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 ーーーーーー家に帰ってからのことは、よく覚えていない。扉をくぐり抜けた瞬間、意識を失ったからだ。 目覚めたのは、朝。実に爽やかと気持ちよく起きた時、最初に見たものと言えば・・・・・・般若の顔をしたサク爺の姿だった。 それもそうだ。大人しく寝ていろと言われたのに、リビングで倒れていたのだから般若になるのも無理はない。 倒れていたリオをベッドまで運び、朝まで付きっきりでいてくれたというのだから頭が下がる一方だ。
 ようやく状況が落ちついたところで、自身の姿を確認してみれば。猫の姿ではなく、人の姿に戻っていた。 どうやら、こちらに帰れば異常が正常に戻るらしい。風邪などの症状も完治していたので、とても便利だとリオは一人納得していた。
 それに、時間も一晩しか経っていないのだから驚きだ。こちらとあちらでは時間の流れが違うとわかってはいたが、こうも便利だと不思議に思う。 服も家で着ていた寝間着だった。猫の姿から人の姿に戻ったのだから、当然裸なのだと覚悟していたが。サク爺の反応からして、どうやらきちんと服は着ていたようで安心する。
 サク爺の一通りの検診が済み、倒れていたにも関わらず『健康』の太鼓判が押された。当然だ、例の怪しい薬で風邪は完治していたのだから。 これで風邪も治っていないとあれば、一体なんの為に猫になったのかわからない。 念のために今日1日は家から出ないこと、薬を置いておくので何かあったら飲むこと、と言い含められて。サク爺は家に帰ろうと立ち上がったーーーーその時だった。

「ピヨ!」
「ん?ヒヨコの鳴き声がなぜ・・・」
『そうだよサク爺!ヒヨコちゃんがね、一匹だけ私の家にいたの。多分、私がサク爺の家から帰る時についてきちゃったんだと思う』

 色々あって、すっかり忘れていたヒヨコちゃん。存在を主張するかのように、いつの間にかベッドの上にいたので。二人はある意味ヒヨコに釘付けになった。

「こいつは・・・一番弱っとったヒヨコじゃな。一晩も同じ部屋におったのに、気づかんとは・・・」
『眠ってたのかもね。一晩もここにいて、これだけ元気ってことは・・・』
「ま、いいじゃろう。大事に育てぃ」
『ありがとうサク爺!名前何がいいかな?いつまでもヒヨコちゃんじゃダメだよねっ』

 ウキウキと嬉しそうに話すリオとヒヨコを見ながら、サク爺はボソリと「ヒヨ五郎・・・」と言った。

『ヒーちゃん?ヒヨちゃん?黄色いからきぃちゃんでもいいかも!』
「せめて反応ぐらいせんか!」
『えー、だってその名前長いし』
「そういう問題か!?」
『長いのは呼びにくいもの』
「・・・忘れとるようだから言っておくが、ヒヨコはすぐに鶏になるからの。さっき言った名前は関係なくなる」
『じゃあ・・・ヒヨ丸ちゃんで!』
「わしのヒヨ五郎と大差ないぞ!!」

 そもそもこのヒヨコはオスなのか、というツッコミをする者はここにはおらず。ヒヨコちゃんこと、ヒヨ丸ちゃんは無事リオの家族の一員になりましたとさ。


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