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終焉のアリア【完結】
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スパン、スパン…!

「…?」
そんな彼ら5人の体に次々と×印の切れ目が入っていき、MAD達が自分の体に入った切れ目を見ていたら…


ブシュウウウ!!

何処からともなく入った体の切れ目から真っ赤な血を噴き、バタン!バタン!次々積み重なって倒れていく。
風呂場の壁が2人分の人型に浮き上がれば、其処から金色の光を放つ魑魅を構えた花月と鳥が姿を現す。花月の能力で2人が壁と一体化して身を隠していたのだ。隠れながら魑魅で花月がMAD達を斬りつけて、殺した。
しかし風呂場の天井や壁にこびり付いた生々しい血と魑魅に付着した血が真っ赤な事に、2人は顔を青くする。
「何で…何でMADなのにあたし達と同じ血の色してるの!」
「どういう事だよこれは…」


ドンッ!!

「!!」
廊下の方から大きな音が聞こえ、ハッと我に返った花月。
「お鳥ちゃん!」
「わっ!?」
鳥の右手を引っ張り、部屋を出て行った。




























ドンッ!ドンッ!


ビチャッ!

廊下を徘徊しているMADの大群の真っ赤な血が廊下の壁や各部屋の扉に飛び散る。花月が金色の目をして金色の光を放つ魑魅で次々と斬り裂いていくものの、数が多過ぎてキリがない。
「くそ!何でこいつらは血の色が赤いんだ!」
刀を振り上げれば金色の光が花の形をして舞い、


スパン!

MADを脳天から真っ二つに斬る。
一方。花月と背中合わせでMADと交戦する鳥。目を瞑り、両手を顔の前で交差する。
「小鳥遊流奥義…乱舞、五月雨」
カッ!と目を開くと同時に鳥の周りに紫色の光が纏えば光は蝶になり、紫色の蝶の大群が一斉にMADに襲い掛かる。
「ギャアアア!」


ビチャッ!ビチャッ!

悲鳴を上げるMAD達は蝶に体を蝕まれ、血を噴き倒れていく。
「ふぅ」
息を吐いた鳥の視界に、扉が開きっぱなしの4006号室、4007号室、4008号室4009号室が飛び込んでくる。
「みんなの部屋開いてる」
「え?あ!待てって!1人で行くな!」
1人で勝手に皆の部屋へ行ってしまう鳥に、花月は後ろを振り向く。そんな花月の背後から容赦なくMAD達が襲い掛かってくるが…


スパン!

目を金色に光らせ、振り向き様にいとも簡単にMAD達を真っ二つに斬った花月は鳥の後を追い掛けていく。






















「誰も居ない…」
4006号室〜4009号室までの部屋の扉は開けっ放しで、中は空。誰もいないのだ。しかも4部屋の中全て壁やベッドにまだ新しい赤い血が飛び散っており窓ガラスも割れているから、顔を青くした鳥の鼓動がドクン…!と鳴る。
「そんな…みんな…」
「…大丈夫だよ」
鳥の右手を強く握り締めれば花月は鳥の手を引き、部屋を出て行く。

























ドン!ドンッ!

花月に手を引かれながら廊下を走る鳥。廊下奥にあるエレベーターを目指して、互いにMADへ攻撃をしながら走る。


キィ…、

「だ、助げ…ぐあ"あ"!」
「!」
開いた4002号室から現れたのはインド支部幹部の男2人。しかし、MADに首を噛まれた血塗れ状態。
「だ…ずげっ…、」


バリッ、バリッ

最期の言葉すら残させてはもらえず男2人はMADに頭を食べられてしまった。鳥は顔を青くしながらも、インド支部の男2人を食べたMADに両手を広げて、蝶の大群で攻撃。


ドサッ、

あっさり死んだMAD。
「寝込みを襲ったの?」
「油断していた俺達EMSが悪い。喧嘩を売ったのは俺達なんだから、もう来ないだろうなんて思って寝ずに、最後まで気を張っているべきだったんだよ」
「っ…」
花月は無線機を耳に装着する。しかし、ノイズしかしない。
「くそ!なのに何でこのホテルに居る人達の誰にも通信が繋がらないんだよ!」
「支部の人達は」
「誰とも繋がらない」
「ホテルに居るみんなはもしかしたら、もう…」
「くっ…、ふざけんな!」
「花月!?」
歯をギリッ、と鳴らして立ち止まると、花月は後ろを振り向く。何と、2人を追い掛けてくるMADの大群の前に立ったのだ。すると、魑魅を振り上げた花月の周りを金色の強い光が纏い、鳥ですら近寄れなくなる。
こんなにも目をつり上げた鬼の形相の弟を初めて見たから、鳥も呆然としてしまう。
「小鳥遊流奥義…」
振り上げた刀の刃をMAD達に向けた。
「桜花!」


ドッ!!

