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終焉のアリア【完結】
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その頃。
同人誌即売会場
EMSビッグドーム――――

「最後尾はこちらとなっております」
長蛇の列のビッグドーム周辺。白い帽子に白のワイシャツと赤のネクタイにジーンズ姿、そして眼鏡をかけて重たそうなリュックを担いで下を向き、1人でトボトボ歩いているのは花月。特徴的な髪を帽子の中へ潜して帽子はできるだけ目深にかぶり、花月だと気付かれないよう一応変装している。
ズボンのポケットから携帯電話を取り出して開けば、鳥からの着信履歴は今日だけで20件。
『今どこにいるの。仲直りしよう』
同じ内容のメールは13件。


パタン…、

携帯電話を閉じた。



















「も、もしかして峠下氏でありますか?!」
「え?」
背後からした声に振り向くと其処には、細身で頭にバンダナを巻いた長髪で深緑色のチェックのシャツを着た眼鏡の少年。その隣には短髪で丸眼鏡をかけ、着ているオレンジ色のTシャツに描いてあるアニメキャラの少女の顔が幅広になっているくらい太めの少年。
初めて見る2人。しかしそんな2人に出会った途端、さっきまで浮かない顔をしていた花月の顔がみるみると笑顔になり、目をキラキラ輝かせ…
「ryo.氏とタクロー氏!?」
「そお〜です!!」
「やっぱり峠下氏でありましたですね!!」
3人はハイタッチをし、目をキラキラ輝かせる。彼らはネットで出会ったリリアたん好きの少年3人。会うのは今日が初めて。
「白い帽子に白いシャツ赤のネクタイで眼鏡をかけて行く、と峠下氏のメールに書いてあったのでもしやと思えば!!」
「いやぁ〜失礼ながら、峠下氏も我々と同じようなどこからどう見てもいかにもなオタク風貌かと思いましたが、顔だけを拝見するとなかなかの男前でリア充っぽいですな〜」
「そ、そんな事ないですよ…」
まじまじ見てくるタクローにビクッ!とした花月は帽子を目深にかぶり、顔を逸らす。自分の素性がバレないように。
















「ところで峠下氏。お早いお着きでしたな!」
「え、あ…やっぱり学校サボっちゃいました、ははは…」
「うおおお!さすが峠下氏!それだけ今日のイベに力を入れているという事ですね!さすがはリリアたん同人誌同人作家人気No.1のネ申です!!」
「いや、別にそんなんじゃ…」
「そんな勇敢な峠下氏にはメールでお話していた例のアレをお渡ししましょう!」


キラン!

眼鏡を光らせryo.がボロボロのリュックから取り出したものは…
「うおおお…!これはリリアたんフィギュアシークレット制服バージョンじゃないですかあああ!!」
「ふははは!我々親衛隊の中で箱買いをしてもシークレットが出なかったのは峠下氏だけでしたからね!先日、リリアたんスク水バージョン欲しさにまた箱買いしましたらダブったので。峠下氏!友好の証に貰って下さい!!」
1体のフィギュアを両手に乗せて花月に跪くryo.。フィギュアから放たれるキラキラ神々しいオーラに負けそうになりながらも(※3人にしか見えないオーラ)両手をプルプル震わせながらフィギュアを受け取る花月。
「ここここれが、リリアたんシークレット制服バージョンッッ!!」
ryo.は花月に耳打ちする。
「因みに。完成度の高いローズ社のフィギュアというだけあって、スカートの中もこだわってあるのですよ!」
「え」
3人は人混みに背を向けると、そーっとフィギュアを逆さにしてスカートの中を覗く。
「し、白パンツ…!ktkr…!!…って、うわああああ!ごごごめんなさいリリアたん!魔がさしたとはいえ、俺は清純なリリアたんの何てものを見てしまったんだああorz」
頭を抱え蹲り罪悪感に駆られながら叫ぶ花月に、列に並んでいた人々が白い目を向けていたのは言うまでもない。
「じゃあ全員合流したところでそろそろ並びますかな!」
「はい!そうですね!」
生き生きした3人は長蛇の列の最後尾についてからもリリアたんについて目を輝かせ、熱く熱く、異常なくらい熱く語るのだった。















「ふぅん。支部長様のもう1つの顔は、思春期真っ只中普通の高校生…ってところかい」
昨晩、少年5人に指示を出していた赤い髪の女が木の陰から花月を見つめて歯茎が見えるくらい、ニィッ…と笑んでいた。

































