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無意識なんです



だいぶ時間は過ぎて、本日は――――巨人族と一緒に購買へ行きました。


「紫原くん!紫原くん!あの菓子パンと惣菜パンと野菜ジュース取って!!」
「これ〜?」
「そう!あっ、右手側にあるお菓子も取って!!」
「んー……あ、これ期間限定チョコじゃん。俺にも一個ちょーだい?」
「無事に買えたらあげるよ!」


今日はお弁当が用意出来なくて、仕方なしに食堂行こうと思ったんだけど。
正直、食べたい物がなかった。
そういう気分じゃなかったというか。
それならと、購買でパンを買おうと思ったら……あまりの人の多さに目眩をおこしてしまった。
なんなの、ここの生徒はみんなしてお弁当を持ってこないの?
食堂で食べないの?!
この学校が、マンモス校ってのは知ってる。
だけど、これはない。

絶望にうちひしがれて、仕方なしに食堂に引き返そうとした時に。
私は紫原くんと出会った。
紫原くんは、お昼ご飯を食べ終わった後のお菓子を買いに来たらしい。
のっしのっしと歩いてくる、中学一年生の彼を避ける他の生徒たち。

これは――――天の采配か。
私はすぐさま彼に飛びつき、欲しかったパンを買ってきてほしいと頼み込んだ。
彼の好きなものは、出会った最初の時にすでにわかっているから。
好きなお菓子を一つ買っていいという条件で、彼は快く了承してくれた。
そして冒頭に至る。


「ありがとう!すっごく助かったよ」
「別にー、俺もお菓子買ってもらったし」
「紫原くんが買ったお菓子って、それ?ていうか箱買い!?」
「なんでもいいけど一つだけって言ったじゃん」
「言ったけど……」


まいう棒、箱買い。
これがまいう棒か……いわゆる駄菓子ってやつ?
好きなのかな?
最初に話しかけてきた時も、まいう棒って言ってたし。
そんなに好きなお菓子なら、まぁいっか。
助かったものは助かった訳だし。


「あっ、それとはい!限定チョコね」
「……いいの?」
「だってちょうだいって言ったじゃない」
「言ったけどー」


さっきからチラチラと、まいう棒を見ている。
なるほど、買ったはいいけどちょっとは気にしてるわけね。


「なら、交換しようよ」
「交換?」
「限定チョコ一個と、まいう棒一本でどうだ!?」
「いいよー」


ふにゃりと、紫原くんが笑った。
なんだか猫みたいだ。
昔買ってた猫はすごく甘えたな子で、自分が満足するまで撫でて!感じだったから。
だから。


「……っ!?」
「いい子だねー」


紫原くんと私の身長差は、約10cm。
頭を撫でるには、少しだけ背伸びをしないといけないけど。
無意識に手を伸ばしていた。
だから、仕方ない。
ついでに頬も指先で撫でてしまったのも、仕方がない。
無意識だったんだ。

紫原くんが、ビクッと反応して私の意識も戻ってくる。
しまった、猫のこと思い出してて紫原くんに意識向けてなかった。

ん……?なんで顔赤いの?息荒くない?
しかもなんで手首掴むの?


「この手、なんなわけ!?」
「え?何が?」
「なんで撫でるの」
「無意識?」
「〜〜〜っっ!!変な感じになるから、撫でるの禁止!」


理不尽な禁止令が発令されました。
髪の毛、柔らかかったからもう一回撫でたかったな。
残念だ。非常に残念なのである。










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あきゅろす。
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