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「よしっ…晶ちゃ…ヒックっ…今から帰って抱いてやるっ…ック…」

「おうっ…ヒッ…ク」


「3Pするぞ3Pっ!…ヒック」

「…っ…春子さん声デカイってっ!」

下ネタに移り始めた酔っ払いの暴言に高田さんは焦りながら春姉の口を押さえる。

「ははっ3Pてことはちゃんと高ちゃんもメンバーに入ってるな!」

「……ほんとなら嬉しいような嬉しくないような…」
高田さんは大将に冷やかされながら苦笑い呟いた。

「どうせ酔い潰れた後の面倒見るだけなんだけどね…」

はあっと溜め息を付く。
酔っ払い達のジョッキのお代わりをする手は止まらない──

高田さんは寝ずの介抱を覚悟しながらビールから烏龍茶に飲み物を代えていた。
女とはいえさすがに二人の酔っ払いを運ぶのは一苦労。タクシーを呼ぶと大将の手を借りて後部座席に押し込み、家への移動には運転手の手を借りた。

御礼に運賃の釣りを貰わずタクシーを返すと高田さんは家の鍵を閉めた。



バツ一男の1人住まいの一軒屋。4LDKの広々としたリビングで、ソファに寝る二人の酔っ払いを見て溜め息を溢す──

「損な役割なのか得な役割なのか…」

高田さんは頭を振りながら呟くとまた大きな溜め息を吐いた。

「春子さん、ベット運ぶから掴まっててよ」

声を掛けて抱き上げると腕が首に巻き付いてくる。

ダブルベットの端に泥酔の御家老様を寝かせて高田さんは重さに一息着く。

「くたびれきった姿はご過労様だな…」

春子さんを見て呟くともう一人の酔っ払いを抱き上げた。

「晶ちゃん、俺にしがみ着いてなよ」

「う〜ん……」

「おっ…」

言った通りに首にぎゅっとしがみつく若い酔っ払いを抱き上げて御家老の横に寝かせると

「やっぱ今日は役得かな…」

高田さんは寝かせた頭を優しく枕に乗せながら小さく呟いていた。

ベットを占領して寝る酔っ払いを眺めるとふと笑みが零れた。

普段は人の居ない空間に慣れていたつもりでも、やっぱりこの和みの空気はバツ一男の心に何かを感じさせる。

離婚して五年──

「そろそろ見合いでもしてみるかな…」

独り者の男の口からそんな呟きが漏れていた──。



「申し訳…──ナッシーっ!」


「………」


早朝5時に起こされた。

次の日が出張だった為に昨夜の酔っ払い二人は高田さんに叩き起こされて車で家に送ってもらっていた。

春姉は高田さんに心から詫びているのかは微妙だが、ナッシー語を交えながらテヘペロ顔で舌を出す。

「ほんと女の酔っ払いって手に追えないよな…」


「ゲロ吐かれなかっただけ有り難いと思いなよ〜」

バンドルを操作する高田さんに春姉は上から言ってまたテヘペロ顔を見せていた。

高田さんは少しムッとしてすぐに諦めた溜め息を吐いていた。

マンションに着いて手を振ると部屋へ向かう。車の中で確認した携帯電話は夏希ちゃんからのメールと着信でパンクしていた……。


夜明け前の薄暗い部屋──


ドアを開けて直ぐに玄関に目を向ければ夏希ちゃんの靴がある……

そして顔を上げれば目の前で本体が仁王立ちしていた。



「……社会人だから…飲んで帰っても何も言えないけどさ…誰と飲んだの?」

夏希ちゃんはそう口を開き始めた。

「喫茶店のいつもの常連さん」

「常連?…あの賑やかな?」

「そだよ」

「そう……なら電話の一つ、返すってことは出来るよね?…俺、一睡もしてないけど?」

「……」

「何か言ったら?」

「言わない」

「……っ…」

「待たなくていいって先に飲む前にメール入れた。だからその後にあたしがメールする必要ないっ!飲むときにそれするの面倒くさいからっ…」

楽しく飲んでるのに電話なんか気にしてたら酔えない!
誰のせいで飲みにでたと思ってんだかっ…

少しアルコールの残った脳ミソで考えながら苛ついてくる。

夏希ちゃんはあたしの言葉に怒った顔を見せていた。

「こっちだって何時に帰るかくらいは知りたいじゃんっ…俺がどんな気持ちで待ってたと思ってるわけ?」

「…うるさいっ…夏希ちゃんの気持ちなんか考えてたら楽しく飲めないっ!寝るから邪魔するなら帰ってよっ!」

「──…っ!…」

せっかく舞花のこと忘れて楽しく飲んだのにっ──



「晶っ!……まだ話し終ってないっ」

ベットに行こうとしたあたしの腕を夏希ちゃんは強く掴んだ。

「なんの話し?話しなんかないじゃん…バイト10時からだから寝かせてよ」

「……──俺、もうすぐ仕事行くよ?」

「行けば?」

「………」

夏希ちゃんはあたしの言葉に小さく溜め息を吐いた。

「晶さん、店でも様子おかしかったから気にして寝れなかったけど……帰ってから話しするから…」

「……話ない」

「……聞くからっ…バイトでもなんでも嫌なことあったら俺に先に言えばいいだろ!?その為に俺、傍にいるじゃんっ…俺って頼りないっ!?」

「──ないっ」

「……──」

「夏希ちゃんまだまだ子供じゃんっ!夏希ちゃんじゃわかんないこと一般人には沢山あるのっ…早く仕事行きなよっ…」


「──…っ…」

夏希ちゃんは歯を食い縛るように口を結んでいた。
何か言いたいことをすごく我慢している表情をあたしに向ける──

あたしは顔を反らして掴まれた腕を払うと布団に潜り込んだ。

「──…っ!?」

急に上から重みが加わる。

「ちょっ…とっ!?寝るって言ってるっ…」

「仕事行くんだから行ってらっしゃいのキスは!?」

「気分悪いからしないっ!」

「しろよっ!」

ムカつくっ…

舞花のことだって我慢してるのにっ…

そう思いながら強引に後ろから覆い被さる夏希ちゃんを振り向いた。

「……──」

「キスしてよ…それでチャラにするから…」

泣きそうな顔で見つめてくる…

「五分だけ余裕あるから五分めいいっぱいキスして…」

「………」

「してよ…」

「もうしてるじゃん…」

キスを求めながら夏希ちゃんの唇が優しく押し充てられる──



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あきゅろす。
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