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終焉のアリア【完結】
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「よっしゃ!じゃあ作戦開始、」
「ギャアアアア!!」
「うお?!何だこいつらは!?」
いざ出陣!という時に、瓦礫の陰から突如現れた数100体の服を着た人型MAD達が襲いかかってきた。
「くっそ!邪魔なんだよ!!」


ガッ!

「ギャアアアア!」


ブシュウウ!

「血が赤い!?」
アリスが斬ったMADは真っ赤な血を噴き、倒れた。
「このMAD達やっぱり元は人間なんじゃないかな!」
「んな事言ってる間にてめぇの首が飛ぶぞハロルド!」
「ご、ごめんアリス君!」
「ったく!クッソ!雑魚は邪魔なんだよ!!」
「先輩!此処は俺と姉さん達で何とかします!元が人間のMADなら、力は通常のMADの半分以下ですから!」
「おお!助かるぜカズ!終わったら加勢に来いよ!」
「はい!」
ハロルド、アリス、ファンはこのMAD達を花月と風希と鳥に任せると、襲いかかってくるMAD達を蹴散らしながら、巨大MADの方へと駆けて行った。




































「オオオオオオ!!」
「チィ!相変わらず頭に響く嫌な雄叫びだぜ!」
「ああ。…いくか」
「うん」
3人は攻撃体勢に入る。
「脳天ぶち抜いてやんよ、クソMAD!!」
しかし…。
「んなっ…!?」
「き、消えた…!?」
突然、巨大MAD鵺は姿を消した。まるで瞬間移動したかの如く。
3人は辺りを見回す。あの大きさだ。何処にも隠れられないハズ。しかし何処にも見当たらない。
「な、何だ!?何処行きやがった!?」
「き、消えたの…!?」
「そんな馬鹿な…!」


























「あらぁ〜?鵺ちんどこ行っちゃったのかしら?」
一方。
戦闘を遠くのビルから高みの見物をしていたグレンベレンバも、鵺の姿が消えた事に首を傾げていた。


シュッ!

すると、隣に瞬間移動してきたアイアンが現れる。
「あらぁ〜大佐〜。貴方の仕業ねぇ?鵺ちんをどこへやったのー?」
「はあ?ちょい待ちぃ将軍はん。俺は何もしてへんで。ちゅーか、今此処へ来た所や」
「えぇ?じゃあどうして鵺ちんは突然姿を消しちゃったの?これからって時にぃ!んもうっ!」
「薬の効果が切れたんとちゃう?」
ポン!
手を叩くグレンベレンバ。
「ああ。なっるほど!それで元の地球人の大きさに戻っちゃって、それで姿が消えたように見えたってわけ。んふっ。じゃあ早く探しましょ。今ね、ハロルドちゃん達が其処に居るの。行動を見てると、あの子達に言ったみたいねぇ花月ちゃんが。あたしの正体」
「ホンマか?はぁ。花ブタはやっぱあの時、首チョンパしとくべきやったな。ほな、探しに行こか。俺の新しい息子をなァ」
「そこまでですよ」
「!?」


ドン!ドン!!ドンッ!

「くっ…!何!?」
「何やあ!?」
突然低い声が聞こえ直後2人が立っていたビルを攻撃され、ビルは倒壊。しかし2人は直ぐ様隣のビルへ飛び移る。煙幕が晴れた其処。暗闇の夜空に浮かんでいたのは…
「ドロテア…!!」
メイド服姿のドロテア。
「我々の領土へ土足で入り荒らした貴方方…。この辺りでそろそろ追いかけっこはやめましょう。裏切り者グレンベレンバ…」











































その頃の花月達―――


キィン!キィン!

「小鳥遊流奥義、乱舞!」
「小鳥遊流奥義…、五月雨…」
「小鳥遊流奥義、桜花昇天!!」
やはり元が人間というだけあり普通のMADより弱い為、数100体居たMAD達が今では30体に減っている。
「はぁ、はぁ。風希姉さんもありがとうございます」
「別に…」
「ねぇ。この数ならもうできるよ。一気に片付けちゃおう」
「うん…そうだね…。ほら…行くよ、バカづき…」
「変に語呂合わせしないで下さい!!」
3人は30体のMADの前に立ち並び、目を閉じる。
「小鳥遊流秘伝奥義、桜雨之舞!!」
3人声を揃え、目を見開く。


ドン!ドン、ドンッ!!

