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終焉のアリア【完結】
ページ:2
「…なさいっ…、ごめ…なさいっ…いい子になるから…お父…さん…、」
「ハッ…!」
か細い声に我に返った空は赤子のように畳を這って、恐る恐る鵺に歩み寄る。
鵺は頭を片手しかない左手で抱え、体育座りで踞ってガタガタ震えていた。空は鵺に手を伸ばし、触れるのが怖くて一度引っ込めた。しかし、ぎゅっ、と拳を作ってから開いた左手で鵺の肩に手を置いた。


ビクッ!

震えたその肩。
「鵺…ご…ごめん。ごめん本当…。お前に嫌な過去を思い出させる為に言ったんじゃないんだ…。でも結果的にそうなってごめん…」
「ごめんなさい…ごめんなさいお父さん…」
「…大丈夫だ、俺はお前の親父じゃないから。雨岬だから…、」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「鵺…」
空は一歩分鵺に近付くと頭にポン、と手を置いて顔を覗き込む。
「鵺…大丈夫だから、もう怖い事しようとしないから。な?」
「雨…岬…?」
ゆっくり顔を上げた鵺と顔を合わせる。
「あれ…お父さんは…?」
「もう居なくなったよ」
「本当け?」
「ああ」
「良かった…」
「なあ…でも俺が言いたい事も分かってくれるだろ?」
「うん…。ごめんな…さっきは我儘言っ…」
「!?」
ボロボロ溢れ出した大粒の涙を流す鵺に空がギョッとしていると…。
「お、おい鵺…?」
「うっ…ひっく…うわああああん!」
「!?」
一思いにだろう。鵺は空の目など気にせず、ここぞとばかりに大泣きするから空はあわあわ。
「お、おい。ぬ、」
「うわああああん!言わなきゃよかったっ!雨岬に気持ち悪りぃ思われるすけ、やっぱ言わなきゃよかったぁ!」
「わ、分かったよ!別に世の中は色んな奴がいるんだから気持ち悪りぃとか思ってねーから安心しろ!つーかいい加減泣き止め!」
「うっ…ひっく、ごめっ…」
「はぁ〜」
空は深い溜め息を吐くと布団に潜り込み、寝る体制に入る。
「とりあえず寝るぞ」
「これからどうするんら?」
「知らねー。明日考える。おやすみ」
「うん…。おやすみ」
そう言ってすぐ空から聞こえてきた寝息に鵺はクスクス笑いつつも、自分が迷惑をかけていたせいで今まで疲れが溜まっていたんだろうと思ったら申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
緑色で赤い爪をした化物の自分の左手を開き、ジッ、と見る鵺。
「……」
またいつ自我を忘れるか分からない自分への恐怖に支配され眠る事さえ怖く押し潰されそうになりつつも、隣に居る唯一の友人に安心感を貰い、静かに目を閉じて眠るのだった。




















































翌朝―――――

「漫画みたいな空だな…」
窓を開けて見上げた空は赤黒い重たい雲に覆われていた。
「ん…ふわぁ〜よく寝たて〜」
カチンッ。
伸びをして暢気に目を覚ました鵺に空はズンズン歩み寄ると、ビシッ!と指を指す。
「鵺てめぇ!」
「だすけ、人の事指さしたらいけねって何べん言えば分かるんらおめさんは!!」
「お前のあの寝相なんだよ!俺一睡もできなかったんだからな!」
「寝相?…あ。雨岬おめさん隈できてるねっか。それに左頬の青痣なしたんら?ま、まさか…!?夜中に浸入してきたMADに殴られたんけ!?」
「MADなんか可愛いと思えるくらいの悪党に足蹴り食らったんだよ!!」
「誰らそれ!?」
「お前だよおおお!!」
「悪かったて☆」
「悪かったて星!じゃねぇえ!!お前の寝相何!?寝て早々口の中にお前の手が入ってきたかと思ったら、ゴロゴロゴロゴロ転がっては襖にガツンガツンぶつかりやがってうるさくて眠れねーし!それが終わったかと思ったらトドメのコレだよ!思いっきり左頬に蹴り入れやがったな!あれわざとやっただろ!?ぜってぇわざとだろ!!」
鵺は頭を掻きながら舌を出すから、余計空のイライラが増す。
「わざとじゃねぇてば!俺な昔っから寝相悪かったんら。お祖母ちゃんと一緒に寝てた時、起きたら玄関で寝てたり襖に足が貫通してたりよくあったんら!」
「最初に言えよぉおお!」





















