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終焉のアリア【完結】
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ドンッ!

戦闘機の残骸が落ちた。
「ふふ」
その様をビルの屋上から見下ろすご満悦のドロテア。そんな彼女の腕にしがみついているシルヴェルトリフェミア。
数10機の戦闘機が落下した地上からは戦闘機のエンジンオイルが漏れ出したせいで、バン!バンッ!とまるで打ち上げ花火が鳴ったような爆発音をたてて爆発。それ故、戦闘機からは更に真っ赤な炎がゴオゴオと勢い良く上がっている。火の勢いが強く、辺り一帯に炎が広がっていく。
「わー!すごい真っ赤!綺麗だねー!ねぇねぇドロテア!お兄ちゃん達死んだかなぁ?」
「……」
「ドロテア?」
ダイヤのような目玉でジッと地上を見つめているドロテア。表情は分からない顔だが、雰囲気からして、地球人で例えるなら眉間に皺を寄せた険しい表情。
「おーい?ドロテア〜?」
「…!シルヴェルトリフェミア様お下がり下さい!」
「え?」
ドン!と勢い良くシルヴェルトリフェミアを後ろへ押し退けたドロテアに、当のシルヴェルトリフェミアは「痛てっ!」と尻餅。すぐ顔を上げて頬を餅のように膨らませてお怒り。パタパタとドロテアに駆け寄る。
「も〜うぅ!いきなりシトリーのこと押すなんてひどいよぅドロテア〜!」
「来てはいけません!シルヴェルトリフェミア様!」
「え?」
ドロテアは振り向き、守るかのようにシルヴェルトリフェミアの上に覆い被さった。そんなドロテアの背後に、地上から物凄い速さでこの屋上へ飛び上がった巨大な黒い影が見えた。その黒い影がシルヴェルトリフェミアの赤と黄色の瞳に映っている。その巨大な黒い影は例えるならまるで…
「から…す…?」
シルヴェルトリフェミアがそう呟いた時、黒い影の黒目と白目が反転した目とシルヴェルトリフェミアの目が合った。


ドゴォッ!!

「うあああああ!」
「!!」
烏のような真っ黒く巨大な影が羽にも似た両腕をバサッ!とドロテアに向けると羽の両腕の影が目で追えない速さでドロテアの背中に攻撃する。























「あああああああ!!」
自分を庇いながら悲鳴を上げるドロテア。こんなに苦しんでいるドロテアを見た事が無いシルヴェルトリフェミアは、ドロテアの胸の中でただただ呆然として侍女が苦しむ姿を一番間近で見ている。
「ドロ…テ、ア…?」
「シ、シシ、ルヴェヴェヴヴ、ルトリフェ、ミミミア"ア"ア"様…お逃げ…くくくださ…」


ガクン…、

「ドロテア…?」
攻撃はまだ続いている。だがドロテアはガクン、と首を前へ下げてしまい、シルヴェルトリフェミアが呼んでも無反応。こんなのは初めて。何から何まで初めて。だからシルヴェルトリフェミアのまだ幼い思考が追い付かない。
「ドロテ…ア…?」
反応は無い。
「ドロテ…うっ…うぅ…」
涙をポロポロ流すシルヴェルトリフェミア。
「やだ…やだよぅ…ドロテア…ドロテアがいなくなっちゃったら…シトリー…は…、ひとりぼっちに…なっちゃうぅ…」


ドンッ!

「!!」
ドロテアは既に意識が無いにも関わらず、烏のような巨大な黒い影が再びドロテアを攻撃。その反動でガクン!とシルヴェルトリフェミアの上に覆い被さるドロテアの体。
「何処の誰なのぅ…?ドロテアをいじめるのは…。シトリーからドロテアをとろうとするのは…」
シルヴェルトリフェミアは歯をくいしばり、ゆっくり顔を上げた。
「ドロテアをいじめる奴はシトリーが許さない!!」


ドン!ドン!ドンッ!!

「!!」
シルヴェルトリフェミアが声を上げた瞬間シルヴェルトリフェミアから紫色の不気味で強大な光が放たれると、光はビル周辺の建物を次々と飲み込んでいく。光に飲み込まれた複数の建物は、まるで其処に爆弾が落とされたかの如く次々と倒壊していった。
その光景に、黒い影の中に見える黒目と白目が反転した目が動揺して周辺を見回していると…。
「お前か…。ドロテアをいじめたのは…」
「!!」


ドンッ!!

