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ラッキーアイテム
あれから黒子くんと、楽しくお昼ご飯を食べつつ談笑して。
そういえば、発注ミスで届くのが遅れた教科書を取りにいかないといけなかったのを思い出した。
急いでお弁当を食べて、黒子くんに別れを告げて職員室に走る。
お昼休みもあと少し。
編入初日で悪目立ちしたら、普通の学生生活なんて送れない。
気をつけないと!
「失礼します」
「おっ、藍原か。教科書、届いてるぞ」
「ありがとうございます」
数冊の教科書の束を見つけて、手にかかえて職員室を出た。
これで万全!完璧っ!!
私の普通な学生生活は、全てが揃っていることで成り立つのよ!
ユウナは形から入るタイプのようだ
「ふっふ〜ん♪友達も出来たし、初日はバッチリいい感じ〜♪」
「動くな!!」
「っ!?ぇ……?」
教室に向かって歩いていたら、いきなり大きな声で動くな宣言されて驚いた!
え、ていうか何。
美人な男の子が床を這いつくばってる。
何、道ばたに落ちてる落とし物?
拾っていいの?
いいわけがない。
「ど、どうしたの……?」
「大事な物を落としてしまったのだよ……!!」
「大事な物って?」
「今日の俺のラッキーアイテムだ!」
ラッキーアイテム。
聞いたことあるな……確か占いとかで、一日そのアイテムを持ってたら災難に合わないんだよね?
あちゃー、本当に大事な物を落とした、っていうか無くしちゃったんだ。
「ちなみに、そのアイテムって何?」
「ピンキーリングだ」
「へ?」
「女物のピンキーリングだ!!小さなエメラルドの石が付いているのだよっ」
「それってー……ねぇ、そこにあるやつのこと?」
「!どこだ!?」
「灯台もと暗し」
私が分かりやすく、美人くんの靴底を指さしてあげると。
これまた面白いくらいに青ざめたかと思えば、orzのポーズをやった彼。
悪いとは思うんだけど、笑える。
声を出さないように必死になっていると。
「……これで、今日の残りの運勢はがた落ちなのだよ」
「そこまで?」
「お前にはわかるまい。俺にとっては、ラッキーアイテムがあるかないかで、自身の安否が決まるのだよ」
薄汚れている上に、歪んで石も割れてしまった指輪。
これじゃあ、指輪としては機能しない。
ラッキーアイテムでは無くなってしまったから、こんなに絶望してるんだね。
仕方ない……。
「はい」
「?なんだ…………これは!!」
私が取り出したのは、お気に入りでいつも持ち歩いてるピンキーリングだ。
透明なムーンストーンが付いているやつで。
シンプルだけど、そこが気に入ってよく身につけていた。
「貸してあげる」
「……いいのか?」
「無いと困るんでしょう?」
「そうだが……」
「明日、返してくれればいいから。それ、お気に入りだから壊さないでね?」
彼の手のひらに置くと、元々小さかった指輪がさらに小さく見えて、思わず笑ってしまった。
「名前を……」
「ん?」
「名前をまだ、聞いていないのだよ」
「あっ、そうか。藍原ユウナです、今日編入してきたばかりなの」
「そうか。俺は緑間真太郎だ、この指輪は必ず明日に返す」
「うん、よろしくね」
私たちは、固い握手を交わした。
友達はまだ早いかもしれないけど。
顔見知りはまた増えた!やったね♪
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