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終焉のアリア【完結】
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「ししし、死にたくない死にたくない死にたくないぃいいい!!う、う、うわあああああああ!!」


ガシッ!

ギャル男の1人がタクローの服を掴みそのまま、フォークを向けたMADにタクローを投げ飛ばす。
「えっ…、」
「タクロー氏ぃいい!!」



グサッ!


ブシュウウウ!

花月の真っ黒な髪を染めた友人の血の赤い雨。


カラン…!

MADが吐き出した赤い血がべっとり付着したタクローの丸い眼鏡が、花月の足元に転がった。
「え…、タクロー…氏…?」

『実はこの白い帽子の方こそ峠下晃氏なのですぞ!』
『ととと、峠下氏!助けに来ましたぞっ!!』
『今まで顔も知らなかった今日会ったばかりで本名も素性も知らない相手ですが我々は同志でしょう、友でしょう!!私は峠下氏を置いてなんて逃げれませんぞ!逃げたいならryo.氏お1人で逃げて下さい!』
『っ…ぐっ…んなの…そんなの分かってた…でも…でももしかしたら…アニメみたいに俺だって…友達を助けられるかもしれないって…奇跡が起きるかもしれないって…』

呆然と立ち尽くす花月とryo.の脳裏で聞こえてくるタクローの声。何かとぶつかり合いやすい2人の間に入る優しくて正義感あるタクローの笑顔が2人の脳裏に、今其処に彼が居るかの如く蘇る。
「な…、そん…なっ…タクロー氏が…」


カタカタ…カタカタ…

タクローの死をようやく体が理解すれば、小刻みに震え出す花月の体。





















ガッ!!

「うお?!ななな、何だよこのっ、クソオタク!」
「ききき貴様か貴様か貴様か!タクロー氏を盾にした非地球人があああ!!」
「r,ryo.氏!?」
ギャル男達の悲鳴とryo.の罵声にハッと我に返った花月が振り向けば、何とあのryo.が1人のギャル男の胸倉を掴み上げていた。
すぐさま周りのギャル男が駆け寄る…のは、普段の平和な日常なら。今日ばかりは、MADと自分達の迫りくる最期に、いつも威勢の良いギャル男達もすっかり腰を抜かしてしまっており、仲間の1人がryo.に掴み上げられていても地べたに座り込んだまま、ただただ呆然。
花月がryo.の肩を後ろから引っ張る。
「や、やめて下さいryo.氏!」


パシッ!

腕を振り払うryo.の鬼の形相。
――この顔見た事がある。嗚呼そうだ、これは峠下晃が小鳥遊花月だと知った時の顔だ――
「放して下さい峠下氏!!こいつが、こいつがタクロー氏を殺したんですよ!!見ていたでしょう!?自分が助かりたいが為にコイツはタクロー氏を盾にした悪魔だ!いえ、コイツこそMADだ!!」
「落ち着いて下さいryo.氏!今はそんな事を言っている場合じゃ、」
「ギャッ!ギャッ!おいお前らこりゃあ見物だぜ!地球人の奴らがいがみ合っているぜ!ギャッ!ギャッ!こりゃ傑作だなァ!」
「喧嘩は良くないよ坊や達〜?喧嘩するくらいならアタシ達が食べてあげる!これでアタシの胃の中で坊や達は一つになって仲直り!アハハハハ!」


グワッ…!

――くる…!!――
嘲笑いMAD達の巨大な手が花月達地球人目掛け、振りかぶられた。


キィン…!

花月の瞳が金色に光り、辺り一帯にも金色の光が広がり…
「小鳥遊流奥義桜花、」
「貴様はタクロー氏が味わった苦しみを味わえぇ!!」
「なっ…!?ryo.氏、」
「う、うわああああ!?」
背後から聞こえた声に花月がハッとし、後ろを振り向ききる前に、花月の脇MAD目掛け吹き飛ばされたのは、さっきタクローを盾にしたギャル男。


ブンッ!


グサッ!!

「!!」
「キャアアアア!!」
「た、達也!!」
バシャバシャ降り注ぐのは、MADの真っ赤な爪が腹と背中を貫通したギャル男1人分の真っ赤な血の雨。
「くっ…!小鳥遊流奥義、桜花!!」


ドンッ!ドンッ!!

「グアアア!?」
「クソッ!地球人のクセに!」
花月の攻撃で人間サイズのMAD達は吹き飛ばされ、巨大MAD達も攻撃により破壊された壁や天井から立ち込める煙幕で視界ゼロ。動けない。


























一方、花月の攻撃はMADを攻撃する為というよりもこの空間から脱出する為の攻撃であった。お陰で、破壊できた壁から校舎上へ続く道を確保。
「皆さん今の内に上の階へ逃げて下さい!早く!」
声を張り上げ、地下に収容された地球人達を逃がす花月。
「皆さん早、がはっ…!」


ドスッ!!

