[携帯モード] [URL送信]

main
バスケ



「わっ、凄い!」


目にも止まらぬ速さで機敏に動き、ゴールにダンクする。
中学一年の男の子の動きじゃないでしょうよ。
でも、本当に凄い。


「かっこいいよ、青峰くん!」
「そうだろ?」
「いいなー、私もやってみたい!!」
「やればいいじゃん」
「ダメでしょ、だって一応練習中だし」
「正しくは自主練中だ」


そう、例の青峰くんと約束した通り。
バスケ部を見学しに来たんだけど。
なんか人数多すぎて気後れして、結局見れなかった。
でも、ちょうど外に出てきた青峰くんに遭遇して事情を話して。
自主練なら、気後れしないだろうという結果になって。
今は、青峰くんがダンクしたところを見たばかりだ。
興奮冷めやらぬ中、自分もやってみたいと言ったところ。
ボールをパスしてきた。
無茶ぶりキター……!


「ほら、シュートしてみろよ」
「シュートしたことはあるよ?試合もしたことあるし、ストバスも経験ある。……だけど、目の前でダンク見せられたばっかの時にシュートしてみろって言われても〜」
「経験者なのかよ!?なら1on1やろうぜ!」
「現役の選手と同じだと思わないでよ!……ダンクなんてやったことないし」
「誰もダンクしろなんて言ってないだろ?」
「プレッシャーは感じる」


ただ見てるだけじゃ退屈だろうと思って、誘ってくれたんだろうけど。
今は、見てるだけでいいんだけどな。
きっと彼は、将来凄いプレイをする選手になる。
その片鱗を、楽しそうにバスケをする彼を。
少し離れた場所で見ていたかったんだけど。


「私と似たような身長なのに、君は凄いね」
「あー……確かに、お前って女の割には背高いよな。だからバスケやったことあんのか?」
「そういうわけじゃないよ。ただ……周りの人が気晴らしにバスケしようって言って、付き合ってただけ」
「付き合いだけで試合すんのかよ?!」
「するよ、だって信頼してる仲間からのお願いだもの」
「…………仲間」
「代わりに、私もお願いしたら聞いてくれる。ギブアンドテイクなんだよ」


毬つきのように、ボールを床に打ち付ける。
ドリブルしながらゴールに近付いていき、その音が大きく体育館に響く。
だんだんと激しく、速くなり。
ユウナの姿が一瞬、消えたと思ったら。
次の瞬間。
ボールはゴールに入っていた。

あの青峰が、目で追えなかったのだ。
だけど、ボールを放つ瞬間だけは見えていて。
しばらく言葉が出ず、目を見開いて驚いていると。
いつの間に目の前にやってきたのか。
ヒラヒラと手を振るユウナに、やっと青峰は覚醒した。


「シュート、したよ?どうだった?」
「――――――スッゲー……」
「そ?」
「綺麗、だな」
「え?」
「シュート放った時、全部の音が消えて――――お前の姿が、俺の目に焼きついた」


喜びが、爆発しそうなのをこらえるかのように。
渇いた笑い声と、控えめな笑顔が。
私の目いっぱいに広がった。


「お前の方が凄ぇよ!!!」


そう言うと、力の限り抱きしめられてしまった。
彼の喜びの沸点がどこにあったのか、私にはとんとわかりません。







[*前へ][次へ#]

10/11ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!