いつの間にか目の前に現れたシルヴェルトリフェミアから放たれた紫色の光に飲み込まれ、その瞬間、光が爆発した。














































ガラガラ、ガラ、

先程シルヴェルトリフェミアから放たれた光によって、シルヴェルトリフェミア達が居るビル以外周辺の建物が倒壊していく。
「はぁ、はぁ、此処だ!此処なら隠れられるぞ!」
地上では、ファンが見つけた町工場のような小さな工場に逃げ込んだアリス、ファン、風希、将太。
中から、外の建物群が倒壊してゆく様を見ている。
「どうやらこの工場は先程の光が届いていなかったようだ。それ故、倒壊を免れているのだろう」
「おい。そんな事より、クソ坊っちゃんは何処だ」
「それは私が聞きたい」
「聞きたい、じゃねぇよ。さっきのアレ何だよ。戦闘機が落っこちてきただろーが。あのままでいけば俺らは今頃、戦闘機の下敷きになってぺしゃんこのはずだろ?けど、今こうして生きてる。…戦闘機が落下してきた時、俺達の頭上に覆ったクソでけぇ黒い影。ありゃ何だよ?」
「あれのお陰で助かったようだが…」
「羽…」
「あ?」
ボソッと呟いた風希の方を振り向くアリスとファンと将太。
「鳥の羽みたいだった…真っ黒で…烏みたい…だった…」
「……。おい、堅物ヤロー。クソ坊っちゃんの技って刻を止める事だけじゃなかったのかよ」
「私もそれしか知らん。他は拳銃で応戦していただろう。あいつは射撃の腕が群を抜いているからてっきり一気に少佐へ昇進したものとばかり思っていたが…」


ドン!ドン!ドンッ!!

「…またあのビルの屋上からかよ」
アリス達が爆発音がしたビルの屋上を振り向けば、屋上には黒い巨大な影と紫色の光がぶつかり合っている様が見える。


キィン!

アリスは左胸から剣を引き抜き、ファンは右手の手袋を外す。
「クソ坊っちゃんが俺らに何隠しているか分かんねぇが、此処にあいつは居ねぇしあいつの死体も無ぇんだ。屋上でクソMADとドンパチやってんのは絶てぇクソ坊っちゃんだろ。チッ!くっそ!1人でオイシイ所持っていかせねぇぞクソ坊っちゃん!行くぞ堅物ヤロー!」
「ああ」
「私は…?」
「あァ?風希てめぇが残んなきゃそのガキどうすんだよっつー話だろ!てめぇだけで応戦できなくなったら連絡しろ!」
「絶対…呼ばない…」
「ああそうかよ!俺が戻ってきててめぇが、おっ死んぢまってても笑ってやるからな!」
アリスは風希に背を向け、剣を肩に担いで走り出す。
「3人で…戻ってきて…」


ピタッ。

立ち止まったアリスとファンは風希の方を振り向く。いつも険しい顔をした彼ららしかぬ優しい笑みを浮かべて。
「ああ。当然だ」
「あったりめーだろ!あんなクソ化物に殺られっかよ!同期3人をなめんじゃねぇぞ!」
ビルの屋上からの爆発音。辺りが燃え盛る音。ガタガタ震える将太をきゅっ、と抱き締める風希は遠くなっていく2人の背中を見ていた。
「うん…」










































ビル屋上―――――

「はぁ"…あ"ぁ"…はぁ"…」
「お兄ちゃんが烏?」
紫色の光を纏ったシルヴェルトリフェミアは白い歯を見せて笑む。


カツン、コツン…

ブーツのヒールを鳴らしながら歩み寄る。
両腕からボタボタ赤い血を流し、傷だらけで呼吸が荒くゼェゼェ言っているハロルドに歩み寄る。体がふらつく為少し前屈みなハロルドの両目は黒目と白目が反転している。彼の足元や周りには夥しい数の黒い鳥の羽が散らばっている。
それを1枚手に取り、「ふーん」と言いながら見るシルヴェルトリフェミア。羽を捨てると後ろに手を組み、無邪気な笑みを向ける。
「EMS軍って〜じょうじん離れした力を持った地球人だけが入れるぅってドロテアから習ったのぅ〜。お兄ちゃんは鳥さんになれるんだねっ?」
「はぁ"…、はぁ"…」
「じゃあじゃあ!さっきお兄ちゃん達の上から降ってきたせんとーきからお兄ちゃんのお友達を守ったのってお兄ちゃん〜?すごかったね〜!バサーッ!って両腕が大きな羽になってたね〜!だから、羽の下に居たお友達を守れたんだぁ?でもぅ、せんとーきを受けたお兄ちゃんの羽はボッロボロで血ぃダッラダラになっちゃったね〜!」
まだ止まる事無くボタボタ流れる血。真っ赤な血にまみれた両腕はだらん…としていて、もう使い物にはならないだろう。
シルヴェルトリフェミアはハロルドの腕を見ながら、ふふん♪と笑う。
























「シトリーね、ドロテアから習ったのぅ!シトリー達が地球に来た日、アメリカぼうしょでたっくさーんのシトリーの仲間が殺されちゃったんだってぇ!それは"からす"って呼ばれる地球人の仕業なんだよぅって習ったのぅ!からす、はそれ以降からすになっていないようだけど、からすは怖い怖いだから気を付けなさいって!だからねシトリー、からすってどんなお顔しているのかなぁ〜?鬼さんみたいなお顔かなぁ〜?って考えてたのぅ!でも…」
「はぁ"…はぁ"…」
「お兄ちゃん優しそうなお顔だから、シトリー、怖くないかも」


ドン!ドン!ドンッ!