空は額を押さえ、壁にもたれかかる。
「はぁ…。軍本部で相部屋になった時は全然寝相普通いや、寧ろ良かっただろ…」
「ベッドはでぇじょぶなんらろも、布団だとベッドと違って落ちねぇっていう安心感から寝相が悪くなっちまうみてぇなんら!」
「はぁ…そうなんらな」
「雨岬?!俺の方言移ったけ!?」
ケラケラ笑う鵺を空は白い目で見ながら、部屋の扉を開けた。


しん…

またハロルド達が攻撃してくるかもしれない。念には念を。空は扉から顔を出してキョロキョロ辺りを入念に見回す。人影も気配も無い。ホッ、としたのも束の間。
「鳥の鳴き声すらしない…?」
逆に物音一つしないその静寂に不気味さを抱けば、ハロルド達の攻撃よりも別の恐さを感じる。
「なしたんら?」
ひょっこり空の後ろから顔を覗かせた鵺。
「わ!?お前なぁ、俺が良いって言うまで顔出すなよ!誰が見てるか分からないだろ!」
「悪かったて!」
「はぁ…。まあ、見てくる奴も居ないくらい誰も居ないんだけどな」
「どういう意味ら?」
空がアパートの廊下に出て続いて鵺が出て、辺りを見回す。
「本当ら。鳥の鳴き声も遠くで走る車の音も聞こえねぇて」
「…どう思う鵺」
「…分かんねて。取敢えず外出てみよて」
「ああ」
空は鵺のMADの姿が隠れるよう、パーカーのフードを目深にかぶせる。


カンッ、カン…

老朽化して下が薄ら見える錆びだらけの階段を降りて、所々曲がった自転車に乗る空。荷台には鵺が乗る。
2人が見渡す辺りにはアパートを囲む林があるだけで人の気配もしなければ、虫の音一つ聞こえてこない無音の世界。
「やっぱり誰も居ないな」
「何か気味悪ぁりぃて」
「ああ」


ガタン、

サドルを上げれば空は腰に魍魎をくくりつけ、鵺を乗せて自転車を走らせて行った。


























林を抜け、ようやく街中にやって来た。早朝だというのに、空が自転車を漕ぐ音しかしない。街中には人っ子1人居らず、しかし店々には明かりが付いたまま。


ガタン、

つい最近まで空がバイトをしていたコンビニの前に自転車を止めた空。


ピンポン、ピンポン、

コンビニに入れば客が入店した事を知らせるチャイムが鳴る。


しん…

やはり、店内には誰も居ない。
「おーい」
レジから身を乗り出してバックヤードを覗き込む空。返事は無い。店内には冷蔵庫が稼働している機械音だけがする。
鵺はキョロキョロ店内を見回してパンコーナーを見つけると、すぐさま手に取った。
「雨岬!雨岬!」
「どうした。何かあったか」
「じゃーん!冬季限定!苺メロンパ、」


ゴツン、

「痛ぇてー!グーで殴るなてば!!」
「真面目にやれ」
ぶーっ、と口を尖らせる鵺。店内を見回している空の背中にあっかんべーをしてから、メロンパンを棚に戻す。その時。


ピンポン、ピンポン

「!?」
このチャイムが聞こえたという事は、誰かがこのコンビニへやって来たという事だ。空と鵺がすぐさま入口を向く。
「雨岬くんっ!!」
「なっ…?!ミルフィ!?ちょっ、ぐえっ!」


ギュッ!!