「花月!!」
誘導する花月の腹にめり込んだのは、朝比奈の蹴り。周りにはギャル男達。花月に駆け寄るさすがの友里香も青い顔だ。
「ゲホッ、ゴホッ!」
「どうしてくれんの!どうしてくれんのよ!!花ブタ!あんたの友達が達也をMADに投げたから達也が死んじゃったじゃん!殺したんじゃん!!どうしてくれんのよ!!あたしの大切な人なのに、どうしてくれんのよ!!」
「っ…、ごめ…、なさ…」


ガッ!

「!!」
「な、何よあんた!?」
何と今度は友里香が朝比奈の胸倉を掴み上げたではないか。花月は目を見開く。
「そっちが先、デブ眼鏡を盾にして殺したんじゃん!おあいこでしょ?!何悲劇のヒロインぶってんのお前!?マジキモいんですけど!」
「うっざ!!いいからその手離せよ!!ハッ!あんた何?花ブタの彼女?容姿に騙されちゃってバッカみたい。そいつ整形人間だから全部作り物なんだよ?あ、そっかぁ、あんた見るからに底辺だから騙されちゃったんだねぇ、キモい女!」
「お、おい早く行くぞ朝比奈!そういうのは後でやれって!」
「朝比奈ちゃんとりあえず此処から早く逃げないと!」
仲間達からの声すら無視して、友里香に逆に食って掛かる朝比奈。
「は?何お前、マジ調子乗ってんじゃねぇよ。お前こそ食われれば良いじゃん、MADに!」
「えっ…?!」


ドガッ!

背後から迫ってきていたMAD目掛け、友里香は腕を組みながら悪魔の笑みを浮かべて朝比奈をMADの方へ蹴り飛ばした。
「お前が食べられてる間に友里香達が逃げれる。時間が稼げるじゃん?」


ドスッ、

「きゃっ!?」
蹴り飛ばされ、尻餅着いた朝比奈の前が影っている。ガタガタ震えながら後ろを振り向けば…
「ギャッ!ギャッ!こりゃあ美味そうな女だなァ!」
「ひっ…!MAD…!!」

一方、友里香は花月の腕を掴む。
「今の内に行こう、花月!」
しかし…。


スッ…、

「花月!?花月!!」
友里香の腕をすり抜けた。





















「それじゃあ、地球人の美味そうな女いっただっきまぁす!」
「いやぁああ!!」
「魑魅魍魎之使者余舞降史我之下…桜花昇天!!」


ドンッ!!!



























地下出口――――

「はぁっ、はぁ…い…今の爆発音何だよ…?」
花月が破壊した壁から1階へ逃げ出した地球人達の視線の先は、今、地面が揺れる程の爆発音をたてた地下。
「朝比奈ちゃん無事かな…!?」
「分かんねぇ…、あ!おい見ろよあれ!」
「朝比奈ちゃん!!」
煙幕の中、階段を駆け上がってくる三つの影。
煙幕が晴れていくと其処には、朝比奈を抱えた花月。その隣には友里香。
花月の首から下の全身に赤くボコボコ動く血管のような模様が浮き上がっている。まるで魑魅。その姿に皆、「うっ…」と口を手の平で覆ってしまう。花月は気にせず、朝比奈を彼らへ差し出す。かつて自分を死まで追い込んだ同級生達に。
「朝比奈…ちゃん…!」
「……。気絶してるだけですから…」
「お、おい花ブタ…!?」
朝比奈を1人のギャル男に渡せば、彼らの脇をスッ…と通っていく花月。
「皆さん、僕の後について来てもらえますか。この校舎には他にもEMS軍人が居ますから、皆さんを彼らの元へ送り届けます。ですから、」
「何がEMSだ…」
「え?」
ボソッ、と聞こえた。最前列で俯いている眼鏡をかけたサラリーマンがそう呟いた声が。
「どうかしま、」
「私の妻と娘を守れずに、何が偉そうにEMS軍だあぁあぁあああ!!」
「!!」
「花月!!」


ドッ!!


ポタッ…、ポタッ…

「くっ…、」
瞳孔を開ききったサラリーマンは所持していたナイフを花月に振り上げたが、花月はナイフの刃を両手で掴んで受け止めた。だから、花月の白い手袋はじわりと真っ赤に染まっていき、ポタポタと床に花月の血が滴る。
「その手を退けろクソガキがあぁ!!」
「っ…、落ち着いて下さい…!今僕達がまとまらなければMADの思うつぼで、」
「ふざけるなあああ!クソガキ!お前がさっき友達たちと茶番している間に地球人が殺されたのを見ただろ!?あの中に俺の妻と娘がいたんだよおおぉ!!ふざけるなあああ!!」
「っ…!!」


ズブッ!

花月からナイフを離せば、サラリーマンは花月の血がべっとり着いたナイフをくるくる回しながら狂った顔をして、此処に集まった地球人達に向けて両手で天を仰ぎ、笑う。


























「お前ら忘れたのかぁ?MADが言ってたよなぁ!生き残った奴だけが此処から出れるって!」


ザワッ…!