「ギャアアアア!!」
「アアアアアア!!」
金色の光と青の光とピンクの光。3つの光が混ざり合い、30体のMADを飲み込んだ。


ドサッ、ドサッ…

MAD達は焼け焦げ、全滅。
「やった!」
「うん…やったね…」
パチン!
鳥と風希はハイタッチをして喜ぶ。そんな2人を見て、ホッと一安心する花月。






















「はぁっ、はぁっ、…あ!花月達!」
一方。待っていろと言われたにも関わらず、皆の事が心配で、そして戦闘に参加できない自分の無力さに思わず飛び出してきた月見。瓦礫の中を駆けていたらすぐ其処で喜んでいる風希と鳥と花月の背中を見つけて、ホッとする。
「ホッ…。良かった…。妹達と弟に何かあったらわたくしは、天国のお父様とお母様に合わせる顔がありませんもの…」
月見は3人に手を振る。
「風希ちゃーん!お鳥ちゃーん、花月ー!無事で良かっ、…!!」
月見の笑顔が凍り付いた。喜んでいる3人の背後にユラリと、左手小指にお守りを括り付けた一体のMADの影が、音も無く忍び寄っていたから。
しかし3人は全く気付いておらず、MADに背を向けたまま、ハロルド達が居る方向へと歩き出している。


ガタガタ、ガタガタ。

震え出す体。青ざめる顔。そんな月見の不安も知らずMADはユラリユラリ、3人へ近寄っている。
――わ、わたくしはっ…!!――
体が動かない。家族の危機に直面しているのに、体は震えるだけで、岩のように動かない。

『月見姉様は黙ってて…』
『小鳥遊月見ちゃんは其処のビルの中で隠れて待っていてね。すぐ、戻ってくるから』

「っ…、」


ポロ…ポロ…

体が動かない自分の無力さに涙が零れ落ちる。

『だからそうやって自分を責めるな。それはお前の悪い癖だぞ』

「…!」
ファンの言葉と顔が浮かぶ。
ギリッ…、
歯を食い縛り両手拳を強く握り締めると、何と月見の体が動いたのだ。
しかしその時既にMADは3人の背後から、ナイフと同じ殺傷能力のある鋭利な爪が付いた両手を振り上げていた。































「花月っ。疲れた。おんぶー」
「えぇ!?」
「してあげなよ…してあげなかったら…私が首斬り飛ばす…」
「風希姉さんって俺の事大嫌いですよね?!」
「風希ちゃん!お鳥ちゃん!花月!逃げてぇええ!!」
「え…?月見姉さ…、」


ドスッ…!

「…!!」


ピチャッ、ピチャッ…、

月見の裏返った声に呼ばれた3人が振り向くと…其処には、3人の前に両手を広げて飛び出し、MADの長く赤い爪が腹を貫通している月見が立っていた。


ピチャッ!ピチャッ!

月見の真っ赤な血が、3人に赤い雨の如く降り注ぐ。
「え…な…、な、に…」
口から血をボタボタ流して目から涙を溢れさせた月見は、笑顔で3人の方をゆっくり振り向く。其処に3人の人間が居る事しか分からないくらい、視界はぼやけていた。
「よ、か…た…わた…し…お姉さ…ん…なの…に…、役たたず…だか、…らっ…これ…くらいしか…できなく…て…ごめん…ね…」


バリッ!バリッ!バリッ!

「ペッ!」


カラン、カラン…

僅か1分の間に。腹に刺した爪を爪楊枝代わりに月見を口の中へ放り込み完食したMADは、口からペッ!と、赤い血がべっとり付いた骨を吐き出す。




















自分達の目の前で今、何が起きていたのか分からなくて…否、信じたくなくて、ただただ呆然としている3人。
「え…な…に…月見ちゃん…え…?」
「月見姉さん…が…?」


グワッ、

MADは、月見の血に塗れた両手を3人目掛け振り下ろす。


ドスッ!!

「ギャアアアア!!」


ブシュウウウ!

飛び上がった風希がMADの右腕を斬り落とせば、MADは緑色の血を噴き、もがき苦しむ。
「風希ちゃ、」


ギロッ!

「っ…!」
鳥が呼べば、瞳孔の開ききった鬼の形相の彼女に睨まれ物怖じしてしまう。

『風希ちゃんは強くて可愛くて自慢の妹ですよ〜』
『ふえ??風希ちゃん怒っていますか?ご、ごめんなさい〜!』

月見の控えめで優しい笑顔やおどおどしたいつもの顔が、今其処に彼女が居るかのように鮮明に風希の脳裏に蘇る。
「…い…許さない…許さない許さない許さない!!」


ダンッ!

「風希姉さん!!」
鎌を振り上げ、MAD目掛けて1人で駆け出す風希。
その時。辺り一帯に血のように赤い光が放たれ…


ドン!ドン!ドンッ!!

「っ!?」
爆風と共に爆発音を上げ辺り一帯の瓦礫が斬れ、3人の方へと瓦礫が崩れ落ちてきた。花月は慌てて姉2人を抱き抱える。


ドスン…!
























ガラ、ガラ…

「はぁ、はぁ…」
何とか瓦礫の下敷きにはならずに済んだが、MADの姿が無い。逃がしてしまったようだ。
「はぁ…はぁ…つ、月見姉さんが…嘘だろ…?」

きゅっ…、

「お鳥ちゃん…?」
花月の服の裾を掴み、口をぎゅっと噛み締めている鳥の瞳からは大粒の涙。しかし、泣き声を必死に堪えているのが分かる。
「お鳥ちゃん…」
一言も泣き声も出さず花月の胸に顔を埋め、細い肩をヒクヒク動かす鳥の頭を撫でてやる花月。すると…。
「風希姉さん…?何処行くんですか」
下を向き、2人には背を向けて鎌を持ち、立ち上がった風希。
「決まってるでしょ…今のMADを追う…今のMADは鵺…」
「え…」
「今大きさは元の大きさに戻っていたけど…さっきの大きいMADと同一人物…。左手の小指に…同じお守りを付けていたから…。月見姉様を殺したのは…鵺…」
1人で歩き出す風希に慌てて花月が肩を掴み、引き止める。
「待って下さい姉さん!俺も行く!姉さんいつもそうやって1人で行動しようとするのやめろよ!」


パシン!