再びシルヴェルトリフェミアから紫色の光が。そしてハロルドは再び黒い巨大な影のような烏の姿へ変え、互いにぶつかり合った。
紫色の光に包まれたシルヴェルトリフェミアは瞳孔の開ききった目をして歯茎が見える程笑っている。
一方のハロルドは全身黒い影の中に反転した両目が浮かんでおり、その両目が血走っていて、シルヴェルトリフェミアを睨み付けている。
「お兄ちゃんすごいすごぉい!アハハハッ!シトリーをこんなにさせたの、初めてだよぅ?シトリーを本気にさせるなんてお兄ちゃん強い強いさんなんだねぇ!でも、シトリーを本気にさせたって事はぁ〜お兄ちゃん達地球人みぃ〜んな死んじゃうって意味だよぅ!」
「!!」


ドン!ドン!ドンッ!

紫色の光が襲い掛かり、ハロルドは両腕の羽をバサッ!と前へ向けて羽を盾代わりにしたのだが、光の威力が強すぎて圧されてしまい、ビルの端から足が落ちてしまい…
「あーあ。落っこちちゃったぁ」
そのまま地上へ落下。


























炎の海と化した地上へ巨大な黒い烏が落下していく様を、シルヴェルトリフェミアはビルの上から眺めていたのだが…


ヒュンッ!

「…!」
地上から目が追い付かない速さで飛び上がった黒い影がシルヴェルトリフェミアの背後に回った。シルヴェルトリフェミアは険しい表情をして、咄嗟に後ろを向く。シルヴェルトリフェミアは何か恐ろしい物を見たかのように目を見開いた。
「ドロテア!!」
其処には、烏の姿をしたハロルドが、先程気絶したドロテアを羽で持ち上げ…
「ドロテア!!」


グシャッ!!

人とは思えぬ例えるならブルドーザーのクレーンが上からビルのアスファルトへドロテアを叩きつけたような強大な強さで、叩きつけた。グシャッ!!という音と共に辺りに緑色の血が吹き飛び、ピチャッ!ピチャッ、とシルヴェルトリフェミアの顔にも飛び散った。
「う"う"…、う"…」
烏化したハロルドはヒトの言葉を喋れない様で、ハロルドの口からは獣の唸り声が聞こえる。
「ドロ…テア…?」
ハロルドの足元には、叩きつけられたせいで液状化したドロテアの体が緑色の水溜まりのように広がっている。シルヴェルトリフェミアは目を見開いたまま放心状態。
「ドロ…テア…?返事…してよぅ…。どうして…?どうしてそんなお兄ちゃんに…あっさり…負けちゃうのぅ…?そんなの…シトリーが知ってるドロテアじゃ…」
「う"う"う"!!」


バサァ!!

羽を大きく広げ、唸りながら飛び上がり、目にも止まらぬ速さでシルヴェルトリフェミア目掛けてきたハロルドがシルヴェルトリフェミアの頭を持ち上げる。
下を向いたままのシルヴェルトリフェミア。
ハロルドが持っているシルヴェルトリフェミアの頭からは、緑色の血がポタポタ流れ出す。
「う"う"う"!!」
「ドロテアをいじめるお兄ちゃんなんか食べなくていい…。お兄ちゃんも…」
「う"う"う"!!」
顔を上げたシルヴェルトリフェミアは、悪魔のように微笑んでいた。
「ドロテアと同じように跡形もなく死ねばいいよ!!!」


ガブッ!

「…!!う"あ"あ"あ"あ"!!」
獣のように鋭く尖った歯でハロルドの頭部に噛みついたシルヴェルトリフェミア。ハロルドはヒトの時の悲鳴を上げるが、シルヴェルトリフェミアは噛みついて離さない。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
ブンブン頭を横に振ってシルヴェルトリフェミアを払おうとしても微動だにしないシルヴェルトリフェミア。


バサッ!バサッ!!

「う"ぐ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
羽がもげる程羽を振り回し、体を右へ左へ捻らせても、シルヴェルトリフェミアはハロルドの頭に噛みついて離れない。辺りにはハロルドの黒い羽が散乱。
次第にハロルドの頭部からはドクドクと真っ赤な血が流れ出すから、シルヴェルトリフェミアは歯を真っ赤に濡らしながら笑むと…


ガリッ!!

「ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
頭の右半分を噛みちぎり、ハロルドから離れた。
ハロルドはバサァ!と羽音をたてて倒れる。
「ぺっ!」


ビチャッ!