「同じ地球人だから仲間とか敵はMADだけだとか、全部間違ってるんだよ。だからここからはさぁ、」
サラリーマンは近くに居た見ず知らずの男子をひょい、と持ち上げて笑った。
「己以外みんな敵なんだよぉお!!」


グサッ!!

「キャアアアア!!」
「アハッ!アハハハハ!」
何とサラリーマンが男子の腹をナイフで一突きすれば集まった地球人達の間にナイフを振り回し、高笑いを上げながら次々刺し殺していく。
その姿はまるで通り魔。
「やめて下さい!!」
花月の声など聞こえない地球人達の中で、今まで抑えていた理性の崩壊する音が聞こえ出す。
「そうだよ、そうだよな!軍人じゃない俺らが生き残る道は一つしか無い!俺が最後まで生き残るしかないんだ!」


グサッ!

「きゃあああ!!」
サラリーマンに殺されたくないからという行動にMADから言われた言葉が重なれば、地球人達は我が身を守る為に殺し合いを始めた。
凶器の無い者は身近の人物の首を絞め、拳に自信のある者は隣の見知らぬ人物の頭をかち割り…。


ブシュウウ!

血の雨が降り注ぐ。
「キャアアアア!!」
「イヤアアアア!!」
悲鳴と断末魔が飛び交う。


























「や、やめて下さい!!皆さん!MADの言った言葉を信じないで下さい!!奴らは初めから、生き残った地球人を生きて帰すなんて考えていないんです!僕達が殺し合うのを待っているだけなんです!だから、ここで殺し合ったらMADの思うつぼなんです!!」
「花月無理だし!こいつらに声なんて聞こえてないよ!友里香達だけで逃げよう!MADに殺される前にこいつらに殺されるよ!?」
友里香が腕に抱きつき花月を引っ張るが、花月は背を向けたまま腕を振り払い、地獄絵図の中へ飛び込もうとする。


ガシッ!

それを阻止する友里香の力強い腕に、立ち止まらざるを得ない花月。
花月の背後で耳に囁く。
「友里香言ったよね…?友里香のお父さんとお母さんと妹を守れなかったんだから、友里香だけは絶対守ってねって。だって花月はEMS軍なんでしょ?」
「そうだけど!俺が守らなきゃいけない人は佐藤さんだけじゃない!みんなを守らなきゃいけな、がはっ…!!」


ガンッ!!

花月の頭を掴んで壁に打ち付けた友里香。さすがの花月もその衝撃に視界が霞み、頭がクラクラする。


キュッ、

その間にも友里香は腕に抱き付いて引っ張っていく。
「あははっ。そうやっておとなしく友里香の言う事だけを聞いていればイイんだよ。それが花月でしょ?」























「朝比奈ちゃん!」
「花ブタ達何処行きやがった!?」
「分かんない…」





























2階、
男子トイレ――――


「ギャハハ!待て待て地球人共〜!!」
「きゃあああ!!」
トイレの外廊下からは、ドスドスとMADが追い掛ける足音と地球人達の悲鳴が聞こえてくる。
友里香が強引に隠れた男子トイレの個室。花月は便器に腰掛け、まだクラクラする頭を抱えて俯いている。
「痛っ…、」
「此処なら大丈夫だし。あ!ねぇ花月!もう1人のバンダナしたオタクは!?いつの間にかいないんだけど!?」
「ryo.氏なら…、あいつを盾にした後何処かへ行って…、痛っつ…」
「そうなん?ま、いっかあんな奴!てかさ花月またじゃん!?この前もその変な赤い模様が体に浮き上がってたよね!?何!?大丈夫なん?!ねぇ!」
「っ…、あのさぁ…」
「何?なに?」
花月は頭を抱えながらも少し顔を上げる。目の前には、屈んだ友里香。
「…ごめん、佐藤さんだけを守るなんて俺にはできない」
「は?」


ガタッ、

立ち上がった花月は頭を抱えてフラフラしているが、個室のノブに手を掛ける。


ガチャッ!

