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 結局あれから、おばあさんの娘夫婦が早めに到着したおかげで。もうリオは店にいる必要はなくなったのだが。 せめて、最後に大量に買ってくれたあの人が戻ってくるまでは。この店にいようと思った。 もうすっかり陽は落ちて、市場は今度は飲食店に姿を変える。昼間は食材などを売って。夜は交代で、同じ場所に酒場や軽食や。本格的な食事が出来る店になるというわけだ。 どうせなら、どこかで食べて帰ろうか。いや、リンゴを大量に買ったので一度は家に帰らないと。荷物を置いてから、また食べに来よう。 ちなみに、おばあさんがお礼だと言って。リオが買ったリンゴは、全部タダにしてくれた上に。オススメの島のスポット情報まで、教えてくれたのだ。 テイクアウト出来る店で何か買って、そのオススメスポットで食事をしてもいいかもしれない。 あぁ、楽しみだ。ニヤニヤ、ニコニコ。それを繰り返していると。待ち人来る。何人かの連れと一緒に、白ひげの二番隊隊長。ポードガス・D ・エースがやって来た。

「悪ィ、待たせた!」
『いいえ!すごく早かったので、驚きました』
「あんたを待たせたくなかったんだ」
『大丈夫ですよ、そんなに待っていませんから』

 奥に置いてあるリンゴの木箱のところまで、エースたちを案内する。すると、ものすごく重くて動かすだけでも大変だった木箱を。軽々と持ち上げたものだから。さすがにこの世界の人は力持ちだと、リオは感心した。

「代金だ」
『はい、確かに。おばあさん、こちらに置いておきますね』
「何から何まで、本当にありがとう。これ・・・少ないんだけど」
『いえ!いただけませんよ、報酬はリンゴって約束です!』
「でも・・・いくらなんでもそれじゃあ」
『だって、このリンゴで作るレシピまで教えてもらいましたから。これで充分です!』

 いくらかの紙の束が、袋の中に入っている。レシピの料理は、ありふれた物ばかりだが。隠し味や、コツなど。おばあさんの知恵袋的な、そんなレシピだ。 たまには、こんな風に目新しい料理に挑戦するのもいい。 今から作るのが楽しみだ。 リンゴとレシピを持って、おばあさんたちに別れを告げてお店を出る。そして港へ向かおうとすると。なぜかまだ店の外に、エースが立っていた。

『?誰かと待ち合わせですか?』
「あんたを待ってたんだ」
『私をですか?』
「その、なんだ。あんたも港に行くんだろ?」
『はい。港に私の船が停泊していますから、そこに荷物を置きに』
「なら、一緒に行かないか?俺たちも船にこのリンゴを持っていくし、ついでだからな」
『え、あ・・・はい。では一緒に』

 エースの隣に立つと。いきなり持っていた荷物を、ひょいっと横から取られてしまう。そしてそのまま、スタスタと歩いていってしまうので。後を必死で追いかけた。

『お客様!その荷物はっ・・・』
「ん?いいんだ、どうせ行くところは同じなんだからよ」
『でも、あれだけ買ってもらった方に持ってもらうなんて・・・』

 まるで救世主のように、リンゴをたくさん買ってくれたエース。恩を感じればこそ、こんなことをしてもらっては気がひける。そう思ったからこそ、慌てて荷物を返してもらおうとしたのだが。

「そうはいっても、あんたもあの店の人間って訳じゃないんだろ?」
『あ、はい。見るに見かねてお手伝いを・・・』
「ならさ、敬語はやめてくれよ。そんなに気を使う必要もない」
『でもそんな、』
「じゃねえと、そうだなー・・・今この場で抱きしめるぞ?」
『はい!?』

 何を思ったのか、いきなり両手を広げ。ジリジリとリオに迫っていく。対するリオはリオで、近づいてくるエースから距離を取ろうと。分かりやすく離れようとする。 しかしリオが一歩下がれば、エースは五歩進むといった具合で。どうにも解決には至らなかった。


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