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この気持ちを自覚したのはいつだったのか。


幼稚園からの付き合いで、いわゆる幼なじみ。
気が合ったのか、どんなグループでいても僕たちは必ず近くにいた。


グループの中で入れ替わりはあっても、僕たちが離れる事はなかった。


特に言葉に出した事はなかったけど、気付けばいつもそばにいた。
だから、ふと視線を巡らせるとすぐに存在を確かめられた。


お互い空気みたいな存在だと思ってたんだ。


壊したのは僕の方。


だって…気付いてしまったんだ。


胸にくすぶるこの気持ちの正体に…。



********************



「じゅんー、今日も乗せてってよ」


そんな僕の気持ちなんて知りもしない、幼なじみの武流(たける)がのん気に話しかけて来る。


今は昼休み。
僕はスポーツとかは得意じゃないから、いつも友人たちと向かい合って読書をしている。


顔を上げると、武流は見慣れた屈託のない満面の笑顔。
先日バスケ部の練習でケガをして、今は松葉杖をついている。


家も隣だし、お互いの家族も今更遠慮はなく、僕は体のいい面倒見役をさせられていた。
毎日の送り迎えは暗黙の了解で僕の役目になっていた。


同じ学校なんだから一緒に行ってあげなさい! っていうのが母さんの言い分。
正論といえば正論なんだけど、誰も彼も僕の都合なんてお構いなしだ。


目の前にいる武流だってそうだ。
僕の気も知らないで…。


一度、放って帰ってやろうか。


「じゅんー…」


情けない声がして武流を見ると、まるで耳の垂れてる子犬のような顔をしていた。


それこそ情けないけど、こうされては僕に断る術はない。
武流もその事は心得てる、と思う…。
僕の本当の気持ち云々は別にして。


思わずため息が出た。


「6時…正門で待ってるから…」


「やったー! さっすが頼りになる〜」


武流は松葉杖を振り回して喜んだ。よく見ると、片足をつかないように浮かせている。…器用なヤツ。

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