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 リオが異変に気づいたのは、わりとすぐのことだった。部屋の一番奥に設置された物置の扉から、風に乗って冷気と血の匂いが漂ってきたのだ。 扉は閉めきっていたし、物置の中に唯一設置された小さな窓を開けた覚えはない。しかも、今の季節は春。夜はまだ肌寒い時もあるが。真っ昼間から、鳥肌が立つほどの冷気が流れこんでくるはずもなく。しかも、鉄くさい血の匂いのおまけ付き。 じわじわと体をはい上がってくる恐怖。ここは平和で平穏で、めったなことでは怪我もしない穏やかな場所だというのに。自分の家の、しかも物置の中から怪しい冷気と血の匂いがするなんて。 だけど放っておけるはずもなく。リオは意を決して、物置の扉の取っ手に手を伸ばした。

『冷たっ!…どうして……?』

 流れこんできた冷気のせいか、金属の取っ手が氷のように冷たくて。思わず手を放してしまう。このままでは触れないと、ガーデニング用の厚手の軍手をはめて。今度こそ無事に触れたので、ゆっくりと扉を開いた。

『え――――』

 ――――――扉の向こうは、一面の銀世界だった。 膝まで埋まるほどの雪が降り積もり。今なおたくさんの雪が、暗い色の雲から降ってくる。リオの体温も一気に奪われ、もう少し厚着してくればよかったと心底後悔した。 すぐに引き返そうかと思った時。冷気を吸いすぎて、真っ赤になったリオの鼻に。今度は強く、血の匂いが漂ってきた。 きっと近くだ。辺りをよくよく見渡してみると、雪に混じって赤い物が見える。大量の血だ。その血の海の中心に、大柄な男が雪に埋もれているのを見つけた時。リオは寒さも忘れ、男の元に駆けつけた。

『大丈夫ですか!?すみません!大丈夫ですか?!』

 本能的に体を揺さぶるのはマズイと思い。声をかけるだけに留めた。すると、わずかながら苦しそうなうめき声が聞こえ。この人はまだ生きているんだと、リオは喜び安心した。 だけどこのままでいいはずがない。とりあえず雪の中から男の人を掘り返して、傷の手当てをしなければ。


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あきゅろす。
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