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 何かあっては大変なので。二階の自室じゃなく、ロシナンテが眠るリビングで寝ることにした。急変した時の用心の為だ。 春先なのでまだ夜は寒い。なので折り畳み式のマットレスを敷いて、毛布と掛け布団で風邪対策は万全。 静かな夜、彼の寝息が側から聞こえ。久しぶりに、人の気配を感じながら眠ることに。リオはなんだか、おかしな気分になった。 資産家だった両親が、1年前に亡くなってからというもの。遺産を受け継いで、母方の祖母が住んでいた田舎に引っ越してきて。気のいいご近所さんや、サク爺とも仲良く出来て。穏やかな日々を送る。 だけど、大きな一軒家の中に一人ぼっちは。やっぱり、寂しくて。犬でも飼おうかとも思ったけれど。置いていかれるのは、自分だということに気がついて。また悲しいことになるぐらいなら、と。一人でいることを選んだのに。

『来ちゃったものは、仕方ないよね……』

 側に誰かがいる。生きて、呼吸して。それが、マンガのキャラクターだなんて。おかしなことがあるものだと、思わず笑ってしまったけれど。 なんとかなる。そう思いながら、リオはゆっくり目を閉じた。

『おやすみなさい……』

 ――――――ロシナンテside. 死んだと思っていた自分が、まさかもう一度目を覚ますことが出来るなんて。夢にも思っていなかった。 あれだけ撃たれ、さらにはとどめと言わんばかりに兄にも撃たれ。あとは雪に埋もれ、死ぬのを待つばかりだった。 意識が朧気になり始めた頃。かすかに聞こえた女の声に、ついに迎えが来たかと内心笑っていたが。まさか、自分を助けてくれた女の声だとは思いもよらず。目が覚めた時、心底驚いたもんだった。 女はリオと名乗り、かいがいしく自分の面倒を看る。どうしてそこまで、見ず知らずで不審者の塊のような男の面倒をみられるのか。不思議で仕方なかったが。(スプーンであーんは、正直心臓に悪かった) 優しい子、なんだろう。図体がでかくて、体重も重い男を家まで運んで。さらには医者を呼んで、治療してもらったと言った。普通なら放っておくか、海兵がいるならそいつらに任せるか。 いずれにせよ、かかわり合いになりたいとは思わないはずだ。それを、こんな小さな体で助けてくれた。しかも、自室があるだろうに。わざわざ側に付き添ってくれて。

「……俺なんかの為に、」

 生きていると、実感したこともそうだが。こんな自分の為に、献身的に尽くしてくれた少女に。リオに。心からの感謝を。

「ありがとう、リオ」


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あきゅろす。
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