噛みちぎった頭の右半分を吐き出すシルヴェルトリフェミア。アスファルトには無色透明の脳脊髄液が飛び散る。


























「う"ぐ…あ"…ぁ"…」
「あっれぇ〜?まぁだ生きてるのぅ?お兄ちゃんすごいすごぉい♪さっすが!プラネットでシトリーの次に強いドロテアを倒しただけの事はあるねぇ!」
「わたぐ…じは…、まだ…死んでは…いま"…ぜん…よ…」
「その声ドロテア…!?」


ビチャ!ビチャッ!

ドロテアの声がすると、液状化したドロテアの緑色の液体が浮き上がり、グネグネうねりながら体の形に形成されていく。その光景を、瞳孔を見開いて呆然と見ているハロルド。
シルヴェルトリフェミアは満面の笑みに涙を浮かべ、ドロテアに駆け寄る。
「ドロテア〜!!」
抱き付いたシルヴェルトリフェミア。しかし…


ドロッ…、

「ふぇ!?」
抱き付いたドロテアの体が液体のようにドロッと溶けてしまったから驚くシルヴェルトリフェミア。
「申し訳ありませんシルヴェルトリフェミア様。まだ完全に元に戻るまであと…10時間はかかってしまいます故、今は急いで拵えた体なのです」
「10時間も!?それくらい大きなダメージなのぅ!?」
「ええ…。烏を侮ったわたくしの傲りのせいでございます…。シルヴェルトリフェミア様にご心配をおかけしてしまった事、そして戦わせてしました事、どう償えば良いやら…」
「うんうん!そんなの気にしないでよぅ!シトリーを守ってくれたからドロテアはこうなっちゃったんだもん!シトリーのせいでごめんね!」


ぎゅっ…!

「シルヴェルトリフェミア様…」
抱き付くとまたドロッ、と歪んでしまうドロテアの体だが、シルヴェルトリフェミアはドロテアの豊満な胸に顔を埋める。
「お父さんとお母さんを地球人に殺されたシトリーにはドロテアしかいないのぅ…。ドロテアが生きててくれてほんとのほんとに嬉しいよぅ…」



















その光景を、瀕死の状態で倒れたまま見ているハロルド。
――10時間…!?10時間で元の姿に戻れるっていうのか上級MADは…!?他のMADならバラバラにすれば済むのに…!一体どうすれば上級MADを葬れるんだ!――


ピクッ…

「ん…?」
「どうしたのぅ?ドロテア〜」
ピクッと反応したドロテアは、屋上へと続く階段がある扉を見る。静かにシルヴェルトリフェミアを離す。
「ドロテア?」
「ひぃ、ふぅ…地球人2人の匂いがします」
「!!」
その言葉にハロルドは目を見開く。
「え!?もしかしてこのお兄ちゃんのお友達!?」
「のようですね。わたくしが行ってきましょう」
「でもドロテアその体じゃ…!」
「心配無用。烏以下の地球人ならばわたくし1人で済ませられます」
「さっすがドロテア〜!じゃあシトリーはこのお兄ちゃんにトドメさしておくぅ〜♪」
「シルヴェルトリフェミア様の手を地球人の汚い血で汚させてしまい、申し訳ありません」


バタン…、

階段へと続く扉を閉めて行ってしまったドロテア。
――まずいまずいまずい!地球人2人!?それってアリス君とファン君じゃないのか!?あの2人でも、あんな液状化したのに死なないMAD相手じゃ無理だよ!!僕がシルヴェルトリフェミアを仕留めてから2人に合流しないと…!――


ブチッ!

「あ"あ"あ"あ"あ"!!」
「アッハハー♪お兄ちゃんの羽一気にもいじゃったぁ!」
右腕である右の羽をごっそり引っ張って取ったシルヴェルトリフェミア。ハロルドは悲鳴を上げ、シルヴェルトリフェミアを睨み付ける。


ぐらっ…、

よろめきながら、ビチャビチャと頭から脳脊髄液を滴ながら立ち上がる烏の姿をしたハロルド。
「え〜!すごいすごぉい!そんなになっても生きている事がすごいのにお兄ちゃん立てるのぅ?すごぉいね〜♪」
ヨタヨタよろめきながら、シルヴェルトリフェミアの脇を通り過ぎる。
「…お兄ちゃん何処行くのぅ?」
低いシルヴェルトリフェミアの声が背後からした。だが立ち止まらず、ヨタヨタ足を引きずって歩くハロルド。
「ダメだよぅお兄ちゃぁんシトリー、そらと遊べなくてすとれすいっぱぁーい溜まっているのぅ!だから遊んでくれないとやだよ?」


ゴッ…!

紫色の光が、背後からハロルドに襲いかかる。


ドンッ!!