その上に友里香の手が覆い被さり、ノブにまた鍵を掛ける。珍しく眉間に皺を寄せた花月が友里香を睨むが、友里香の睨みの方が何倍も恐い。


















「マジふざけんなよ。お前らEMS軍が情けないせいで、何で罪の無い友里香が危険な目に合わなきゃいけないわけ?」
「それはそうだね、俺達が悪い。本当ごめんなさい。でも佐藤さんの考え、直した方が良いと思う」
「はっ!花月のクセに生意気じゃん?どうしたの?」
「ryo.氏の事をあんな奴いいって言ったり、自分だけ助かりたいって言う考えは直した方が良い」
「お前ほんっとアニメの見過ぎだね。マジでキモいんですけど。かっこつけんなよ。お前だって本当は、自分だけ助かりたいって思ってるんでしょ?自分はどうなってもいいなんて思う奴、この世に居るわけないじゃん!そんなの機械でしょ?!感情の無い機械じゃん!」
「助かりたいよ。でも佐藤さん。さっきみたいに、目の前で人が殺されそうになっているのに笑ったら駄目だし、朝比奈さんをMADに殺させようとするなんてもう一生しないでほしい」
「は?偉そうに言わないで花月のクセに」
「…俺がそうだったんだ」
「は?」
「俺は、さっきの奴ら以外の中学時代いじめてきた奴らなんてMADより悪だから死んでしまえば良いと思って、刀を使った…。その事を姉さんに叱られて、分かったつもりでいた。でもその後そいつらがMADに襲われた時俺は動けなかった。そんな奴らでも助けなきゃいけないのに、俺の体は動けなかった。心の奥底で"あいつらなんてMADに殺されてしまえば良い"って思っていたから、動けなかったんだ。…MADに殺されても良い人なんていない…。だから、佐藤さんにも俺と同じ人間になってほしくない」
「……」
「ryo.氏にもそうだったんだけど…あんな事になっちゃったから…。でも佐藤さんはまだ誰の事も見殺しにしていない。だから、もうあんな事をしたり、言ったりしないでほしいんだ」
「……」
友里香の手をそっ、と退けて鍵をあける。


バタンッ!!

「!?」


ガチャッ!

トイレの扉が乱暴に開かれた音がして、今あけたばかりの鍵を慌ててかけ直す花月。友里香の口を手の平で覆い、2人、息を殺す。


























カタ、カタ…
トイレに入ってきた人物の足音。どうやら1人のようだ。


カタ、カタ…

だんだんゆっくり近付いてくる足音。


ドクン、ドクン…

外に洩れてしまいそうな2人の鼓動。


カタッ…、

――止まった…!――
個室の前で静かに止まった足音。嗚呼個室なんかじゃなくて、用具室ロッカーに隠れた方がまだ見つかる確率は低かっただろうか?なんて、今更後悔したところで遅いんだけれど。


ドクン、ドクン
ドクン、ドクン…


カタ、カタ…

――あれ…?足音が戻っていく…?――
何と、足音は個室を開けずに扉の方へ戻っていったではないか。何故かは分からないが。


バタンッ…

しかも、人物がトイレを出ていった音まで聞こえたのだ。
「ふぅ…」
とりあえず助かった。2人、息を吐く。
ふと、花月が天井に視線を向けると…
「うわああ!?」
「え!なに…、きゃああ!?」
2人が驚いて声を上げたのも無理もない。トイレの上からこちらを覗く鳥の顔があったのだから。























「お鳥ちゃ、」


ガッターン!!

「ひぃ!」
顔が引っ込んですぐ乱暴に個室の扉が破壊されれば其処には、紫色の蝶の大群を手から出して扉を破壊した鳥が仏頂面で立っていた。
「お鳥ちゃん良かった!無事だったんだ!」
「…はぐれた」
「え?」
「ハロルドとファンとミルフィと居たけどMADに攻撃されて、あたしだけはぐれた。だから此処に隠れに来た」
「…ら、俺達が丁度居た、と…?」
「何でその子も居んの」
友里香を指差す、超絶不機嫌な鳥。
「地下で一緒になって…」
「ふぅん。こんな狭い所で何やってたんだか」
くるっ、と背を向けると腕組みしたままスタスタ歩いていってしまう鳥を追い掛ける。友里香に腕を抱き付かれたまま。
「ちょ、まっ…!何もしてないって!」
「黙れ、浮気男」
「なあっ?!誤解だっての!!」
「此処は2階です」
「そんなギャグ言ってる時じゃないじゃんか、お鳥ちゃん!」
バタバタしながらトイレを出た3人。相変わらず腕に抱き付いている友里香をジロッと見て、鳥は先頭をパタパタ歩いていく。
「本当は超超超ムカついているけど、その子民間人だからあたし達が守らなきゃいけない。だから仕方ないの」
「う、うん」
「でも…」
くるっ。
振り向いた鳥は花月と友里香の間にチョップ!
「わっ!?」
「きゃっ!ちょ、何!?」
「だからって、くっつくなっ!!」



