12時00分――――

「うおおお!この凄まじい熱気…!さすが今秋最大のイベントというだけあって皆さんの気合いも凄まじいですな!」
ryo.とタクローは自前のタオル(しかもどこかの温泉宿の名前入り)で、噴き出す汗を拭う。
イベント会場の中は、これだけの人間がどこから集まってきたのかと目を疑う程の、人、人、人。
同人誌を売る者、スケッチブックにイラストを描いてあげる者、同人CDを売る者、自分の好きなキャラクターのコスチュームを身にまとったコスプレイヤー等々。とにかく皆が生き生きしている。
「あれはリリアたんコス!うおお…!めちゃくちゃ可愛いし細いレイヤーさんですな峠下氏!」
「はい!かなりの美人ですねタクロー氏!」
「うおおお!その絵柄!もしや貴女様は戦隊少女の女ネ申絵師と呼ばれているあ〜にゃ様ですか?!」
「は、はい!そうです!恐れ入りますっ!」
眼鏡をかけて真っ黒な髪でとても真面目そうな少女に歓喜するryo.。
「いやあ、私実はあ〜にゃ様の大ファンでして!別ジャンル時代から応援しております!」
「ほ、本当ですか?わあ〜嬉しいな。ありがとうございます!」
「女性で戦隊少女をお描きになられる方は珍しいですから!も、もし良ければスケブお願いしても宜しいですか?」
「はい!」
笑顔で応じペンを取り、慣れた手付きでサラサラと描いていく少女にryo.が顔を薄ら赤らめているから、タクローが肩を叩いてからかう。
「ryo.氏〜ダメじゃないですか〜リア充みたいに一目惚れするなんて〜!」
「ななな、何を言っているんですかタクロー氏!私にはリリアたんという女ネ申がいるのですよ!!」
「はいはい、そういう事にしておきますかな。そういえばあ〜にゃ氏はサイトのプロフで、峠下晃氏のファンと書いてありましたな」
「はいっ!私、峠下さんのイラストをpiclubで見てから私も同人誌を描き始めたんです!」
「ほうほう」
「峠下さんのイラストってお上手でとても可愛らしい絵柄で漫画の内容もほのぼのしていて可愛いんですよね。戦隊少女の同人誌って基本、ストーリー性の無い18禁ばかりじゃないですか。でも峠下さんの同人誌はほんわかしていて、とにかくリリアが可愛いんですよね♪絵柄も可愛いし、もしかしたら女性の方なのかなーと思っているのですが」
「ふふふ…あ〜にゃ氏」
「はい?」
ヒソヒソ。口に手を添えて話すタクロー。
「実はこの白い帽子の方こそ峠下晃氏なのですぞ!」
「えええ!?本当ですか!」
「ちょ、おまっ…!何勝手に喋っているんですかタクロー氏!!」
「わわわわどうしよう!すごく嬉しいです!!あのっ峠下さん!」
「は、はいっ!」
「いつもサイトを見ています!勇気が出せなくてBBSにカキコできないのですけれど、サイト更新と新刊楽しみにしてます!!」
手を差し出され、顔を真っ赤にしてオロオロしている花月の右手をryo.が勝手に掴み、勝手に少女と握手をさせる。
「ちょ、わっ?!ryo.氏まで何やってんですか!」
「はわわ〜〜感激ですっ。ありがとうございます!」
「え?!あ、えっと…チ、チラ裏な漫画もうpしているサイトですが、こ、こちらこそありがとうございます!」





















「いやあ〜はっはっは!大人買いしましたな〜!」
3人共両手に紙袋六つの大荷物。リュックからはみ出したポスタ15本。大量買いした様子が見受けられる。会場のエントランスホールへ行きソファーに腰掛け、隣の自販機で缶ジュースを買って一休憩する3人。
「それにしても近年同人誌も腐女子率が高くなってきましたな〜」
「我々男オタが発端だったというのに、今じゃ腐女子率の増加に伴い我々男オタはイベント内でキモオタの眼差しを向けられて息が詰まりますねぇ〜」
グビグビ喉を鳴らし一気に炭酸飲料を飲み干す2人の傍ら、花月は先程からずっと浮かない顔をして携帯電話の画面ばかりを見つめているから…
「どうしました峠下氏?」
「わっ!お、驚かさないで下さいよryo.氏…」
肩に腕を組んでニヤニヤして声を掛けるryo.。花月はすぐに携帯電話を閉じる。
「ケータイばかり見て。まさか峠下氏〜三次元に彼女がいますな?!」
「い、いませんよそんなの…。リリアたん一筋ですし第一、三次元なんて興味ありません」
「さすが峠下氏!」
ぐっ!親指をたてて突き出すryo.に、花月も同じく返す。そんな花月の左手の中で携帯電話のバイブが引っきりなしに振動していたが無視してそのまま、ズボンのポケットの中へしまうのだった。
















「そういえばタクロー氏、峠下氏聞いて下さいよ〜」
「何ですかryo.氏」
「リアルの愚痴を言うのもアレなんですけど、なにぶんONで友人がいないんで…愚痴ってもおk?」
「おk」
「はぁぁ…私の父親がEMS日本支部で働いているのですが…」


ビクッ!

