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終焉のアリア【完結】
ページ:2
「避けろ雨岬!!」
「!?」


ガシャアアン!!

「ソラ!!鳳条院!!」
「よそ見してイイの〜?小さい軍人さん?」
「!!」


ドスン!!

反対側の窓から車内へ突っ込んできたMADが空達2人へ突っ込んでいった事に気をとられ、一瞬の隙を見せてしまったアリアは、対峙していたMADの拳の下敷きとなってしまった。























一方。
「鵺…?おい、鵺…返事くらいしろよ…このっ…ド田舎者…!」
突っ込んできたMADしかも車内にギリギリ入るくらい巨大なMADが突っ込んできた勢いで吹き飛ばされ尚且つ、空を庇った為、割れた車窓の外へ上半身が外へ投げ出された鵺。
空が慌てて引っ張り出せば鵺は頭から血を流し、息をしていない。それだけではない。一時ではあるが、上半身が外へ投げ出されていたのだ。しかも、走っている電車の外へ。だから、鵺の頭から上半身にかけた右側が緑色の血塗れだし、所々皮が捲れている。目を覆いたくなるような血の気の引く現実に空が気を失いそうになると、自分の前が陰る。
「!!」
「ギャハハハ!!そいつ死んダ!死んダ!!俺が殺る前に死んでやんノ!ギャハハハ!そいつ血塗れだから不味そウ!いらネ!ギャハハハ!!」
まだ言葉をあまり知らない子供のような言語を話すMADの言葉と笑い声にも動じず、ただただ鵺を抱えている空は俯き、黙ったまま。


カタン…、

鵺の下敷きになっている魍魎に手を触れる。鵺が刀を手放したからだろう。さっきまで抜かれていた魍魎は勝手に鞘の中へしまわれていた。

『いいか!?これは鳳条院家の人間しか抜けねぇ刀なんら!おめさんみてぇな余所もんは触る事すらできねぇ神聖な刀なんら!分かったけ!?このっ、すっとこどっこい!』

触れればまるで、魍魎が持ち主の声を空へ届けてくれたのかの如く鮮明に蘇り、空の脳裏に響く鵺の言葉。空は魍魎を右手に掴む。
「ギャハハハ!面白れェ!外って面白れェ!初めて出たけど外って面白ェ!地球人ってこんなに弱っちぃのカ!?つまんねェ!ギャハハハ!」
「友達になって数時間後に死ぬ友達なんて…今時お涙頂戴漫画にも出てこねぇよ…何やってんだよ…馬鹿野郎…」
「?何だ地球人お前。今何か言ったカ?」
ゆらり…立ち上がった空の呟きを、首を傾げて聞き返す巨大なMAD。空は先程の傷口から真っ赤な血を流し、黒い服と青のジーンズそして真っ白い髪を赤く染めながら俯き、ゆらりとMADの方を向く。
「ギャッ?何だ地球人お前も血塗れカ?血塗れの奴食っても美味くねぇからお前もいらネ!ギャハハハ!!……!!」


ザワッ……

突然殺気が漂い、その場が凍り付く感覚に襲われた巨大なMADが恐る恐る、空の方を向く。そこには、右手に持った刀魍魎を自分の顔の前で横に構え、鞘を左手で思い切り引っ張る空。静かな殺気が漂っている。























…が、しかし。鞘から刀がなかなか抜けない事に気付いたMADは、手を叩いて笑い出す。すると他のMAD達も同様に。
「ギャッ!ギャッ!何だあいつ!お前らも見てみろあの地球人のガキ!威勢良く構えたは良いが、刀が抜けねぇみたいだぞ?!」
「アハハハ!傑作傑作!坊や、無理しちゃダメダメ〜!無理は体に毒〜!あたし達にはかなわないのよ〜?」
「ヒュー!ヒュー!かっこいいぞ地球人のガキ〜!」
「かっこいー!あたい惚れちゃいそ、」


ザッ…、

「……!!」


ゴトン…、

茶化していた女と思われるMADの頭が足元にゴロリ転がれば凍り付くMAD達。ほんの一瞬。たった今、空の事を茶化していた女MADの頭が足元に落ちたのだ。
MAD達は、ソーッ…と顔を見合せ、空の方を向く。赤い血のように生々しい光が空を包み込んでいて彼の右手には、鞘から引き抜かれた魍魎が。刀の銀色の刃にべっとり付着したMADの緑色の血を汚いものを扱うように、壁で乱暴に拭う。
「…!!」
ゆっくり上がった空の顔。彼の両目が、MAD達の事を見下ろしている。まるで鬼…いや、悪魔…いやそれ以上の、何にも例える事のできない恐ろしく酷く冷酷な目をしていた。まるで別人のよう。
震え上がるMAD達は、さっきまでの威勢は何処。今は身を寄せ合い、ブルブル震えている。


