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告白



青峰くんと別れた後。
私は、教室に置きっぱなしの荷物をとりにいこうと。
まだ廊下を歩いていた。


「初日から、結構な収穫よね〜!なんか、個性的な子ばっかりだったけど。それでもオシリアイにはなれたわけだし!」


鼻歌まじりに機嫌よく、むしろスキップで進んでいた。
躍りだしそうなほど、今の私は浮き足立っている。
初日。
何度も言うようだけど、今日は初日なのだ。
それが、普通に生活を始められたどころか。
友達も、こんなに都合よく出来るなんて。


「純粋に、う・れ・し・い〜!」
「悪いが、君の気持ちには応えられない」
「!!?」


私は瞬時に、柱の陰に隠れた。
たんたんとした、静かな声。
その声が今、相手をしている女の子に対してお断りの返事を告げた。
これは、まさか!
噂で聞いたことがある、好きな子を呼び出して告白ってやつ?
古式ゆかしい、情緒溢れる伝統的な方法!
他にも、靴入れとかに手紙を入れたりする方法もあるって聞いた。

信じられない!
不可抗力とはいえ、まさかその場に行き合わせるなんて。
どうしよう、聞いちゃいけないんだろうけど。
教室に戻る為には、彼らがいる場所を通らないと行けないし。
困った。


「っ……どうしても、ダメですか?」
「あぁ。今は部活に専念したい」
「全部、あなたの都合に合わせます!」
「部活だけじゃない、他にもやることはある。君の為に、時間を割くことは出来ない」


ハッキリ言いおったで。
優しそうな声の持ち主だけど、話の内容は容赦ないな〜。
女の子の、すすり泣く声が聞こえてきた。

やめときなよ、泣いても意味ないよ。
男なんて女が泣いたら鬱陶しがって、面倒がるだけなんだから。
百害あって一利なしなんだから。
フラレたんだったら、さっさと消えて新しい男を探した方が懸命ってもんだよ。
……ま、そう簡単に諦められないからこそ『恋』なんだけどね。


「ごめんなさい!!」


女の子はそう言って、ダッと駆けていった。
幸いにも、私の存在は気づく余裕が無かったようなので気づかれなかった。
ラッキー♪
男の子が去った気配を感じたら、教室に向かおうと思っていたんだけど。

…………何か、背筋が寒くなるような気配が近くから感じる。
ひしひしというか、じわじわというか。
とにかく、体が凍えるほどの冷気のようなものが体中にまるで絡みつくがごとく。
やって来たことを思い知った。


「盗み聞きは感心しないな」


耳元で、さっきの優しい声が聞こえた。
若干、声が低くなってる気がしないでもないかもしれない。
錆び付いたオモチャのように、ギギギと首を回すと。
背中に吹雪を背負った、優雅な風情の男の子が立っておりました。


「いえ、そのー……」
「まぁ、聞かれて困るような内容でもなかったが」
「いやいや!告白は結構恥ずかしいでしょう!?」
「やはり聞いていたのか」
「はっ!」


しまった、こんな単純な罠に引っかかるなんて!
でも、罠を用意されたら引っかかってあげるのが人情ってものでしょう?!
ボケられたら突っ込まないといけないように!
何か反応しないといけない!みたいな。


「あまり噂が広まるのは、好ましくないんだ。黙っていてくれるかい?」
「え、それはもちろん」
「…………本当に?」
「だって、人の嫌がることはしないのは当たり前のことでしょう?」


何か違うの?
そう言うと、男の子は綺麗な赤い目を瞬かせ。
次に控えめに笑いだした。


「今笑うとこ?」
「そうだね、俺は笑うところだ」
「どうしよう、ツボがまったくわからないよ」
「これに関しては、わからなくていいよ」
「そう?」
「あぁ」


今度はどこか共鳴しあったとでも言うのか。
お互いにクスクスと笑いあう。
そしてひとしきり笑うと、せっかくだからと名前を教えあった。


「俺は赤司征十郎だ」
「私は藍原ユウナ、今日編入してきたばかりなの」
「そうか、君が例の……」
「何?」
「いや、なんでもないよ。これからよろしく」
「こちらこそ!」


本日最後。
またもや親しくなれた人が出来た!
やっぱり、私は最高についているらしい。
明日も頑張ってやっていこう!!







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