「っ…!?」
刀を振り下ろしたと同時に金色の光と強風がMAD達に襲い掛かる。花月の後ろに居る鳥も、その強い風で立っていられるのがやっと。顔の前に腕を翳して何とか立っていられたが。
























「…?」
翳していた腕をそーっ、と鳥が放せば、花月の前に広がるMADの大群の亡骸。各部屋の扉も吹き飛ばされている。


ピチャ、ピチャ…

天井と壁に付着した真っ赤な血が滴る音しか聞こえない。
「花月…」


ズッ…ズッ…、

それも束の間。奥の階段からまた足音たてて大群のMADがやって来た。キリがない。
「花月、キリがないよ。とりあえず此処を出よう。風希ちゃん達の事も心配」
しかし花月には鳥の声など届いておらず、構えた返り血塗れの魑魅を振り上げれば、新手のMADへ容赦なく攻撃。


ドッ!

金色の光と共に刀を振り下ろせば、また強風が吹く。鳥の事を忘れてしまったかのようにMADの大群の中へ自ら飛び込む。無慈悲なまでに次々と斬り刻んでいく花月の顔や髪やコートに飛び散る真っ赤な返り血。
「花月っ…」
彼らしかぬ姿を目の当たりにして呆然としている鳥の足元に緑色の液体が溜り、それはじわじわと人の形に変形する。

























「きゃあああ!」
「…ハッ!」
鳥の悲鳴で我に返った花月が咄嗟に振り向けば、いつの間にか離れてしまっていた鳥が向こうで、天井に頭がつく程巨大な1体のMADに首を掴まれ捕らえられているではないか。必死に手から紫色の蝶を繰り出す鳥だが…


グシャッ!

「何で!?」
蝶達を片手で握り潰してしまう巨大MAD。鳥の攻撃が効かないのだ。足をジタバタさせ、巨大MADを蹴る。
「放せ!放せ!」
「ニホンシブ…タカナシチョウ…」
「…?!あたしの名前知ってるの」
巨大MADはヘリウムガスを吸った男性のような低い声で片言で喋り出す。
「ナゼ…キヅイテクレヌノダ…」
「え?何。あたし、君の事知らない」
「クルシイ…クルシイ…ワタシガワタシデナクナル…クルシイ…!」
「な、何。君、何言ってるの」
すると、鳥を捕らえている左手とは反対の空いている右手を鳥の顔の前に差出し、手を開く。
「…?」
MADの手の平の中にはキラリ、オレンジ色に光る1枚のバッジ。
「そのバッジ…まさか、君…!」
「キヅ…イ…クレ…タ、カ…ワタシハ…MADデハナイ…ワタ、シハ…インドシブ…シブ…チョ…ウ…リン…ムヘンダ、ラール…」


スパン!

「!?」
「お鳥ちゃん!」
「ギャアアアア!!」
突然巨大MADが頭から真っ二つに割れ、体内から噴き出す真っ赤な血の雨。
MADの手から放れた鳥が落下してくるが、今MADを真っ二つに斬った花月がキャッチ。しかし鳥は巨大MADの方ばかり見ている。見開いた目を泳がせ、顔を真っ青にして。
「お鳥ちゃん大丈夫だった?怪我してない!?」
「そんな…嘘…」
「ど、どうしたの」
「花月…この人MADじゃない」
「な、何言ってんの。MADだよ何処からどう見ても!」
「違う…この人言ってた。苦しい苦しい、私が私でなくなる、気付いて、って。私はインド支部支部長リン・ムヘンダラールだ、って!」
「ムヘンダラール支部長!?そんなはずないだろ!だって上級MADは人間そっくりの姿に化けられるって言うけど、外見を化けたって結局本体はMADじゃんか!」
「違う。そうじゃない。ムヘンダラール支部長はMADにされたんだよ!」
「MADにされる?!意味分かんないじゃんか!いくら何でもそんなアニメみたいな事をMADができるわけないじゃんか!」
「今まではそうだったけどMADだって進化してる。だから人間をMADにできるそういうMADが現れてもおかしくない。だって、此処に居るMADみんな、血の色があたし達と同じ赤なのが何よりの証拠だよ」
辺りに転がるMADの亡骸から流れる真っ赤な血を見る2人。
「そんな事…」
「ほら、これ」
「…?」
落ちていたオレンジ色のバッジを花月に差し出す鳥。
「これは…!インド支部のバッジ…!」
「このMADがあたしに見せた。だからこのMADはきっと正真正銘ムヘンダラール支部長なんだよ」
「そんな…!」


ドクドク…

体は死んだのに、血は止まる事を知らぬかのようにまだ流れ続けている巨大MADの遺体を見て呆然。顔真っ青の花月。





















「そんな…じゃあ俺が今殺したMADはムヘンダラール支部長で…此処に居るMAD達も元は人間だったって言うのか…」
「分かんない。でも、そう考えられる」
「そんな…じゃあ俺は…」
ガタガタ震え出す花月の異変に気付いた鳥はハッ!とする。返り血塗れの刀を持った花月の右手が震えていたから、両手でぎゅっ、と握り締める。
「ごめん。そういう意味で言ったんじゃない。花月は悪くない。花月は何も悪くないよ」
「っ…」
「花月…?か…、…!!」


ドッ!!

