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終焉のアリア【完結】
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「シルヴェルトリフェミア様やドロテアのオバチャンもみーんな優しいんだから。一口で食べちゃうだけじゃつまんないじゃん?こうやって、じわじわじわじわ体も心もいたぶってやらなきゃ楽しくないじゃん!?」
――ぐっ…!体が動かない…!?――


ドスッ!

「あ"あ"あ"あ"!!」
トドメの一撃で頭を思い切り蹴れば、花月の頭から地面にじわりと真っ赤な血が滲む。
「はっ!その醜い面、地球人らしくてステキだよ?」


コツン、コツン…

黒い液体に飲み込まれていく鳥にヒールを鳴らして近付くと、顔をそっ…、と持ち上げる。
「あの男も連れて行こうと思ったけど、やーめた。もっとイイ悲劇思いついちゃった。お鳥ちゃんには来てもらうけどね」


ズブズブ…

黒い液体に飲み込まれていく鳥。その時、アリスの背後で金色の光が光った。


スパン!!


ブシュウウウ!

アリスの右腕が、背後から襲ってきた魑魅に斬り落とされ緑色の血が噴く。ゆっくり後ろを向くアリス。
「はぁ…はぁ…」
其処には、立てないから其処で倒れていても尚、魑魅でアリスを攻撃した花月がドクドク血を流しながらアリスを睨み付けていた。そんな花月を、アリスは口が裂ける程にぃっと笑う。
「残念でしたぁ〜そんな攻撃、痛くも痒くもないの。アタイらは」
「なっ…?!」


ズッ…ズッ…、

何と、斬られたはずのアリスの両腕が切口からみるみる再生されて綺麗に元通りになってしまったのだ。パチパチ!両手を叩くアリス。
「キャハハ〜!不思議でしょ?アタイの右腕を斬ったお返し…してアゲル!!」
アリスは満面の笑みで、魑魅に右手を指差した。


ガシャン!!

「…!!」
「キャハハ〜!びっくりした?びっくりした?あんたの大事なその刀!もう使い物にならないねぇ〜!?」
何と、人差し指で指を差しただけで魑魅が一瞬にして粉々に割られてしまったのだ。花月の瞳の色も黄色に戻る。




















アリスは黒い液体に飲み込まれていく鳥を軽々抱き上げる。すると、この異空間にまるでブラックホールのような一つの黒い穴がぽっかり空く。
「お鳥ちゃん返してほしかったら来なよ。ま。その頃にはもうこの子、完璧なMADになっていてあんたの事忘れているだろうけどね〜。キャハハ!」
笑いながら穴へ入っていくアリス。


ガシッ、

「…邪魔」
動かない体だが、地面を這って鳥の脚を血塗れの右手で掴む花月。
「っはぁ…はぁ…お鳥…ちゃん…、」


ドスッ!ドスッ!

「ぐあ"あ"あ"あ"!!」
「ウザ。キモ。どうせ地球人なんてアタイらにはかなわないんだから、無駄な抵抗やめなよ。本っ当見苦しい」


ドスッ!!

「っあ"…!」
何度も何度も顔面を蹴られ最後に思い切り蹴り飛ばされた花月は目からも出血し、まるで赤い涙を流していて視界が真っ赤なのに、それでも鳥の脚から手を放さない。
「お鳥…ちゃ…、…お鳥ちゃんは…俺、が…」
「いい加減にして。アタイ気、長くないんだから」


ドッ!

「っあ"あ"あ"!!」
掴んでいた右手をまた黒い液体が貫通すれば、自然と鳥から放れてしまう花月の右手。それでも尚鳥へ手を伸ばすが、その間にも鳥も黒い液体へ飲み込まれていく。
「じゃあね〜♪待ってるから。ばーいばーい!」
「お鳥ちゃん!!」
黒い液体に飲み込まれる最後、鳥の空虚な瞳が花月の事を見ていたような気がした。


ガチャン!!


シュッ…

穴が閉じて直後。十字架だらけのあの不気味な異空間は消えて、いつもの公園の風景に戻っていた。


ジジジジ…、ジジジ…

真っ赤な月が浮かぶ寂しい闇夜。今にも消えそうに点滅している園内の街灯からの音しか聞こえない、静か過ぎる夜。
花月は地面に倒れたまま鳥に右手を伸ばした状態で硬直。目は開ききっていて口は空いたまま呆然。まさに、魂の抜けた人形。
































「はぁ、はぁ、花月!」
すると、公園の入口から友里香の声がした。友里香が戻ってきたのだ。
「1人じゃやっぱ怖くて何処もかしこもMADだらけで!だから花月、一緒…に…」
粉々になった刀。地面を濡らす赤。下を向いて倒れている花月。一瞬にして全身の血の気が引いた友里香だが、すぐ駆け寄る。
「か…花月!?血だらけじゃん!!さっきの奴にやられたの?花月!」
「…が…、」
「え?」
「お鳥…ちゃん…が…」
「な、何?あのお姉ちゃんの事?あの人どうなったの?居ないじゃん!」
「連れていかれた…」
「え?」
「さっきのMADに連れていかれたんだ…」
「…!!で、でも大丈夫っしょ?だってMADなんて弱っちいんでしょ?それに花月は支部長じゃん!だからすぐ連れ戻せるよ!」
「……」
友里香は花月の顔を両手で持ち上げる。
「大丈夫だよ。花月には友里香がいる。それに、お姉ちゃんだって日本支部の幹部なんでしょ?なら全然平気じゃん。ね?」
友里香が唇を近付けるが…


パシッ!

「花月…!?」
左手で振り払う花月に、友里香は尻餅をついて呆然。すると、やっとあの異空間から解放されたお陰で体を動かせるようになった花月は立ち上がるが…
「花月!」
ふらついて倒れそうになるから友里香が支えてあげる…が、また振り払われてしまう。
花月はブランコの支柱に背を預けると、下を向く。
「全部俺のせいだ…」
「え…え?」
「お鳥ちゃんはあんなに俺の事を守ってくれたのに…。お鳥ちゃんだけは俺の事、軽蔑しないで本気になってくれたのに…。俺は守るどころか…俺のせいでお鳥ちゃんが連れさらわれた…きっと俺のせいでお鳥ちゃんが死んじゃうんだ…」
「だ、だから気にし過ぎだってば!だってさ、幹部って事はお姉ちゃん強いんでしょ?!ね?それに、お姉ちゃんの代わりなら友里香が居るじゃん!花月には友里香がい、」
「お前なんかがお鳥ちゃんの代わりになれるわけないだろ!!」


ビクッ!

怒鳴り声に、友里香は黙ってしまう。
「お前なんか…お前なんか、俺の事何も分かってくれないお前なんかがお鳥ちゃんの代わりになれるわけないじゃんか…。お鳥ちゃんは、根暗でデブでいじめられっこの俺の事を何一つ馬鹿にしないでいつでも真正面から向き合ってくれて…。それなのに…俺は…俺が…」
「か、花月…?」
花月は頭を抱えて顔を上げる。
「うあああああ!!」
狂った彼の開ききった黄色の瞳には、真っ赤な満月が映っていた。



















to be continued...






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あきゅろす。
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