その時。


カタン…、

「…!2人共下がって!」
階段踊り場の方から微かな物音がして、花月は2人の前に出る。息を殺して気を張っていると…
「小鳥遊花月ィ!!」
「なっ…!?お前は赤髪のMAD!!」
踊り場から駆け上がってきたのは赤髪のMADマジョルカ。花月は目を金色に光らせ、唱える。隣では鳥も唱え出した。
「小鳥遊流奥義…!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなってば!!」
「桜花、」
「はぁっ、はぁっ、コレ!あんたら見覚えあるんじゃないの!?」
「なっ…!?」
「えっ、それ…!シルヴェルトリフェミアが作ったあたしと花月の人形…!」
何と、マジョルカが息をゼェゼェ言わせて持ってきたのは、シルヴェルトリフェミアが作った花月と鳥のあの人形だったのだ。これにはさすがの2人も攻撃の手を止める。だがまだ油断はできないから、鳥の顔の前に手を出した花月は自分だけがマジョルカに近付く。
「ぜぇ、はぁ、はぁっ、」
「…そうやってその人形を餌に、俺達が近付いた所を食うんだろ」
「ぜぇ、はぁ、はあ?!ちょっ…、はぁ、ひぃ…小鳥遊花月あんた…ひねくれ過ぎだね!」
「……」
「ぜぇ、はぁ…とりあえず…この人形が本物だって証明…はぁっ、するよ…」
マジョルカは2人の人形を前に差し出すと、花月の人形の左手に拳を作らせ、鳥の人形の右手に拳を作らせた。


ぐっ!

「!!」
「ほらね、本物でしょ」
すると花月の左手が勝手に拳を作り、鳥の右手も勝手に拳を作ったのだ。
2人は目を丸め、マジョルカを見る。表情は分からない化物の姿をしているマジョルカだが、微笑んでいるように見える。
「本物だ…!」
「ね?言っただろう?シルヴェルトリフェミア様からこっそり盗ってきたよ。返してあげるよ、コレ」
「な、何で…」
「…きっと交渉条件を突き付けるつもりでしょ」
「ピンポーン。正解だよ小鳥遊花月のお姉さん。小鳥遊花月をあたいに寄越しな。この人形を返す代わりにね」
「そんな事だろうと思った。無理って答えが返ってくるに決まってるじゃん」
「あら、そう。なら…」


ゴキッ!

「ああああ!!」
「お鳥ちゃん!!」
鳥の人形の右腕を勢いよく折り曲げれば、鳥本人も右腕を押さえながら声を上げ、踞る。






















「やめろ!!やめてくれお願いだ!!」
「なら、あたいと来るんだね小鳥遊花月」
「っ…!!」
「YESの返事が無いようだねぇ?」
次は、右足。


ゴキッ!!

「ああああああ!!」
「お鳥ちゃん!!」
「アハハ!ホラホラホラァ!早くYESの返事をしないとダメなんじゃないのかい!?」
「くっ…!」
「ああああ!い、イタイッ…!で、でもダメ…、花月っ…行っちゃ…」
「…くっ…!なら俺からも条件を出す!」
「何だい?」
「俺が行ったら、その人形を返すのは勿論の事、お鳥ちゃんに…地球人に今後一切、危害を加えるな」
「か、花月何バカな事言ってるの!?」
「ふぅん。まあ、そうくるとは思ったけどねぇ。あたいはそれで良いよ?あたいは今後一切、地球人に手を出さないさ。でも、シルヴェルトリフェミア様達はあんたの意見なんて聞かないだろうねぇ」
「そうだよ!だから花月がMADに行ったら逆効果なの!目の前の事だけで後先考えないなんて本当バカづきじゃん!!」
「おやおや。あたいは今小鳥遊花月と話をしているんだよ。本っ当、あたいと小鳥遊花月の間に割り込んできて邪魔でお喋りなお姉さんだねぇ!!」


ゴキッ!!

「あああああ!!」
鳥の両足が崩れ落ちる。
「やめろ!!もう本当やめてくれ!!」
「じゃあ早く!ほら!返事はたった一つだろう!?早く!さあ!」
「花…月っ…ダメ…行っちゃ…!」
「…っ、ごめんお鳥ちゃん」
「か、花月っ…」


スッ…、

下を向き、震える拳を握りしめたまま鳥の脇を通り過ぎた花月がマジョルカの元へ歩み寄る。マジョルカは自分の頬に両手を添えて歓喜。
「きゃ〜!これでやっとあたいのモノになるんだね!さあ!早くおいで、おいでな小鳥遊花月!!」
2人の人形を持った右手を花月に差し出すマジョルカ。
「クソMAD側につく地球人なんざ、この地球上にてめぇしかいねぇぞ!!」


スパン!!

「えっ…」
「え?」
何処からともなく声がして、花月が握ろうとしたマジョルカの右手が手首からスパン!と綺麗に斬り落とされ、床にボトッ!と転がった。同時に、マジョルカの手の中にあった2人の人形が床に落ちた。


ブシュウウウウ!!

「ギィャアアアアア!?」
斬られた箇所から噴水のように噴き上がる緑色の血。手首をおさえ、痛みにバッタンバッタンいわせ暴れまわるマジョルカに花月と鳥と友里香が呆然としていると…



























「いくら女守る為でも敵側に行く奴があるかよ!キンタマついてんのかカズてめぇは!!」
「…!?せ、先輩!?」


キィン!