「うわあ!?」
何と光を羽で弾き返したハロルド。弾き返された光がシルヴェルトリフェミアをかすった。


バタン…、

その間に、ドロテアを追い掛けて階段へと続く扉の奥へ姿を消したハロルドに、シルヴェルトリフェミアは頬をぷくーっと膨らませてお怒りだ。
「ぶーっ!もう怒った!シトリーもう怒ったもんねっ!待てっお兄ちゃん!シトリーがお兄ちゃんぐっちゃぐちゃにしてやるぅ!」
「ん・じゃあ、俺がお前さんをぐっちゃぐちゃのギッタンギッタンにしてやるさかいなぁ」
「!?」
「いけよっ!!」


ドンッ!!

背後から男性の声がしてバッ!とシルヴェルトリフェミアが振り向いた瞬間、赤い剣が襲い掛かってきた。
しかし、剣はアスファルトにヒビを入れただけ。肝心のシルヴェルトリフェミアは生きている。
赤い剣をシルヴェルトリフェミアに向けた人間は頭を掻く。
「何や〜外してしもうたかぁ。俺っちゅー奴が。凡ミスやったなぁ」
「おじさん…だぁれ?」
シルヴェルトリフェミアが尋ねる。右腕と一体化した赤い剣の中年男性は、ニィッと笑う。
「おじさんやないやろー失礼なやっちゃなぁ」
「地球人…?」
「まあな。MADと手ぇ組んどるんやけどな」
「…?」
「元EMSのアイアン・ゴルガトスや。ぼん、お前さんの首貰らうで」



































「はぁ"…はぁ"…」
早く走りたいのに。一刻も早く仲間の元へ行きたいのに。体が思うように動いてくれない。
ハロルドは階段を、足を引きずり手摺にもたれかかりながらゆっくり降りていく事しかできない。


ボタ、ボタッ…

大きな羽からは真っ赤な血を。頭からは血と脳脊髄液を垂らし、辺りに羽を散らして歩く彼の脳裏に蘇るのは、2年前の9月13日…MADが地球に侵略した日の忌まわしき記憶……。































2年前2524年9月13日、
16時00分―――――

「わぁ〜!お兄ちゃん見て見て〜!綺麗だよ〜!」
「痛てて、エミリアちゃんは元気だね〜」
夕焼けのオレンジが広がる保育園の中庭。水色のエプロンを着けた24歳のハロルドの髪をぐいぐい引っ張り夕焼けを見せに走る1人の女児。ダークブラウンの髪を二つ髷して、くまの形をした可愛い鞄を肩にかけている女児エミリアを抱っこして一緒に夕焼けを見るハロルド。
大学を出て2年。アメリカの田舎町の保育園に採用された新米保育士だ。
「みかんの色してる!」
「そうだね〜」
「エミリアちゃんばっかり先生独り占めしてずるい〜!」
「お兄ちゃんじゃなくて先生は先生なんだぞー!」
ワラワラと園内から中庭へ出てきた黄色のスモッグを着た男児や女児達がハロルドの周りに集まれば、エプロンやズボンをお構い無しにぐいぐい引っ張ってくる園児達に困った笑いを浮かべているものの、園児達の愛らしさに心安らいでいる。
























「いいんだもーん!先生はエミリアのお兄ちゃんなの!先生はエミリアのママの弟だから、お兄ちゃんなの!」
「意味わかんねー!エミリアちゃんばっかりずるいぞ〜!」
「ハロルド先生あたちも抱っこしてー!」
「ま、待ってね今順番に抱っこしてあげるから!痛てて!ひ、引っ張らないで〜!」
「ふふ。大人気ですね、ハロルド先生」
「園長先生」
園内から中庭へ笑顔でやって来たのは50代の女性園長。
「先生がこの保育園へ赴任してから約2年。女性ばかりで男性が先生しか居ない中、頑張ってくれていますね。毎日大変でしょう」
「いいえ!僕、子供が可愛くて可愛くて仕方ないんです!」
「ふふ、そう。それは良かった。保護者の皆様からもハロルド先生は優しくていつも子供達と遊んでくれるから、とお褒めのお言葉を頂いていますよ」
「えっ!な、何か照れちゃいますね〜」
「私も嬉しいですよ。ハロルド先生のように心から子供を好きな先生がいらしてくれて。昨今は、園児に虐待をする保育士も紛れているそうですからね。先生はこの仕事が天職ですね」
「て、天職…?」
喜ぶハロルドの脳裏では姉とその夫が2人の子エミリアをこの保育園に託した時の記憶が思い出される。

『エミリアはハロが働く保育園に預けるわね。エミリアもハロにとてもなついているし』
『エミリアお家でも保育園でもお兄ちゃんと一緒に遊べるの?!わーい!わーい!』
『はは。何だか、親の俺とマリアよりハロルド君の方になついているな』
『ふふ。ちょっと寂しいわね。ハロ。エミリアの事、よろしくね』
『ハロルド君。うちの娘を頼んだぞ』



















