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 結局あれから、エースにオススメスポットの話をして。二人でそこへ出かけることになった。どうせなら一人よりも、二人の方がいいと思った為だ。 エースの食べる量が量なので。おばあさんに聞いた美味しい店で食事をしてから、その場所に向かうことに決まる。 その時の、エースの嬉しそうな顔を見て。リオも思わずつられて、嬉しそうに笑った。 素敵な笑顔の人の側にいると、同じように笑顔になるという話を聞いたことがある。本当にその通りだ。 自宅に荷物を置いて、軽く化粧を直した後に。港で待ってくれているエースの元へ、リオが小走りで向かう。 リオはデートなんてしたことはない。だけど、男の人と待ち合わせてどこかに出かけるなんてしたことがなかったので。今からすることを、なんて言えばいいのかわからない。 だけど、ただのお出かけというには味気ないから。名前を付けるとしたら、やはりデートなのだろうか?

『待たせてごめんなさい!』
「全然待ってねェ。ずっと働いてたのに、少しも休んでないんだろ?悪かったな、急がせちまって」
『エースを待ってる間に、お店で休ませてもらったから大丈夫!』

 休んでいるその時に、今回のことを詳しく教えてもらったのだ。やはり亀の甲より年の功。年配者はより多くのことを知っているから。話に耳を傾ければ、お得なことはとても多い。

「それにおばあさんが教えてくれた、食事のお店とオススメの場所に行くのが楽しみで。疲れなんて感じないの』

 リンゴを保管場所に置いて、化粧を直して衣服の乱れを整えたぐらいで。他にとりたてて、やらなければいけないことはなかった。 それゆえに、あまりエースを待たせずにすんだのだが。気ばかり急いて、おかしなところはないか最終チェックを怠ってしまった。どこか、おかしなところはないだろうか? リオが妙にソワソワしていると。それに気づいたエースが、どうかしたのかと声をかけた。

「なんか忘れモンか?」
『あの、ね。急いでたから、どこかおかしなところはないか確認出来てなくて。髪の毛とか乱れてるところとかあったら、恥ずかしいな・・・』

 わざわざ言わなければよかった。気づいてなかったかもしれないし。あえて、気づいていないフリをしてくれていたのかもしれないというのに。 あえて言ってしまったことで、リオは急に恥ずかしくなった。言うんじゃなかったと、死ぬほど後悔した。なぜエースに言ってしまったんだろう? ・・・そこまで考えて、リオは今さら気がついた。どうやら自分は、思っている以上に浮かれてしまっているようだ、と。 楽しくて、浮かれて。エースと一緒に出かけられることが、純粋に嬉しい。 思えばリオは、歳が近い異性と出かけたことなど無いに等しかった。父方の祖母の方針で、小・中・高とエスカレーター式の女学校に通っていたリオは。友達の紹介で、2・3度だけ男女混合グループで出かけたことがあるだけだった。 今どきの子が、何を言っているんだと思われるだろうが。縁が無かったんだと、リオはそう思っている。 そのせいで、今この状況がひどくこそばゆく。気恥ずかしいものになっている。慣れていないのだ。 精一杯のオシャレが、似合っているかどうか。おかしなところはないか。・・・エースが、気に入ってくれるかどうか。気になって、仕方がないのだ。

「なんだ、そんなことか」
『うん・・・』
「初めて会った時から、リオはずっと可愛いぜ?」
『え?』
「最高に可愛い」

 初過ぎる、そう言われ続けた。こんなことぐらいで、動揺なんてみっともない。そう言われたこともあった。 だけど、だけど、だけど。可愛い、は。反則だ。なんて返したらいいかわからない。 それでも、脳が聞いた言葉を処理すれば後は早かった。リンゴよりも赤く、太陽よりも熱い顔になったリオは。素早くその顔を隠した。


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