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第壱話―03―



その日、アリスは珍しく特別練の外に出ていた。


「――つまんないなぁ……」


はぁっと溜息をつきながら、足元に落ちていた小石を蹴り、その場にしゃがみ込む。
ふわり、と桜色の髪が風に揺れた。


「むぅ……鏡ちゃんも響も居ないなんて……」


そう言うと、アリスはつまんないぃー!と大声で叫んだ。


今日、珍しく響が所要で政府に帰還した。午後、には帰って来ると言っていたが基本的に離れることの無い2人に取って、それは苦痛でしか無かった。

本当ならば、アリスだって響について行きたかった。だが、如何せ彼処はいけ好かない。アリスは政府の本部『clown』が大嫌いだった。


――そのため。
アリスは本日、響と離れていた。


かなり不服ではあったものの、鏡が来るからいいか……なーんて考えていたアリスの考えはものの見事に打ち砕かれることとなる。


『痴漢捕まえた。遅れる。』


突如鏡からかかってきた、なんとも素っ気ない電話。簡潔過ぎる鏡からの電話に、アリスはその場にあったゴミ箱を蹴り飛ばした。


「なんで!?なんで遅刻?!てかまた痴漢!?」


『正確には今痴漢したやつを駅員に突き出したがら、これから痴漢にあった少女を家まで送るから遅刻する。』


「うなー……なら、仕方ないねぇ……」


ややしょんぼりと、声のトーンをおとしながらそう言うと、鏡は携帯越しにクスリと、笑い


『なるべく直ぐ行く。だから……おとなしく待ってろ』


「っうん!わかった!あーちゃんおとなしく待ってる!」


『クスリ、いい子だ。』



それじゃあな。そう言ってぷつりと電話は切られた。

――あれから2時間。大人しく待っていたアリスも、とうとう限界だった。

つまらない……と、特別練の生徒会室を飛び出したのが10分前。
なんのあてもなく生徒会室を飛び出したため、特に何をするわけでも何処に行くわけでもなく、ただただぶらぶらと歩いていた。


普通なら、授業中に校舎内を歩き回っていたら教師に声を掛けられるはずだが生憎、此処は私立 立海大学附属中学校。

全ての教師がアリスの胸元にかかる赤色のリボンを見て、直ぐに視線を逸らす。


「みゃはは……便利だよねぇ……」

特別科の生徒を示すこのリボンは、まさに“特別待遇”の証だった。


――恐らく、否、この学園にいるかぎりこのリボンを付けた人間に逆らえる一般生徒&教師はいない。


「……ま、別に何でもいいんだけど…」


“さ”っと言って階段を飛び降りた時。ちょうど、2時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴った。


――時刻は午前10時45分。


2時間目の授業を終えた生徒がガヤガヤと教室から出てくる。


“騒がれたら五月蠅いな”


そう思ったアリスは15分休みが終わるまで、普通科練の人気の少ない階段で時間を潰すことにした。


それがあんなことになるだなんて……


アリスは全く、予想していなかった。







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