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4P

この容貌──


どこかでみたことある…


「舞花は和食でいいんだな?」


……舞花?


そう念を押す楠木さんに頷く女性──


ああ…
思い出した──


週刊誌の“濃厚ちゅう”の相手じゃん……


あれ、なに?

一緒に居るのって不味いんじゃないの?

それでマスコミから逃げ回ってたんじゃなかったっけ?


そこんとこ業界的にどーよ?


………


ああ、

事務所では公認の仲──

だったっけ……。






これ見よがしに連れて来ちゃうのかよ?……




ってもちろん夏希ちゃんが連れてきた訳じゃないのは承知してる。

ただ…

やっぱり恋人として気分いいもんじゃないよね?


しかもこの寄り添い方……



「じゃあ和らぎセットの和食、三つ」

「はい…」

笑顔もなしに注文を受けたあたしを楠木さんはふと、疑問顔で見上げていた。


芸能人、お立ち寄りの店になっちゃったな……

衝立に遮られたテーブル席は何処と無く華やかだ。

やっぱり一般人とは何かが違う──

注文を口にしながら厨房に入ると和らぎの和食膳の器を並べ、時間外れの食事メニューをマスターが用意するまであたしはカウンターで待機した。



「聖夜、どうした?」

「べつに」

下を向いて携帯を取り出した俺に社長が声を掛けてきた。

「出演人の顔は覚えてきたか?」

「ああ、覚えたよ。虎太郎がしっかり挨拶してた、アイツはさすがだ」

テキトーにそうかわす。

社長、今、俺それどろじゃないから…

話し掛けてくる社長を鬱陶しく思いながら俺は手にした携帯のメール欄を開いた。

今朝、愛してるって送ったばかりだ──

その送信欄からまた俺はメールを送っていた。



⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
何そのスカートの短さっ!?

⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒


⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
夏希ちゃんに関係ない

⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

──…っ…


返ってきたメールにムッとくる。


なんだよ関係ないって…



関係あるだろっ

恋人なんだからっ──



普段見たこともない服装。

正直、家での部屋着はそのスカートよりももっと短いショーパンだ。

ケツぎりぎりのヤツだ。

オマケに着古して糸もほつれているような色気疑うようなヤツ──

ヨレヨレのキャミにノーブラ隠しのシャツを羽織ってフローリングで胡座かく。

でも、そのだらしなさが堪らなく興奮させてくれる。


晶さんの脚は妙に綺麗で艶かしい──


ただ、細くて長い人形のような、モデルのような脚ではなくて…

すごく立体的で

綺麗と言うよりもすごく色っぽい

めちゃめちゃイヤらしい脚をしている。


それこそ強いセックスアピールを男に感じさせる脚だ…


あのラインの色気は男にしかわからない──



その脚を無防備にもさらけ出し、ミニスカートで闊歩されれば恋人の俺が黙ってられる筈がない


⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
お店のユニフォームだから

⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

電話を握り悶々とする俺にそんな単調なメールが追加で返ってきていた。


なんで喫茶店でそんな服着せるんだよっ


明らかに晶さんを見せ物にしてるとしか思えない。

店のマスターにも少し怒りが込み上げる。

3時を前にしてお茶の時間を向かえ喫茶店には客がちらほら入り始めていた。


俺の大好きな晶さんの生脚が店の中を動き回る。


正直悔しい…


そして、デニムのスカート姿はめちゃかわいい…


家でももちろんそんな姿したことないし、はっきり言って家の方が露出は激しい……


ただ、中途半端に布を纏うってめちゃくちゃイヤらしいわけで──



細いボーダー柄で横に広いボートネックのカットソーからは白くて華奢過ぎない若々しい鎖骨が覗いてる……


それは男の想像力を大いに掻き立てるわけで──


晶さんのエッチな生脚を目で追えば、もちろんここ数日ご無沙汰な俺は当たり前のように勃起反応を起こしていた……



「聖夜、目が変態になってるぞ」

いち早く俺の異変に気付いた真向かいの楠木さんに指摘されて俺は前を向いた。

「しかたねえじゃんっ…めちゃ好みなんだから」

「へえ、好みか…」

緩んだ赤い顔でそう返した俺を楠木さんは鼻で笑う。晶さんが俺のかわいい虎猫だってのはまだ内緒だ、下手に勘づかれるとヤバイ──。そう、ひそかに焦る俺の耳に

「なんだ、晶か……」

社長のそんな呟きが聞こえてきていた。

「しかし、いい太ももしてるな〜」

二人の会話に橘さんも覗くように割り込んでくる。


“見んなよっ!”

そう怒鳴ってやりたい。


「そう?太くない?」

女の嫉妬だろうか?
舞花が気に入らない顔でそう呟く。

「わかってないな舞花ちゃん、あれは太いとは言わない、立体的と言うんだ。ペラペラの女の脚に男が欲情するかっ」

さすが、官能を求める脚本を書くだけはある。

橘さんのごもっともな意見に心で頷いた。

「脚だけで聖夜を勃たせるたあ、相当だな晶も」

「気付いてんじゃねーよっスケベっ!」

ニヤリと笑う社長から隠すように腰を捻って足を組み直した。


くそ、ムカつくっ…


そう思いながら、少し忙しくなってきた店内を必死にきりもりする晶さんに胸が疼く。

それこそ背の高い晶さんがテーブルを拭こうものならギリギリでパンツが見えそうだ──

それを気にしながら身を捩ってテーブルを拭いて回る。

「エロ過ぎ……」

俺は小さく呟いた。

馴れないミニスカで動き回る晶さんが健気でなんだか可愛かった。

「お待たせしました。和らぎ和食セットです」

ホールの他の席を動いて回る晶さんに代わってママさんらしき人が膳を運んできていた。

人数分揃った食事に手を付けながら、晶さんからどうしても目が離せない。

回りに居る男の客全部の目線が気になってしょうがなかった。

はっきり言って、エロいことを考える男の目は正直なもんだ。

本能のままの視線は偽ることができない。

どいつもこいつもっ…


スケベ丸出しで晶さんを追っている。

そんな店内の隅でグラスが倒れる音が響いた──



聞き付けた晶さんが急いでタオルを持っていく姿を俺は横目に追った。

「……──っ」

水をテーブルにぶち撒けたオタクッぽい客の濡れたズボンを晶さんはしゃがんで甲斐甲斐しく丁寧に拭き取る。


ニヤニヤと照れた顔がキモい男だ──

わざとだアイツ──っ
明らかにわざとやった…


「見え見えの演技だな…」

見ていたらしい社長もボヤいていた──

だから言わんこっちゃないっ!

あんなヤツがいるから、やたら刺激する格好はして欲しくなかったのに──


「はは、あんな丁寧に拭いてくれるなら俺も溢してみるかな?」


橘さんが言った言葉に思わずブチキレそうだった。
オタクな客の世話を焼いたあと、晶さんは濡れた床に散らばる氷を拾っている。

そしてその姿に俺は息を飲んだ──


「………」

「どうした聖夜?パンツでも見えるか?」

「……」
パンツ…?

パンツどころじゃないって──っ…



晶さんっまたノーブラっ!?



卒倒しそうだった…


床にしゃかんだ晶さんの広いボートネックの弛んだ胸元から、あのエロいぷっくりとした乳房と乳輪がしっかり覗いている──

あのタク男が足下にしゃがんだ晶さんを見下ろしてニヤニヤしていた意味がようやく解った気がした──




なんで…


なんで…っ


なんで俺の言うこと聞いてくれないんだあの人はっ──





「もう…お仕置きだな…」


「……?」


溜め息混じりに呟いた俺の言葉にその場の皆が顔を向けていた──。



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