スッ…、

空が魍魎の刃先をMAD達に向ければ、また震え上がるMAD達。
「殺された…」
「!?」
「殺されたんだ…あいつは…」
「え…な、なっ…?」
「殺されたんだよ、あいつは」
「な、何言ってんだこの地球人のガキ…?」
「また殺されたんだよあいつは!だから、あいつを殺した奴らを俺はもう逃がさねぇ!!ぜってぇぶっ殺す!!」
「なっ?!だから何、が、……!!」


ドッ!ドッ!!
ドンッ!!

真っ赤な光が電車内だけでなく、電車全体を包み込み爆発音のような大きな音が聞こえた。車内には灰色の煙がたちこめ、やがてそれらが晴れる。足元に転がっているのは刀で斬り刻まれたMAD達の頭や腕、足、胴体…体の部位がバラバラにされた状態で転がっていた。これらは全て、空が殺したモノ。魍魎を使って空が殺したモノ。


























「んっ…」
先程MADに押し潰されていたアリアは傷を負ってはいるが、目をゆっくり覚ます。ぼやける視界が捉えたもの。それは無惨にも斬り刻まれたMAD達の亡骸の中で1人佇んでいる空。
「良かったソラ!生きていたのか!」
まるで母親のような優しい目をし、負った大怪我の痛みさえも忘れる程、甥っ子が無事生きていた事に喜ぶアリアが彼の元へ駆け寄る。
「ソラ大丈夫か!すぐに本部へ行って手当て…を…」
アリアの言葉が詰まってしまった理由。それは、空が刀魍魎を右手に構えていたから。先程鵺が、"魍魎は鳳条院家の人間しか抜けない"と言っていた言葉を思い出したから、アリアはポカン…と口を開いたまま呆然としてしまう。
――どうしてソラがその刀を抜けるんだ…?――
ソラは自分の妹の息子でつまり自分の甥で、バロック帝国の皇子。それは紛れもない事実なのに、何故?


ガタン、ゴトン…

今の惨状を他人事のように、電車はただただ目的地へと走る。全壊の窓から海の潮風が車内に吹き抜ける。MAD達の亡骸の中で呆然と立ち尽くしていると…
「鵺が…」
「え…?」


ガシッ!

空は俯いたまま、アリアの細い両肩を掴むから、アリアが不思議そうに空の顔を見上げると、同時に顔を上げた空が酷く切なそうに顔を歪めていた。いつもクールで、弱い姿を見せた事の無かった甥のこんなにも哀しくて苦しそうな顔を見るのが初めてで、アリアは開いた口が塞がらない。
「鵺が…鵺が息、してねぇんだよ…!」
「…!」
悲痛な声でそう言われたアリアが空の足元へ視線を移せば。そこには、右側の上半身が血塗れで皮が捲れていて、目を覆いたくなるような…素人が見ただけでも分かる手遅れな大怪我を負った鵺が横たわっていた。
思わずアリアは言葉を失うのもお構い無しに、空はアリアの細い両肩を大きく揺さ振る。
「何とかしてくれよ!!俺じゃ何もできねぇ、だからあんたが…お願いだ!!何か方法はないのかよ!!」
「ま、待てソラ…あと10分もすればエムスに着く…」
「10分も待てって言うのかよ!待てるわけねぇだろ!鵺はとっくに死んでんだよ!だから、今何とかしないと…!!」
「ソ、ソラ…」
アリアから手を放すと鵺の前に膝を着き座り込んだ空は俯き、鵺の右手を取り握る。
「…ん…、ごめん…。俺が何もできないばっかりに鵺…お前が…」
「ソ、ソラ…。ま、待っていろ!私が至急、軍の医療班を呼んでやるから…!」
「俺が何もできないばかりに…俺はまたお前を見殺しにしたんだ…」
「ま、た…?また、ってどういう意味だソラ、」
「大〜丈夫よぉ。鵺ちんが生き返る方法は1つだけあるわ。ねっ、空ちゃん」
「!?」
「その声は…!!」
背後から突然甲高く飄々とした女性の声が聞こえてきて空が顔を上げ、アリアが後ろを振り向く。


