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終焉のアリア【完結】
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ドンッ!!

「おっと。二度同じ手は食らいませんよ?」
回避された風希は目を見開く。
「どうして…!?う"あ"!」


ドスッ!

風希の腹に思いきり拳を入れたドロテア。しかし風希はガタガタ震えながらも、ドロテアの顔を蹴り上げる。


ドガッ!

「チッ…!」
後ろの手摺まで飛ばされたドロテアは、蹴られた顔を押さえながら怒りに震える。ドロテアの周りにはシルヴェルトリフェミアと同じ紫色の光が。
「生意気な地球人の小娘が…!わたくしを怒らせてしまったようですね!!」
「!?何…!?」
風希目掛けて、紫色の光が飛んできた。
「風希!!」
「!」


ドンッ!!

「ぐあああああ!」
「アリス…さん…!?」
風希を庇う為立ち上がったアリス。風希の前に飛び出した為、ドロテアから紫色の光の攻撃をくらってしまった。
「ぐあ!」
「アリスさん!」


バタン!

その場に崩れ落ちたアリスの全身から血がドクドク流れている。
「アリスさん…!アリスさん…!」
「ぐっ…、てめぇ、が…おとなしく…待っていりゃ…こんな事に…ならなかっ…たんだ…、ろーがっ…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「最期の挨拶は済みましたか?それではサヨウナラ。アリス・ブラッディ、小鳥遊風希」
飛び上がったドロテアは長い鋭利な爪を2人目掛け振り上げた。
風希は目を瞑り、アリスは動かしたくても体が動かない。
「ちっ、くしょ…、」


スパァン!!

「…!クソ坊っちゃん…!?」
2人の間に両腕の羽を広げて立ちはだかったハロルドに、ドロテアの鋭利な爪が直撃。体の右半分がもっていかれた。





















ビチャ!ビチャッ!

彼の真っ赤な血が、アリスと風希の顔と髪を濡らす。
「ハロルドォオオ!!」
「ふっ。また貴方ですか烏。おとなしく死、」


ピキーン!


パァンッ!

「で…、あ"?」
刻を止めてから、片羽となった左の羽でハロルドがドロテアの腹部を突き刺した瞬間、ドロテアは先程同様液状化し、弾けた。まるで水風船が割れたように。


ビチャ!ビチャッ!

辺りにドロテアの体の緑色の液体が雨のように降り注ぐ。
「あ"…ぐ…、」


バタン…!

「ハロルド!!」
倒れたハロルドに駆け寄るアリス。しかし、さすがのアリスも顔を歪めてしまう程の姿となってしまったハロルド。右側の頭から脳脊髄液が流れ、今失った右半身はピクピク痙攣しながら血を流している。
「っ…!おい!待ってろ!今、本部に戻るぞ!本部の医療班に手当てしてもらうからな!死ぬんじゃねぇぞクソ坊っちゃん!!」
「あ"…、あ"アリスく"…ん…、」
「喋るんじゃねぇ!馬鹿野郎!」
「ふふふ…だから言ったではないですか。液体化してもわたくしは10時間後には元の姿に戻る、と」
「!!」
緑色の水溜まりとなったドロテアから声が聞こえる。アリスと風希は顔を青くする。
「んなっ…!?何だよ、こんなになっても死んでいねぇだと!?」
「嘘っ…!?」
「ふふふ。不様ですね地球人。いい加減諦めたらどうです?貴方がた地球人は我々にはかなわないのですから。何をやっても無駄です」
一方のハロルドは左腕の羽を床に這わせて、ドロテアに近付いていく。
「な、何やってんだよクソ坊っちゃん!?やめろ!」
「はぁ"…はぁ"…無駄…なんか…じゃ…な、い…」
「クソ坊っちゃん…?」
液体化したドロテアを手で掬ったハロルドは何と、その液体を口の中へ運び…


ゴクン!

