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器用な奴



あれからどれだけ眠ってたのか。
ふと目が覚めて、起きあがると痛みはすっかり消えていた。
お礼くらい言いたかったのに、例の彼はどこにも見当たらなくて。
……なんか言ってた気がしないでもないけど。
起きたばかりの頭で思い出せるほど、私は寝起きは良くない。
仕方ない、あれだけの美少年だからすぐに見つかるだろう。
今度会ったらお礼言おう、そうしよう。


「今はー……この時間だと、もう放課後か」


ずいぶん長いこと寝ていたらしい。
帰りにどこか寄って帰りたかったけれど、今日は大人しく帰った方がよさそうだ。
身仕度を整えて、仕切りのカーテンを開けても先生は未だにいなかった。
よくよく辺りを見てみると『出張中』という紙が置いてある。

ならいないのも当然か。
朝と同じ格好に戻ると、私は保健室を後にした。


「あれ?」


廊下を歩いていると。
何かが落ちているのが見えた。
近づいてみると、どうやらシャーペンのようだ。
誰かの落とし物だろう。
ひょいっと拾い上げると、持ちやすくとても良い品なのがわかった。


「誰のだろ?」


指先でクルクル回しながら、まるでチアリーディングのバトンのように高く上げては、元の位置に持ってくる。
それを何回か繰り返していると、後ろからピューッと鳴る口笛が聞こえた。


「すげぇな、お前!」


見られた!
人様のシャーペンを、クルクル回してるところを見られてしまった……何気に恥ずかしい!


「あっ、ソレさつきのシャーペンだ」
「さつき?」
「俺の幼なじみなんだわ。さっきからずっと、お気に入りのシャーペン無くしたっつってうるさくてよ」
「そうなんだ。そこの廊下に落ちてたよ」
「お前が拾ってくれたのか、ありがとな」


色は黒いけど、笑顔が眩しい少年だな!
スポーツとかで焼けたのかな?
サッカー?野球?それとも……


「ねぇ、なにかスポーツやってるの?」
「ん?俺はバスケ部だぜ」
「そうなんだ!通りで……いい体つきしてるね」
「お前こそ、見た目がそんななのに物怖じしねぇっつーか……意外と気さくな奴だな!」
「まぁね!なんてったって、明るく前向きなのが取り柄だしっ」


シャーペンを渡しながら、とりあえずニコニコ笑っておく。
こういう話が盛り上がる人は、結構好きだったりする。
とんとん拍子に友達になれたら、嬉しいんだけどな。


「なら今度、部活見にこいよ」
「いいの!?」
「許可は取っとくから」
「ここのバスケ部って、相当強いんでしょ?凄いんだろうね、楽しみ!」


思わず無邪気に笑ってしまう。
ちょっと子供っぽ過ぎたかな?
でもでも、スポーツを見るのは好きだから純粋に嬉しい!
特にバスケは、本当に大好きなのだ。
あの熱気、情熱、興奮。
見ているだけで胸の奥を熱くさせてくれる、あのスポーツが。
私は心底好きなのだ。


「俺は青峰大輝だ、よろしくな!」
「私は藍原ユウナだよ、よろしくね!!」


編入初日で、自分的には結構知り合いが増えた気がする。
この調子で、明日も頑張ろう!!









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