コツン、コツン…

ハイヒールが近付く音。運転席からやって来た1人の人物は、黒くまるでボンテージ衣装さながらの服に軍人らしい黒い帽子をかぶり、赤紫色の長い髪をなびかせた女性。年齢は40代くらいだろうか。右目だけを長い前髪で隠しているグラマーな女性。着ている服も女性自身も、とても妖艶。
彼女を見てすぐアリアは立ち上がり、背筋をピン!と伸ばして敬礼する。
「お久しぶりです!お元気そうで何よりですグレンベレンバ将軍!」
「あらぁ〜ありがとっ!今日も可愛いわねぇ〜アリアちゃん!」


チュッ!

アリアの頬に挨拶のキスをすれば、アリアは顔を真っ赤にして頭から湯気を出しているが気にせず脇を通り過ぎていくこの女性。アリアが今言ったように、この女性はEMS軍将軍グレンベレンバ。





















「あらあら。生き返らせる事はできるけど、鵺ちんのこの怪我は本部へ戻ったら大至急手術しなくちゃね。あら。空ちゃんも酷い怪我じゃない。2人まとめて手術しなくちゃねぇ〜」
「生き返らせる事ができるって本当なのか!?」
まるでグレンベレンバの話を聞いちゃいない空が血相変えて聞いてくるからグレンベレンバは目をぱちくりしてから微笑むと、空の前に屈む。
「ええ。できるわよ〜」
「なら早く!!」
「いいの〜?」
「当たり前だろ!だから早くしてくれ!」
「本っ当〜?空ちゃん。後から後悔しない〜?」
「後悔する必要がどこにあんだよ!!」
「そっ☆そこまで言われちゃ〜仕方ないわね。じゃ、空ちゃんがOK出したって事で。生き返らせてアゲル」
「頼む!…え?」


ドスッ…!!

「ソラ!!」
何と、グレンベレンバは笑いながら黒い手袋をはめた自分の右手を、空の左胸に突き刺したのだ。何が起きたのか分からない。ただ、今目の前で起きている現実は、グレンベレンバの右手が嘘のように自分の左胸に突き刺さっている事。
「ソラァアアアア!!」
「んふっ!そんなに声を荒げなくて大丈夫よアリアちゃん〜!…あら?」
まさかの出来事に、アリアは自分の上司にも関わらず、右腕と一体化した銃の銃口をグレンベレンバに向け、引き金を引いていた。


パァン!

「!?」
「んふふ。アリアちゃんったら。甥っ子の空ちゃんが大事大事なのね〜。よーく分かったわぁ」
放ったはずの銃弾はグレンベレンバには当たっていない。何故なら、放たれた銃弾をグレンベレンバが左手で掴んだから。
自分の上司ではあるが、彼女の詳しい事までは知らないアリアは、彼女の人間離れした行動を次々と目の当たりにし、開いた口が塞がらない。





















一方。


ズルッ…、

空の左胸から右手を引き抜いたグレンベレンバ。立ち上がり、コツコツと音を鳴らして鵺の前に立ち、屈む。
アリアが空に駆け寄るが、突き刺されたはずの空の左胸には何の穴も開いていなければ、血すら出ていない。1番は空が何事も無かったかのように、普通に生きているという事。
「ソラ、ソラ!無事だったか!?」
「俺…左胸突き刺されたのに…何も痛くなかった…」
「何…?」
「そりゃぁそうよ〜!だって痛いのイヤでしょ?あたしも痛いの嫌いだものぉ」
2人の会話に入るグレンベレンバは鵺の左胸にも自分の右手を突き刺す。誰かの心臓を持った右手を。


ドスッ…!

突き刺してすぐ引き抜く。すると、持っていた右手から心臓が無くなっていた。
「これで鵺ちんは生き返るわよ〜空ちゃん」
「良かった…ぬ、え…ぬ…」


バタン…


「ソラ!?どうしたんだソラ!?」
空らしかぬ穏やかな笑みを浮かべて直後、空はゆっくりその場に倒れてしまった。アリアが体を揺さ振り、名前を何度も必死に呼んであげていると隣にグレンベレンバが立ち、アリアの頭を優しく撫でる。
「そんな泣きそうな顔しないで大丈夫よ〜。空ちゃんなら生きているわ。どうしてか気絶しちゃったけど」
「将軍!!」
「はいは〜い!」
アリアはグレンベレンバの方を向くと、力強い眼差しでまるで睨み付けるようにグレンベレンバを見上げる。
「ソラに…何をしたんですか…」
グレンベレンバはきょとんとして瞬きを数回してからにっこり微笑むと、アリアの額にトン、と自分の右手人差し指を充てる。
「アリアちゃんに見られちゃったものね〜ん。大丈夫。そんな心配した顔しなくてイイわ。今のコト、忘れさせてあげる。うんうん、忘れてほしいの。お願いねん」
「なっ…!?」