「天職か〜えへへ…すごく嬉しいです。ありがとうございます園長先生」
「見て見て園長先生!このくまさんの鞄ね、この前お兄ちゃんが買ってくれたの!」
とてとて歩いてきたエミリアが、くまの顔の形をした肩掛け鞄を園長に見せれば園長はにっこり笑顔でエミリアの頭を撫でる。
「あらぁ〜。良かったわねぇエミリアちゃん。可愛い可愛いくまさんのお鞄買ってもらったの?」
「うん!あのね、あのねエミリアね…」
「?」
ハロルドのエプロンの裾を掴んだまま、急に頬をピンクに染めてもじもじし出すエミリア。ハロルドと園長が首を傾げる。
「どうしたのエミリアちゃん?」
「あのね、エミリアね、あのねっ…」
ハロルドの脚にしがみついたエミリア。
「エミリア大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるのっ!」
「えっ!!」
「あら!まあ〜」


ボッ!

顔に火が点いたように真っ赤にしたハロルド。園長は頬に手を添え、微笑ましそうに笑む。
「ふふ。良かったですねハロルド先生」
「エミリアちゃんが20の時僕が40…。え、園長先生…!20歳差夫婦…いけますか…!?」
「…ハロルド先生。その前に叔父と姪ですよ」
「ガーン…!」
「ふふ。面白い先生ね」
「すみませ〜ん!うちの子達迎えに来ました〜」
玄関の方から女性数10人の呼ぶ声がして、振り向く園長。
「あら。お迎えが来たみたいですね。エミリアちゃんはハロルド先生がお仕事終わるまで待っていてね」
「うんっ!」
「ハロルド先生。私が保護者の皆様の応対を致します。先生はこちらで、エミリアちゃん以外の子供達に帰る支度をさせていて下さいね」
「はい!分かりました!」
新入社員さながらに元気良く返事するハロルドをクスクス笑いながら園長は園内へ入り、玄関へ行った。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!エミリアのことお嫁さんにしてねっ」
「うん!は〜やっぱりエミリアちゃん可愛いなぁ。お姉ちゃんの子供じゃなくて僕の子供だったら良いのに」


ガシャーン!
パリン!パリン!

「ぎゃああああああ!」
「え…!?」
玄関の方から硝子の割れる音と園長や他の保育士達の悲鳴が聞こえ、立ち上がるハロルド。
「な、何…?お兄ちゃん今の何?」
「ハロルド先生!今のすごい音何?」
「こんばんはぁ〜地球人の皆さぁん!」
「…!?」
中庭と道路を遮る柵には何と10数体の緑色の人型生物が身を乗り出してこちらを見ていた。
「な、何だ…あれ…?」
「うおー!すげー!すげー!あれ、カラフルレンジャーの敵にそっくりだー!」
「本当だ!そっくりそっくり!」
園児達は驚くどころか、戦隊ものの敵に似ているからはしゃいで、緑色の人型生物に近寄る。ハロルド達はまだ知らない。彼らは地球人への復讐として地球を侵略にやって来た異星人MADだと…。
慌てたハロルドが駆け出す。
「だ、ダメ!知らない人に近付いちゃ、」


バクッ!

「え…?」
何と、MADは近付いてきた園児達を食べたのだ。その有り得ない非日常的光景にハロルドは呆然。何が起きたのか、思考が追い付かない。


バリッ!バリッ!

「あー美味かったぁ」


ガシャン!ガシャン!

柵を乗り越えて中庭へ侵入してきたMAD。
「おっ。そっちもやってるねぇ!」
「…!!え、園長…、み、みんな…!!」
背後からした声にハロルドが振り向けば、玄関から中庭へやって来たMADがズラリ数10人。彼らの手には、園長や同じ保育士女性の頭が…。























「きゃああああああ!!」
エミリアの悲鳴が合図になり、園児達も一斉に悲鳴を上げ泣き叫びながら四方八方に逃げ出す。
「ま、待ってみんな!僕の所へ来て!そっち行っちゃダメ!!」
血相変えて園児達を追い掛けるハロルド。だが、四方八方に逃げていく園児10数人全員を一度に捕まえられない。


ブシュウウウ!

「…!!」
「アハハッ!地球人のガキの頭いっただきぃ!ほら!あんたらにやるよ!」


ゴロン!ゴロン!

園児達の首を斬ったMADは頭を仲間のMADへ幾つも投げてやる。


バリッ!バリッ!

「ああ本当!美味い肉だねぇ!」
「…っ!!」


ゾッ…!

