[携帯モード] [URL送信]

Main


 ーーーーーー翌朝、というには遅い昼近く。リオは重い瞼をゆっくり開けた。 やはり諸々の疲れが、体に一気に来たらしい。鈍い痛みをあちこちから感じ、ベッドから起き上がるだけで辛い。今日だけでもゆっくり休もう。そう決めて、水を飲もうと1階に降りた。

『こんなに寝坊したのなんて久しぶりだよ・・・まだ眠い』

 ごくごくと水を飲んで、ようやく一息つくと。急にお腹が空いてきた。このままお昼ごはんを作ろうと思い立ち。冷蔵庫の扉を開く。 卵があったので、それでオムレツを作ることにした。野菜を絡めたソースを作って、サラダも作って。ポトフもあと少し残っていたので、それも温める。 パンも食べたいところだが、そこまでは胃が受け付けないだろうと思って。焼くのはやめておいた。 食欲がそそられる匂いに、一気に頭が覚醒した。これはもう、二度寝はしないだろう。 起きたのなら、何をしよう?庭の花が、ちょうど見頃だったはずだから。いくつか摘んで、部屋に飾ってもいい。確かいい匂いのピンクの薔薇があったはず。 それを持って、サク爺のところへ遊びに行くのもいいだろう。花なんぞいらん、なんて言っているサク爺だが。意外と花好きなことを、リオは知っている。 以前に、道ばたに咲いていたタンポポを見かけて。珍しく、優しい笑顔を見せていたのだ。 それを見たことを言えば、照れながら怒るに決まっているので。決して見たとは言わないが。 ためしに持っていっても、なんやかやで貰ってくれるに決まっているので。やはりリオは、サク爺のことが大好きなのだった。

『うーん、いい香り』

 トゲもきちんと処理して、立派な花束が出来た。何しろたくさん咲いているので。1ダース分切っても、全然見栄えは悪くならない。手塩にかけて手入れをして良かった。

『ん?』

 リオはふと気づく。花の香りに混じって、潮の匂いが風に乗ってこちらに届いたことに。 まさか、あの扉から?まだ海軍本部に繋がっていて、そこの海から漂っているのだろうか。 今日はもう遅いから、せめて繋がっているかどうかだけ確認してみよう。花束を持ったまま、扉の方へ向かう。すると、やはりもっと潮の匂いが強くなった。 まだ、繋がってる。扉は開けていないけれど、わかる。こんなに力強い潮の匂いがする海は、あの世界しかないから。 リオは、恐る恐る。ゆっくりと、ドアノブを回し扉を開いた。

『う、わぁ・・・!!』

 扉の先は、海軍本部ではなかった。そこは、花咲き乱れ、人々の活気に満ち溢れた賑やかな春島だった。 リオは、また例の小船に乗っている状態で。その小船は、船着き場に到着している。きちんとロープがくくりつけられていたので。リオが望めば、すぐにでも島に降りられた。 行くか、行くまいか。こんなに楽しそうな島、出来ることなら歩いてみたい。どんな物があるのか見てまわりたいし、名物があるなら食べてみたい。

『あっ、でも・・・通貨が違うから買い物は出来ないか』

 残念、と呟きながら。持っていた財布を開けてみると。その中身に、リオは驚いた。

『1万円札が、1万ベリーになってる・・・?!ウソ、なんで!?』

 3万と千円札がいくらか、それと小銭が少々入っていた財布の中身が。すべて、ベリー硬貨とお札に変わっていたのだ。 もしやと思い、家の中に戻ると。やはり、元の日本円に戻っていた。不思議なことが起こるものだと、変に感心したところで。買い物の件は、これでなんの問題も無くなった訳で。

『よし!行ってみよう!!』

 好奇心には勝てない。財布をポケットに入れて、なぜか腕に花束を抱えて。穏やかな気候の春島に、足を踏み入れたのだった。


[次へ#]

1/27ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!