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 そして、なぜかパウリーはヤガラに乗ったまま造船島まで向かうと言ってきた。どうやらあれは、出勤前の運動のようなものらしい。大層な運動だ。
 水門エレベーターを利用し、造船工場までやってくる。1番ドッグの入口に差し掛かると、さっさと降りていくのだからちょっと待てぃ!と言いたくもなった。 自分のことはいいが、せめて乗せてもらったヤガラには礼を言うべきだ。
そのことを訴えるべく、パウリーの肩の上にジャンプして耳元で大きくにゃー!!と鳴いたのだが。 エサならねェぞ、と検討違いな返答が返ってきた。違う、そうじゃない!そう言いたくとも、猫の言葉がわかる人間は残念ながらいない。 仕方なく帰ろうとしたその時に。後ろからひょいっと、リオは抱えられてしまった。

「おー、珍しいのう!こんなところに猫がおるぞ」
『にゃっ!?(なっ、カクさん!?)』

 あれほど注意しなければと言っていたのに、早速出会ってしまった。しかも抱き抱えられてしまっている。まずい。 驚きのあまり硬直してしまうが、そんなことは気にせずカクはリオを優しく撫でまわした。

「パウリー、お主この猫をどこから拐ってきたんじゃ?・・・まさか借金返済の為に売り飛ばす気じゃ、」
「そんなことするか!!借金取りから逃げる時に無人のヤガラに乗ったら、こいつとヒヨコが乗ってたんだよ!」
「ヒヨコもおるのか!」

 留まっているヤガラに目を向け、乗っているヒヨ丸を見つけると。さらに興奮して近づいていった。

「よくまぁ、この猫に食われんかったものじゃのう」
『にゃー!!(私がヒヨ丸ちゃんを食べる訳ないじゃないですか!!)』
「猫が怒ってんぞ?」
「ん?構ってほしいのか?」
『にゃう!(違う!)』
「そーかそーか、よしよし」

 絶妙な撫でまわし具合に、怒っていたリオも次第に落ちつきを取り戻していった。しかも大層気持ちがいいので、ゴロゴロと鳴く始末。 結局、自分は一体何をしているんだろうと我にかえり。カクから距離を取ると、ヒヨ丸の元へ帰っていった。


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