地球人が鳥や豚肉を食べるのと何ら変わらず、普通に園児達の頭を食べる化け物集団にハロルドは思わず腰を抜かしてしまう。
「アハハッ!ダメな先生だねぇ!腰を抜かしている間にあんたの大事な園児みぃんなあたしらの胃袋におさめちゃうよ!?」
「きゃああああああ!!」
「助けて助けて!先生助けて!!」
「あ…、ぅ…あ…、」
腰が抜けてガタガタ震え放心状態のハロルド。
――何だよ何なんだよこいつらは!人間じゃない…?え…?何で…?何でこんな非現実的な事が起きて、――
「お兄ちゃん!!」
「!」
「お兄ちゃんやだよ!お兄ちゃん!エミリア死にたくないっ!ぱぱ、ままぁ…!」
「…!」
ハロルドにしがみついて泣き喚くエミリアを見たら我に返ったハロルドは、キッ!と黒目と白目が反転する。すると何と腕が烏の羽に変形し、姿もヒトではなく巨大な黒い影のような烏の姿になっていく。
「お、お兄…ちゃん…?」
「なななな、何だいあれはぁ!?」
「あんな化け物が地球には居るのか、」


ドン!ドン!ドンッ!!

「イギャアアアアアア!!」
烏化したハロルドは、数10体のMADの首を次々とはねていく。目にも止まらぬ速さで。その変貌ぶりに驚きつつも、笑顔になるエミリア。もう、園児はエミリアしか生き残っていない。
「す、すごい!すごいお兄ちゃん!お兄ちゃんかっこいい!お兄ちゃ、」
「あら。美味しそうな子供」


ドスッ…!

背後からやって来ていたMADが、エミリアを攻撃。
「え…?」


ゴロゴロ…、

我を忘れ、烏化して戦っていたハロルドの足元に、血に濡れたくまの鞄と姪の頭が転がってきた。




























「ふざけるなふざけるな!お前のせいで!お前が!お前がああああ!」
「あ、あなた落ち着いて…!あんな化け物が侵略してくるなんて誰も分からなかったわ…!ハロだって頑張って戦って…!」
「何故お前が生きている!?なのに何故、娘が帰ってこない!?エミリアが帰ってこないんだよおおお!!ふざけるなふざけるなふざけるな!このっ人殺しが!!」

































現在―――――

「はぁ"…はぁ"…」
忌まわしき記憶を思い出していたハロルドは、足を引きずりながら階段を降りて行く。
















































その頃――――

「はぁ、はぁ」


カン!カン!

ビルの21階屋上を目指して階段を駆け上がっているアリスとファン。
「ちっくしょう!まだ18階かよ!!」
「先程の爆発でエレベーターが止まったのだ。仕方がないだろう」
「はっ!俺様が中からエレベーターの扉ぶった斬ってやったお陰で出てこれたんだぜ?感謝しろ!堅物ヤロー!」
「ふぅ…」
「あァ!?溜め息吐いてんじゃねーぞ!恩知らず!」
「あらあら。ご丁寧に自ら殺されに来てくれましたか愚かな地球人」
「…!!クソMAD…!!」
階段上段からやって来たメイド服姿のドロテア。アリスとファンは険しい顔付きになると、すぐさま…


ドンッ!!

アリスは剣で斬りかかり、ファンが炎を右手から噴き出す。
「くたばれクソMAD!!」
「言葉が汚いですよ、アリス・ブラッディ」


スパン!

「ぐああ!」
剣をかわされたアリスは逆にドロテアの長い爪で脚を斬られ、ガクン!と肘を着いてしまう。
「…朽ちろ、侵略者」


ゴオッ…!

ファンが炎を噴き出すが、何とそれもかわされてしまい…
「何っ!?」
「稚拙ですね、ファン・タオ」


ドゴォ!!

「ぐあああああ!」
頭を鷲掴みされたまま、壁にめり込まれたファン。
「ふふ…。わたくしに楯突こうなんて100年早、」


スパン!


ボトッ…、

喋っている途中でドロテアの頭が斬られ、転がる。頭だけのドロテアがゆっくり後ろを向くと、階段上段からこちらを見下ろしている1人が居た。
「烏…。まだ生きていたのですね…」
真っ黒い影のような烏の姿をしたハロルドが、頭や腕から血をボタボタ滴らしながら現れた。


























「坊っ…?あァ…?てめぇ…クソ坊っちゃん…か…?」
アリスはゆっくり立ち上がりふらつき、脚から緑色の血を流しながらも、何回も瞬きをして上段に佇む烏を見る。
「ハロル…、ぐ、お"え"え"え"!」
「!?」
烏の姿を見た瞬間、嘔吐してしまったファン。その理由はアリスにも分かっていた。頭の右半分から流れ出るハロルドの脳脊髄液を見たからだろう。そんなファンを…
「何やってんだ堅物ヤロー!」


ドガッ!

思いきり殴るアリス。
ファンの肩を掴み、真剣な顔をして言う。
「クソ坊っちゃんがあんなになるまで戦ってたっつー事じゃねぇか!それを見て吐く奴があるかてめぇ!」
「す、すま…ない…」
アリスはハロルドの方を向く。
「おい。てめぇクソ坊っちゃんだよな?容姿変わり過ぎすぎだろ。今更イメチェンか?それにてめぇ頭そんな状態でマジやべぇっつーか、座れ!俺らが後は何とかするから!」


ガシッ!

