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 まずは、家まで運びこむ。だけどリオは、平均的な身長体重の成人女性だ。信じられない話だが、男の人は身長3mは確実に越えている。そんな男の人を運ぶほどの力は、リオにはない。 だが幸いにも、家に続く扉はすぐそこだ。かなり重いであろう男の人を、このままにしていては。出血死か、凍傷で死ぬ。せっかく見つけた、助かる命。このまま死なせることは出来ない。 火事場の馬鹿力、やる気と根性。それらをフル稼働させ、リオは巨体の男の人を自分の家まで運ぶのだった。 ―――――きっと明日は筋肉痛だ。フルマラソンを走った後のように、ぜぇはぁと息荒くリオはその場にくずおれた。 なんとか男の人を家の中まで運び、扉を閉めたまではよかったのだが。ひとまず安心したことによる、油断して体の力を抜いたことがそもそも悪かった。 こんなことをしている場合じゃないのに。早く手当てしなければいけないのに。息が整わなくて苦しい。それでも、なんとか立ち上がって。この近くに住む、知り合いの医者に電話をかける為。携帯を置いているテーブルまで走った。 今は現役を退いているが。凄腕で信用も高く、口が固いことでも有名なおじいちゃん医者なのだ。 頑固で口うるさいところが玉に傷、と人は言うが。リオはどちらかといえば、そんな作蔵(さくぞう)ことサク爺(さくじい)を好ましく思う。きちんと人に対して、向き合ってくれていると思うからだ。

『先生!!』
「<そんなに大きな声で呼ばんでもまだ耳は衰えとらんわい!どうした?>」
『怪我人がいるんです!血まみれで、意識が無くてっ……』
「<落ち着け!……呼吸はしとるんだな?脈は速いか?>」
『息はしてるけど、脈は……ちょっと速い』
「<ならまだ間に合うか。大量に出血しとるんなら輸血をしたいが、検査や諸々で時間がかかる。とりあえずそっちに行くから、今から言うモン用意しとけ!!>」

 サク爺の診療所は、小規模なので町の病院とは違い。本格的な手術などは出来ない。今では簡単な治療ばかりしかやっていなかった。


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あきゅろす。
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