第弐話―01―
走り去る女子生徒に後ろからバイバーイvvと言って手を降るアリス。その表情は、晴れ晴れとしていた。
「(――あ〜いいストレス発散になったなぁ……)」
うっとりとした表情で片手を頬に当てると、アリスは特別練へと戻るため、自身もその場を去ろうとした。
だが、そんなアリスの腕を何かが掴んだ。
「っ待って!!」
「うなぁ?」
突然腕を掴まれ、アリスの体がガクンと傾いた。
「……なぁにぃ?」
やや不機嫌そうにそう返せば、少女はさして気にしたようすも無く、勢いよく頭を下げてきた。
「あっあの、ありがとうございました!!」
「はぃ?」
キョトンと首を傾げると、少女は少し恥ずかしそうに「助けてけださって…」と言った。
「(あぁ、そう言えばそう言う名目だったっけ?)
うな、別にいーよん。」
「私!普通科2年B組の蓮見 莉乃と言います!良ければお名前をお教え頂けないでしょうか!?」
ぐいっと詰め寄る少女、蓮見 莉乃。やや引き気味に、一歩下がりながらそれでも笑みを壊すことなく、アリスは答えた。
「あーちゃんは、特別科3年Sクラ『莉乃!!』?」
アリスが名乗り終わるよりも先に、凄まじい足音を立てて、少年達が走り込んできた。
「皆さん、どうして此処に!?」
驚き、目を見開く莉乃。その口振りからして、どうやら彼らは顔見知りのようだ。
「莉乃が女子生徒につれていかれたって聞いてね……」
「精市先輩……」
うわー美しい友情ー。
キラキラと輝く莉乃と少年達の会話を聞きながら、心にもないことを思うアリス。
「おい。テメェ……」
「……んな?あーちゃん?」
突然、莉乃とアリスの間に1人の少年がわって入った。
少年はそのままアリスに近づくと、その胸ぐらを掴みあげた。
「聞いてんのかよ!!莉乃先輩に何しやがった!?」
「……は?」
意味不明、と眉をひそめるアリスに、少年はさらに詰め寄る。
「とぼけんじゃねぇ!てめぇが莉乃先輩を呼び出したんだろ!」
「はぁ?」
訳のわからない濡衣を着せられ、さらに眉をひそめるアリス。そんなアリスを、その場にいた莉乃以外の全員が睨みつけた。
「呼び出して虐めなんて……姑息じゃな。」
「虐めなどたるんどる!」
「しかも……見たところお前、特別科の人間だろ?虐めなんて姑息なまねするようじゃ、特別科なんて大した事ねえな。」
――いま、何て言った……
タ イ シ タ コ ト ナ イ ?
赤色の髪の少年の言葉に、アリスの中で、何かがプチリと音を立てて崩れた。
――理性、と言う名の壁が。
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