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花火のように




翌朝――



「今夜はちゃんとかえってくるんだよ。」



昨日の夜……。
あの優しいばあちゃんが口を聞いてくれなかった…

いままでこんな事はなかった。

まぁ今はちゃんと話しかけてくれるけどよ…






冬獅郎『………。』




今日は花火大会。




毎年、俺と一護と美波の3人で行くはずなんだけど…


今日も成美に会いに行く約束したし…



一護は美波と一緒にいきてぇだろうから…





冬獅郎『……行くか。』


ばあちゃんからあるものを受け取り


俺は病院へ向かった。

















惣介「日番谷くん!!」




ん??


病院の入り口で名前を呼ばれ足を止める。



冬獅郎『…あっ……どうも』




声の先には藍染……

じゃなくて成美の兄貴がたっていた。


今はちゃんと白衣来てメガネをかけている。


昨日の変質者とは違う。




惣介「昨日は寝れたかい?」


冬獅郎『……おかげさまで。』






惣介「急にだけど………
君に話しておきたい事があるんだ………。」



俺に話しておきたいこと?


冬獅郎『……なんでしょう…』


なんだこの胸騒ぎ…

気のせいだろうか…


惣介「ここじゃなんだから、俺の自室に来ないか?」


そんなに大事な話なのか?



俺は成美の兄貴の後ろについていった。











ガチャッ




惣介「ここに座ってくれ…」


案内された部屋に入る。



冬獅郎『………』


俺は成美の兄貴と向かい合う形で椅子に座った。




惣介「単刀直入に言うよ?」



『……はい』




なんだ…??










惣介「君は………












成美が好きなのか?」











ドクンッ
















俺は……成美のことが好きなのか?








まだ出会って数日……



だけど……


いつも成美でいっぱいだった……







これは恋心なのか…















冬獅郎『………わかりません』












惣介「………そうか…







じゃあ















もう成美には会わないでくれ…」







いつもニコニコしてる成美の兄貴から


そんな言葉が出て来るとは……



俺は何を言われてるのかわからなかった………








冬獅郎『………。』


惣介「……成美が病気なのは知ってるよな………」


冬獅郎『……はい…』






惣介「………成美の体はは悪くなってる………











へたすれば…
















持って1ヶ月だ………」














ドクンッ



















冬獅郎『     』





声なんて出なかった。









喋る気なんて失せた…








ただ…











成美を失いたくないと…………













強く…







思った……
















ガラッ


成美の病室のドアが開く。



美波「こんにちは♪」


成美「あ…どうも…」


成美の病室に来たのは冬獅郎でもなく、

看護婦でもなければ惣介でもなく美波だった。




美波「………。」


シロちゃんは来てないようね…


美波「成美さん…だっけ?」

ちょっと可愛いからって…調子にのって…


成美「うん。成美でいいよ♪」



ムカつく…。









美波「シロちゃんに近寄らないで…」


成美「………え??」


美波「あんたのせいでシロちゃんが私の知らない人になっちゃったの………


私の知ってるシロちゃんを返して………。」



成美「……どういうこと?」



訳のわからない台詞に笑顔で問いかける成美。













バシッ







美波「とぼけないで!!!!」



成美「…………ッ」



美波に成美の頬を叩かれる。








成美「冬獅郎くんは冬獅郎くん……
誰のものでもないよ……」


なにも知らないくせに…

美波「うるさいッ!!」

シロちゃんのこと何も知らないくせに!!



イラつく!!

再び美波が腕を振り上げた








瞬間







冬獅郎『……何してるんだよ。』

あまりにも低い声が病室に響く…


美波「……!!!!」


成美「ッ……冬獅郎くん…」



冬獅郎が現れ美波の腕をつかんだ。




成美「……美波ちゃんが私の頬に止まった蚊を叩いてくれたの!!

ありがとうね、美波ちゃん♪」



美波「……えっ…」


なんで…私、貴方を殴ったんだよ?


それなのになんで庇うの?



憎い…




憎い



憎い







美波「……ぅ……うぅ…ッ…」



だけど憎みきれない…





私をみる貴女の瞳が綺麗で…

汚れのない…


貴女の心に…


私の心が洗われていく…








涙が止まらないよ……












美波「……ゴメンなさいッ…」

今さら後悔の波が押し寄せてくる…。


冬獅郎『………。』



黒崎は何をしているのだろうか…


美波とうまくいかなかったのか?