過剰反応する花月。しかし2人はその事に全く気付いていなかったが。
「そこの支部長がものっっそ生意気で鬼畜で、そのせいで父親が仕事を辞めようかなんて呟いていたのですよ!」
「え!?支部長って、雑誌でよく取り上げられているイケメン支部長と言われているあのすかしたリア充の事ですな?!」
「さすがタクロー氏!情報通ですね!何でも我々と同じ16歳らしいのですが、部下に鬼畜で続々と退職する人が多いらしく…。はぁ…この就職難の不況を自ら就職難にするなんてとんだDQNですよ!!」
「MADのような奴ですな!」
「もしもそのDQN支部長のせいで父親が退職したら私、そのDQN支部長のすかした面にドガーン!と少竜拳食らわせてフルボッコにしてやりますよ!」
「おおお!さすがryo.氏!親思いの息子をもって父上はさぞ幸せでしょうな!」
立ち上がりパンチをする仕草を見せるryo.に、タクローは拍手する。
「む?峠下氏。先程から下を向いてばかりでおとなしいですが、どうかしましたか?」
「え?あ…あはは…ちょっと人混みに酔っちゃったみたいで…」
「いけませんな!リリアたん親衛隊からしたらこれしきの人混み、どうって事ありませんぞ!峠下氏は来月の戦隊少女オンリーイベまでに体力をつけてきて下され!」
「そ、そうですね…」














カラン、
空缶をゴミ箱に入れ、腕を伸ばして立ち上がるryo.。
「さ〜て。中へ戻りますか〜!」
「うっわ。マジでキモオタばっかじゃん。キッモ!」
「!!」
聞き覚えある忘れたいのに忘れられない声が入口から聞こえて、花月はビクッとする。恐る恐る顔を上げれば…
「デブにメガネにシャツイン!ギャハハ!オタクってマジで生息してんだなァ」
フラッシュバックする中学時代。そして昨晩の一件。そう、やって来たのは、花月をいじめていた派手な少年5人。彼らとは到底縁の無いこの場所に来ていたのだ。
――何で此処にあいつらが…!――
「何ですかあのギャル男共は!」
「困りますなぁ。最近はああいうにわかオタクや騒がしいギャルやギャル男まで我々の聖域に来るようになってきて」
「r,ryo.氏、タクロー氏!は、早く中へ戻りましょう!」
「え?」
「わ、ちょ、峠下氏!リュックを引っ張らないで下さい!中でリリアたんフィギュアが泣いています!」
「峠下氏は休憩なんていらない!といった様子ですな〜」
2人のリュックを掴んで連れて、会場内へ逃げるように戻っていくのだった。

























13時00分―――――

「皆さーん!本日は予定通り戦隊少女の声優さんがいらしております!」
正面ステージで司会をする女性に皆が歓喜の声を上げる中、花月だけはあの少年5人の事そしてryo.とタクローが話していた"支部長花月"の事が気になって心此処に在らず。


ドクン、ドクン…

顔を真っ青にしていた。
「ではご登場してもらいましょう!戦隊少女主人公ミオ役の声優、真渡セイカさんです!」
「うおおお!」
「ミオたん!!」
「セイカ嬢〜!!」
「リリアたんの声優さんではなくて少々残念ですが。いやはや、声優さんは美女ばかりですなぁ。峠下氏」
「……」
「峠下氏?」



















「では真渡さん。一度席にご着席下さ、」


ドガッ!!

「きゃあああ!」
「!?」
後方から何かが倒れた大きな音がして皆が一斉に後ろを向く。
「…!」


ドクン、

花月は目を見開いた。
「お〜お〜。男も女もきめぇ絵描いて売ってんぜ?」
「何これ?男同士がイチャイチャしてる漫画?マジキモ!」
「こっちのキモ男は女のパンツ描いてるけど!」
「うっわ。ないわー!」
同人誌や同士CDを並べたテーブルを次々と馬鹿にして大笑いしながら蹴り倒していく例の少年5人。司会の女性、声優、そしてこの場に居る皆が口を閉ざし、顔を青ざめさせて会場内は凍り付く。
一方の花月は、下を向いてガタガタ震えていた。人混みに隠れながら。あいつらに見つからないように。
「あ、あれはさっきのギャル男共…」
「何ですかあいつらは…」
「君達、やめなさい!」
「あ?うっせーよ。邪魔だよおっさん!」


ドガッ!


ガタンガタン!

「きゃああ!」
駆け付けた警備員を蹴れば、テーブルにぶつかった警備員。その後ろに居た少女2人も巻き添え。
「ギャハハ!ざまぁ!」
「おーい!この中に居るんだろ?今日こそてめぇをとっ捕まえる為にわざわざこんなキモい場所まで来てやったんだぜ。出てこいよ、イケメン支部長小鳥遊花月ィ!!」
「…!!」


ドクン…!


