサッと背を向けると去って行く。風希と離れてから、煙草に火を点けていた。





















to be continued...










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