やって来たのは何と、息を切らして走ってきたミルフィ。そしていつもお決まりの有無を言わせないいきなりの抱き付き攻撃に、空が顔を歪める。
「ぐえっ…!お前なぁ!だからそうやっていきなり…」
「雨岬君っ、良かった、良かった!生きててくれて本当に良かったっ!!」
「…!?」
いつもと違っていたのは、ミルフィがとても切ない顔をしていた事。これには空も、いつものように無理矢理引き剥がす事ができなかった。
「お前…」
バッ!とミルフィが勢い良く顔を上げる。
「だってハロルドさん達が雨岬君と鵺ちんを殺しに行くって言ってたから死んじゃったと思ってたっ…!」
「それよりお前どうして此処が…」
「ハロルドさん達が雨岬君と鵺ちんを殺しに行くって言った時、この街のコンビニに雨岬君が働いているって言ってたのを聞いたの!」
「だからか…」
「ミル怖かった!あれからハロルドさん達と行動していたけど、ハロルドさん達は仲間なのに敵なんだもん!雨岬君達を殺そうとしている敵!隙を見て此処まで来たけど…。雨岬君と鵺ちんよく無事だったね!どこに隠れてたの?MADの学校には呼ばれなかったの?」
「MADの学校!?」
空は目を見開き、丸める。






















「うん。ミル達強制的にMADの学校に移動させられて其処でMADとの戦いが起きてたんだよ。今はその学校の中で生き残った人達だけ外へ開放されて、街ではMADとの鬼ごっこが始まってるの」
「何だよそりゃ…」
ぎゅっ!と抱き付き、空の胸に顔を埋めるミルフィ。
「でも全然駄目…。ただでさえMADの力はミル達地球人の何10倍なのに、MADは増える一方なんだよ!きっと駄目…。勝ちっこないよ…ミル達きっと勝ちっこない…」
「……」
黙ってはいたが、空はミルフィの右手をキュッ、ときつく握り締めた。
そんな2人の事を少し距離を置いた所から見ていた鵺は、自分の左胸を服の上から強く握り締めていたが。
空がミルフィから手を放すと、コンビニを出て行く。
「取敢えず外へ出る」
「無理だよ!雨岬君でも無理、きっと無理だよ!」
「ンなの分かってるよ。でも俺はMADに…シトリーに討たなきゃならないんだよ」
「雨岬君…」
「おい鵺。何処行くんだよ」


ビクッ!

背を向けているのに。
鵺が2人の背後からこっそり離れて行こうとした事に、気付いた空。
鵺はビクッ!と体を震わす。ミルフィはバッ!と鵺の方を振り向けば一目散に鵺の手を取り、ブンブン振る。空が惚れた笑顔で。
「鵺ちんも生きてて良かった!本っ当に良かった!ミルはぜっったい鵺ちんの味方だからね!」
「あ、ああ…ありがとな」
「鵺ちん?」
ぷいっ、と外方向いてミルフィの手をあっさり放してしまう鵺にミルフィはキョトン。しかしその意味が分かる空。
顔はMADの姿な為見ただけでは笑顔なのかは分からないが、鵺はヘラヘラ笑いながら一歩ずつ後ろへ下がる。2人から離れる為。






















「鵺、」
「お、俺っ…なんかお邪魔みてぇらから!」
「え?何言ってるの鵺ちん!MADの事気にしてるの?そんなのミルも雨岬君も気にしてないよ!ミル達は鵺ちんの味方だよ!」
「ち、違ごて!ま、まあそれもあるんだろも…」
ミルフィは空の腕に抱き付く。同時に、鵺の心がキュッ、と締め付けられる。
「鵺ちんが暴走した事をハロルドさん達がとやかく言ってるけど、あれは鵺ちんの本心じゃないMAD化のせいだって事ミル達はちゃんと分かってるよ!鵺ちんは優しい良い子だもんね。ミルと雨岬君の事良かったねって祝福してくれたの鵺ちんだもん!鵺ちんが優しいのは分かっ、」
「それ以上言うなてば!!」
「鵺ちん…!?」


ピシャッ!