花月の手を振り払う風希。背を向けたままだが。
「姉さん…」
「うるさい…黙ってて…」


カラン…、

地面に落ちている、血のこびりついた月見の骨と血がべっとり付着した月見の髪飾りを手に取る風希。



















風希はすぐまた1人で歩き出したから花月が慌てて追いかけるが。
「風希ちゃん!」
それより先に、後ろから風希に抱き付いて引き止めた鳥。


ピタッ…、

止まる風希。
「風希ちゃん、もう嫌だ…お父さんとお母さんと月見ちゃんがいなくなって、もう嫌だ…あたしもう嫌だ…これ以上家族がいなくなるの嫌だよ。だから花月の言う事聞いて。1人で無茶しないで!」
「そうだよ!姉さんは1人で背負い過ぎなんだよ!無茶し過ぎなんだよ!何の為のきょうだいなんだよ!」

『風希ちゃん…無茶しちゃダメですよ』

「…月見姉様と同じ事言わないで…。みんな馬鹿じゃないの…無茶しなきゃ何も始まらない…無茶しなきゃ…」
「風希姉さん強情張るのいい加減やめろよ!」


バッ!

「…!!」
勢い良く振り向いた風希に2人は目をギョッと見開く。初めて見た。風希の黄色の瞳から涙が流れている姿を。
「姉さ、」
「無茶しなきゃ、私が無茶しなきゃ姉様の仇は討てない!!お父さんとお母さんの仇は討てない!!お鳥ちゃんと花月を守れない!!私が死んででも無茶しなきゃ、家族全員殺される!!だからもう放っておいて!!」


ガシッ!

また2人に背を向けた風希の肩を掴み、引き止める。風希は振り返る。
「何!っ…!!」
花月と鳥が風希を抱き締めれば、鬼の形相をして涙を流していた風希の目が見開く。
「放して!!」
「そうやって姉さん1人で無茶して、万が一の事があった時悲しむ人がいる事を全然分かってないじゃんか。昔の俺と同じだよ、姉さんは」
「そうだよ風希ちゃん。家族なんでしょ。なら協力し合うのが家族だよ。あたし達と一緒に戦おう。月見ちゃんもお父さんもお母さんもきっと、それを望んでいるよ。今後1人で行動したら、風希ちゃんが好きなオカルト本全部捨てちゃうよ」
「……」
「姉さん…」
「風希ちゃん」
腕で涙を拭うと、鎌を持ち、立ち上がる。顔を上げた風希の目にはもう涙など何処。いつものポーカーフェイスに戻っていた。
「…なら私の足手まといにならないように…して…」
「うんっ」
「特に花月…」
「俺!?」
2人に背を向け、やはり1人で先頭をきってMADを探しに行く風希の背を見て花月と鳥は顔を見合せていた。
3人は瓦礫の山を登り、月見の仇のMADを探しに向かう。月見の遺骨を抱いて。
――そういえば、さっきのあの赤い光…まさか…――




























































































「はぁ、はぁっ…」
火の海東京。人気の無い半壊のビルの中。
「ヴッ…ヴヴヴ!!」


ガッ!

「痛って…、」
MADの長く赤い爪が、白髪(はくはつ)の少年の左頬を切り裂く。それでも少年は右手に持った刀をそのMADに向ける事はせず、MADの左腕を、盤面の割れた銀色の腕時計を付けた自分の右腕で壁に押さえ付ける。
「ア"ア"アア"!!」
押さえ付けられているせいで声を上げ暴れるMAD。右腕が無く、左腕小指にお守りを括り付けたMAD。
「はぁ…はぁ…。助けてやったんだぞ…礼くらい言えよな…。つーか…マジで何やってんだよ…。お前は本っ当、世間知らずのド田舎者だよ…。お前の好物は人間なんかじゃねーだろ…。メロンパンっつってただろーが…。何で仲間を食い殺してんだよ…馬鹿が…。良くしてくれた仲間を殺したら、お前また独りぼっちになるんだぞ…分かってんのかよ…」
「ヴヴッ…ヴヴヴ…」
喋る事ができず、動物のように唸るだけでジタバタ暴れるMAD。
「お前はその様子じゃもう何も覚えてないみたいだけど…俺さ、こう見えて約束は守るたちだからさ…」


カラン…、

血のように赤い光をまとう刀魍魎を右手に握った少年は、ゆっくり顔を上げる。赤と黄色のオッドアイから流れる光るモノを頬に伝わせ、彼らしかぬ満面の笑みを浮かべる白髪(はくはつ)の少年は親友に微笑みかける。
「全員が敵になっても、俺だけはお前の味方でいてやるよ、鵺…」






































to be continued...







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