ザワッ…

「え?嘘、今何て言った?」
「小鳥遊…?」
「あのリア充支部長がこんな所に居るわけないですよ…!」
「でも今あいつら、確かにそう言って…」
少年の一言に一斉に騒めき出す会場内。花月は震えの増す自分の体を、自分の両腕で強く抱き締める。その異変に気付いたryo.。
「だ、大丈夫ですか峠下氏…?やはり人混みに酔って体調が悪化しましたか?」
「…っ、」
「峠下氏…?」





















「んだよ。出てこねぇのかよ。はっ!相変わらずビビりだなァ。じゃあ片っ端から探して、」


ドンッ!!

「!?」
「きゃあああ!」
少年らの背後の出入口から何かが突っ込んできて会場内に煙が立ち込め、ビー!ビー!と警報が鳴り響く。煙が晴れた其処には…
「MAD…!!」
赤い髪を生やした緑色の奇妙な生物MAD。しかも、コンサート会場としても使われるこの広く大きい会場の天井スレスレの背丈の巨大MAD。
日本領域内は特に厳戒体制を強いている為、MADに侵入された事は片手で数えられる程度だった。その為、本物を見た事のある日本人は皆無に等しい。だから、MADの姿は知っていても今初めてMADを目の当たりにした皆は悲鳴を上げるとかそれよりも、ただ呆然。何が起きたのか分かっていない。
――何でMADが…!?風希姉さんに気付かれず侵入した!?そんな事があるはずないのに…!――
一方、真後ろに現れた巨大MADに少年5人の顔も青ざめる。
「な…何だよこの化物…」
「君達ありがとね。お陰で小鳥遊花月に会えるよ」
「…!その声…有村さんか!?」
少年5人に報酬を与えていた赤髪の彼女の声に、5人が声を揃える。
「そうだよ。大正解」
「て、てめぇMADだったのか!騙しやがったな!」
「騙す?人聞きの悪い坊や達だねぇ。お金は与えていただろう。じゃあ坊や達に最後の仕事を与えようか」
「最後の仕事…?つーか報酬があったって、てめぇみてぇな奴の指示なんて聞くかよ!化け物!」
「最後の大仕事は。この大人数の地球人の中から小鳥遊花月を見付け出せる大仕事だよ」
「話聞けよ化け物!」
「じゃあ頼むよ。最後の大仕事よろしくね、坊や達」


グサッ…、

「え、」
MADは何と、少年5人の腹を右手の5本の指の爪でぐっさり刺す。何が起きたのか分からない少年5人は目を丸め、吐血。そして…


バリッ、バリッ…

音をたてて少年5人を食べてしまった。
「キャアアア!」
「うわあああ!」
「化け物だあああ!!」
皆が一斉にステージ後方の非常口へと駆け出すから、将棋倒し。自分の足元で倒れる人がいても、それでも自分が一番大事だから皆我先に、人を踏み付けて非常口へと逃げる、逃げる。


















「うふふ…やっぱり醜いねぇ地球人。シルヴェルトリフェミア様が仰っていた通り、この青く美しい地球(ほし)にあんた達は似合わないよ。さて…と。さっきの坊や達の容姿は中の下。あたいは美しい地球人しか食べたくないの。だから早く出てきてちょうだい小鳥遊花月!」
「キャアアア!」
「わああああ!」
逃げ遅れた人々の背を見境なく両手の爪で次々と刺し、バクバクと丸呑みしていくMAD。司会者と声優はスタッフに連れられ逃げていく。
「な、な、何ですかあのサプライズ!聞いていませんよ化物ショーがあるなんて!」
「に、逃げますぞryo.氏!峠下氏!」
しかし花月だけ2人に背を向けて全く逃げようとしないから、顔を真っ青にした2人が慌てて呼び掛ける。
「峠下氏?!何をやっているんですか峠下氏!これは二次元の話じゃないんです現実なんです!殺されますぞ!峠下氏!!」
「……」
「峠下氏?!」
黙ってリュックと購入物が入った紙袋をタクローに渡すと、花月は人々の流れに逆らって歩いていく。つまり、MADの方へと自ら歩んでいくのだ。そんな彼にタクローが呆然としていると…
「タクロー氏!峠下氏は放っておいて逃げましょう!」


パシン!

肩を掴んできたryo.の手を払うタクロー。
「タクロー氏!?」
「ryo.氏はそれでも同志ですか!!」
「…!」
「今まで顔も知らなかった今日会ったばかりで本名も素性も知らない相手…ですが、我々は同志でしょう!友でしょう!!私は峠下氏を於いてなんて逃げれませんぞ!逃げたいならryo.氏お1人で逃げて下さい!」
「タ、タクロー氏…!」
タクローもまた、人々の流れに逆らって行ってしまった。ryo.は何か言いたそうに口を開いたまま2人に背を向け、非常口へと流れに沿って行った。




















「あたいはもう30人も食べちゃったわよ?早く出てきな、小鳥遊花月!」


バキッ!!