「っあ"あ"あ"!!」
「花月!!」
上がる花月の悲鳴。理由は、背後から音も無く現れた1体のMADに背中を長い爪で切り裂かれたから。背中から噴き上がる花月の血に、鳥は目を見開く。
「花月!!」
「っぐ…、くそっ!!」
顔を青くしながらも、振り向き様に刀をMAD目がけ振り下ろす。
「ギャアアアア!!」
やはりいつものMADより今日のMADは数が多いだけでとても弱い。あっさり死んだMAD。


ガクッ…、

「花月!」
「う"っ…ぐっ…」
背中の傷の痛みにガクッと膝を着いてしまう花月。しかし歯を食い縛ると立ち上がり、鳥の小さい右手を握り締める。
「か、花月…?」
そのまま鳥の手を引き、エレベーターへ乗り込む。
「ア"ア"…ア"…」
「きゃあ!?」
エレベーターの扉を閉めようとした時。4002号室からのっそり現れたMADが鳥の右脚を掴み、引き摺り降ろそうとしてきた。振り上げた魑魅から放たれる眩しい程の金色の光と同じ色をした花月の目がつり上がる。
「お鳥ちゃんに触れるな!!」


スパン!

「ぐあアアア!」


ガタン!

思い切りMADを斬りつけてMADの手が鳥から放れて直後、エレベーターの扉が閉じた。























エレベーターが下がる機械音と、花月の荒い息遣いだけが聞こえる。
「っはぁ…はぁ…」
「花月ごめん…あたしが気を反らしたせいで花月が怪我した…」
「はぁ…はぁ…」
「花月…?痛い?どうしよう。月見ちゃんじゃなきゃ治せない。どうしよう…」


ガシッ、

「花月…?」
下を向き呼吸の荒い花月は、鳥の右手を強く握り締める。
「っはぁ…はぁ…っ、お鳥ちゃんは小さい頃から今日まで、グズな俺の事を守ってくれた…」
「え?」
ゆっくり顔を上げて、青い顔をしつつも微笑んだ。
「だから今度は俺がお鳥ちゃんを守る」
「…!」
鳥は目をうるうるさせると、花月の左手を自分の両手でぎゅっ…!と握り締めた。
「弱虫支部長に守られるような柔じゃないの、あたしは!」
潤んだ瞳で笑みながら言う鳥に、花月は笑った。しかし顔が青い。背中に負った傷のせいだろう。
鳥は自分が着ているバスローブの裾を破くと、花月の背中の傷に巻き付ける。
「お鳥ちゃん…」
「月見ちゃんに早く会って治してもらうまでもう少しだから我慢して」
「うん。ありが、」


ガタン!!

「何!?」
エレベーターが大きく揺れ、顔を上げる2人。


プツン!

「明かりが消えた?!」
「嘘!?停電?!」
エレベーター内の灯りが消えて、エレベーターも止まってしまった。
ドンドン!扉を中から叩く鳥。
「何!これもMADの仕業なの!?」
「美シイ地球ニ似合ワナイ愚カナ地球人…」
「何で電気まで止まるの!意味分かんない!」
「お鳥ちゃん、静かに…!」
「してらんない!あーもう!何で電気が止まるの!」
「美シイ地球ニ似合ワナイ愚カナ地球人…」
――何だ…?何処かから微かに声が聞こえる…!――
カッとなっている鳥には聞こえないようだが、何処からともなく聞こえるお経を唱えるような奇妙な低い声に、エレベーター内をキョロキョロする花月。しかし、自分達以外誰もいない。
「美シイ地球ニ似合ワナイ愚カナ地球人…」
2人は気付いていなかった。エレベーターの天井に、以前会った赤髪のMADマジョルカがへばりついていた事に。
「美シイ地球ニ似合ワナイ愚カナ地球人…。ヤット見ツケタヨ…小鳥遊花月…」


ギョロッ。

2人は気付いていなかった。長い髪に隠れた鳥の首筋に、一つの真っ赤な目玉が浮き上がっている事に。























to be continued...




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