黒い光を纏った剣を肩に乗せたアリスがマジョルカの奥から現れた。その後ろには…
「風希ちゃん…!」
ぷいっ。
風希が居た。だが、花月と鳥を見ないよう外方向いてしまうが。
「アリス戻ってきた」
「バァカ。違げぇよ、お鳥。通りがかったらたまたまカズとクソMADのバカな会話が聞こえてきたんだ」
「風希ちゃんも一緒だったんだ」
「ああ、まあな。話は後だ!おいカズ!てめぇ、どんだけ目の前で味方が攻撃されていてもなァ、目先の事しか考えずに敵にすぐ返事するんじゃねぇぞ!!敵はそうやって混乱してるカズの心の隙を突いてるだけなんだよ!オラよ!」
「あっ…!」
ひょい、とアリスから投げ渡されたそれは、先程マジョルカの手首をアリスが斬り落とした時に落ちた2人の人形。
「話が聞こえちまったからな。だからてめぇら2人は生き急いでいたってわけか」
「す、すみません…」
「言葉が違げぇだろ。取り返してやったんだぞ?」
「あ、ありがとうございます先輩…!」
ニィッ。アリスは剣を握り締め、笑む。
「合格だ。じゃあカズ!俺らでこのクソMAD殺るぞ!腕斬り落としたくらいじゃ死なねぇだろ」
「はい。このMADは以前バラバラにされたのに元通りになりましたから」
「おーおー。とんだ手間をかけさせる化け物だぜ。よっしゃ、いくぞカズ!」
「待って…」
「あ?」
ギラッ。銀色の鎌を光らせた風希が一歩前へ出てくる。
「風希も殺るってか?」
「うん…。だってこいつはお父さんとお母さんの仇…」
そこでアリスと風希と花月の脳裏で甦るのは、マジョルカが殺した父に化けて襲ってきた姿。
「おっしゃ!いっちょ殺るか!」
「その必要はないよぅ」
「なっ…!?この声は…!」


パァンッ!!

「!!」


ビチャッ!ビチャッ!

3人が各自武器を手にした次の瞬間。何もしていないのにマジョルカは水風船が割れたように勝手に破裂。緑色の血が水風船の水のようにこの場に居た面々に降り注ぎ、髪を濡らす。
「きゃああ!」
そのグロテスクな光景に慣れていない友里香は口を手で覆い、踞る。
軍人4人は呆然。
「なっ…!?勝手に!?」
「自爆…したの…?」
「うんうん。違うよぅお兄ちゃん、お姉ちゃん!」
「その胸糞悪りぃ声はシルヴェルトリフェミアかてめぇ!!」
「アハハハ!ピンポーン大正解♪アリスお兄ちゃんは頭悪いのに、クイズだけはできるんだねっ!」
「ンだとこのクソガキがァ!!また姿現さねぇのか!正々堂々戦いやがれ!!」
校内放送のようにシトリーの声だけしかしないから、一向に姿を現さない敵に怒り心頭のアリス。
「貴方が…このMADを殺したの…?人形を…貴方から盗んで…私達に渡そうとした裏切り者だから…」
「ピンポーン!鎌のお姉ちゃん頭良いね♪そうだよぅマジョルカはシトリーのお人形を勝手に盗って、お兄ちゃん達に渡そうとしたから殺したのぅ!!」
「さっきのMAD…幹部なんじゃないの…」
「うん♪マジョルカは強いよぅ!でもシトリー怒らせたから殺したのぅ!!」
「はっ…幹部1人いなくたって、俺ら地球人には余裕で勝てるって言いてぇのかよ」
アリスは笑いながら言うが、その頬には冷や汗が一筋伝っていた。
「ねぇねぇお兄ちゃん!お姉ちゃん!シトリーね、学校の中つまんなくなっちゃったのぅ!ねぇねぇ、次は一緒にお外でおいかけっこしよぅ!じゃあシトリーが1分数える間にお外に出てね♪お外に出られたら、おいかけっこの始まりだよぅ!」
「は?おいかけっこだぁ?」
「お外に出られたら…?」
「はっじめるよぅ〜!」


グラッ!

「地震!?」
突然激しく揺れ出した学校。立っている事すら困難だから、壁に掴まるアリスと風希。手をとり支える花月と鳥と友里香。
「あ!あれ見て!」
「なっ…!?」
鳥が指差した向かいの校舎を窓を通して皆が見れば何と、向かいの校舎がグラグラ揺れながら、最上階から順に崩れていっているではないか。
「きゃああああ!!」
「だだ誰か助けてぇえ!」
崩れる校舎からこちらの校舎にまで聞こえてくる悲鳴。皆、顔を真っ青にする。
「くっそ!!俺らはクソMADの玩具じゃねぇんだぞ!カズ!」
「は、はい!」
「この校舎もいずれ、向かいの校舎のようになる!其処で踞ってるギャルをこっちに貸せ!ギャルと風希を俺が連れて行くから、お前はお鳥連れてこい!校舎から出るぞ!!」
「で、でも…!」
「あァ?!何だよ!」
「お、俺の友達がまだ校舎内の何処かに居て…!!」
「マジかよ!仕方ねぇ、風希達を外に出した後すぐ俺とカズで探しに戻るぞ!」
「す、すみません…!」



























「よし、脱出するぞ!」
アリスが風希に右手を差し出すが…
「いい。私は助けなんていらない…」
ぷいっ。外方向いて先を歩いていってしまう風希が階段を降りる。


グラッ…!

