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 ーーーーーーエースside.
 “らしくない”。一言で言うならそれに尽きる。仲間にも言われたことだし、俺自身がそう思ったぐらいだ。 出会って間もない女に対して、動揺したり必死になったり。そんな自分自身が信じられずにいた。 仲間と一緒に航海する中で、島につく度に女とどうこうなることはあっても、だ。こんな、手を繋ぐだけで精一杯なんて。ありえない。 妙に恥ずかしくなって、まともな思考が働かなくて。めちゃくちゃだった。 それでも、冷静さを装ってリオと会話してみるが。1つ1つの声や仕草、どれを合わせても目が惹きつけられて。極めつけは、俺が言った“可愛い”という褒め言葉を聞いた時のリオの反応だ。 真っ赤になって、恥ずかしがって。そんな初な反応を見せるリオを見て。とたんに、俺の心臓が悲鳴をあげた。息が苦しくなって、強く心臓が脈打った。信じられない話だが、死ぬんじゃないかと思ったんだ。 そこまでになると、ただ欲を満たしたいだけの相手なんかじゃないことに嫌でも気がつく。我ながら鈍い、仲間が周りでやいのやいのと騒ぐのも無理はなかった。 リオと一緒に人気の無いところまで向かって、桜の花に囲まれたリオにしばらく見惚れて。ようやく声に出して言えたセリフが『親父の船に乗らないか』だった。 もっと他に言いたかったことがあったのに。それなのに、だ。緊張し過ぎてようやく言えた言葉が、告白でもなんでもなく。一緒の船に乗りたい、なんて。 だけど、案外的外れでもないんじゃないかって思えてくるんだからおかしな話だ。 離れたくない。側にいたい。一緒にいたいと、そう思った。 そりゃ、リオの都合もあるだろうし。無理強いはしたくない。だけど、リオと一緒にいたいから。ここはなにがなんでも、船に乗ってもらおう。 この手は、絶対に離したくない。リオにも、そう思ってほしいと願ってる自分はやっぱり。らしくない。だが、そんな自分も・・・悪くない。


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あきゅろす。
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