冬獅郎は美波を見てるしかしなかった。






バンッ




一護「美波!!!!」



美波「………一…護…?」


冬獅郎『……お前……なんでここに?』


走ってきたのか、一護は息を切らしていた。


成美「…………。

美波ちゃんは寂しかっただけなんだよね……
誰か一人でも離れていくのが嫌だったんだよね?」





シロちゃんを成美にとられるのが……


私から離れていくのが…



私は……




恐かったんだ…。









成美は少ししか美波と出会ったことないはずなのに……



どうして美波の気持ちがわかるのだろうか…




一護「なぁ…美波…
昨日よく考えたら

やっぱり美波が好きなんだ…



諦めの悪い男って思うかもしれねぇが…それでも


好きなんだ…



冬獅郎の事好きでもいい……


いつか冬獅郎よりカッコいい男になるから…


俺にもう一度、チャンスをくれないか?」













美波「……私でいいの?」








私、本気で一護利用しようとした…



でも、心のどこかに一護がいて…













………一護は……




私が思ってる以上に


私を愛してくれてるんじゃないかな?








そう













自惚れていいかな?











美波「……一護ッ!!!!」



飛びついた一護の体はやっぱり男の子で、広かった。




一護はシロちゃんより私を愛してくれる……



そう思う…



だから、






時間が必要だけど…













私も一護をシロちゃん以上に愛せる時がくるかもしれない………。












一護「……花火大会…一緒に行こう……美波。」











美波「うん…。」



一護がそっと差し出した手を美波は握った。






一護の手は温かいな…




この手なら、信じられそう。





美波「……成美……ごめんなさい。


……私の事わかってくれて嬉しかったよ。

今度、みんなで海に行こうね。」





成美「……うんっ!!いってらっしゃい、美波!!一護くん!!」




優しく笑う貴女をみて




私たち親友になれるんじゃないかと





思った……













バタンッ


一護と美波は笑いながら出ていった。









成美「花火大会…か……。

私…

病気だから、行けないんだよね…。


まぁ…ここからでも見えるけど♪」




そんな顔しないでくれ…



冬獅郎『………なぁ…浴衣着ないか?

実は俺のおばあちゃんが持っていけって……


成美に似合いそうな浴衣持ってきたんだ…



これ着て…

一緒に花火みよう……』



ホントは俺が成美のために

ばあちゃんに頼んで用意させたんだけど…



成美「……可愛い!!

着てもいいの?


一緒に見てもいいの?」




冬獅郎『……あぁ…看護婦呼んで着せてもらえよ……』





成美「……うん!!」



















病気……










あと1ヶ月……







成美は夏休みと共に…




















いなくなる…













成美の兄貴が言っていた…





惣介「"もう残り少ない成美の人生だ……



ちゃんと……


成美を愛してくれる人に傍にいてほしいんだ……







中途半端な気持ちで成美に近づいて、

期待させるだけさせて


…さよなら。


…って事は絶対にしないでくれ……"」




………と。








冬獅郎『……成美を助ける方法はないんですか!?』



冬獅郎『……成美を助けてくれ…』



冬獅郎『……成美から笑顔を失いたくない……』




何度も繰り返し口ずさんだ…



けれど…










惣介「……今の医療じゃ…方法はないんだ…」



惣介「……こんな田舎に大規模な施術できる病院なんてない………」












惣介「……世の中どうしようも無いことがある…………。




……諦めるしか…














…………無いんだッ」











成美の兄貴は泣いてた…



静かに涙をこぼし…



どれだけ……


成美を大切にし……

愛してきた事を……





静かに…ただ静かに…








語っていた……







その様子を見るたび…






俺は…












無力だ……









そう、何度も繰り返し悔やんだ……。















ドンッ



花火が打ち上がる音がして我にかえる。





成美「お待たせ!!」


そこには浴衣姿の成美がいた。



冬獅郎『……似合ってる…////』


ドンッ



成美「……ありがとう////


あっ!!花火綺麗ー!!」


ドンッ


冬獅郎『そうだな…』











俺たちは……






花火のように…




綺麗に打ち上げられ…







一瞬で消える……。







輝きだけを残し…





絶望と共に消え去る…









俺たちの人生は






















花火に似た……











残酷な………












人生を歩んでいるのか……












成美「……冬獅郎くん?」



成美……



冬獅郎『………。』



成美……














成美「……なんで



泣いてるの?」

















お前の代わりになれたらいいのにな…











冬獅郎『………花火…ッ……綺麗だ…な……。』









成美「………そうだね…」













成美……














お願いだから………






















逝かないでくれ……






















冬獅郎『……どこにも……ぅッ………ッ……














いかないで…くれ………』

















成美「…大丈夫…。









傍にいるから…………。」











だから









泣かないで……















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