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第壱話―04―




「うざいんだよ!!いい加減気付かないの!?幸村君達が迷惑してるのが!」


「そうよそうよ!!」


「さっさとマネージャー止めろよ!!」



「っ!」


凄まじい罵声と暴力。
余りにも非・現実的な光景にアリスはしばし、その場に佇んでいた。




――――

事の起こりは数分前。

アリスがぶらぶら人気の無い階段へと来たとき、丁度角を曲がろうとした時、ソレは起こった。


――バンっ!!


「?」


突如聞こえてきた衝撃音。
それと比例するような、女子の大きな罵声。

そろりと角から顔を覗かせると、座り込んだ一人の少女を5〜6人程の女子生徒が囲んでいた。


「何……?」


罵声を聞いていると、“幸村”だの“仁王”だの“丸井”だの“切原”だの“マネージャー”だのの単語がよく聞こえてきた。


「幸村にマネージャーって言ったら……」


テニス部?コテンと首を傾げながら罵声を聞く。

どうやらしゃがみ込んでいるあの少女はテニス部のマネージャーで、その周りを囲んで罵声を行っているのは“テニス部親衛隊”の人間らしい。


「(…そう言えばテニス部親衛隊って言ったら……)」


最近行動が過激化していて、生徒会で問題になっている奴じゃ無いのか……。


ふっと頭に浮かんだ考え。
その考えにアリスはニヤリと笑った。


「(丁度良かった。今、うち機嫌悪いんだよね……だから)」


潰させて貰うよ。


無論、名目はテニス部ファンクラブの過激化を抑える事。


頭に浮かんだ素晴らしい考えにアリスは口元に弧を描くと、このイライラをはらすため、一歩足を踏み出した。




―――――

?side

「っ……いい加減に」


ばっと振り上げられた腕。
反射的に目を瞑り、襲ってくる衝撃に備える。


――撃たれる……!


そう思って固く目を瞑ったその時。


「はぁーい、ストップ。」


高いソプラノの声が、私の鼓膜を震わせた。


「っ何なのよ、アン……!」


「――アンタ?それ、誰の事?」


鋭い双眸が、私を囲っていた女の子を貫いた。
その鋭い紅色の瞳に、彼女達がひっ…と怯えた声を漏らした。
それは、私も例外では無かった。余りにも冷たく、冷酷なその視線に思わず体がカタカタと震えた。


「っ…なっなによ!なんなのよアンタ……!」


「ちょっ冷夏、あっあれ……!」


私を庇ってくれた少女につかみかかろうと、私を虐めていたリーダーの山並 冷夏が少女に詰め寄るのを、周りに居た一人の少女が怯えた瞳で止めた。

少女が指差した先を見て、私と山並さんはこれでもかってくらいに目を見開いた。



―――特別科生徒、特別リボン



それは確かに、その少女の胸に掲げられていた。


「っ……あっ……」


カタカタと震えながら、少女から離れる山並さん。
怯えた表情をする山並さんと対比するかのように、にっこりと可愛らしく微笑む少女。

その笑みは、途轍もないくらいに可愛かった……


「君達、今、誰に手をかけたか……わかってる?」


――カタリ、と少女が一歩、足を進めた。


「あっ…!あぁ……!」


カタカタと、山並さん達の体が、震えていた。
怯える山並さんに、彼女はにっこりと微笑みながら……


「これより、特務生徒会を執行します。」



そう言って、思いっきり……


側にあった壁を、殴った……。


――バコン!!



……壁が。

有り得ないくらいに、ぼっこりと凹んだ。



「ひぃ……!」


「……行け。」


けして、大きくない、彼女の声。だけどその声は……


とてもよく、その場に響いていた。


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