裏返った鵺の一言。ミルフィは訳が分からず目をぱちくりさせている。空は聞こえないよう溜め息を吐いてから口を開く。
「ミルフィ、あのな…」
「嫌なんら!もう、もう嫌なんら!おめさん達が一緒に居る所見るのが嫌なんじゃねぇんら…おめさん達が一緒に居る所を壊したいと思う自分がもう嫌なんら…!」
頭を抱えて踞った鵺。
「鵺ちん!?」
すぐ駆け寄ったミルフィ。しかし空は鵺が言いたい事を理解しているから駆け寄り辛くて、此処で立ち尽くしたまま。
「鵺ちん!?どうしたの具合悪いの?」
「嫌ら!嫌ら嫌ら!!」
「鵺ちん大丈夫!?どこか痛いの!?」
「おめさんはこんな化物の俺の事を人間扱いしてくれて友達になってくれたってがんに俺っ…俺っ…、おめさんの事を嫌いになってく自分が嫌なんら!!」
「え…?鵺ちんどういう事…?ミル、鵺ちんに何かした…?」
「ミルフィ」
ようやく2人の元へ歩き出した空の方を向くミルフィ。
「雨岬君…ミル、鵺ちんに何かした…?どうしよう。ミル、鵺ちんって呼ぶなって言ってたのに何回も鵺ちんって呼んだから嫌な思いさせたかな…」
「いや…。ミルフィお前のせいじゃない。俺が悪いんだ」
「雨岬君?」
「…ら…」
「鵺ちん!?」
「オメサンナンテ、イナクナレバ良インラ…」
「鵺ちん…?」
ゆっくり上がった鵺の顔。それはMAD特有の表情の無い顔。なのに、漂う雰囲気から空はいつもの鵺じゃない事が分かった。そう、あの日…月見を殺したあの日の鵺と同じ雰囲気を感じた。
「…!!ミルフィ逃げろ!」
血の気の引いた空が駆け出し、ミルフィに手を伸ばす。
「えっ?」


ガリッ!!

「…!!」
「え…?」
鵺の鋭利な赤い爪が、ミルフィの左腕を切り付けた。
「ミルフィ!!」


ブシュウウウウ!!

「い…いやああああ!!」
噴き上がる真っ赤な血はコンビニの窓を看板を真っ赤に染め上げていく。
「ミルフィィイ!!」
血相変えた空がミルフィを抱き締めれば、彼女の生暖かい真っ赤な血が彼の髪と服を濡らしていく。
























「ミルフィ!ミル…!」
そこで言葉が詰まったのは、彼女の左間接から下が見当たらなかったから。辺りなんか探したくない。目線を周りに向けたくない。嫌でも向けない。
「ミル…、」
「いやっ…いや…、痛い…痛いよっ雨岬くんっ…」
そこでハッ!とした空が顔を上げれば、返り血を浴びた鵺が其処に。空の目が泳いでいる。
「鵺…お前…。…そうだよな…またMAD化のせいで自我を忘れて地球人を殺すMADの本能が働いただけ…だよな…?」
フルフル。
首を横に振った鵺。自我があるという事を意味する。
「ぬ、」
「やっぱ化物らったんら俺は…。MADの血を引いてなぐたって正気の時でこんげ事する俺は…みんなが言う通りのっ…化物…、」


キィン!

「!!」
魍魎を抜刀した空に鵺がビクッ!とすれば、顔を上げた空の表情がみるみると鬼の形相に変わる。それはヒトの表情じゃない。まさしく魍魎の表情。
「鵺ぇええ!!」
「っ…!!」
「駄目だよ…」


きゅっ…、

「…!?ミルフィ…!?」
魍魎を握った空の右手を自分の右手で掴んで止めさせたのはミルフィ。これには空は勿論、鵺も驚く。
「駄目だよ…駄目だよ、雨岬君…」
「ふざけんな!鵺はなぁ!」
「親友にそんな顔をするなんて、ミルが好きな雨岬君じゃないもん…」
「違う!ミルフィお前は何も知らないからそう言えるんだよ!鵺はな…!」
「ミルが悪いの…。ミル気付いてた…鵺ちんが雨岬君の事どう思ってたのか…」
「!?」
空と鵺は目を大きく見開く。ミルフィは左腕からドクドク血を流しながら空に抱き抱えられたまま、鵺の方にゆっくり顔を向ける。
「ごめんね…鵺ちん…。ミル、分かってたはずなのに…。ミルも鵺ちんと一緒。ずっと友達がいなかったの。でもそんなミルに優しくしてくれた雨岬君…嬉しかった…。ずっと友達がいなかったから、ミルにとって雨岬君が全てだった…。他のみんなが言う"好き"よりもっと重いよね、ミルと鵺ちんの"好き"って…。独りぼっちだった真っ暗闇の世界に光を射し込んでくれたんだもんね…。だから鵺ちんがミルと同じくらい雨岬君の事を大事なの気付いてた…。でも…取られたくないって、ミルは我儘でバカだから自分を優先しちゃった…。だからこれはミルが受けなくちゃいけない天罰なんだ…だから雨岬君、魍魎しまって。ね」
「そ…んな…事っ、」
ミルフィは鵺を見て微笑む。大粒の涙をボロボロ流しながら。
「鵺ちん…今まで辛い思いさせて本当にごめんね…」
「あ…っ、あ…!」