「!?」
これにはアリスと風希は言葉を失う。ハロルドは、液体化したドロテアを飲み込んだのだ。
「バッ…!ふざけんな!やめろハロルド!!」
しかしアリスの制止も無視して、ドロテアの液体が無くなるまで手で掬って飲んで、手で掬って飲んでを繰り返す。
「ギャアアアアア!何をするのです!?何をやっているのです地球人!!おやめなさい!おやめさないぃいい!!そんな事をしたらわたくしは、わたくしはぁあああああ!!」


ゴクン…、

一滴残らず全て飲み干したら、ドロテアの声も聞こえなくなった。
そんなハロルドの背を、ただただ呆然と見ている事しかできないアリスと風希。






























ハロルドは体を引きずりながらゆっくり、2人の方を振り向く。
「小鳥遊鳥…ちゃ…が…言っで…だ…ん…、だ…。MADを…完全に"…殺ず…は…僕達が逆…に…、MADを…食べるしが…ない"…っで…」
「バッ…、馬鹿野郎!もういい!もう喋んな!!」
その場に崩れ落ちそうになるハロルドに肩を組んで支えてやるアリス。反転した虚ろな目が、アリスを見ている。
「ア"リスぐん…、ぶ…じ…?」
「ああ!大丈夫だ!俺も風希も!てめぇのお陰だよ!だからもう喋んな馬鹿野郎!!」
「はぁ、はぁ、ハロルド!アリス!」
「遅ぇよ堅物ヤロー!!」
階段を駆け上がってやって来たファン。先程落とされた為頭からわずかに血を流しており、足は骨折したのだろうか、引きずっているが命に別状は無さそうだ。
「…!ハ、ハロルド…!?」
ハロルドの惨状に目を見開いたファンから、血の気が引いていく。
「ああ。てめぇが来るのが遅くて弱ぇから…、風希が弱ぇから…、俺が…俺が弱ぇから!!こいつがさっきのMADを殺ったんだよ!!」
ハロルドはゆっくり、ファンに視線を向ける。
「ファン"…ぐ…、ん…だ…じょ…ぶ…?怪我…、」
「ああ。大丈夫だ。大丈夫だからお前は自分の心配をしろ!アリス!此処へ医療班を呼ぶのは共倒れだ!至急本部へ戻るぞ!」
「医療班にはクソ坊っちゃんの状態と、すぐに手術できるよう支度しとけって連絡しておけ!!」
「ああ、分かった!」
ファンはすぐ携帯電話を取り出して、3人に背を向けて本部医療班に連絡をとっている。
アリスはハロルドの肩を組んだまま立ち上がる。
「風希!てめぇがクソ坊っちゃんの後ろを支えてやれ!俺が引っ張って行く!てめぇらが乗ってきた戦闘機近くにあるんだろ?!」
「うん…。ある…」
「それに乗って本部まで一気に戻るぞ!だから、途中でへばんじゃねぇぞクソ坊っちゃん!!」
「ア"リ"スぐ…ん…」
「だから喋んな馬鹿野郎!!」
「だかなじ…風希…ちゃ……無事…で…良かっ…だ…」
「だから黙れって、」


パンッ!

「は…?」
何かが破裂した音。その瞬間、肩を組んでいたハロルドがズルッ、とアリスの肩から落ちた。その破裂音に電話中のファンも振り向く。
3人の視線の先には、胃から下が破裂した為、上半身と下半身が離れて倒れている仲間の姿。
「フフフ…消化サレル前ニ体内カラ貴方ニ復讐ガデキテ幸セデスヨ…烏…イエ…ハロルド・パティンスキー…!」
上半身と下半身が真っ二つになったハロルドの腹部からドロテアの声がして以降、ドロテアの声はもう一切聞こえなくなった。






