「?」
転がっていたテーブルの脚を壊した1人の少年に気付き、足元に視線を下げるMAD。壊したテーブルの黒いパイプの脚を片手に、MADの前へ姿を現した少年が眼鏡をとり帽子を脱ぎ捨てると黒い髪がなびく。すると、たちまちMADは歓喜。
「ようやく出会えたね、小鳥遊花月!!」
MADの前に立った花月は眉間に皺を寄せ、睨み付けている。
一方のMADは爪に刺していた1人の警備員を丸呑み。右手を頬に添え、左手を花月へ差し出す。
「嗚呼…やっと会えたよ小鳥遊花月!あたい、あんたに会う為に日本までやって来たんだよ!あたいは美しいモノしか欲さない。だから、美しいあんたをあたいのモノにしたくてやって来たんだ。ねぇ、小鳥遊花月はどの女の顔が好きだい?」
「…!?」
何と、MADの顔が次々と地球人の女性の顔に切り替わっていくではないか。花月は目を見開く。
「うふふ。驚いているようだね。あたいは上級者だから食べた地球人の姿に化けられるんだよ。だから顔を化けるのなんて朝飯前。あたいより美しいのはしゃくだけど…小鳥遊花月。あんたの好みの女の姿に化けてあげるよ。だからあたいのモノになっておくれ。たっぷり遊んで最期に味わって食べてあげるから。ねぇ?」


ボトッ、

「え?」
差し出していたMADの左手が真っ二つに斬れる。大きな左手が地面に落ち、切口からは緑色の血が噴水のように噴き上がる。
「ギャアアアア!痛い!痛い!痛い!」
パイプにも関わらず刀のようにMADの左手首を斬り落とした花月に、たった今まで熱烈ラブコールを送っていたMADの態度は一変。



















「なっ…何て事してくれたんだいこのっDV男!!美しいあたいの手を!…どうせ最期は食べるんだ。後も今も、結局胃袋に入ってしまえば同じだね。シルヴェルトリフェミア様には日本の厳戒体制を崩す為なら小鳥遊花月をどうしたっていい。とにかく日本の厳戒体制を崩し、あたい達が侵攻できるようにしてくれって言われているんだ。残念だねぇ…こんなに生意気なDV男じゃなければ可愛がってあげたのに。おとなしくあたいと1つになりな小鳥遊花月!!」


ドゴォッ!!

MADが花月目がけ拳を振れば、会場内の壁が壊れ天井からコンクリート片が崩れ落ちてくる。戦いの大きな音に気をとられながらも逃げていく人々。
一方のタクロー。
「なっ…?そんな…まさか…峠下氏が支部長小鳥遊花月…!?」

『もしもそのDQN支部長のせいで父親が退職したら私、そのDQN支部長のすかした面にドガーン!と少竜拳食らわしてフルボッコにしてやりますよ!』

ryo.の言葉を思い出すタクロー。だが、ぐっと拳を握り締めたタクローは花月の元へ1人で駆けて行く。
























ドンッ!ガンッ!


「くっ…!パイプ1本でここまでやるなんて、褒めてあげるよ地球人!」
MADとの交戦は花月が有利。巨大過ぎるが故に攻撃を回避できないMADは苦戦。そんな時…
「ととと、峠下氏!助けに来ましたぞっ!!」
「なっ…?!タクロー氏!?」
何て事だ。ガタガタ震え今にも足が竦んでしまいそうなタクローが現れ、気をとられてしまった花月。
「うふ。頂くわ、小鳥遊花月」
「…!」


ドンッ!!

「峠下氏!!」
壁から大きな煙が噴き、両腕を顔の前にかざして爆風を防いでいたタクローが駆け寄れば、MADの右手に掴まれたまま壁にめり込んで口や頭から血を流している花月が居た。
「と、峠下氏…!」


ズルッ…、

そのまま地へ落ちた花月。
一方のMADはタクローの方を向く。


ビクッ!

恐怖に思わず膝から崩れ落ちてしまったタクロー。
「あ…ああ…ああ…」
「何だい、この汚らしい豚は!はんっ!お前は邪魔だよ。食いたくもないみすぼらしい豚だね」
右手の平をタクローにかざし、振り上げる。タクローの眼鏡に映るMAD。タクローは目を瞑り、死を覚悟した。
――終わりだ…!――


パァン!