「…!!」
足を階段から滑らした風希の体が宙に浮く。


ガシッ!!


ドスン!!

「せ、先輩!!」
「アリス!風希ちゃん!大丈夫!?」
「危っぶねーな本当にお前はァ!!お前程助けが必要な強がり女は他にいねぇんだよ!」
寸の所でジャンプをし、空中で風希を受けとめたまま自分が下になるよう、階段の踊り場に落下したアリス。アリスの上に乗る体勢の風希はすぐにアリスから離れると、無言のまままた1人で階段を降りていこうとするから…
「こうされてまでまだ意地張るのかよ!とんだ大バカだなお前は!!」


ガシッ!

風希の右腕を強く掴めば、風希は止まる。
心配して、友里香をおぶりながら鳥と手を繋いだ花月が降りてきた。
「先輩…!」
「アリス。風希ちゃんを助けてくれてありがとう」
「本っ当だぜ全くよぉ!この戦が終わったら、お前ら問題児小鳥遊姉弟をこのアリス様直々に躾してやるぜ!」
ははは、と笑ってみせる花月と鳥。


グラッ…!

「おっと!駄弁ってる暇はねぇんだったな!カズ、お前そのギャルをおぶってもらっても良いか?この鎌女手を引くだけじゃまた1人で突っ走りそうだからよ」
「はい。俺は大丈夫です。風希姉さんをお願いします」
「あいよ!」
アリスが屈み、風希に自分の背を突き出す。
「何…」
「あ?おぶってやるっつってんだよ!」
「いい加減にして…私は…」
「いい加減にしてほしいのはこっちの台詞だ鎌女!」
「!?」
強引に引っ張り、風希を背におぶったアリス。風希は目を丸めてじたばた暴れるものの…。
「突っ走るぞカズ!」
「はい!」
アリスは揺れの中階段を駆け降りていくから、抵抗しても無駄だ。
「……」














































校門の外―――――


ザワザワ…

「な、何なの!?何が一体どうなっているの!?変な学校に連れられたかと思えば、その校舎が崩れ落ちていくなんて!?」
「EMS軍は何をやっているんだ!!」
何とか校舎の外に出られた民間人達が、ガラガラ音をたてて崩れ落ちる校舎を見ながら声を上げていた。
「はぁっ、はぁっ。よし、風希達は此処で待ってろ。俺とカズは、カズのダチとクソ坊っちゃん達を探してくるからな」
「あたしも行く!」
「お鳥ちゃんは待ってて」
「やだ!」
駄々をこねる鳥の背に合わせて屈み、両肩に手を添えて目を合わせる花月。
「お鳥ちゃんは風希姉さんと一緒に、此処に居る民間人の人達を守ってて」
「すぐ来る?」
「すぐ来るよ」
ポン、鳥の頭を軽く叩くと花月はアリスと共に崩れ落ちていく校舎へ向かって走って行った。










































校舎内――――


ガシャーン!

「おわっ?!危ねぇなオイ!」
ほぼ倒壊している校舎1階だから、壁が崩れたり天井からは蛍光灯が落下してくるからそれらを避けながら、更には揺れに耐えながら走らなければいけない。
「ったく!クソ坊っちゃん達何処に居んだよ!」
「地球人見ぃっけ!」
「MAD!!」
柱の影からワラワラと現れたMAD達。2人から黒と金色の光が放たれた。


ゴオッ!!

「ギャアアア!?」
「熱ちちちち!?」
「炎!?」
何と、MAD達の背後から噴き上がった炎がたちまちMAD達を飲み込んだのだ。
「この炎まさか…」
「戻ってきてくれたんだねアリス君!」
「!!」
焼け焦げたMAD達の後ろから現れたのは、今炎で攻撃した本人ファン。アリスの帰還に笑顔のハロルド。下を向いたままのミルフィ。そしてその後ろにはryo.と朝比奈達ギャル・ギャル男の姿が。
「ryo.氏!?」
「と、峠下氏…!」
ryo.に駆け寄る笑顔の花月とは対称的に、ryo.はパッと花月から顔を反らしてしまう。
「ねぇ!軍人さん!このキモオタがあたしの彼氏を見殺しにしたの!」
一方、朝比奈を先頭にryo.が朝比奈の彼氏をMADの餌にした事をかれこれさっきからずっと怒鳴っていた様子。ハロルドは困った顔をしながらも、
「わ、分かったよ、とりあえず此処は危険だから外に出よう!」
と、彼らを宥めるのに必死だ。
「…?よく分かんねぇけどさっさと出るぞ!もう崩れる!」
「ああ。そうだな」
「うん!」


































校門の外――――

「花月達!!」
鳥の笑顔の先にはハロルド、アリス、ファン、ミルフィ、花月、ryo.、朝比奈達の姿が。その直後…


ガラガラッ…!