ハロルドの血だらけの羽を掴むアリス。顔という顔が無くて、黒い影の中に反転した目玉だけが浮かんでいる不気味な姿なのにアリスは動じず、ハロルドと目を合わせて笑む。
「さっき…戦闘機が落下してきた時はありがとな。あれ、お前だろ?次は俺らの番だ。てめぇは其処で休んでいろハロルド」
「……」
ハロルドはゼェゼェ荒い呼吸をしながら、縦に頷く。
「それ…ハロルドさん…?」
「!?風希てめぇ!何で居るんだよ!!」
風希の声がして振り向けば、将太と手を繋いで現れた風希。
ハロルドは反転した目を見開き、その目に風希を映す。



























「その烏…が…ハロルドさん…?」
怯えている風希に、悲しそうにハロルドが目線を下げるから、アリスは風希の頭をコツン、と叩く。
「バーカ。そんな顔してんじゃねぇよ。クソ坊っちゃんがこんなになってまで俺らを助けてくれたんだ。まず言う事があるだろ。堅物ヤローてめぇもだ」
「あ…ありがとうな。ハロルド。そしてすまなかった」
「ハロルドさん…ありがとう…」
「だとよ。良かったな、クソ坊っちゃん」
アリスが笑顔でハロルドの肩を組んでやれば、反転した不気味な目ながらもハロルドはニコッ、と笑った。
「つーか!何で来てんだよアホ鎌女!!ガキまで連れて来やがって!」
「何か…嫌な予感がするって…私の守護霊が言ってるから…」
「はぁ〜。またオカルトかよてめぇは」
「そろそろ最期の会話は済みましたか?地球人」
「んなっ…?!」


ゾゾゾッ…!

転がっていたドロテアの頭がくっつくと、ドロテアはメイド服のエプロンの埃を払って立ち上がる。
「くっそ…!おい!クソ坊っちゃん!堅物ヤロー!いつものアレ、いくぞ!しかも今日はとびっきりのでいかねぇとどうやらこのメイドクソMADは殺れねぇらしい!」
「ああ。了解した」
ハロルドも頷く。


ピキーン!

すぐにドロテアの刻が止まれば、ファンがドロテア目掛け炎を噴き出す。続いてアリスが剣を振り上げる。
「よっしゃあ!最後は俺様が、」
「ぐあ"あ"!!」
「ハロルド!?」
「んなっ…!?」
突然心臓を押さえて階段から転げ落ちてきたハロルド。そのせいで、ドロテアの刻が再び動き出してしまった。
「おい!クソ坊っちゃん!どうしたんだよ!お、」
「ふふ。情けないですね。さすがは愚かな地球人」


スパン!

「ぐああ!」
「アリス!!」
ハロルドを心配していた隙に、今度は肩を斬られたアリス。ハロルドの上に重なるように倒れてしまった。
「アリスさん…!ハロルドさん…!」
「下がっていろ小鳥遊!ここは私が…!」
「私が…どうするのです?わたくしをなめないで下さい愚かな地球人」


ドゴォ!!

「ぐあああああ!」
「ファンさん…!!」
ドロテアの脚で階段下へ叩き落とされてしまったファン。風希は真っ暗な階段下を見下ろしてからすぐ鎌を構え、ドロテアに飛び掛かる。
「MAD…排除する…!!」


キィン!

「っ…!?」
「おやおや。排除するのではなかったのですか愚かな地球人?」
何と鎌を素手で掴まれてしまい、振り払おうにもドロテアの力が強くて振り払えない風希。
「烏が刻を止められなくなったのは恐らく…今まで止めてきた時間が彼の心臓へ戻ったからでしょう。それか、もう死ぬからでしょうかね」
「っ…!ふざけないで…!小鳥遊流奥義…驟雨…!」
目を金色に光らせた風希の周りを青白い光が纏い、鎌がドロテアの体を頭から真っ二つに斬った。


ドンッ!!




























「はぁ"…、はぁ"…」
「ぐっ、あ"…痛っ…」
真っ二つに割れたドロテアを無視し、ハロルドとアリスに駆け寄る風希。
「ハロルドさん…アリスさん…。…?アリスさんの血…どうして緑…?…とにかく…今…私が助ける…。ファンさんも…」
「随分と面白い奥義を見せてくださりありがとうございます、地球人」
「え、」


ドンッ!!

「っ…!」
頭を鷲掴みされ、先程のファン同様強大な力で壁にめり込まれた風希。痛みに顔を歪めながらも、目の前で真っ二つから一つへ復活するドロテアを睨み付ける。
「ふふ。そのような挑発的な目をしていられるのもあと残り何秒でしょうね」
「うる…さい…、化け物…!小鳥遊流奥義…驟…雨!!」




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