ガクン!

ガタガタ震えてその場に崩れ落ちた鵺。
























「鵺…」
「そんげの…そんげのずぅりぃて…そんげのっ…!謝ったからって良い事じゃねぇねっか!!」
「うん…本当そうだよね…。だから鵺ちん、ミルの事を殺して良いんだよ…」
「馬鹿!ミルフィお前何言って…!」
「そんげのっ…ずぅりいて…うっ…もう嫌ら!俺もう嫌ら!嫌ら!おめさん達の顔なんてもう一生見たぐねぇ!!」


バッ!

「鵺!?」
立ち上がると鵺はMAD化のせいで上がった身体能力を発揮。飛び上がり、店と店の屋根を伝ってどこかへ去って行ってしまったのだ。
「おい鵺待てよ!!だからそうやって勝手な行動とるな!お前はMADからもEMSからも狙われる身なんだから!!」
「ミルフィ様…?」
「えっ…?」
背後から複数の声がし、ミルフィと空が振り向く。其処には、若い男性と中年男性がざっと10数人立っていた。
「MADから逃げてきたらたまたま此処に…。でもまさかミルフィ様がこんな所に居たなんて!」
「な、何だこいつら…?」
「こいつらとは何だ!俺達はミルフィ様親衛隊だ!」
――ああ。そういやミルフィは歌手やってたんだっけ。そのファンクラブか――
「ミルフィ様、その男は?」
「まさか彼氏か?」
「え?」
「きっとそうだ!何たってミルフィ様は自分のコンサートに来たファンをMADに売っていた元共和派首相兼ウソつきアイドルだからな!」
「…!!」


ザワッ…!

ミルフィファンの男性達の顔色が不気味に変わった。同時に漂う殺気に、空とミルフィが顔を青くする。


バキッ!

男性達は付近の鉄柱やパイプを引き剥がして空とミルフィに向けて笑う。MADさながらの殺意がこもった笑顔で。
「俺の友達もMADの餌食になったんですよー?ミルフィ様のせいで!」
「果てには清純派と謳っておきながら彼氏有りですかぁ」
「こりゃあ、こんな大嘘つき大罪アイドル生かしちゃおけないなぁ!!」
ミルフィファンの男性達は一斉に駆け出す。空とミルフィに手を掛ける為。
「チッ…!くっそ!」
先程鵺の攻撃を受けてそれどころではないミルフィに襲い掛かる第二の苦難。空はミルフィを抱き抱えたまま、男性達から逃げる。
「くっそ!今はそれどころじゃないっつーのに!」
「仕方ないよ…全部、ミルが今までしてきた事への罰だもん…。雨岬君もういい…もういいよ。ミルは我儘でサイテーな女…。雨岬君にこれ以上迷惑をかけたくない…。鵺ちんの事、ファンのみんなの事…たくさん傷付けたミルなんかが、優しい雨岬君と付き合ってちゃいけないもん。…もう別、」
「れるなんて絶対言うなよ!!俺はそんな気これっぽっちも無ぇからな!」
「!!」
はぁ、はぁ息を上げて走る空に、ミルフィは出血のせいで顔を青くしながらも目を丸めて空を見る。空は薄ら頬を染めつつ、口を大きく開いた。ただしミルフィの事は一切見ず、前だけを見て。
「どんなにサイテーな部分が見えたって、俺はもうお前を嫌いになれないくらい大好き過ぎてやばいんだから仕方ないだろ!!」































to be continued...






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