パタン…、

グレンベレンバがそう言って人差し指をアリアの額から放した直後。アリアは目を瞑り気を失い、静かに倒れてしまった。





















ガタンゴトン、
ガタンゴトン…
進む電車の全壊した車窓から身を乗り出すグレンベレンバは、帽子が飛ばされぬよう手で押さえる。彼女のふわふわした美しい赤紫色の髪が風になびいている。
「もうすぐ着くわね」
彼女が眺める視線の先には、海の上に建てられた大きな大きなゴシック調の建物が3つ並んでいる街エムス。この街エムス全体がEMS軍本部なのだ。
「うっ…」
「あらっ!」
足元から声がし、グレンベレンバが振り向く。
何と、鵺が本当に生き返っていたのだ。しかし目は開かず、ただ唸って寝返りを打っただけだったが。
「んふふ!ほら。ね。生き返ったでしょう?」
電車は車内の惨状など他人事のように、EMS軍本部へ着々と走行していくだけだった。



















































2日後――――

「ん…」
「遅い。いつまでちんたら寝てんだよド田舎者」
「!」
目映い朝陽が眩しくて目を擦りながら起きれば、聞き覚えある声が自分を呼ぶからハッと目を開く。そこには、ベッドで寝ている自分の隣の椅子に腰掛けた空が居た。
鵺はゆっくり上半身を起こすが、全身に電流が走ったかのように、傷が痛む。
「うっ…」
「無理すんなって。横になってて良いから」
無理にでも鵺をまたベッドへ横たわらせる空。
一方の鵺は、見覚えのないヨーロッパの屋敷のような造りの部屋をキョロキョロ見回しているから、空が説明してやる。
「此処はエムス。EMS軍本部の軍人宿舎部屋」
「本部…」
「お前働いてるって言ってたけど、EMSの軍人だったんだな」
「…!何で知って…」
「ん?軍の奴から聞いたんだよ。まさかそんなヒョロイ体で軍人だなんてビビったけど。なら、刀使ってMADにも立ち向かえるの納得できたわ。ま、あんま無茶すんなよ」
「う、うん…」
「だからMAD対策でMADが侵入しても安心なエムス(EMS軍本部)ならMADが来ても安全だ、つってエムスに来させたわけか」
「…。電車に侵入してきたMADは、あれからどうなったんらて」
「ああ、あいつら?お前と俺のとこのババァが殺ったじゃん」
「おい、おめさん!少佐の事そんな失礼な呼び方すんなて!っ…、いてて…」
「お前こそ、怪我治ってないんだからあんまり騒ぐなよ」
そう笑いながら立ち上がり部屋を出ていこうとするから、鵺が待ったをかける。


















「お、おい!おめさんもどうして此処に居るんだて?」
「はあ?だって俺のマンション、MADにバレてんじゃん。何で狙われてんのかは分かんねーけど、狙われてる事に違いはないから。しばらく此処の宿舎で暮らせってババァが言ってきた。あ。因みに鵺、お前もだってさ」
「お、俺もなんか?!」
「そ。じゃあ、」
「ま、待てて!だすけ、さっきも聞いたろ!電車のMADは本当に俺と少佐で始末したんか?!俺、車内にMADが突っ込んできた後から今までの記憶が無ぇんだろも…」
「寝惚けてんじゃねーの?マジでお前とババァが殺ったから。はい、この話終わりな」
「おい、待ててば!まだ聞きてぇ事が…」


バタン!