「なっ…、峠下氏…!」
「さすがだね小鳥遊花月。あたいが惚れただけの事はある男だ!」
パイプも武器も何も無いまま、ただタクローを庇いたいが為に策も無しにタクローの前へ駆け出してMADの巨大な手の平に弾き飛ばされた花月。


















反対側の壁まで弾き飛ばされた彼の元へ、床を張って行くタクロー。
「と、峠下氏…峠下氏…!」
「何もできない愚かな地球人のお前がしゃしゃり出るからだよ。そんな事も分からないのかい?本っ当、低能種族だねぇ地球人ってのは」


ゾッ…!

背後すぐ其処で聞こえるMADの声にガタガタ震える体。その初めて味わう死への恐怖に意識まで吹き飛びそうになるタクロー。
「っ…ぐっ…、んなの…そんなの分かってた…でも…でももしかしたら…アニメみたいに俺だって…友達を助けられるかもしれないって…奇跡が起きるかもしれないって…でも…俺のせいで峠下氏が…」
「はあ?何を1人でブツブツ喋っているんだい。気持ち悪い子だね。食べる気にもならないお前をどうしようかねぇ。そうだ。原型を留めなくなるくらい八つ裂きにしてやろうか」
ギラリ。右手の赤い爪を光らせたMADがタクローの背目がけ、腕を振り下ろす。


ガンッ!

「…?何だい今度は」
今まさに振り下ろすはずのMADの右腕に、あちこちに転がっていたテーブルが命中して邪魔をした。しかしそんな攻撃、巨大なMADにしてみれば刺が刺さったような痛みにも入らない痛み。
「r,ryo.氏、何故!?」
叫んだタクローの視線の先には、呼吸の荒いryo.が戻ってきていた。今、MADにテーブルを投げたのも彼だ。
「ryo.氏貴方は峠下氏…いや、支部長の事を憎んでいたではないですか!」
「だからですよ!」
「え…」
「だから…はぁ、はぁ…私の父親や多くの部下に謝罪をさせる前にあのDQN支部長に死なれては困るから来たのですよ!!」
「…!ryo.氏…!」
キラキラした友情に、MADはつまらなそうに頭を掻く。
「はんっ。そういうの好きだねぇ地球人ってのは。グズが何人集まったところで天才にはなれやしないクセにね!!」


ドン!!

拳を振り下ろせば床に穴が空く。
「チッ。動きだけはすばしっこいようだね」
何とか2人で花月を抱えてMADの攻撃をかわしたが顔が真っ青で息が上がっている2人。
「はぁっ…はぁ…、一体どうすれば良いのですかryo.氏!」
「そ、そんなの私に聞かないで下さいよ!始めに乗り込んだのはタクロー氏貴方でしょう!策があるから乗り込んだのではないのですか!」
「そんなものありませんぞ!ただ私は峠下氏を…友を置いてなどいけなかっただけです!」
「っ…、くそっ!このっリア充!は、早く目を覚ませ!支部長なら武器の1つや2つ持っていないのか!」
目を覚まさない花月の頬をバシバシと何度も叩くryo.の背後にMADが迫っている事に気付いたタクローが2人の服を掴んで引っ張る。
「ハッ…!ryo.氏!」
「え、」


ドゴォン!!

「ん〜?今ちょっと擦った感触がしたねぇ」
「ギャアアアア!!」
「r,ryo.氏!大丈夫ですかryo.氏!!」
回避しきれずryo.の左足が微かにMADの右手小指に触れてしまったようだ。それだけで左足が動かなくなり、顔は真っ青で悲鳴を上げるryo.。骨が折れてしまったようだ。

















「ryo.氏!ryo.氏!」
「アアアア!!痛い、痛いぃいい!!」
「アハハハ!こりゃあ良いものを見つけたねぇ!みすぼらしくて不細工な奴らなんて食べる価値が無いから存在している価値も無いと思って相手にしてこなかったけど。そうやって痛みに転げ回って無様に泣き叫ぶ姿、傑作だよ!良い遊びを見つけたもんだ!」


ドス!ドス!

「ギャアアアア!!」
「ryo.氏!!」
「アハハハ!何だい、その芋虫みたいな気持ち悪い転げ方!アハハハ!」
MADからしたら弱い力だが小指の爪先でryo.の腹をツンツン何度も突くだけで、痛みに叫び声を上げ転げ回るryo.。口端から血をボタボタ流す。
「アハハハ!じゃあとどめは首と腕と脚をゆっくりバラバラにしていってやろうかね!」
「小鳥遊流奥義…乱舞」


ズッ…、

「え?」
その時。何処からともなく現れた紫色の蝶の大群がMADの腹部へ静かに入っていく。すると…


ブシュウウウ!!

