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温もり



「しまった……今日、あの日だったか……!!」


失念してた。
予定日だったのに、うっかりしてた。
お腹痛い。
腰がダルい。
心なしか、頭まで痛くなってきた気がする……マズイなぁ。

もう少しで五時間目も終わる。
休憩時間になったら速攻で、なおかつ体になるべく振動与えないように保健室に行こう。

タイミング良く、チャイムが鳴った。
急ぐかつ、慎重に保健室に向かう。
早歩きじゃないと怒られるって、確か聞いたことがある。
それに今の私が走ったら、非常にマズイ。
何かが私の腹を裂いて生まれてきてもおかしくないほど、猛烈にお腹が痛くなること間違いなしだからだ!

痛みと戦いつつ、ようやく保健室に着いて、先生に薬をもらおうと思ったのに……いないってどういうこと!?

神は私をお見捨てになられた。

仕方ない、ベットに横になって痛みが治まるのをまとう。それしかない。


「痛いっ……」


泣きそうになるほど、痛い。
女は子供を授かる為に、この痛みに耐えないといけないのに。
肝心の原因になるはずの男は、なんの痛みも感じないなんてズルい。卑怯よ!
むしろ男も妊娠したらいいのに。
そうしたら、少子化も即時解決よ。
国も安泰よ、万々歳よ!!

……そんなことを考えて気を紛らわせないと、痛みでどうにかなってしまいそうで。
痛い、苦しい。
だけど、どうしようも出来なくて。
ベットのシーツにくるまって、一人耐えるしかないとベットに手を置いた。


「ん……?」


どうしたことか。
ベットがすごく、温かい。
通常は二つあるはずのベットが、一つしかないのも変だと思ったけど。
すごく、とても、信じられないくらいにベットが暖かかった。

思わずシーツをめくると、なんと。
美少年が眠っていました。
金髪で、顔が整っている美少年。

……この学校は、そこいらに美少年が落ちているの?

現実逃避して、考え込みそうになったけど。
再度痛みが襲ってきて、それどころじゃなかったことを思い出した。
ベットには先客がいることだし。
本来なら、先生が帰ってくるまで待ってればいいんだろうが……。
あいにく、大人しく座って待っていられるほど今の私は健康体じゃない。
仕方ない、緊急事態なのだ。
おもむろに眼鏡を外し、三つ編みをほどく。
そして、全身ぬくぬくの少年が眠るベットの中に私は静かにもぐり込んだ。


「(ぬくーい……お腹の痛みも、中和されてくみたい……)」


あまりの温さに、後ろから少年に抱きついてしまう。
私は病人、これは痛みを和らげる為の治療!仕方ない!!
そう頭の中で繰り返しながら、うとうとし始める。
……すると、やはりというか。
誰かに抱きつかれたら気づかないはずがなく。
美少年が目を覚ました。


「?!誰、スか?」
「んー……」
「えっ、ちょ……俺女の子連れ込んだ覚えは」
「うるさい」


耳元でまくし立てそうになる少年の上に乗っかり、低い声でそう言った。


「私、具合が悪いのよ。あなた、すごく温かいから。……私の具合が良くなるまで、湯タンポになってよ」


我ながら、かなりの無茶ぶりである。
だけど本当に、彼はとても温かいから。
お腹の痛みが溶けてくように、癒されていくのだ。
彼が去ったら、きっとまたぶり返す。
それだけは嫌だ。
痛いのも苦しいのも、辛いのも全部嫌だ。
ビックリしたように、目を見開いている彼には悪いけど。
しばらく湯タンポになってもらいたい。
切実に。


「私を抱きしめて寝てくれてたらいいから」
「あー、えー……っと?」
「それ以外は何もしなくていい。……何かしたいっていうなら、後日改めてでいい?本当に、具合が悪いの」


正直、本当に限界だった。
もう一度ベットの中に潜り、彼に抱きつく。
胸元に顔を寄せると、わかってくれたのか。
彼も抱きしめ返してくれた。
とても、温かい。癒される。


「俺は、黄瀬涼太っスよ。君は?」
「…………」
「寝ちゃったっスか?」


遠くから、優しい彼の声が聞こえた気がした。
だけど、ようやく訪れた心地よい眠りに抗えず。
彼の香りと温もりに包まれて、私は眠りについた。






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