閉じられたドアを見て鵺は溜息を吐き、布団を頭からかぶり寝返りを打つが…
「う"っ…全身が痛ぇ…」
その時。ベッド横の小さなテーブルの上に置いてあるモノが視界に入れば布団からひょっこり顔を出してそれを手に取る。そこには、未開封のメロンパンが1つ。鵺は頬を薄ら染めるが、すぐにツンとした顔をする。
「べ、別にこんげがん貰ったってちっとも嬉しくねぇんだからな!!」
また布団を頭からすっぽりかぶるのだった。



























一方。
閉じた鵺の部屋の扉に背を預ける空は下を向き、立ち尽くしていた。
脳裏で蘇る2日前の電車内でのあの悪夢。その後EMS軍本部へ避難してきた空が将軍グレンベレンバと2人きりにされ話された話を思い出す。

『どうして生き返ったんだ…だってあの時鵺は確かに息をしていなかったし、脈ももう…』
『あらぁ〜?鵺ちんが生き返って嬉しくないの〜?』
『別にそういう事を言ってんじゃねぇよ』
『じゃ、嬉しいのねっ☆』
『だからそういうんじゃなくて、人が生き返るなんてあり得ねぇだろ!』
『んふふ!あの時あの電車内で空ちゃんがOKしたじゃないっ!』
『は…?何を?俺がOKしたって?』
『鵺ちんを生き返らせたい?って聞いたじゃない!』
『…?』
『あらぁ?忘れちゃったの?んふっ!まあいいわ。鵺ちんが生き返った理由、知りたい?』
『……』
『誰にも喋らない、って誓える?』
『…ああ』

グレンベレンバは、たっぷり塗られたテカテカ光る赤紫色の口紅の唇で口角を上げて笑むと、黒い手袋をはめた自分の人差し指を空の口に、トン、と充てる。

『あたしが空ちゃんの心臓半分を、鵺ちんに分け与えてあげたの』
『なっ…?!はあ?!そんな事できるわけ、』
『だから鵺ちんが生き返る事ができた。でも、代わりに空ちゃんの寿命が半分になった事、覚えておいてねっ』
『…!』
『あらぁ〜?ショックだったかしら?』
『…んなわけ…ねぇよ…』
『んふっ!お友達想いのイイ子ね、空ちゃんは。って〜事は、鵺ちんもその半分の寿命って事も覚えておいてねっ。あと、蘇生は1人1回までしかできない事もお忘れのないように☆じゃあ、あたしはこれからデートがあるから、まったねぇ〜ん♪』
『あ!おい、ちょ、待てよ!…はぁ』






















そして現在――――

空は廊下の窓から、雲1つ無い青空を見上げる。
「そんな事、本当にできるのかよ…。漫画じゃあるまいし…。つーか俺、OKした覚え無ーし…。つーか、鵺が死んだ後から此処に来るまでの記憶だけが、ぶっ飛んでる…」


ズキッ、

「っ…!!」
突然酷い頭痛がし、頭を押さえる。脳裏ではまた、あの映像が流れる。江戸のような町に桜の花弁が舞い、その中を歩く真っ黒くて長い髪をしたピンクの着物の女性…。そこでまた映像がプッツリ途絶えるのだった。
「疲れてんのかな…寝よ…」
頭を押さえながら去っていく空の背後の柱の陰で空の事をジッ…と見ていた2人分の人影がひょっこり顔を出す。空には気付かれぬように。
1人は長く黒い髪でつり上がった目をして青のゴーグルを着用した八重歯が特徴の、いかにも乱暴そうなEMS男性軍人。
もう1人は茶色の長い髪を三つ編みで1つに束ねて左目の下に傷のある長身で、いかにも厳格なEMS男性軍人。
「おい。あのメガネのガキと日本人のガキ、何者だ?」
「日本人の子供はミリアム少佐の隊の者だろう」
「そういう事聞いてんじゃねぇよ!本っト、てめぇは頭ガッチガチ堅物ヤローだなァ!あいつら2人の目!クソMADと同じ赤目だったじゃねぇか!」
「ミリアム少佐もだろう」
「チッ!ったく!俺らのボスは何考えてんだかさっぱ分かんねぇぜ!よっしゃ!ファン!あのガキ2人の事を調べるぞ!」
「…アリス。お前はまたそういう子供のような事を…」
「うっせぇんだよ堅物ヤロー!あいつらがMADと関わりある証拠を手に入れたら、2人まとめて脳天ぶち抜いてやるぜ!MADの"M"の字聞くだけで虫酸が走るくれぇ俺はあの化けもん共を殺りたくてたまんねぇからなァ!いくぞファン!能天気ハロルドのヤローにはぜってぇ喋んなよ!"仲間割れは良くないよ〜"だなんて抜かすだろうからなアイツは!」
「…はぁ」
「おい!聞いてんのか堅物ヤロー!」
「…聞いている」
「見てろよ赤目のガキ共!この俺が必ず正体暴いて、ぶっ殺してやるぜ!!」

















to be continued....









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