「ハロルドォオオ!!」
アリスとファンが駆け寄る。
「ハロルド!」
「おい!クソ坊っちゃん!おい!おい!!」


ガクン…、

「や…嫌…嫌…嫌っ…」
顔が真っ青で崩れ落ちてしまった風希。
「あ"…、ア"…リスぐ…ん…と…だがなし…風希ちゃ…、無事…で良が…」
「うるせぇ!それはさっき聞いた!!堅物ヤロー!てめぇはこいつの下半身を運べ!EMSは、視力ゼロになった俺の目が見えるようなゴーグル作れたんだ!上半身と下半身バラバラになった体だってくっつけられるかもしれねぇだろ!!」
「あ…、あ、ああ…」
「うろたえてんじゃねぇ!!」
「嫌…いや…、」
「風希てめぇもだ!そんな顔してんじゃねぇよ!!クソ坊っちゃんに失礼だろーが!助かるんだよ!最新のよく分かんねぇ医学で助かるに決まってんだよ!!」


くいっ、

「あ?」
アリスの制服の裾を引っ張ったハロルドは、笑顔を浮かべていた。目からボロボロ涙を伝わせて。
「どっぢか…が…死んじゃ…可哀想…で…しょ…?アリスぐ…ん…と…、たかなじ…風希ちゃ…2人…は…お"…似合い"…だ…ら…。幸ぜ…に…な"っ…て…ね」
「!!」
アリスは溢れてくる感情を唇を噛み締めて堪えると、ハロルドの上半身を抱えて立ち上がり、階段を駆け降りる。
「堅物ヤロー!風希!ガキ!戦闘機まで走れ!死ぬ気で走れ!1秒でも手ぇ抜くんじゃねぇぞ!その1秒でこいつが死んだら俺は許さねぇかんな!!」
そうファンと風希と将太に背を向けて階段を駆け降りるアリスの目からボロボロ溢れているモノがある事には、アリスに抱えられているハロルドしか知らない。


































































同時刻、
EMS軍本部――――

「これ、花月と撮ったプリクラ」
「峠下氏やっぱりイケメソですなぁ」
ryo.に、花月とのプリクラを見せる鳥。
花月が死んでから泣いてばかりのryo.を励ます為他愛もない会話をしてやっているのだ。
「むむ?これは、将軍とではありませんかな?」
「これ?」
鳥のプリクラ帳に貼ってあるミルフィとのプリクラの隣の、ハロルドと鳥が写っているプリクラを指差すryo.。
「この前ハロルドとお出掛けした時撮ったの」
「峠下氏の姉上の人脈、半端ないですね…!」
鳥は窓の外を見る。真っ暗な闇夜に、真っ赤な月が不気味に浮かんでいた。
「ハロルドまだ帰ってこないかなー…」







































































ビル屋上―――――

「んーもう!アイアンっていうおじさん、あとちょっとで殺せたのにしゅんかんいどうぅで逃げられちゃったよぅ!ぶーっ!」
アイアンに逃げられ、頬を膨らますシルヴェルトリフェミア。
「ドロテアのとこは終わったかなぁ?」
くるっ。
階段へと続く扉の方を振り向いたシルヴェルトリフェミアの目が見開く。
しばらくポカーンとして目を何回も擦り、頬をびよーんと引っ張ったり叩いたりしてから瞬きをする。
「そら…?」
其処には、空がたった1人で立っていた。
恐る恐る近付くシルヴェルトリフェミア。
「よ。久し振りだな、シトリー」
「!!そらぁ!!」
満面の笑みで空に抱きつき胸に顔を埋めるシルヴェルトリフェミア。まるで、生き別れた母親と再会した子供のよう。
「そらぁ!そらぁ!やっとシトリーのとこ戻ってきてくれたぁ!そら!そらぁ!ぬえは?邪魔な鵺は死んだ?」
「居ないよ」
ぱあっ…!と明るくなるシルヴェルトリフェミアの笑顔。
「良かったぁ!そら、そら!またシトリーのお友達になってね!そして、いっぱいいーっぱい遊んでね!」
「はは、そうだな」
































to be continued...







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