「ギャアアアア!な、何だいこいつらは!?グアアアア!!」
蝶達が全て腹の中へ入っていった直後、MADの腹から緑色の血が噴水のように勢い良く噴いたのだ。血が噴く腹を右手で押さえるが、血は止まる事を知らないかのように勢い良く噴き続ける。それは雨の如くタクロー達に降り注ぐから、タクローは呆然。
「ハッ!」
しかしすぐにryo.の元へ駆けると自分のリュックの中から絆創膏を取り出す。だが、赤黒く滲んだryo.のシャツ。腹部の傷に絆創膏など止血にもならない。意味が無い。





















「ど、どうしよう…そうだ!救急車を呼ぼう…!」
「その必要無い。救護ならもう呼んである」
「え?」
携帯電話を耳にあてていたタクローの背後から、聞いた事の無い少女の声がしてゆっくり振り向いた途端タクローは目を見開く。其処には、左側の長い髪を結んだ…
「か、髪の色とコスチュームこそ違えど、その髪型とその瞳の色…!もしや貴女は我らの女ネ申リリアたん!!?」


ドスッ!

「ぐえっ」
「違う」
タクローの背中を思い切り蹴り、きっぱり否定した少女は下駄を鳴らして花月の元へ歩み寄る。
まだ意識を失っている花月。
「学校サボるから罰があたったんだよ。バーカ」
少女鳥は、背中に担いできた刀魑魅を抜刀。初めて見る刀にタクローは口をパクパクさせ、驚愕。鳥は魑魅の先端を花月の左胸にかざす。
「起きなよ花月」
すると魑魅が眩しい程の金色の光を放つから、その光はたちまち会場一杯に広がる。


ピクッ…、

右手が微かに動くと花月はゆっくり目を開いた。彼のいつもは黄色の瞳が魑魅が放つ光と同じ金色に変わっていた。静かに起き上がり、鳥から無言で魑魅を受け取る。
鳥は下駄を鳴らして花月に歩み寄り背伸びをすると、頬から流れる真新しい血を指で拭き取ってやる。
「今度から何処行く時も帯刀していかなきゃ。分かった?」
「うん…ありがとうお鳥姉さん。ていうか、どうして此処にMADが現れるって分かったの」
「そんなの知らない」
「え?」
「ただ、花月を探しに此処に来たらたまたまた遭遇しただけ」
「……。じゃあ何で俺が此処に居るって…」
「それは…あたしが花月のお姉ちゃんだから」
「え?」
「そんな事より!あたしがでかいのの動き封じてる間に花月が殺って」
「分かった」
すぐ其処で血を噴き悲鳴を上げ続けているMADへ立ち向かう2人。






















「と、峠下氏!」
「…?」
呼ばれて振り向けば、ryo.の傍でガタガタ震えているタクローがこちらを見上げていた。
「峠下氏は本当は…小鳥遊支部長だったのですな…」
「……」
「峠下氏…!」
背を向け直し無言で去っていく花月の遠くなる背にタクローは下を向く。
「ryo.氏の父上や、日本支部の人々に過酷な指導をして苦しめていたのが峠下氏だったなんて…私には想像もつきませんぞ峠下氏…!」





















「あの子達、花月の友達?」
「だったよ」
「だった?何で」
花月の視線はMADに向いているのに、瞳は別のモノを映しているようだ。
「素性を知られたから。もう友達ではいてくれないよ」
刀魑魅を振り上げるとタンッ!と踏み込み、巨大なMADの脚をバネ代わりに使い飛び上がる。MADの顔面前まで飛び上がり、両手で構えた刀を思い切り振り上げる。魑魅から放たれた金色の光が、まるで黄金の花吹雪のように辺りに広がる。それに気付いたMADが咄嗟に顔を上げる。
「小鳥遊かづ、」


ドスッ!

「ギャアアアア!!」
頭の天辺から全身にかけ綺麗に真っ二つに斬り裂けば、ぱっくり2等分に割れたMADの体内から緑色の血が噴き出し、会場内を緑色に染め上げる。


ボタボタッ!

「キモい」
ボタボタと天から降り注ぐ雨の如く降ってくるドロリとして重たい緑色の血をかぶってしまい、手でそれを拭おうとしている鳥。だが生憎粘着質でとれずに困っていたら…


ポン、ポン

「終わったよ」
鳥の髪に付いたMADの血を背後から手で払ってあげながら花月が戻ってきた。なのに鳥は相変わらず不貞腐れた表情で振り向く。
「あたしが動き封じるって言った」
「あ。そうだった」
「あたしは用無しって言いたいの?ムカつく」
「そういう意味じゃないって。本気で忘れてたんだって」
「忘れるくらいあたしは戦力にならないんだね」
「だから〜!!」
「…!花月、後ろ!」
「え?…!?なっ…何だよあれ…!」


