遠回りな未来
未来へ歩き出そう I
「…何で…」
言いたい事や訊きたい事はたくさんあるのに、出て来たのは抽象的な疑問の言葉…。
気持ちの整理がまだ全部すんでないのに、できれば今は会いたくなかった。
僕がすっかり言葉を失くしてると、真幸先輩はポーカーフェイスを崩さずに口を開いた。
「ずっと会いたかった…。会って、まだ好きだって伝えたかったんだ」
…今、何て…?
真幸先輩は何て言ったの…?
やだ…僕の耳おかしくなっちゃったのかな…。
「あの時はほんとにどうかしてた。輝希をふるなんて…」
静かに言葉が紡がれる。
見知った声、口調なのに…何だか遠い世界の出来事みたいだった。
僕…中学の時と同じように告白されてる?
真幸先輩、僕をまだ好きだって…?
「僕と…やり直して欲しい」
「!」
優しげだけど強い意思をたたえた瞳(め)が僕を捕らえて離さない…。
真幸先輩は本気だ。
中学の時だって、クリスマス・イブに別れを切り出されるまでお互いに本気だって信じて疑わなかった。
だったら、どうしてあの時…。
今この状況にあって、僕は中学の頃とは違う感覚に満たされていた。
ドキドキはするけど、何か違う…。
そりゃ改めて告白された事に驚きは隠せない。
でも、僕の中では『好き』っていう気持ちではなくなってると思う。
むしろ憧れに近い感じだ。
今でも憧れの先輩には違いないけど、それ以上にはならない。
だって、僕はもう皐貴の想いを受け止める道を歩み出している。
色々あって今の道に至った限りは、簡単にあの頃に引き返したくない。
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