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 ちょっとしたオシャレ着に着替え、リオは島を歩いていた。いつもの地味な服じゃなく、完全にお出かけ仕様の服。 ナミたちのような、激ミニスカなんて着れるわけがないが。膝丈の白のワンピースに、桜色の可愛らしいカーディガンを着て。 髪型はストレートをゆるふわにして。大半は下ろして、左右の髪束を後ろで1つにまとめた。花の飾りがついたゴムで結んで、軽く化粧して。いざ、お出かけ!と相成った。

「あら、お嬢ちゃん!可愛い格好してデートかい?」

 島を歩いてすぐ、活気のある市場にたどり着く。そこで、たくさんの魚を売っていたおばさんに声をかけられた。 デートと聞かれて、さすがに浮かれ過ぎたかとリオは恥ずかしくなる。なぜか花束も持っているので。男ならわかるが、女がこんな豪勢な花束を持っているのは。ちょっとばかりおかしい図柄だろう。 恥ずかしそうにしているリオを見て、勘違いしたのか。その恰幅のいい体格にふさわしい、豪快な笑い声をあげた。

「若いってのはいいね〜!楽しんできな!」
『は、はい。ありがとうございます』

 おばさんと別れ、市場の奥へと進んでいく。魚だけじゃなく、野菜や花。布に雑貨。ところ狭しと並ぶ店を見ながら。何か掘り出し物がないか探す。 すると、賑やかな店ばかりが建ち並ぶ中。一軒だけ、静まり返っている店があった。 その店は、真っ赤に熟したリンゴを売っている店だ。カゴに3つ入った物が、いくつか店先に並んでいて。見るからに美味しそうなのに、誰も買おうとしない。それもそのはず。店主と思われるおばあさんが、椅子に座っているのだが。積極的に接客をしていないのだ。 他の店では、元気よく笑顔で客を呼び込んでいるものだから。
それに埋もれてしまっているのだ。 せっかくこんなに美味しそうなリンゴなのに、もったいない。なんなら自分が全部買って、リンゴ料理を作って。サク爺におすそ分けするのもいいだろう。そう思って、店主のおばあさんに声をかけた。

『すみません、リンゴいただけますか?』
「あら、可愛らしいお嬢さん。いらっしゃい」

 店頭に置いてあるリンゴを、全部欲しいと言ったら。やはり驚いたようだったが。お礼を言ったあと、顔を歪めながら椅子から立ち上がろうとしたので。それを制して、リオ自らがリンゴを袋に入れていった。 結構な量になったが、リオはそこで重大な事実に気づく。店の奥に、さらに10箱もリンゴの在庫があったのだ。 これはどうしたのか聞いてみたら、今日仕入れた商品だという。つまり、今日中に売り切らないとマズイ訳で。 だけど、今はもう昼過ぎ。しかも聞くところによると。本日初めての客が、リオだったらしい。 なんでもここ数日、おばあさんは足を痛めたそうで。けれど商品は仕入れていたので、売らないと赤字になってしまう。 なんでも明日は、娘夫婦が手伝いに来てくれるそうなのだが。少しでも商品を減らす為に、店は開いてみたものの。やはりまったく売れず。途方に暮れていたところに、リオがやって来たという訳だった。

「たくさん買ってくれて、ありがとうねぇ」
『・・・少しでも、少なくなればいいんですよね?』
「え、えぇ・・・そうだけど。でも今からじゃ、もう売れないでしょうよ」
『なら私がお手伝いします!これだけ美味しそうなリンゴが売れ残っているなんて、許せませんから!』
「でもそんな、お客様に手伝いなんてさせては・・・」
『いいんです!私、どうせ暇ですからっ』

 持っていた花束を、店の奥に置かせてもらって。店先に新しいリンゴを並べ、その1つを手にすると。とびきりの笑顔で人々に呼びかけた。

『いらっしゃいませー!とびきり美味しい完熟リンゴはいかがですかー!?』


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あきゅろす。
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