ドロッ…ズルッ…、

真っ二つに割れたMADの頭、脚、腹部、首が死んだはずなのに勝手に動いているのだ。動くバラバラの体を見て2人は顔を青くして呆然。


ズズッ…、

バラバラの体達が会場の外へ出ていったから、ハッ!とした花吹雪は魑魅を右手に持ち追い掛け、会場の外へ出て行く。
「待て!」
「花月!?」



















花月が外へ出ると…
「!!」
「ギャハハハ!刀ガ無ケレバ、タダノ坊ヤ…デモ刀ガアレバコンナニ強イナンテネ…。アタイハマダアンタニ興味ガ尽キナイヨ…マタ会オウネ、小鳥遊花月…ギャハハハ!」
外に出た途端バラバラの体が空へ浮き上がると、一瞬にして消えてしまった。
「な…何だったんだ今の…!死んでなかった…?逃げられたのか…?」
「はぁっ、はぁ…良かったです…はぁっ花月が無事で…!」
「月見姉さん!?」
会場へ駆けてきた月見を見付けた花月。月見の後ろには、EMS軍と書かれた日本支部の戦闘機六台。
「非番にも関わらずMAD撃退お疲れ様です小鳥遊支部長!」
「え?あ、はいっ!」


ビシッ!

戦闘機の中から出てきた軍人達に敬礼され、慌てて背筋を伸ばして敬礼を返す花月。
「花月。どなたかお怪我をされている方はいませんか?」
「怪我…あ!俺の…あ、いや、僕の友人が1人…!」




























「これでもう大丈夫ですよ」
「ありがとうございます月見姉さん」
広げた月見の両手から月に似た丸く黄色の光が現れると、その光がryo.の体を包み込んで数分後。みるみるとryo.の腹部の血が消え傷口が塞がり、何と、折れた左足の骨もくっついた。
「いえいえ〜!この程度のお怪我でしたらわたくしでも治せます。ですがこれ以上の怪我となりますと、わたくしの手には負えませんでした…うぅ〜それにしても外は眩しくて怖いです〜…」
「ん…」
「ryo.氏!!」
「りょーし??」
唸りながら目を覚ましたryo.を呼ぶ花月の呼び方に鳥はハテナを浮かべていた。
「ryo.氏〜!!ご無事で何よりですぞ〜!!」
「タクロー氏?あれ…私は…確か、あの化け物に…」
「ryo.氏の怪我が治せて良かったです…!」
「峠下…、!!」


バッ!

花月の顔を見た途端、血相変えて立ち上がり後ろへ下がったryo.に、花月は目線を下げる。
「きききき…貴様は日本支部支部長小鳥遊花月…!父親の仇…!」
「ryo.氏の父上はご健在でしょう…」
「タクロー氏は黙っていて下さい!確かに健在ではありますが、このDQN支部長のせいで父親はノイローゼになり、この不況の中退職を考えているのです!我が家の平和を奪おうとしている憎くき男なのですよこいつは!!」
「……」
「花月。この子のお父さんに何かしたの」
「俺はっ…」


ビシッ!

花月を指差すryo.。しかしその指は、ガタガタ震えている。
「ききき、貴様の顔など二度と見たくないっ!!そそそ、即刻立ち去れこのっ鬼畜め!!」
「お、落ち着いて下されryo.氏…!」
タクローが止めてもまるで聞かないryo.。
この光景に、月見と鳥はぽかん…としている。
「ごめんなさい…」
俯いたまま小さな声でそう謝罪すると花月は2人に背を向け、会場から出ていってしまうのだった。
「か、花月…!」
月見は2人にペコリ頭を下げると、すぐに花月を追い掛けて行った。



















「な、何ですか貴女は!」
一方の鳥はまだ2人の所に残ったまま。ジィッ…っとryo.の顔を見ている。
「ふぅん」
「なっ、何ですか!」
「君が何を言いたいのか分かった」
「な、何者なのですか貴女は!」
「あたしは小鳥遊鳥。花月のお姉ちゃん」
「…!なら貴女も同罪だ!」
「r,ryo.氏もうやめましょうよ…!峠下氏達は助けてくれたわけですし…」
「それとこれとは全くの別物!私は…私は絶対許しません!父親があいつのせいで仕事を辞める事になったら…!」
「辞めなければ花月の友達でいてくれる?」
「え…?」
鳥の意外な一言に2人はキョトン。
「そ、そりゃそう…ですが…」
「君のお父さんの名前は」
「え…?し、清水三郎…」
「ん。分かった。約束しよう」
小指を突き出す鳥の顔と小指を交互に見るryo.が戸惑っている間に…
「指きりげんまん。はい。指きった」
「どわああ?!か、勝手に何を!?」
「指きりげんまんした」
「私はしても良いとは言っておりません!!」
「じゃあね」
「んなっ…?!ま、待て!まだ他に言いたい事が!」


ピタッ。

背を向けた鳥は立ち止まり、顔だけを2人に向ける。
「君達は花月の初めての友達。だから、君のお父さんが仕事辞めなかったら指きりげんまんの約束守ってね」
「なっ…?」


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