遠回りな未来
未来へ歩き出そう J
僕の気持ちは決まった。
…というか、最初から道はひとつしかなかったんだけど。
意を決して顔を上げる。
「ごめんなさい…」
僕に言えたのはそれだけだった。
「あの時、すぐに戻って来てくれたら僕だって…。でも、もう真幸先輩とそんな仲になるつもりはありません。そんな事をしたら、僕は絶対後悔しますから」
「後悔なんてさせないよ…!」
静かに聞いていた真幸先輩が声を荒げる。
その気持ちはきっと本心だと思う。
あと1週間早くその言葉を聞いていれば、僕の選んだ道も違っていたのかもしれない。
でも、そうじゃない。
クリスマス・イブのあの日から、僕たちは道を分かれてしまったんだ。
「僕には、ごめんなさいしか言えません…」
「輝希…」
真幸先輩の呼ぶ声に胸がつまされる。
でも僕はそれを振り切った。
「…さよなら」
最後に良い印象を残そうと、僕はもてる勇気をすべて使って精一杯の笑顔を作った。
真幸先輩の方に向かって歩き出す。
でも、その先は決して交わる事はない。
僕たちはお互い違う道を歩んでいくんだ。
すれ違った瞬間、真幸先輩が好んでつけているオーデコロンがかすかに香る。
この香りに包まれると、いつも僕は安心できたんだ…。
でも、それもおしまい。
僕の心をしめつけていたものは、ようやく『思い出』になったんだ。
これで…僕も前を向いて歩いて行ける。
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