まるで砂の城のように、呆気なく全ての校舎が崩れてしまった。
「良かった!花月!」
ぎゅっ!と抱きつく鳥に花月もきつく抱き締める。風希はそんな2人を鬼の形相で睨み付けていたから、アリスが黙って風希の肩に手を添えた。
「皆さんご無事でしたでしょうか?僕はEMS軍の人間です!ここからは僕達と共に行動して頂きま、」
「何がEMS軍だ!!」
「そうよ!私の子供はあの変な学校の中でMADに殺されたのよ!それなのに、ご無事でしたでしょうか?だなんて、よくのんきに言えるわね!!」
民間人から刃を向けられ、彼らのEMS軍に対する怒りの声はとどまるところを知らない。
「っ…!申し訳ございません…僕達が不甲斐ないばかりに…!」
「さーてっ!第2ゲームおいかけっこを始めるよぅ!」
「シルヴェルトリフェミアの声!?」
校門のすぐ傍に立っているスピーカーからシトリーの声が聞こえれば、ざわめく。
「おいてめぇ!いい加減姿を現しやがれ!」
「ギャッ!ギャッ!」
「んなっ…!?」
「きゃああ!MADよ!!」
壊れた校舎の中から、再び大群のMAD達がこちらへ向かって走ってきたではないか。顔を真っ青にして一目散に逃げて行く民間人達に慌てるハロルド。
「ま、待って下さい!皆さん!危険です!バラバラで行動しては…!」
「チッ…!おいクソ坊っちゃん!あの量じゃ埒があかねぇ!」
「こっちには民間人も居る」
「今度は学校っつー箱の中じゃねぇんだ、街なんだ!だったらここは取り敢えず逃げて、MADの戦力を分散させるぞ!」
「散兵戦でいこう」
「うんそうだね!」
3人の戦略により、MAD達には背を向けて街へ向かって走り出す面々。
「あ。そうだ〜マジョルカを唆したお兄ちゃん。悪い魔法がかかっていたから、シトリーが解いてあげるねっ♪」
「えっ…?」
スピーカーから聞こえたシトリーの声に花月が立ち止まり、スピーカーの方を向いた。


ギギギギッ…!!

「あ"あ"あ"あ"あ"!!」
「花、…っ!!」
その悲鳴に、一同が振り向いた。目の前の光景に皆が顔を青くした。何故なら、頭を抱え呻き声を上げる花月の体がグニャグニャとどんどん形を変えていくから。
「か、か、かづ…き…?」
「お、おいカズ…!?」
「あ"あ"あ"あ"あ"!!」
次第に変形していく花月の姿に風希と鳥、朝比奈達がハッ!とする。
「もしかして花月…!」


















ドサッ、

その場に倒れた花月の姿は、たった今までのスレンダーで整った顔立ちとは正反対…太った体形・お世辞でも褒められない顔立ちになっていた。いや、戻っていたのだ。
「整形する前の…花月…!?」
「な、何?!花月こんなんだったの?!うっそマジキモい!友里香の知ってる花月じゃない!」
「と、峠下氏なのですか…!?」
「ギャハハハ!何だよ!?何が起きたか分かんねーけど花ブタが昔の花ブタに戻ったぜ!?なぁ!朝比奈!」
「うるさい!黙って!!」
「黙らねぇとその口裂くぞクソガキ共!」


キィン!

「…っ!?」


ビクッ!

目のつり上がった鳥の一言と剣を向けたアリスに、友里香と朝比奈達は萎縮して、口を閉じた。
「おい!カズ大丈夫か!?どうしちまったんだ!?」
「うっ…、」
「花月!どこか痛くない?苦しくない?」
「うっ…、こんなんじゃ…俺は…、ぐあっ…!」
「花月!?」
「小鳥遊花月君!?」
「お、おい大丈夫かよカズ!」
左胸を押さえて呼吸の乱れた花月に、駆け寄る面々。
「花月、整形しただけなんだよね?なのにどうして?戻ったり…それに、さっきシルヴェルトリフェミアが言ってた魔法って何?花月、花月が支部長になる時EMS軍に行って帰ってきた花月は別人になってた…花月、その時何したの?」
「っ…、俺も分かんない…、」
「グレンベレンバがお兄ちゃんの姿を変えさせた力は整形なんかじゃなくてほんの一時の魔法みたいなマヤカシなんだよぅ〜。だからお兄ちゃんは魔法が解かれちゃえばまた元のお兄ちゃんの姿に戻っちゃうのぅ〜♪」



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あきゅろす。
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